医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律

令和三年法律第八十一号
分類 法律
カテゴリ   社会福祉
@ 施行日 : 令和三年九月十八日 ( 2021年 9月18日 )
@ 最終更新 : 令和三年法律第八十一号
最終編集日 : 2024年 10月26日 21時12分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策

  • 第三章 医療的ケア児支援センター等

  • 第四章 補則

第一章 総則

1項

この法律は、医療技術の進歩に伴い医療的ケア児が増加するとともにその実態が多様化し、医療的ケア児 及びその家族が個々の医療的ケア児の心身の状況等に応じた適切な支援を受けられるようにすることが重要な課題となっていることに鑑み、医療的ケア児 及びその家族に対する支援に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、保育 及び教育の拡充に係る施策 その他必要な施策 並びに医療的ケア児支援センターの指定等について定めることにより、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資し、もって安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現に寄与することを目的とする。

1項

この法律において「医療的ケア」とは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引 その他の医療行為をいう。

2項

この法律において「医療的ケア児」とは、日常生活 及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童(十八歳未満の者 及び十八歳以上の者であって高等学校等(学校教育法昭和二十二年法律第二十六号)に規定する高等学校、中等教育学校の後期課程 及び特別支援学校の高等部をいう。次条第三項 及び第十四条第一項第一号において同じ。)に在籍するものをいう。次条第二項において同じ。)をいう。

1項

医療的ケア児 及びその家族に対する支援は、医療的ケア児の日常生活 及び社会生活を社会全体で支えることを旨として行われなければならない。

2項

医療的ケア児 及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が医療的ケア児でない児童と共に教育を受けられるよう最大限に配慮しつつ適切に教育に係る支援が行われる等、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類 及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体相互の緊密な連携の下に、切れ目なく行われなければならない。

3項

医療的ケア児 及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した後も適切な保健医療サービス 及び福祉サービスを受けながら日常生活 及び社会生活を営むことができるようにすることにも配慮して行われなければならない。

4項

医療的ケア児 及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たっては、医療的ケア児 及びその保護者(親権を行う者、未成年後見人 その他の者で、医療的ケア児を現に監護するものをいう。第十条第二項において同じ。)の意思を最大限に尊重しなければならない。

5項

医療的ケア児 及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たっては、医療的ケア児 及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにすることを旨としなければならない。

1項

国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、医療的ケア児 及びその家族に対する支援に係る施策を総合的に実施する責務を有する。

1項

地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、医療的ケア児 及びその家族に対する支援に係る施策を実施する責務を有する。

1項

保育所(児童福祉法昭和二十二年法律第百六十四号第三十九条第一項に規定する保育所をいう。以下同じ。)の設置者、認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律平成十八年法律第七十七号第二条第六項に規定する認定こども園をいい、保育所 又は学校教育法第一条に規定する幼稚園であるものを除く。以下同じ。)の設置者 及び家庭的保育事業等(児童福祉法第六条の三第九項に規定する家庭的保育事業、同条第十項に規定する小規模保育事業 及び同条第十二項に規定する事業所内保育事業をいう。以下この項 及び第九条第二項において同じ。)を営む者は、基本理念にのっとり、その設置する保育所 若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事業等を利用している医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。

2項

放課後児童健全育成事業(児童福祉法第六条の三第二項に規定する放課後児童健全育成事業をいう。以下この項 及び第九条第三項において同じ。)を行う者は、基本理念にのっとり、当該放課後児童健全育成事業を利用している医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。

1項

学校(学校教育法第一条に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校 及び特別支援学校をいう。以下同じ。)の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校に在籍する医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。

1項

政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上 又は財政上の措置 その他の措置を講じなければならない。

第二章 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して保育を行う体制の拡充が図られるよう、子ども・子育て支援法平成二十四年法律第六十五号第五十九条の二第一項の仕事・子育て両立支援事業における医療的ケア児に対する支援についての検討、医療的ケア児が在籍する保育所、認定こども園等に対する支援 その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項

保育所の設置者、認定こども園の設置者 及び家庭的保育事業等を営む者は、その設置する保育所 若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事業等を利用している医療的ケア児が適切な医療的ケア その他の支援を受けられるようにするため、保健師、助産師、看護師 若しくは准看護師(次項 並びに次条第二項 及び第三項において「看護師等」という。)又は喀痰吸引等(社会福祉士 及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第二条第二項に規定する喀痰吸引等をいう。次条第三項において同じ。)を行うことができる保育士 若しくは保育教諭の配置 その他の必要な措置を講ずるものとする。

3項

放課後児童健全育成事業を行う者は、当該放課後児童健全育成事業を利用している医療的ケア児が適切な医療的ケア その他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して教育を行う体制の拡充が図られるよう、医療的ケア児が在籍する学校に対する支援 その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項

学校の設置者は、その設置する学校に在籍する医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケア その他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置 その他の必要な措置を講ずるものとする。

3項

国 及び地方公共団体は、看護師等のほかに学校において医療的ケアを行う人材の確保を図るため、介護福祉士 その他の喀痰吸引等を行うことができる者を学校に配置するための環境の整備 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケア児 及びその家族が、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類 及び生活の実態に応じて、医療的ケアの実施 その他の日常生活において必要な支援を受けられるようにするため必要な措置を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケア児 及びその家族 その他の関係者からの各種の相談に対し、個々の医療的ケア児の特性に配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体相互の緊密な連携の下に必要な相談体制の整備を行うものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体が行う医療的ケア児に対する支援に資する情報の共有を促進するため必要な措置を講ずるものとする。

第三章 医療的ケア児支援センター等

1項

都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人 その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「医療的ケア児支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。

一 号

医療的ケア児(十八歳に達し、又は高等学校等を卒業したことにより医療的ケア児でなくなった後も医療的ケアを受ける者のうち引き続き雇用 又は障害福祉サービスの利用に係る相談支援を必要とする者を含む。以下この条 及び附則第二条第二項において同じ。)及びその家族 その他の関係者に対し、専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供 若しくは助言 その他の支援を行うこと。

二 号

医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体 並びにこれに従事する者に対し医療的ケアについての情報の提供 及び研修を行うこと。

三 号

医療的ケア児 及びその家族に対する支援に関して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体との連絡調整を行うこと。

四 号

前三号に掲げる業務に附帯する業務

2項

前項の規定による指定は、当該指定を受けようとする者の申請により行う。

3項

都道府県知事は、第一項に規定する業務を医療的ケア児支援センターに行わせ、又は自ら行うに当たっては、地域の実情を踏まえつつ、医療的ケア児 及びその家族 その他の関係者がその身近な場所において必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとする。

1項

医療的ケア児支援センターの役員 若しくは職員 又はこれらの職にあった者は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならない。

1項

都道府県知事は、医療的ケア児支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該医療的ケア児支援センターの事業所 若しくは事務所に立ち入らせ、その業務の状況に関し必要な調査 若しくは質問をさせることができる。

2項

前項の規定により立入調査 又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入調査 及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

1項

都道府県知事は、医療的ケア児支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その改善のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

都道府県知事は、医療的ケア児支援センターが第十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合において、その業務の状況の把握に著しい支障が生じたとき 又は医療的ケア児支援センターが前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。

第四章 補則

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケア児 及びその家族に対する支援の重要性等について国民の理解を深めるため、学校、地域、家庭、職域 その他の様々な場を通じて、必要な広報 その他の啓発活動を行うものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケア児 及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるよう、医療的ケア児に対し医療的ケア その他の支援を行うことができる人材を確保するため必要な措置を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、医療的ケアを行うために用いられる医療機器の研究開発 その他医療的ケア児の支援のために必要な調査研究が推進されるよう必要な措置を講ずるものとする。