裁判所は、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者の申立てにより、決定で、当該権利の侵害に係る開示関係役務提供者に対し、第五条第一項 又は第二項の規定による請求に基づく発信者情報の開示を命ずることができる。
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
第四章 発信者情報開示命令事件に関する裁判手続
裁判所は、発信者情報開示命令の申立てについて、次の各号のいずれかに該当するときは、管轄権を有する。
人を相手方とする場合において、次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
相手方の住所 又は居所が日本国内にあるとき。
相手方の住所 及び居所が日本国内にない場合 又はその住所 及び居所が知れない場合において、当該相手方が申立て前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)。
大使、公使 その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人を相手方とするとき。
法人 その他の社団 又は財団を相手方とする場合において、次のイ 又はロのいずれかに該当するとき。
相手方の主たる事務所 又は営業所が日本国内にあるとき。
相手方の主たる事務所 又は営業所が日本国内にない場合において、次の(1)又は(2)のいずれかに該当するとき。
当該相手方の事務所 又は営業所が日本国内にある場合において、申立てが当該事務所 又は営業所における業務に関するものであるとき。
当該相手方の事務所 若しくは営業所が日本国内にない場合 又はその事務所 若しくは営業所の所在地が知れない場合において、代表者 その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるとき。
前二号に掲げるもののほか、日本において事業を行う者(日本において取引を継続してする外国会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第二号に規定する外国会社をいう。)を含む。)を相手方とする場合において、申立てが当該相手方の日本における業務に関するものであるとき。
前項の規定にかかわらず、当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に発信者情報開示命令の申立てをすることができるかについて定めることができる。
前項の合意は、書面でしなければ、その効力を生じない。
第二項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
外国の裁判所にのみ発信者情報開示命令の申立てをすることができる旨の第二項の合意は、その裁判所が法律上 又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができない。
裁判所は、発信者情報開示命令の申立てについて前各項の規定により日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ申立てをすることができる旨の第二項の合意に基づき申立てがされた場合を除く。)においても、事案の性質、手続の追行による相手方の負担の程度、証拠の所在地 その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理 及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、当該申立ての全部 又は一部を却下することができる。
日本の裁判所の管轄権は、発信者情報開示命令の申立てがあった時を標準として定める。
発信者情報開示命令の申立ては、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
人を相手方とする場合
相手方の住所の所在地(相手方の住所が日本国内にないとき 又はその住所が知れないときはその居所の所在地とし、その居所が日本国内にないとき 又はその居所が知れないときはその最後の住所の所在地とする。)
大使、公使 その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人を相手方とする場合において、この項(前号に係る部分に限る。)の規定により管轄が定まらないとき
最高裁判所規則で定める地
法人 その他の社団 又は財団を相手方とする場合
次のイ 又はロに掲げる事務所 又は営業所の所在地(当該事務所 又は営業所が日本国内にないときは、代表者 その他の主たる業務担当者の住所の所在地とする。)
申立てが相手方の事務所 又は営業所(イに掲げるものを除く。)における業務に関するものであるときは、当該事務所 又は営業所
前条の規定により日本の裁判所が管轄権を有することとなる発信者情報開示命令の申立てについて、前項の規定 又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、当該申立ては、最高裁判所規則で定める地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
発信者情報開示命令の申立てについて、前二項の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有することとなる場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、当該申立てをすることができる。
東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所 又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(東京地方裁判所を除く。)
東京地方裁判所
大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所 又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(大阪地方裁判所を除く。)
大阪地方裁判所
前三項の規定にかかわらず、発信者情報開示命令の申立ては、当事者が合意で定める地方裁判所の管轄に属する。
この場合においては、前条第三項 及び第四項の規定を準用する。
前各項の規定にかかわらず、特許権、実用新案権、回路配置利用権 又はプログラムの著作物についての著作者の権利を侵害されたとする者による当該権利の侵害についての発信者情報開示命令の申立てについて、当該各項の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有することとなる場合には、当該申立ては、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。
東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所 又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所
東京地方裁判所
大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所 又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所
大阪地方裁判所
前項第二号に定める裁判所がした発信者情報開示命令事件(同項に規定する権利の侵害に係るものに限る。)についての決定に対する即時抗告は、東京高等裁判所の管轄に専属する。
前各項の規定にかかわらず、第十五条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定による命令により同号イに規定する他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた者の申立てに係る第一号に掲げる事件は、当該提供を受けた者の申立てに係る第二号に掲げる事件が係属するときは、当該事件が係属する裁判所の管轄に専属する。
当該他の開示関係役務提供者を相手方とする当該提供に係る侵害情報についての発信者情報開示命令事件
裁判所は、発信者情報開示命令の申立てがあった場合には、当該申立てが不適法であるとき 又は当該申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該発信者情報開示命令の申立書の写しを相手方に送付しなければならない。
非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第四十三条第四項から第六項までの規定は、発信者情報開示命令の申立書の写しを送付することができない場合(当該申立書の写しの送付に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。
裁判所は、発信者情報開示命令の申立てについての決定をする場合には、当事者の陳述を聴かなければならない。
ただし、不適法 又は理由がないことが明らかであるとして当該申立てを却下する決定をするときは、この限りでない。
当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、発信者情報開示命令事件の記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は発信者情報開示命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
前項の規定は、発信者情報開示命令事件の記録中の録音テープ 又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)については、適用しない。
この場合において、当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。
前二項の規定による発信者情報開示命令事件の記録の閲覧、謄写 及び複製の請求は、当該記録の保存 又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
発信者情報開示命令の申立ては、当該申立てについての決定が確定するまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。
ただし、当該申立ての取下げは、次に掲げる決定がされた後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
当該申立てに係る発信者情報開示命令事件を本案とする第十五条第一項の規定による命令
発信者情報開示命令の申立ての取下げがあった場合において、前項ただし書の規定により当該申立ての取下げについて相手方の同意を要するときは、裁判所は、相手方に対し、当該申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。
ただし、当該申立ての取下げが発信者情報開示命令事件の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。
前項本文の規定による通知を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、当該通知に係る申立ての取下げに同意したものとみなす。
同項ただし書の規定による場合において、当該申立ての取下げがあった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。
発信者情報開示命令の申立てについての決定(当該申立てを不適法として却下する決定を除く。)に不服がある当事者は、当該決定の告知を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
前項に規定する訴えは、同項に規定する決定をした裁判所の管轄に専属する。
第一項に規定する訴えについての判決においては、当該訴えを不適法として却下するときを除き、同項に規定する決定を認可し、変更し、又は取り消す。
第一項に規定する決定を認可し、又は変更した判決で発信者情報の開示を命ずるものは、強制執行に関しては、給付を命ずる判決と同一の効力を有する。
第一項に規定する訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該訴えに係る同項に規定する決定は、確定判決と同一の効力を有する。
裁判所が第一項に規定する決定をした場合における非訟事件手続法第五十九条第一項の規定の適用については、
同項第二号中
「即時抗告をする」とあるのは、
「異議の訴えを提起する」と
する。
本案の発信者情報開示命令事件が係属する裁判所は、発信者情報開示命令の申立てに係る侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があると認めるときは、当該発信者情報開示命令の申立てをした者(以下 この項において「申立人」という。)の申立てにより、決定で、当該発信者情報開示命令の申立ての相手方である開示関係役務提供者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。
当該申立人に対し、次のイ 又はロに掲げる場合の区分に応じそれぞれ当該イ 又はロに定める事項(イに掲げる場合に該当すると認めるときは、イに定める事項)を書面 又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法 その他の情報通信の技術を利用する方法であって総務省令で定めるものをいう。次号において同じ。)により提供すること。
当該開示関係役務提供者がその保有する発信者情報(当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。以下 この項において同じ。)により当該侵害情報に係る他の開示関係役務提供者(当該侵害情報の発信者であると認めるものを除く。ロにおいて同じ。)の氏名 又は名称 及び住所(以下 この項 及び第三項において「他の開示関係役務提供者の氏名等情報」という。)の特定をすることができる場合
当該他の開示関係役務提供者の氏名等情報
当該開示関係役務提供者が当該侵害情報に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報として総務省令で定めるものを保有していない場合 又は当該開示関係役務提供者がその保有する当該発信者情報によりイに規定する特定をすることができない場合
その旨
この項の規定による命令(以下この条において「提供命令」といい、前号に係る部分に限る。)により他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた当該申立人から、当該他の開示関係役務提供者を相手方として当該侵害情報についての発信者情報開示命令の申立てをした旨の書面 又は電磁的方法による通知を受けたときは、当該他の開示関係役務提供者に対し、当該開示関係役務提供者が保有する発信者情報を書面 又は電磁的方法により提供すること。
前項(各号列記以外の部分に限る。)に規定する発信者情報開示命令の申立ての相手方が第五条第一項に規定する特定電気通信役務提供者であって、かつ、当該申立てをした者が当該申立てにおいて特定発信者情報を含む発信者情報の開示を請求している場合における前項の規定の適用については、
同項第一号イの規定中
「に係るもの」とあるのは、
次の表の上欄に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
当該特定発信者情報の開示の請求について第五条第一項第三号に該当すると認められる場合 | に係る第五条第一項に規定する特定発信者情報 |
当該特定発信者情報の開示の請求について第五条第一項第三号に該当すると認められない場合 | に係る第五条第一項に規定する特定発信者情報以外の発信者情報 |
次の各号のいずれかに該当するときは、提供命令(提供命令により二以上の他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた者が、当該他の開示関係役務提供者のうちの一部の者について第一項第二号に規定する通知をしないことにより第二号に該当することとなるときは、当該一部の者に係る部分に限る。)は、その効力を失う。
当該提供命令の本案である発信者情報開示命令事件(当該発信者情報開示命令事件についての前条第一項に規定する決定に対して同項に規定する訴えが提起されたときは、その訴訟)が終了したとき。
当該提供命令により他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた者が、当該提供を受けた日から二月以内に、当該提供命令を受けた開示関係役務提供者に対し、第一項第二号に規定する通知をしなかったとき。
提供命令を受けた開示関係役務提供者は、当該提供命令に対し、即時抗告をすることができる。
本案の発信者情報開示命令事件が係属する裁判所は、発信者情報開示命令の申立てに係る侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があると認めるときは、当該発信者情報開示命令の申立てをした者の申立てにより、決定で、当該発信者情報開示命令の申立ての相手方である開示関係役務提供者に対し、当該発信者情報開示命令事件(当該発信者情報開示命令事件についての第十四条第一項に規定する決定に対して同項に規定する訴えが提起されたときは、その訴訟)が終了するまでの間、当該開示関係役務提供者が保有する発信者情報(当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。)を消去してはならない旨を命ずることができる。
前項の規定による命令(以下この条において「消去禁止命令」という。)の申立ては、当該消去禁止命令があった後であっても、その全部 又は一部を取り下げることができる。
消去禁止命令を受けた開示関係役務提供者は、当該消去禁止命令に対し、即時抗告をすることができる。
発信者情報開示命令事件に関する裁判手続における申立て その他の申述については、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第一編第八章の規定を準用する。
この場合において、
同法第百三十三条第一項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は利害関係参加人(非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第二十一条第五項に規定する利害関係参加人をいう。第百三十三条の四第一項、第二項 及び第七項において同じ。)」と、
同法第百三十三条の二第二項中
「訴訟記録等(訴訟記録 又は第百三十二条の四第一項の処分の申立てに係る事件の記録」とあるのは
「発信者情報開示命令事件(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第二条第九号に規定する発信者情報開示命令事件」と、
「)中」とあるのは
「)の記録中」と、
同法第百三十三条の四第一項中
「者は、訴訟記録等」とあるのは
「当事者 若しくは利害関係参加人 又は利害関係を疎明した第三者は、発信者情報開示命令事件の記録」と、
同条第二項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は利害関係参加人」と、
「訴訟記録等」とあるのは
「発信者情報開示命令事件の記録」と、
同条第七項中
「当事者」とあるのは
「当事者 若しくは利害関係参加人」と
読み替えるものとする。
発信者情報開示命令事件に関する裁判手続については、非訟事件手続法第二十二条第一項ただし書、第二十七条、第四十条 及び第四十二条の二の規定は、適用しない。
この法律に定めるもののほか、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。