土地収用法

# 昭和二十六年法律第二百十九号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   土地
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第三十四号による改正
最終編集日 : 2024年 08月14日 10時31分


1項

この法律は、公共の利益となる事業に必要な土地等の収用 又は使用に関し、その要件、手続 及び効果 並びにこれに伴う損失の補償等について規定し、公共の利益の増進と私有財産との調整を図り、もつて国土の適正且つ合理的な利用に寄与することを目的とする。

1項

公共の利益となる事業の用に供するため土地を必要とする場合において、その土地を当該事業の用に供することが土地の利用上適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを収用し、又は使用することができる。

1項

土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、次の各号いずれかに該当するものに関する事業でなければならない。

一 号

道路法昭和二十七年法律第百八十号)による道路、道路運送法昭和二十六年法律第百八十三号)による一般自動車道 若しくは専用自動車道(同法による一般旅客自動車運送事業 又は貨物自動車運送事業法平成元年法律第八十三号)による一般貨物自動車運送事業の用に供するものに限る)又は駐車場法昭和三十二年法律第百六号)による路外駐車場

二 号

河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)が適用され、若しくは準用される河川 その他公共の利害に関係のある河川 又はこれらの河川に治水 若しくは利水の目的をもつて設置する堤防、護岸、ダム、水路、貯水池 その他の施設

三 号

砂防法(明治三十年法律第二十九号)による砂防設備 又は同法が準用される砂防のための施設

三の二 号

国 又は都道府県が設置する地すべり等防止法昭和三十三年法律第三十号)による地すべり防止施設 又はぼた山崩壊防止施設

三の三 号

国 又は都道府県が設置する急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)による急傾斜地崩壊防止施設

四 号

運河法(大正二年法律第十六号)による運河の用に供する施設

五 号

国、地方公共団体、土地改良区(土地改良区連合を含む。以下同じ。)又は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構が設置する農業用道路、用水路、排水路、海岸堤防、かんがい用 若しくは農作物の災害防止用のため池 又は防風林 その他これに準ずる施設

六 号

国、都道府県 又は土地改良区が土地改良法昭和二十四年法律第百九十五号)によつて行う客土事業 又は土地改良事業の施行に伴い設置する用排水機 若しくは地下水源の利用に関する設備

七 号

鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)による鉄道事業者 又は索道事業者がその鉄道事業 又は索道事業で一般の需要に応ずるものの用に供する施設

七の二 号

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が設置する鉄道 又は軌道の用に供する施設

八 号

軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道 又は同法が準用される無軌条電車の用に供する施設

八の二 号

石油パイプライン事業法昭和四十七年法律第百五号)による石油パイプライン事業の用に供する施設

九 号

道路運送法による一般乗合旅客自動車運送事業(路線を定めて定期に運行する自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る)又は貨物自動車運送事業法による一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送をするものに限る)の用に供する施設

九の二 号

自動車ターミナル法昭和三十四年法律第百三十六号)第三条の許可を受けて経営する自動車ターミナル事業の用に供する施設

十 号

港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)による港湾施設 又は漁場の整備等に関する法律昭和二十五年法律第百三十七号)による漁港施設

十の二 号

海岸法(昭和三十一年法律第百一号)による海岸保全施設

十の三 号

津波防災地域づくりに関する法律平成二十三年法律第百二十三号)による津波防護施設

十一 号

航路標識法(昭和二十四年法律第九十九号)による航路標識 又は水路業務法(昭和二十五年法律第百二号)による水路測量標

十二 号

航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)による飛行場 又は航空保安施設で公共の用に供するもの

十三 号
気象、海象、地象 又は洪水 その他これに類する現象の観測 又は通報の用に供する施設
十三の二 号

日本郵便株式会社が日本郵便株式会社法平成十七年法律第百号第四条第一項第一号に掲げる業務の用に供する施設

十四 号
国が電波監視のために設置する無線方位 又は電波の質の測定装置
十五 号
国 又は地方公共団体が設置する電気通信設備
十五の二 号

電気通信事業法昭和五十九年法律第八十六号第百二十条第一項に規定する認定電気通信事業者が同項に規定する認定電気通信事業の用に供する施設(同法の規定により土地等を使用することができるものを除く

十六 号

放送法昭和二十五年法律第百三十二号)による基幹放送事業者 又は基幹放送局提供事業者が基幹放送の用に供する放送設備

十七 号

電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)による一般送配電事業、送電事業、配電事業、特定送配電事業 又は発電事業の用に供する電気工作物

十七の二 号

ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)によるガス工作物

十八 号

水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)による水道事業 若しくは水道用水供給事業、工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)による工業用水道事業 又は下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)による公共下水道、流域下水道 若しくは都市下水路の用に供する施設

十九 号

市町村が消防法昭和二十三年法律第百八十六号)によつて設置する消防の用に供する施設

二十 号

都道府県 又は水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)による水防管理団体が水防の用に供する施設

二十一 号

学校教育法昭和二十二年法律第二十六号第一条に規定する学校 又はこれに準ずるその他の教育 若しくは学術研究のための施設

二十二 号

社会教育法昭和二十四年法律第二百七号)による公民館(同法第四十二条に規定する公民館類似施設を除く)若しくは博物館 又は図書館法昭和二十五年法律第百十八号)による図書館(同法第二十九条に規定する図書館同種施設を除く

二十三 号

社会福祉法昭和二十六年法律第四十五号)による社会福祉事業 若しくは更生保護事業法平成七年法律第八十六号)による更生保護事業の用に供する施設 又は職業能力開発促進法昭和四十四年法律第六十四号)による公共職業能力開発施設 若しくは職業能力開発総合大学校

二十四 号

国、地方公共団体、独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立循環器病研究センター、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター、健康保険組合 若しくは健康保険組合連合会、国民健康保険組合 若しくは国民健康保険団体連合会、国家公務員共済組合 若しくは国家公務員共済組合連合会 若しくは地方公務員共済組合 若しくは全国市町村職員共済組合連合会が設置する病院、療養所、診療所 若しくは助産所、地域保健法昭和二十二年法律第百一号)による保健所 若しくは医療法昭和二十三年法律第二百五号)による公的医療機関 又は検疫所

二十五 号

墓地、埋葬等に関する法律昭和二十三年法律第四十八号)による火葬場

二十六 号

と畜場法(昭和二十八年法律第百十四号)によると畜場 又は化製場等に関する法律昭和二十三年法律第百四十号)による化製場 若しくは死亡獣畜取扱場

二十七 号

地方公共団体 又は廃棄物の処理及び清掃に関する法律昭和四十五年法律第百三十七号第十五条の五第一項に規定する廃棄物処理センターが設置する同法による一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設 その他の廃棄物の処理施設(廃棄物の処分(再生を含む。)に係るものに限る)及び地方公共団体が設置する公衆便所

二十七の二 号

国が設置する平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)による汚染廃棄物等の処理施設

二十八 号

卸売市場法昭和四十六年法律第三十五号)による中央卸売市場 及び地方卸売市場

二十九 号

自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)による公園事業

二十九の二 号

自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)による原生自然環境保全地域に関する保全事業 及び自然環境保全地域に関する保全事業

三十 号

国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構 又は地方住宅供給公社が都市計画法昭和四十三年法律第百号第四条第二項に規定する都市計画区域について同法第二章の規定により定められた第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域 又は田園住居地域内において、自ら居住するため住宅を必要とする者に対し賃貸し、又は譲渡する目的で行う五十戸以上の一団地の住宅経営

三十一 号

国 又は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所 その他直接 その事務 又は事業の用に供する施設

三十二 号

国 又は地方公共団体が設置する公園、緑地、広場、運動場、墓地、市場 その他公共の用に供する施設

三十三 号

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が国立研究開発法人日本原子力研究開発機構法平成十六年法律第百五十五号)第十七条第一項第一号から第三号までに掲げる業務の用に供する施設

三十四 号

独立行政法人水資源機構が設置する独立行政法人水資源機構法(平成十四年法律第百八十二号)による水資源開発施設 及び愛知豊川用水施設

三十四の二 号

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構が国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法(平成十四年法律第百六十一号)第十八条第一号から第四号までに掲げる業務の用に供する施設

三十四の三 号

国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立循環器病研究センター、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター 又は国立研究開発法人国立長寿医療研究センターが高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律平成二十年法律第九十三号第十三条第一項第一号第十四条第一号第十五条第一号 若しくは第三号第十六条第一号 若しくは第三号第十七条第一号 又は第十八条第一号 若しくは第二号に掲げる業務の用に供する施設

三十五 号

前各号いずれかに掲げるものに関する事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、池井、土石の捨場、材料の置場、職務上常駐を必要とする職員の詰所 又は宿舎 その他の施設

1項

この法律 又は他の法律によつて、土地等を収用し、又は使用することができる事業の用に供している土地等は、特別の必要がなければ、収用し、又は使用することができない。

1項

土地を第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、その土地にある左の各号に掲げる権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。

一 号

地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用貸借 又は賃貸借による権利 その他土地に関する所有権以外の権利

二 号
鉱業権
三 号
温泉を利用する権利
2項

土地の上にある立木、建物 その他土地に定着する物件をその土地とともに第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、これらの物件に関する所有権以外の権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。

3項

土地、河川の敷地、海底 又は流水、海水 その他の水を第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、これらのもの(当該土地が埋立て 又は干拓により造成されるものであるときは、当該埋立て又は干拓に係る河川の敷地 又は海底)に関係のある漁業権、入漁権 その他河川の敷地、海底 又は流水、海水 その他の水を利用する権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。

1項

土地の上にある立木、建物 その他土地に定着する物件をその土地とともに、第三条各号の一に規定する事業の用に供することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの物を収用し、又は使用することができる。

1項

土地に属する土石砂れき第三条各号の一に規定する事業の用に供することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの物を収用することができる。

1項

この法律において「起業者」とは、土地、第五条に掲げる権利 若しくは第六条に掲げる立木、建物 その他土地に定着する物件を収用し、若しくは使用し、又は前条に規定する土石砂れきを収用することを必要とする第三条各号の一に規定する事業を行う者をいう。

2項

この法律において「土地所有者」とは、収用 又は使用に係る土地の所有者をいう。

3項

この法律において「関係人」とは、第二条の規定によつて土地を収用し、又は使用する場合においては当該土地に関して地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用貸借 若しくは賃貸借による権利 その他所有権以外の権利を有する者 及びその土地にある物件に関して所有権 その他の権利を有する者を、第五条の規定によつて同条に掲げる権利を収用し、又は使用する場合においては当該権利に関して質権、抵当権、使用貸借 若しくは賃貸借による権利 その他の権利を有する者を、第六条の規定によつて同条に掲げる立木、建物 その他土地に定着する物件を収用し、又は使用する場合においては当該物件に関して所有権以外の権利を有する者を、第七条の規定によつて土石砂れきを収用する場合においては当該土石砂れきの属する土地に関して所有権以外の権利を有する者 及びその土地にある物件に関して所有権 その他の権利を有する者をいう。


ただし第二十六条第一項第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定の告示があつた後において新たな権利を取得した者は、既存の権利を承継した者を除き、関係人に含まれないものとする。

4項

この法律において、土地 又は物件に関する所有権以外の権利を有する者には、当該土地 若しくは物件 又は当該土地 若しくは物件に関する所有権以外の権利につき、仮登記上の権利 又は既登記の買戻権を有する者、既登記の差押債権者 及び既登記の仮差押債権者が含まれるものとする。

5項

前項の規定は、鉱業権、漁業権 又は入漁権に関する権利を有する者について準用する。


この場合において、

同項
仮登記」とあるのは
「仮登録」と、

既登記」とあるのは
「既登録」と

読み替えるものとする。

1項

合併 その他の事由に因り事業の承継があつた場合においては、この法律の規定によつて従前の起業者が有していた権利義務は、当該事業を承継した者に移転する。

1項

起業者、土地所有者 又は関係人の変更があつた場合においては、この法律 又はこの法律に基く命令の規定によつて従前の起業者、土地所有者 又は関係人がした手続 その他の行為は、新たに起業者、土地所有者 又は関係人となつた者に対しても、その効力を有する。

1項

起業者は、第二十六条第一項の規定によつて告示された事業の用に供するため取得した土地については、公共の利益に沿うように適正な管理を行なわなければならない。

2項

起業者は、前項に規定する土地を、同項に規定する事業の用以外の他の用に供する工作物 その他の施設の用に供するために利用し、又は利用させるときは、当該土地の周辺の環境を阻害しないよう配慮しなければならない。