刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)による通常手続 又は再審 若しくは非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)又は経済調査庁法(昭和二十三年法律第二百六号)によつて未決の抑留 又は拘禁を受けた場合には、その者は、国に対して、抑留 又は拘禁による補償を請求することができる。
刑事補償法
上訴権回復による上訴、再審 又は非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が原判決によつてすでに刑の執行を受け、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第十一条第二項の規定による拘置を受けた場合には、その者は、国に対して、刑の執行 又は拘置による補償を請求することができる。
刑事訴訟法第四百八十四条、第四百八十五条、第四百八十五条の二 又は第四百八十六条第二項(これらの規定を同法第五百五条において準用する場合を含む。)の収容状による抑留 及び同法第四百八十一条第二項(同法第五百五条において準用する場合を含む。)の規定による留置 並びに更生保護法(平成十九年法律第八十八号)第六十三条第二項 又は第三項の引致状による抑留 及び留置は、前項の規定の適用については、刑の執行 又は拘置とみなす。
前条の規定により補償の請求をすることのできる者がその請求をしないで死亡した場合には、補償の請求は、相続人からすることができる。
死亡した者について再審 又は非常上告の手続において無罪の裁判があつた場合には、補償の請求については、死亡の時に無罪の裁判があつたものとみなす。
左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部 又は全部をしないことができる。
本人が、捜査 又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作為することにより、起訴、未決の抑留 若しくは拘禁 又は有罪の裁判を受けるに至つたものと認められる場合
一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪の裁判を受けても、他の部分について有罪の裁判を受けた場合
抑留 又は拘禁による補償においては、前条 及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。
懲役、禁錮 若しくは拘留の執行 又は拘置による補償においても、同様である。
裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、拘束の種類 及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであつた利益の喪失、精神上の苦痛 及び身体上の損傷 並びに警察、検察 及び裁判の各機関の故意過失の有無 その他一切の事情を考慮しなければならない。
死刑の執行による補償においては、三千万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。
ただし、本人の死亡によつて生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に三千万円を加算した額の範囲内とする。
裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、同項但書の証明された損失額の外、本人の年齢、健康状態、収入能力 その他の事情を考慮しなければならない。
罰金 又は科料の執行による補償においては、既に徴収した罰金 又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。
労役場留置の執行をしたときは、第一項の規定を準用する。
没収の執行による補償においては、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、既に処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付し、また、徴収した追徴金についてはその額にこれに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。
この法律は、補償を受けるべき者が国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。
補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によつて損害賠償を受けた場合において、その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。
その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額より少いときは、損害賠償の額を差し引いて補償金の額を定めなければならない。
他の法律によつて損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によつて補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。
補償の請求は、無罪の裁判をした裁判所に対してしなければならない。
補償の請求は、無罪の裁判が確定した日から三年以内にしなければならない。
相続人から補償の請求をする場合には、本人との続柄 及び同順位の相続人の有無を疎明するに足りる資料を提出しなければならない。
補償の請求は、代理人によつてもすることができる。
補償の請求をすることのできる同順位の相続人が数人ある場合には、その一人のした補償の請求は、全員のためその全部につきしたものとみなす。
前項の場合には、請求をした者以外の相続人は、共同請求人として手続に参加することができる。
裁判所は、相続人から補償の請求を受けた場合において、他に同順位の相続人があることを知つたときは、すみやかにその同順位の相続人に対し補償の請求のあつた旨を通知しなければならない。
補償の請求をすることのできる同順位の相続人が数人ある場合には、補償の請求をした者は、他の全員の同意がなければ、請求を取り消すことができない。
補償の請求をした者が請求を取り消したときは、その取消をした者は、さらに補償の請求をすることができない。
補償の請求があつたときは、裁判所は、検察官 及び請求人の意見を聞き、決定をしなければならない。
決定の謄本は、検察官 及び請求人に送達しなければならない。
補償請求の手続が法令上の方式に違反し、補正することができないとき、若しくは請求人が裁判所から補正を命ぜられてこれに応じないとき、又は補償の請求が第七条の期間の経過後にされたときは、請求を却下する決定をしなければならない。
補償の請求が理由のあるときは、補償の決定をしなければならない。
理由がないときは、請求を棄却する決定をしなければならない。
補償の請求をすることのできる同順位の相続人が数人ある場合には、その一人に対してした前条の決定は、同順位者全員に対してしたものとみなす。
補償の請求をした者が請求の手続中死亡し、又は相続人たる身分を失つた場合において、他に請求人がないときは、請求の手続は、中断する。
この場合において、請求をした者の相続人 及び請求をした者と同順位の相続人は、二箇月以内に請求の手続を受け継ぐことができる。
裁判所は、前項の規定により手続を受け継ぐことのできる者で裁判所に知れているものに対しては、同項の期間内に請求の手続を受け継ぐことができる旨を通知しなければならない。
第一項の期間内に手続を受け継ぐ旨の申立がないときは、裁判所は、決定で請求を却下しなければならない。
第十六条の決定に対しては、請求人 及びこれと同順位の相続人は、即時抗告をすることができる。
但し、その決定をした裁判所が高等裁判所であるときは、その高等裁判所に異議の申立をすることができる。
前項の即時抗告 及び異議の申立についての決定に対しては、刑事訴訟法第四百五条各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
第九条から第十五条まで、第十七条 及び前条の規定は、前二項の場合に準用する。
補償の払渡は、補償の決定をした裁判所に請求しなければならない。
補償の払渡を受けることのできる者が数人ある場合には、その一人のした補償払渡の請求は、補償の決定を受けた者全員のためその全部につきしたものとみなす。
第十一条の規定は、裁判所が補償払渡の請求を受けた場合に準用する。
補償の払渡を受けることのできる者が数人ある場合には、その一人に対する補償の払渡は、その全員に対してしたものとみなす。
補償の請求権は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない。
補償払渡の請求権も、同様である。
この法律の決定、即時抗告、異議の申立 及び第十九条第二項の抗告については、この法律に特別の定のある場合を除いては、刑事訴訟法を準用する。
期間についても、同様である。
裁判所は、補償の決定が確定したときは、その決定を受けた者の申立により、すみやかに決定の要旨を、官報 及び申立人の選択する三種以内の新聞紙に各一回以上掲載して公示しなければならない。
前項の申立は、補償の決定が確定した後二箇月以内にしなければならない。
第一項の公示があつたときは、さらに同項の申立をすることはできない。
前三項の規定は、第五条第二項前段に規定する理由による補償の請求を棄却する決定が確定した場合に準用する。
刑事訴訟法の規定による免訴 又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴 又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留 若しくは拘禁による補償 又は刑の執行 若しくは拘置による補償を請求することができる。
前項の規定による補償については、無罪の裁判を受けた者の補償に関する規定を準用する。
補償決定の公示についても同様である。
日本国が外国に対し逃亡犯罪人の引渡を請求した場合において、当該外国がその引渡のためにした抑留 又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留 又は拘禁とみなす。
国際受刑者移送法(平成十四年法律第六十六号)第二条第六号の送出移送をした場合において、同条第八号の執行国が同条第十二号の送出移送犯罪に係る懲役 又は禁錮の確定裁判の執行の共助としてした拘禁は、日本国による刑の執行とみなす。
国際捜査共助等に関する法律(昭和五十五年法律第六十九号)第十九条の国内受刑者に係る受刑者証人移送をした場合において、当該国内受刑者が受刑者証人移送として移送されていた期間における身体の拘束は、日本国による刑の執行とみなす。