民事保全法

# 平成元年法律第九十一号 #
略称 : 民保法 

第二節 保全命令

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年三月一日 ( 2024年 3月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第四十八号による改正
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


第一款 通則

1項

保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物 若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができる。

1項

保全命令事件は、本案の管轄裁判所 又は仮に差し押さえるべき物 若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

2項

本案の訴えが民事訴訟法第六条第一項に規定する特許権等に関する訴えである場合には、保全命令事件は、前項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所が管轄する。


ただし、仮に差し押さえるべき物 又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が同条第一項各号に定める裁判所であるときは、その裁判所もこれを管轄する。

3項

本案の管轄裁判所は、第一審裁判所とする。


ただし、本案が控訴審に係属するときは、控訴裁判所とする。

4項

仮に差し押さえるべき物 又は係争物が債権(民事執行法昭和五十四年法律第四号第百四十三条に規定する債権をいう。以下この条において同じ。)であるときは、その債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。


ただし、船舶(同法第百十二条に規定する船舶をいう。以下同じ。)又は動産(同法第百二十二条に規定する動産をいう。以下同じ。)の引渡しを目的とする債権 及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。

5項

前項本文の規定は、仮に差し押さえるべき物 又は係争物が民事執行法第百六十七条第一項に規定する財産権(以下「その他の財産権」という。)で第三債務者 又はこれに準ずる者があるものである場合(次項に規定する場合を除く)について準用する。

6項

仮に差し押さえるべき物 又は係争物がその他の財産権で権利の移転について登記 又は登録を要するものであるときは、その財産権は、その登記 又は登録の地にあるものとする。

1項

保全命令の申立ては、その趣旨 並びに保全すべき権利 又は権利関係 及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。

2項

保全すべき権利 又は権利関係 及び保全の必要性は、疎明しなければならない。

1項

保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。

2項

前項の担保を立てる場合において、遅滞なく第四条第一項の供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地 又は事務所の所在地 その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

1項

保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる。

1項

保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。


ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。

1項

保全命令は、当事者に送達しなければならない。

1項

保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議 又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しない。

1項

保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

2項

前項の即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができない。

3項

第十六条本文の規定は、第一項の即時抗告についての決定について準用する。

第二款 仮差押命令

1項

仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2項

仮差押命令は、前項の債権が条件付 又は期限付である場合においても、これを発することができる。

1項

仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。


ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる。

1項

仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。

2項

前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所 又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

第三款 仮処分命令

1項

係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2項

仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害 又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3項

第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

4項

第二項の仮処分命令は、口頭弁論 又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない


ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

1項

裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分 その他の必要な処分をすることができる。

1項

裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。

2項

第二十二条第二項の規定は、前項の金銭の供託について準用する。

1項

占有移転禁止の仮処分命令(係争物の引渡し 又は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条第五十四条の二 及び第六十二条において同じ。)であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる。

一 号

債務者に対し、係争物の占有の移転を禁止し、及び係争物の占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずること。

二 号

執行官に、係争物の保管をさせ、かつ、債務者が係争物の占有の移転を禁止されている旨 及び執行官が係争物を保管している旨を公示させること。

2項

前項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、当該執行によって係争物である不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

3項

第一項の規定による占有移転禁止の仮処分命令は、第四十三条第二項の期間内にその執行がされなかったときは、債務者に対して送達することを要しない。


この場合において、第四条第二項において準用する民事訴訟法第七十九条第一項の規定による担保の取消しの決定で第十四条第一項の規定により立てさせた担保に係るものは、裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによって、その効力を生ずる。