漁業権を有する者(以下この節 及び第百七十条第七項において「漁業権者」という。)は、当該漁業権に係る漁場を適切かつ有効に活用するよう努めるものとする。
漁業法
第二款 漁業権の性質等
団体漁業権を有する漁業協同組合 又は漁業協同組合連合会は、当該団体漁業権に係る漁場における漁業生産力を発展させるため、農林水産省令で定めるところにより、組合員(漁業協同組合連合会にあつては、その会員たる漁業協同組合の組合員。以下この項において同じ。)が相互に協力して行う生産の合理化、組合員による生産活動のための法人の設立 その他の方法による経営の高度化の促進に関する計画を作成し、定期的に点検を行うとともに、その実現に努めるものとする。
漁業権の存続期間は、免許の日から起算して、区画漁業権(真珠養殖業を内容とするものその他の農林水産省令で定めるものに限る。) 及び共同漁業権にあつては十年、その他の漁業権にあつては五年とする。
都道府県知事が海区漁場計画 又は内水面漁場計画において前項の期間より短い期間を定めた漁業権の存続期間は、同項の規定にかかわらず、当該都道府県知事が定めた期間とする。
漁業権を分割し、又は変更しようとする者は、都道府県知事に申請して、その免許を受けなければならない。
都道府県知事は、海区漁場計画 又は内水面漁場計画に適合するものでなければ、前項の免許をしてはならない。
第一項の場合においては、第七十条 及び第七十一条の規定を準用する。
漁業権は、物権とみなし、土地に関する規定を準用する。
民法(明治二十九年法律第八十九号)第二編第九章の規定は個別漁業権に、同編第八章から第十章までの規定は団体漁業権に、いずれも適用しない。
個別漁業権について抵当権を設定した場合において、その漁場に定着した工作物は、民法第三百七十条の規定の準用に関しては、漁業権に付加してこれと一体を成す物とみなす。
個別漁業権が先取特権の目的である場合も、同様とする。
個別漁業権を目的とする抵当権の設定は、都道府県知事の認可を受けなければ、その効力を生じない。
前項の規定により認可をしようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
漁業権は、相続 又は法人の合併 若しくは分割による場合を除き、移転の目的とすることができない。
ただし、個別漁業権については、滞納処分による場合、先取特権者 若しくは抵当権者がその権利を実行する場合 又は次条第二項の通知を受けた者が譲渡する場合において、都道府県知事の認可を受けたときは、この限りでない。
都道府県知事は、第七十二条第一項 又は第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)に規定する適格性を有する者に移転する場合でなければ、前項の認可をしてはならない。
第一項の規定により認可をしようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
相続 又は法人の合併 若しくは分割によつて個別漁業権を取得した者は、取得の日から二月以内にその旨を都道府県知事に届け出なければならない。
都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴き、前項の者が第七十二条第一項に規定する適格性を有する者でないと認めるときは、一定期間内に譲渡しなければその漁業権を取り消すべき旨をその者に通知しなければならない。
漁業権者が有する水面使用に関する権利義務(当該漁業権者が当該漁業に関し行政庁の許可、認可 その他の処分に基づいて有する権利義務を含む。)は、漁業権の処分に従う。
漁業権は、貸付けの目的とすることができない。
漁業権は、第百十七条第一項の規定により登録した先取特権 若しくは抵当権を有する者(以下「登録先取特権者等」という。)又は同項の規定により登録した入漁権を有する者の同意を得なければ、分割し、変更し、又は放棄することができない。
第七十一条第二項から第四項までの規定は、前項の同意について準用する。
漁業権の各共有者は、他の共有者の三分の二以上の同意を得なければ、その持分を処分することができない。
第七十一条第二項から第四項までの規定は、前項の同意について準用する。
漁業権の各共有者がその共有に属する漁業権を変更するために他の共有者の同意を得ようとする場合においては、第七十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
都道府県知事は、漁業調整 その他公益上必要があると認めるときは、漁業権に条件を付けることができる。
前項の条件を付けようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
農林水産大臣は、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、漁業調整のため特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第一項の規定により漁業権に条件を付けるべきことを指示することができる。
免許後に第一項の条件を付けようとする場合における第二項の海区漁業調整委員会の意見については、第八十九条第四項から第七項までの規定を準用する。
この場合において、
同条第四項中
「前項の場合において、漁業権を取り消すべき旨」とあるのは、
「第八十六条第一項の規定により漁業権に条件を付けるべき旨」と
読み替えるものとする。
個別漁業権を有する者が当該個別漁業権の内容たる漁業を一漁業時期以上にわたつて休業しようとするときは、休業期間を定め、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
前条の休業中においては、第七十二条第一項に規定する適格性を有する者は、第六十八条の規定にかかわらず、都道府県知事の許可を受けて当該休業中の個別漁業権の内容たる漁業を営むことができる。
前項の許可の申請があつたときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
都道府県知事は、漁業調整 その他公益に支障を及ぼすと認める場合は、第一項の許可をしてはならない。
第一項の許可については、第七十一条第五項 及び第六項、第八十六条、前条 並びに次条から第九十四条までの規定を準用する。
この場合において、
第七十一条第五項中
「第一項各号のいずれか」とあり、
及び
「同項各号のいずれか」とあるのは
「第八十八条第三項に規定する場合」と、
第九十二条第一項中
「第七十二条第一項 又は第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)」とあるのは
「第七十二条第一項」と
読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
前各項の規定は、第九十二条第二項の規定に基づく処分により個別漁業権の行使を停止された期間中他の者が当該個別漁業権の内容たる漁業を営もうとする場合について準用する。
都道府県知事は、漁業権者がその有する漁業権の内容たる漁業の免許の日 又は移転に係る認可の日から一年間 又は引き続き二年間休業したときは、当該漁業権を取り消すことができる。
漁業権者の責めに帰すべき事由による場合を除き、第九十三条第一項の規定により漁業権の行使を停止された期間 及び第百十九条第一項 若しくは第二項の規定に基づく命令、第百二十条第一項の規定による指示、同条第十一項の規定による命令、第百二十一条第一項の規定による指示 又は同条第四項において読み替えて準用する第百二十条第十一項の規定による命令により漁業権の内容たる漁業を禁止された期間は、前項の期間に算入しない。
第一項の規定により漁業権を取り消そうとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
海区漁業調整委員会は、前項の場合において、漁業権を取り消すべき旨の意見を述べようとするときは、あらかじめ、当該漁業権者にその理由を文書をもつて通知し、公開による意見の聴取を行わなければならない。
前項の意見の聴取に際しては、当該漁業権者 又はその代理人は、当該事案について弁明し、かつ、証拠を提出することができる。
当該漁業権者 又はその代理人は、第四項の規定による通知があつた時から意見の聴取が終結する時までの間、都道府県知事に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書 その他の当該申請の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
この場合において、都道府県知事は、第三者の利益を害するおそれがあるとき その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
前三項に定めるもののほか、海区漁業調整委員会が行う第四項の意見の聴取に関し必要な事項は、政令で定める。
漁業権者は、農林水産省令で定めるところにより、その有する漁業権の内容たる漁業における資源管理の状況、漁場の活用の状況 その他の農林水産省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければならない。
ただし、第二十六条第一項 又は第三十条第一項の規定により都道府県知事に報告した事項については、この限りでない。
都道府県知事は、農林水産省令で定めるところにより、海区漁業調整委員会に対し、前項の規定により報告を受けた事項について必要な報告をするものとする。
都道府県知事は、漁業権者が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該漁業権者に対して、漁場の適切かつ有効な活用を図るために必要な措置を講ずべきことを指導するものとする。
漁場を適切に利用しないことにより、他の漁業者が営む 漁業の生産活動に支障を及ぼし、又は海洋環境の悪化を引き起こしているとき。
合理的な理由がないにもかかわらず 漁場の一部を利用していないとき。
都道府県知事は、前項の規定により指導した者が、その指導に従つていないと認めるときは、その者に対して、当該指導に係る措置を講ずべきことを勧告するものとする。
前二項の規定により指導し、又は勧告しようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
漁業の免許を受けた後に漁業権者が第七十二条第一項 又は第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)に規定する適格性を有する者でなくなつたときは、都道府県知事は、その漁業権を取り消さなければならない。
都道府県知事は、漁業権者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その漁業権を取り消し、又はその行使の停止を命ずることができる。
漁業に関する法令の規定に違反したとき。
前条第二項の規定による勧告に従わないとき。
前二項の場合には、第八十九条第三項から第七項までの規定を準用する。
漁業調整、船舶の航行、停泊 又は係留、水底電線の敷設 その他公益上必要があると認めるときは、都道府県知事は、漁業権を変更し、取り消し、又はその行使の停止を命ずることができる。
都道府県知事は、前項の規定により漁業権を変更するときは、併せて、海区漁場計画 又は内水面漁場計画を変更しなければならない。
第一項の場合には、第八十九条第三項から第七項までの規定を準用する。
農林水産大臣は、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、漁業調整、船舶の航行、停泊 又は係留、水底電線の敷設 その他公益上特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第一項の規定により漁業権を変更し、取り消し、又はその行使の停止を命ずべきことを指示することができる。
錯誤により免許をした場合においてこれを取り消そうとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
漁業権を取り消したときは、都道府県知事は、直ちに、登録先取特権者等にその旨を通知しなければならない。
登録先取特権者等は、前項の通知を受けた日から三十日以内に漁業権の競売を請求することができる。
ただし、第九十三条第一項の規定による取消し 又は錯誤によつてした免許の取消しの場合は、この限りでない。
漁業権は、前項の期間内 又は競売の手続完結の日まで、競売の目的の範囲内においては、なお存続するものとみなす。
競売による売却代金は、競売の費用 及び登録先取特権者等に対する債務の弁済に充て、その残金は国庫に帰属する。
買受人が代金を納付したときは、漁業権の取消しは、その効力を生じなかつたものとみなす。
漁場に定着する工作物を設置して漁業権の価値を増大させた漁業権者は、その漁業権が消滅したときは、その消滅後に当該工作物の利用によつて利益を受ける漁業の免許を受けた者に対し、時価で当該工作物を買い取るべきことを請求することができる。