工業用水道事業法
第一章 総則
この法律において「工業」とは、製造業(物品の加工修理業を含む。)、電気供給業、ガス供給業 及び熱供給業をいう。
この法律において「工業用水」とは、工業の用に供する水(水力発電の用に供するもの及び人の飲用に適する水として供給するものを除く。)をいう。
この法律において「工業用水道」とは、導管により工業用水を供給する施設であつて、その供給をする者の管理に属するものの総体をいう。
この法律において「工業用水道事業」とは、一般の需要に応じ工業用水道により工業用水を供給する事業をいう。
この法律において「工業用水道事業者」とは、工業用水道事業を営むことについて次条第一項の規定による届出をし、又は同条第二項の許可を受けた者をいう。
この法律において「工業用水道施設」とは、工業用水道事業者の工業用水道に属する施設をいう。
第二章 事業
地方公共団体は、工業用水道事業を営もうとするときは、その工業用水道施設の設置の工事の開始の日の六十日前までに、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
地方公共団体以外の者は、工業用水道事業を営もうとするときは、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
前条第一項の規定による届出をし、又は同条第二項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した届出書 又は申請書を経済産業大臣に提出しなければならない。
前項の届出書 又は申請書には、事業計画 及び工業用水道施設の工事設計を記載した書類 その他経済産業省令で定める書類を添附しなければならない。
経済産業大臣は、第三条第二項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
その工業用水道施設の工事設計が第十一条に規定する施設基準に適合していること。
地方公共団体たる工業用水道事業者は、第四条第一項第二号から第四号までの事項を変更しようとするときは、その変更に必要な工業用水道施設の変更の工事の開始の日の四十日前まで(工事を要しないときは、その変更前)に、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
地方公共団体以外の工業用水道事業者は、第四条第一項第二号から第四号までの事項を変更しようとするときは、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
前条の規定は、前項の許可に準用する。
地方公共団体以外の工業用水道事業者は、その氏名 若しくは名称 又は住所に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
地方公共団体以外の工業用水道事業者について相続 又は合併があつたときは、相続人 又は合併後存続する法人 若しくは合併により設立した法人は、工業用水道事業者の地位を承継する。
前項の規定により工業用水道事業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
地方公共団体以外の工業用水道事業者は、経済産業大臣の許可を受けなければ、工業用水道事業の全部 又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
経済産業大臣は、工業用水道事業の休止 又は廃止により公共の利益が阻害されるおそれがないと認めるときは、前項の許可をしなければならない。
経済産業大臣は、地方公共団体以外の工業用水道事業者が正当な理由がないのに第三条第二項の許可を受けた後三年以内にその事業を開始しないときは、同項の許可を取り消すことができる。
経済産業大臣は、地方公共団体以外の工業用水道事業者が前条第二項の許可を受けないで引き続き六月以上その事業の全部 又は一部を休止したときは、第三条第二項の許可を取り消すことができる。
経済産業大臣は、前二項の規定による許可の取消をしたときは、理由を記載した文書をその工業用水道事業者に送付しなければならない。
第三章 施設
工業用水道事業者の工業用水道は、原水の質 及び量、地理的条件等に応じ、取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設 及び配水施設の全部 又は一部を有すべきものとし、その各施設は、次の各号の要件を備えるものでなければならない。
浄水施設は、原水の質 及び量に応じ必要な浄化をするためのちんでん池 その他の設備を有すること。
配水施設は、必要量の水を一定以上の圧力で連続して供給するための配水池、ポンプ、配水管 その他の設備を有すること。
前三項に規定するもののほか、工業用水道施設に関して必要な技術的基準は、経済産業省令で定める。
経済産業大臣は、第三条第一項 又は第六条第一項の規定による届出に係る工業用水道施設の工事設計が前条に規定する施設基準に適合しないため工業用水道事業の適正かつ合理的な運営に支障を生じ、又は公共の安全を害するおそれがあると認めるときは、その届出に係る工事の開始前に限り、その工事設計を変更すべきことを指示することができる。
経済産業大臣は、第三条第一項 又は第六条第一項の規定による届出に係る工業用水道施設の工事設計が前条に規定する施設基準に適合していると認めるときは、遅滞なく、その旨をその届出をした者に通知しなければならない。
工業用水道事業者は、工業用水道施設の設置 又は変更の工事(経済産業省令で定める軽微なものを除く。)をした場合において、その工事に係る工業用水道施設を使用して給水を開始しようとするときは、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
工業用水道事業者は、工業用水道施設を第十一条に規定する施設基準に適合するように維持しなければならない。
経済産業大臣は、工業用水道施設が第十一条に規定する施設基準に適合しないため工業用水道事業の適正かつ合理的な運営に支障を生じ、又は公共の安全を害するおそれがあると認めるときは、工業用水道事業者に対し、工業用水道施設をその施設基準に適合するように改善すべきことを指示することができる。
都道府県知事は、前項の許可の申請があつたときは、土地の所有者 及び占有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。
工業用水道事業者は、第一項の規定により他人の土地に立ち入るときは、あらかじめ、土地の占有者に通知しなければならない。
工業用水道事業者は、第一項の規定により他人の土地に立ち入るときは、都道府県知事の許可を受けたことを証する書面を携帯し、関係人に提示しなければならない。
工業用水道事業者は、第一項の規定により他人の土地に立ち入つたときは、これによつて生じた損失を補償しなければならない。
第四章 供給
工業用水道事業者は、正当な理由がなければ、何人に対しても、その給水区域における工業用水の供給を拒んではならない。
ただし、給水の申込を受けた工業用水の量が次条に規定する供給規程で定める一給水先当りの給水量の最少限度に満たないときは、この限りでない。
工業用水道事業者は、その給水区域以外の地域において、一般の需要に応じ工業用水道により工業用水を供給してはならない。
地方公共団体たる工業用水道事業者は、一般の需要に応じ供給する工業用水の料金 その他の供給条件について供給規程を定め、あらかじめ、経済産業大臣に届け出なければならない。
これを変更するときも、同様とする。
地方公共団体以外の工業用水道事業者は、一般の需要に応じ供給する工業用水の料金 その他の供給条件について供給規程を定め、経済産業大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。
前二項の供給規程は、次の各号に適合するものでなければならない。
経済産業大臣は、地方公共団体以外の工業用水道事業者の工業用水の料金 その他の供給条件が社会的経済的事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、その工業用水道事業者に対し、相当の期限を定め、供給規程の変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。
経済産業大臣は、前項の規定による命令をした場合において、同項の期限までに認可の申請がないときは、供給規程を変更することができる。
第五章 雑則
工業用水道事業者が設置している工業用水道以外の工業用水道であつて政令で定めるもの(以下「自家用工業用水道」という。)を布設する者は、給水開始の後遅滞なく、次の事項を経済産業大臣に届け出なければならない。
前項の規定による届出をした者は、その届出をした事項に変更があつたとき、又は給水を廃止したときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
経済産業大臣は、工業用水道の水源の開発上必要な調査(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)が適用され、又は準用される河川に係るものを除く。)に努めるものとする。
前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第十条第一項 又は第二項の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
前項の聴聞の主宰者は、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十七条第一項の規定により当該処分に係る利害関係人が当該聴聞に関する手続に参加することを求めたときは、これを許可しなければならない。
この法律の規定による処分 又はその不作為についての審査請求に対する裁決は、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二十四条の規定により当該審査請求を却下する場合を除き、審査請求人に対し、相当な期間をおいて予告をした上、同法第十一条第二項に規定する審理員が公開による意見の聴取をした後にしなければならない。
前項の意見の聴取に際しては、審査請求人 及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
第一項に規定する審査請求については、行政不服審査法第三十一条の規定は適用せず、同項の意見の聴取については、同条第二項から第五項までの規定を準用する。
第六章 罰則
第三条第二項の規定に違反して工業用水道事業を営んだ者は、六月以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
第六条第二項の規定に違反して第四条第一項第三号 又は第四号の事項を変更した者
第九条第二項の規定に違反して工業用水道事業の全部 又は一部を休止し、又は廃止した者
第十六条第一項の規定に違反して工業用水の供給を拒んだ者
次の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
第十六条第二項の規定に違反して工業用水を供給した者
地方公共団体以外の工業用水道事業者であつて、第十七条第二項の認可を受けた供給規程(第十八条第二項の規定による変更があつたときは、変更後の供給規程)によらないで一般の需要に応じ工業用水を供給したもの
次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
第七条、第八条第二項、第十三条 又は第二十一条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
第十九条の規定による記録をせず、又は虚偽の記録をした者
第二十三条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第二十四条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の罰金刑を科する。