災害対策基本法

# 昭和三十六年法律第二百二十三号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   災害対策
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2023年 10月07日 15時19分


1項

この法律は、国土 並びに国民の生命、身体 及び財産を災害から保護するため、防災に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体 及び その他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧 及び防災に関する財政金融措置 その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備 及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。

1項

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 号

災害

暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象 又は大規模な火事 若しくは爆発 その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

二 号

防災

災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。

三 号

指定行政機関

次に掲げる機関で内閣総理大臣が指定するものをいう。

内閣府、宮内庁 並びに内閣府設置法平成十一年法律第八十九号第四十九条第一項 及び第二項に規定する機関、デジタル庁 並びに国家行政組織法昭和二十三年法律第百二十号第三条第二項に規定する機関

内閣府設置法第三十七条 及び第五十四条 並びに宮内庁法昭和二十二年法律第七十号第十六条第一項 並びに国家行政組織法第八条に規定する機関

内閣府設置法第三十九条 及び第五十五条 並びに宮内庁法第十六条第二項 並びに国家行政組織法第八条の二に規定する機関

内閣府設置法第四十条 及び第五十六条 並びに国家行政組織法第八条の三に規定する機関

四 号

指定地方行政機関

指定行政機関の地方支分部局(内閣府設置法第四十三条 及び第五十七条宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)並びに宮内庁法第十七条第一項 並びに国家行政組織法第九条の地方支分部局をいう。)その他の国の地方行政機関で、内閣総理大臣が指定するものをいう。

五 号

指定公共機関

独立行政法人(独立行政法人通則法平成十一年法律第百三号第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会 その他の公共的機関 及び電気、ガス、輸送、通信 その他の公益的事業を営む法人で、内閣総理大臣が指定するものをいう。

六 号

指定地方公共機関

地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)及び港湾法昭和二十五年法律第二百十八号)第四条第一項の港務局(第八十二条第一項において「港務局」という。)、土地改良法昭和二十四年法律第百九十五号第五条第一項の土地改良区 その他の公共的施設の管理者 並びに都道府県の地域において電気、ガス、輸送、通信 その他の公益的事業を営む法人で、当該都道府県の知事が指定するものをいう。

七 号

防災計画

防災基本計画 及び防災業務計画 並びに地域防災計画をいう。

八 号

防災基本計画

中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画をいう。

九 号

防災業務計画

指定行政機関の長(当該指定行政機関が内閣府設置法第四十九条第一項 若しくは第二項 若しくは国家行政組織法第三条第二項の委員会 若しくは第三号ロに掲げる機関 又は同号ニに掲げる機関のうち合議制のものである場合にあつては、当該指定行政機関。第十二条第八項第二十五条第六項第二号第二十八条第二項第二十八条の三第六項第三号 及び第二十八条の六第二項除き、以下同じ。)又は指定公共機関(指定行政機関の長 又は指定公共機関から委任された事務 又は業務については、当該委任を受けた指定地方行政機関の長 又は指定地方公共機関)が防災基本計画に基づきその所掌事務 又は業務について作成する防災に関する計画をいう。

十 号

地域防災計画

一定地域に係る防災に関する計画で、次に掲げるものをいう。

都道府県地域防災計画

都道府県の地域につき、当該都道府県の都道府県防災会議が作成するもの

市町村地域防災計画

市町村の地域につき、当該市町村の市町村防災会議 又は市町村長が作成するもの

都道府県相互間地域防災計画

二以上の都道府県の区域の全部 又は一部にわたる地域につき、都道府県防災会議の協議会が作成するもの

市町村相互間地域防災計画

二以上の市町村の区域の全部 又は一部にわたる地域につき、市町村防災会議の協議会が作成するもの

1項

災害対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われるものとする。

一 号

我が国の自然的特性に鑑み、人口、産業 その他の社会経済情勢の変化を踏まえ、災害の発生を常に想定するとともに、災害が発生した場合における被害の最小化 及び その迅速な回復を図ること。

二 号

国、地方公共団体 及びその他の公共機関の適切な役割分担 及び相互の連携協力を確保するとともに、これと併せて、住民一人一人が自ら行う防災活動 及び自主防災組織(住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織をいう。以下同じ。)その他の地域における多様な主体が自発的に行う防災活動を促進すること。

三 号

災害に備えるための措置を適切に組み合わせて一体的に講ずること 並びに科学的知見 及び過去の災害から得られた教訓を踏まえて絶えず改善を図ること。

四 号

災害の発生直後 その他必要な情報を収集することが困難なときであつても、できる限り的確に災害の状況を把握し、これに基づき人材、物資 その他の必要な資源を適切に配分することにより、人の生命 及び身体を最も優先して保護すること。

五 号

被災者による主体的な取組を阻害することのないよう配慮しつつ、被災者の年齢、性別、障害の有無 その他の被災者の事情を踏まえ、その時期に応じて適切に被災者を援護すること。

六 号

災害が発生したときは、速やかに、施設の復旧 及び被災者の援護を図り、災害からの復興を図ること。

1項

国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのつとり、国土 並びに国民の生命、身体 及び財産を災害から保護する使命を有することに鑑み、組織 及び機能の全てを挙げて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。

2項

国は、前項の責務を遂行するため、災害予防、災害応急対策 及び災害復旧の基本となるべき計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、地方公共団体、指定公共機関、指定地方公共機関等が処理する防災に関する事務 又は業務の実施の推進と その総合調整を行ない、及び災害に係る経費負担の適正化を図らなければならない。

3項

指定行政機関 及び指定地方行政機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する国の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。

4項

指定行政機関の長 及び指定地方行政機関の長は、この法律の規定による都道府県 及び市町村の地域防災計画の作成 及び実施が円滑に行なわれるように、その所掌事務について、当該都道府県 又は市町村に対し、勧告し、指導し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。

1項

都道府県は、基本理念にのつとり、当該都道府県の地域 並びに当該都道府県の住民の生命、身体 及び財産を災害から保護するため、関係機関 及び他の地方公共団体の協力を得て、当該都道府県の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、その区域内の市町村 及び指定地方公共機関が処理する防災に関する事務 又は業務の実施を助け、かつ、その総合調整を行う責務を有する。

2項

都道府県の機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、前項に規定する都道府県の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。

1項

市町村は、基本理念にのつとり、基礎的な地方公共団体として、当該市町村の地域 並びに当該市町村の住民の生命、身体 及び財産を災害から保護するため、関係機関 及び他の地方公共団体の協力を得て、当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施する責務を有する。

2項

市町村長は、前項の責務を遂行するため、消防機関、水防団 その他の組織の整備 並びに当該市町村の区域内の公共的団体 その他の防災に関する組織 及び自主防災組織の充実を図るほか、住民の自発的な防災活動の促進を図り、市町村の有する全ての機能を十分に発揮するように努めなければならない。

3項

消防機関、水防団 その他市町村の機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する市町村の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。

1項

地方公共団体は、第四条第一項 及び前条第一項に規定する責務を十分に果たすため必要があるときは、相互に協力するように努めなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならない。

1項

指定公共機関 及び指定地方公共機関は、基本理念にのつとり、その業務に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、この法律の規定による国、都道府県 及び市町村の防災計画の作成 及び実施が円滑に行われるように、その業務について、当該都道府県 又は市町村に対し、協力する責務を有する。

2項

指定公共機関 及び指定地方公共機関は、その業務の公共性 又は公益性にかんがみ、それぞれ その業務を通じて防災に寄与しなければならない。

1項

地方公共団体の区域内の公共的団体、防災上重要な施設の管理者 その他法令の規定による防災に関する責務を有する者は、基本理念にのつとり、法令 又は地域防災計画の定めるところにより、誠実にその責務を果たさなければならない。

2項

災害応急対策 又は災害復旧に必要な物資 若しくは資材 又は役務の供給 又は提供を業とする者は、基本理念にのつとり、災害時においてもこれらの事業活動を継続的に実施するとともに、当該事業活動に関し、国 又は地方公共団体が実施する防災に関する施策に協力するように努めなければならない。

3項

前二項に規定するもののほか、地方公共団体の住民は、基本理念にのつとり、食品、飲料水 その他の生活必需物資の備蓄 その他の自ら災害に備えるための手段を講ずるとともに、防災訓練 その他の自発的な防災活動への参加、過去の災害から得られた教訓の伝承 その他の取組により防災に寄与するように努めなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、その施策が、直接的なものであると間接的なものであるとを問わず、一体として国土 並びに国民の生命、身体 及び財産の災害をなくすることに寄与することとなるように意を用いなければならない。

2項

国 及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、特に次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

一 号

災害 及び災害の防止に関する科学的研究と その成果の実現に関する事項

二 号

治山、治水 その他の国土の保全に関する事項

三 号

建物の不燃堅牢化 その他都市の防災構造の改善に関する事項

四 号

交通、情報通信等の都市機能の集積に対応する防災対策に関する事項

五 号

防災上必要な気象、地象 及び水象の観測、予報、情報 その他の業務に関する施設 及び組織 並びに防災上必要な通信に関する施設 及び組織の整備に関する事項

六 号

災害の予報 及び警報の改善に関する事項

七 号

地震予知情報(大規模地震対策特別措置法(昭和五十三年法律第七十三号)第二条第三号の地震予知情報をいう。)を周知させるための方法の改善に関する事項

八 号

気象観測網の充実についての国際的協力に関する事項

九 号

台風に対する人為的調節 その他防災上必要な研究、観測 及び情報交換についての国際的協力に関する事項

十 号

火山現象等による長期的災害に対する対策に関する事項

十一 号

水防、消防、救助 その他災害応急措置に関する施設 及び組織の整備に関する事項

十二 号

地方公共団体の相互応援、第六十一条の四第三項に規定する広域避難 及び第八十六条の八第一項に規定する広域一時滞在に関する協定 並びに民間の団体の協力の確保に関する協定の締結に関する事項

十三 号

自主防災組織の育成、ボランティアによる防災活動の環境の整備、過去の災害から得られた教訓を伝承する活動の支援 その他国民の自発的な防災活動の促進に関する事項

十四 号

被災者の心身の健康の確保、居住の場所の確保 その他被災者の保護に関する事項

十五 号

高齢者、障害者、乳幼児 その他の特に配慮を要する者(以下「要配慮者」という。)に対する防災上必要な措置に関する事項

十六 号

海外からの防災に関する支援の受入れに関する事項

十七 号

被災者に対する的確な情報提供 及び被災者からの相談に関する事項

十八 号

防災上 必要な教育 及び訓練に関する事項

十九 号

防災思想の普及に関する事項

1項

政府は、この法律の目的を達成するため必要な法制上、財政上 及び金融上の措置を講じなければならない。

2項

政府は、毎年、政令で定めるところにより、防災に関する計画 及び防災に関してとつた措置の概況を国会に報告しなければならない。

1項

防災に関する事務の処理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。