判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律

平成十六年法律第百二十一号
分類 法律
カテゴリ   司法
@ 施行日 : 令和四年十一月一日 ( 2022年 11月1日 )
@ 最終更新 : 令和二年法律第三十三号による改正
最終編集日 : 2024年 03月24日 10時54分

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1項

この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、司法に対する多様かつ広範な国民の要請にこたえることのできる広くかつ高い識見を備えた裁判官及び検察官が求められていることにかんがみ、判事補 及び検事(司法修習生の修習を終えた者であって、その最初に検事に任命された日から十年を経過していないものに限る第七条第五項第十一条第四項 及び第十二条除き、以下同じ。)について、その経験多様化(裁判官 又は検察官としての能力 及び資質の向上並びにその職務の充実に資する他の職務経験 その他の多様な経験をすることをいう。次条第一項 及び第四項において同じ。)のための方策の一環として、一定期間 その官を離れ、弁護士となってその職務を経験するために必要な措置を講ずることにより、判事補 及び検事が弁護士としての職務を経験することを通じて、裁判官 及び検察官としての能力 及び資質の一層の向上並びにその職務の一層の充実を図ることを目的とする。

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1項

最高裁判所は、判事補が経験多様化の一環として一定期間弁護士となってその職務を経験することの必要性、これに伴う事務の支障 その他の事情を勘案して、相当と認めるときは、当該判事補の同意(第三項に規定する事項に係る同意を含む。)を得て、第七項に規定する雇用契約を締結しようとする弁護士法人 若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人 又は弁護士との間の取決めに基づき、期間を定めて、当該判事補が弁護士となってその職務を行うものとすることができる。

2項

最高裁判所は、前項の同意を得るに当たっては、あらかじめ、当該判事補に同項取決めの内容を明示しなければならない。

3項

第一項の場合においては、最高裁判所は、当該判事補を裁判所事務官に任命するものとし、当該判事補は、その任命の時にその官を失うものとする。

4項

法務大臣は、検事が経験多様化の一環として一定期間弁護士となってその職務を経験することの必要性、これに伴う事務の支障 その他の事情を勘案して、相当と認めるときは、当該検事の同意(第六項に規定する事項に係る同意を含む。)を得て、第七項に規定する雇用契約を締結しようとする弁護士法人 若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人 又は弁護士との間の取決めに基づき、期間を定めて、当該検事に弁護士となってその職務を行わせることができる。

5項

法務大臣は、前項の同意を得るに当たっては、あらかじめ、当該検事に同項取決めの内容を明示しなければならない。

6項

第四項の場合においては、法務大臣は、当該検事を法務省(検察庁を除く。以下同じ。)に属する官職に任命するものとし、当該検事は、その任命の時にその官を失うものとする。

7項

第一項 又は第四項の取決めにおいては、第三項 又は前項の規定により裁判所事務官 又は法務省に属する官職に任命されて第一項 又は第四項の規定により弁護士となってその職務を行う者(以下「弁護士職務従事職員」という。)と弁護士職務従事職員を雇用する弁護士法人 又は弁護士(以下「受入先弁護士法人等」という。)との間の雇用契約(第四条第二項ただし書に規定する承認に係る事項の定めを含む。)の締結、当該受入先弁護士法人等における勤務条件、第一項 又は第四項の規定により弁護士となってその職務を行う期間(以下「弁護士職務従事期間」という。)、これらの規定により弁護士となってその職務を経験すること(以下「弁護士職務経験」という。)の終了に関する事項 その他これらの規定により弁護士となってその職務を行うものとし 又は行わせるに当たって合意しておくべきものとして判事補については最高裁判所規則で、検事については法務省令で定める事項を定めるものとする。

8項

最高裁判所 又は法務大臣は、第一項 又は第四項の取決めの内容を変更しようとするときは、当該判事補 若しくは検事 又は当該弁護士職務従事職員の同意を得なければならない。


この場合においては、第二項 又は第五項の規定を準用する。

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1項

弁護士職務従事期間は、二年を超えることができない


ただし、特に必要があると認めるときは、最高裁判所 又は法務大臣は、当該弁護士職務従事職員 及び当該受入先弁護士法人等の同意を得て、当該弁護士職務経験を開始した日から引き続き三年を超えない範囲内で、これを延長することができる。

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1項

弁護士職務従事職員は、第二条第一項 又は第四項の取決めに定められた内容に従って、受入先弁護士法人等との間で雇用契約(次項ただし書に規定する承認に係る事項の定めを含む。)を締結し、弁護士法昭和二十四年法律第二百五号)の定めるところにより弁護士登録(同法第八条に規定する登録をいう。第七条第四項 及び第五項において同じ。)を受け、その弁護士職務従事期間中、当該雇用契約に基づいて弁護士の業務に従事するものとする。

2項

弁護士職務従事職員は、前項の規定により従事する弁護士の業務のうち当事者 その他関係人から依頼を受けて行う事務については、当該受入先弁護士法人等が弁護士法人 又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人である場合にあっては当該弁護士法人 又は当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人が当事者 その他関係人から委託を受けた事務を行い、当該受入先弁護士法人等が弁護士である場合にあっては当該弁護士と共同して当事者 その他関係人から依頼を受けてその事務を行うものとする。


ただし、当該受入先弁護士法人等が個別に承認した事務については、同項の雇用契約に基づいて、単独で当事者 その他関係人から依頼を受けてその事務を行うことができる。

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1項

弁護士職務従事職員は、その弁護士職務従事期間中、裁判所事務官 又は法務省職員(法務省に属する官職を占める者をいう。以下同じ。)としての身分を保有するが、その職務に従事しない。

2項

弁護士職務従事職員には、その弁護士職務従事期間中、給与を支給しない。

3項

一般職の職員の給与に関する法律昭和二十五年法律第九十五号。裁判所職員臨時措置法昭和二十六年法律第二百九十九号)において準用する場合を含む。第十条において同じ。)の規定は、弁護士職務従事職員には、その弁護士職務従事期間中、適用しない

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1項

弁護士職務従事職員は、第四条の規定により弁護士の業務を行うに当たっては、裁判所事務官 若しくは法務省職員たる地位を利用し、又はその弁護士職務経験の前において判事補 若しくは検事であったことによる影響力を利用してはならない。

2項

弁護士職務従事職員の第四条の規定による弁護士の業務への従事に関しては、国家公務員法昭和二十二年法律第百二十号第百四条裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない

3項

最高裁判所 又は法務大臣は、必要があると認めるときは、当該弁護士職務従事職員に対し、当該受入先弁護士法人等における勤務条件及び第四条の規定による弁護士の業務への従事の状況(弁護士法第二十三条に規定する職務上知り得た秘密に該当する事項を除く)について、報告を求めることができる。

4項

弁護士職務従事職員に関する国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号。裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、当該弁護士職務従事職員(第二条第三項 又は第六項の規定により裁判所事務官 又は法務省に属する官職に任命された日の前日において裁判官の報酬等に関する法律昭和二十三年法律第七十五号別表判事補の項八号の報酬月額以上の報酬 又は検察官の俸給等に関する法律昭和二十三年法律第七十六号別表検事の項十六号の俸給月額以上の俸給を受けていた者に限る)は、国家公務員倫理法第二条第二項に規定する本省課長補佐級以上の職員とみなす。

5項

弁護士職務従事職員に関する国家公務員法第八十二条裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、

同条第一項第一号
若しくは国家公務員倫理法」とあるのは、
「、国家公務員倫理法(判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律平成十六年法律第百二十一号第六条第四項の規定によりみなして適用される場合を含む。)若しくは判事補 及び検事の弁護士職務経験に関する法律」と

する。

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1項

弁護士職務従事期間が満了したときは、当該弁護士職務経験は終了するものとする。

2項

最高裁判所は、裁判所事務官である弁護士職務従事職員が当該受入先弁護士法人等との間の第四条第一項の雇用契約上の地位を失った場合 その他の最高裁判所規則で定める場合であって、その弁護士職務経験を継続することができないか 又は適当でないと認めるときは、速やかに、当該弁護士職務経験を終了するものとしなければならない。

3項

法務大臣は、法務省職員である弁護士職務従事職員が当該受入先弁護士法人等との間の第四条第一項の雇用契約上の地位を失った場合 その他の法務省令で定める場合であって、その弁護士職務経験を継続することができないか 又は適当でないと認めるときは、速やかに、当該弁護士職務経験を終了するものとしなければならない。

4項

第一項 又は第二項の規定により裁判所事務官である弁護士職務従事職員の弁護士職務経験が終了するときは、当該弁護士職務従事職員は、弁護士法の定めるところによりその弁護士登録の取消しを受けるものとし、最高裁判所は、当該弁護士職務従事職員について判事補 又は判事への任命に関し必要な手続をとらなければならない。


ただし、その任命を不相当と認めるべき事由があるときは、この限りでない。

5項

第一項 又は第三項の規定により法務省職員である弁護士職務従事職員の弁護士職務経験が終了するときは、当該弁護士職務従事職員は、弁護士法の定めるところによりその弁護士登録の取消しを受けるものとし、法務大臣は、当該弁護士職務従事職員について検事への任命に関し必要な措置をとらなければならない。


この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

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1項

国家公務員共済組合法昭和三十三年法律第百二十八号)第三十九条第二項の規定 及び同法の短期給付に関する規定(同法第六十八条の三の規定を除く。以下この項において同じ。)は、弁護士職務従事職員には、適用しない


この場合において、同法の短期給付に関する規定の適用を受ける職員(同法第二条第一項第一号に規定する職員をいう。以下この項において同じ。)が弁護士職務従事職員となったときは、同法の短期給付に関する規定の適用については、そのなった日の前日に退職(同法第二条第一項第四号に規定する退職をいう。)をしたものとみなし、弁護士職務従事職員が同法の短期給付に関する規定の適用を受ける職員となったときは、同法の短期給付に関する規定の適用については、そのなった日に職員となったものとみなす。

2項

弁護士職務従事職員に関する国家公務員共済組合法の退職等年金給付に関する規定の適用については、第四条第一項に規定する弁護士の業務を公務とみなす。

3項

弁護士職務従事職員は、国家公務員共済組合法第九十八条第一項各号に掲げる福祉事業を利用することができない

4項

弁護士職務従事職員に関する国家公務員共済組合法の規定の適用については、

同法第二条第一項第五号 及び第六号中
準ずる給与として政令で定めるもの」とあるのは
「相当するものとして次条第一項に規定する組合の運営規則で定めるもの」と、

同法第九十九条第二項中
次の各号」とあるのは
「第三号」と、

当該各号」とあるのは
「同号」と、

及び国の負担金」とあるのは
「及び判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律平成十六年法律第百二十一号第二条第七項に規定する受入先弁護士法人等(以下「受入先弁護士法人等」という。)の負担金」と、

同項第三号中
国の負担金」とあるのは
「受入先弁護士法人等の負担金」と、

同法第百二条第一項中
各省各庁の長(環境大臣を含む。)、行政執行法人 又は職員団体」とあり、及び「国、行政執行法人 又は職員団体」とあるのは
「受入先弁護士法人等 及び国」と、

第九十九条第二項(同条第六項から第八項までの規定により読み替えて適用する場合を含む。)及び第五項(同条第七項 及び第八項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とあるのは
「第九十九条第二項 及び第五項」と、

同条第四項中
第九十九条第二項第三号 及び第四号」とあるのは
「第九十九条第二項第三号」と、

並びに同条第五項(同条第七項 及び第八項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この項において同じ。)」とあるのは
「及び同条第五項」と、

(同条第五項」とあるのは
「(同項」と、

国、行政執行法人 又は職員団体」とあるのは
「受入先弁護士法人等 及び国」と

する。

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1項

弁護士職務従事職員に関する子ども・子育て支援法平成二十四年法律第六十五号)の規定の適用については、受入先弁護士法人等を同法第六十九条第一項第四号に規定する団体とみなす。

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1項

弁護士職務従事職員であった者に関する一般職の職員の給与に関する法律第二十三条第一項 及び附則第六項の規定の適用については、第四条第一項に規定する弁護士の業務(当該弁護士の業務に係る労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第二項に規定する通勤(当該弁護士の業務に係る就業の場所を国家公務員災害補償法昭和二十六年法律第百九十一号第一条の二第一項第一号 及び第二号に規定する勤務場所とみなした場合に同条に規定する通勤に該当するものに限る次条第一項において同じ。)を含む。)を公務とみなす。

2項

弁護士職務従事職員であった者に関する一般職の職員の給与に関する法律第十一条の七第三項第十一条の八第三項第十二条第四項第十二条の二第三項 及び第十四条第二項の規定の適用については、弁護士職務従事職員は、同法第十一条の七第三項に規定する行政執行法人職員等とみなす。

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1項

弁護士職務従事職員 又は弁護士職務従事職員であった者が退職した場合における国家公務員退職手当法昭和二十八年法律第百八十二号)の規定の適用については、第四条第一項に規定する弁護士の業務に係る業務上の傷病 又は死亡は同法第四条第二項第五条第一項 及び第六条の四第一項に規定する公務上の傷病 又は死亡と、当該弁護士の業務に係る労働者災害補償保険法第七条第二項に規定する通勤による傷病は国家公務員退職手当法第四条第二項第五条第二項 及び第六条の四第一項に規定する通勤による傷病とみなす。

2項

弁護士職務従事職員 又は弁護士職務従事職員であった者に関する国家公務員退職手当法第六条の四第一項 及び第七条第四項の規定の適用については、弁護士職務従事期間は、同法第六条の四第一項に規定する現実に職務をとることを要しない期間には該当しないものとみなす。

3項

前項の規定は、弁護士職務従事職員 又は弁護士職務従事職員であった者が当該受入先弁護士法人等から所得税法昭和四十年法律第三十三号第三十条第一項に規定する退職手当等(同法第三十一条の規定により退職手当等とみなされるものを含む。)の支払を受けた場合には、適用しない

4項

弁護士職務従事職員がその弁護士職務従事期間中に退職した場合に支給する国家公務員退職手当法の規定による退職手当の算定の基礎となる俸給 若しくは扶養手当 又はこれらに対する地域手当 若しくは広域異動手当(以下この項において「俸給等」という。)の月額については、当該弁護士職務従事職員が第二条第三項 又は第六項の規定により裁判所事務官 又は法務省に属する官職に任命された日の前日において受けていた俸給等の月額をもって、当該弁護士職務従事職員の俸給等の月額とする。


ただし、必要があると認められるときは、他の判事補 若しくは判事 又は検事との均衡を考慮し、必要な措置を講ずることができる。

5項

弁護士職務従事職員 又は弁護士職務従事職員であった者が退職した場合における国家公務員退職手当法第六条の四の規定の適用については、これらの者は、その弁護士職務従事期間中、第二条第三項 又は第六項の規定により裁判所事務官 又は法務省に属する官職に任命された日の前日において従事していた職務に従事していたものとみなす。

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1項

裁判所事務官である弁護士職務従事職員がその弁護士職務経験の終了後に判事補 又は判事に任命された場合 及び法務省職員である弁護士職務従事職員がその弁護士職務経験の終了後に検事に任命された場合における処遇については、他の判事補 若しくは判事 又は検事との権衡上必要と認められる範囲内において、適切な配慮が加えられなければならない。

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1項

最高裁判所 及び法務大臣は、この法律の運用に当たっては、裁判官、検察官 及び弁護士のそれぞれの職務の性質に配慮しつつ、その適正な運用の確保に努めなければならない。

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1項

この法律に定めるもののほか、判事補に係るこの法律の実施に関し 必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

2項

この法律に定めるもののほか、検事に係るこの法律の実施に関し 必要な事項は、法務省令で定める。

3項

法務大臣は、第二条第七項 又は第七条第三項の法務省令を制定し、又は改廃しようとするときは、人事院の意見を聴かなければならない。


前項の法務省令であって人事院の所掌に係る事項を定めるものを制定し、又は改廃しようとするときも、同様とする。

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