この法律は、外国人観光旅客の来訪を促進することが我が国経済社会の発展 及び地域経済の活性化のために重要な課題であるとともに我が国に対する理解の増進に資するものであること 並びに国際観光旅客の往来を促進することが国際交流の拡大に資するものであることに鑑み、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充 及び強化を図るため、外国人観光旅客の来訪を促進するための措置 及び国際観光の振興に資する施策に必要な経費の財源に関する特別の措置を講ずることにより、国際観光の振興を図り、もって我が国の観光 及びその関連産業の国際競争力の強化 並びに地域経済の活性化 その他の地域の活力の向上に寄与することを目的とする。
外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律
第一章 総則
この法律において「公共交通事業者等」とは、次に掲げる者をいう。
鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)による鉄道事業者(旅客の運送を行うもの 及び旅客の運送を行う鉄道事業者に鉄道施設を譲渡し、又は使用させるものに限る。)
軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道経営者(旅客の運送を行うものに限る。)
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による一般乗合旅客自動車運送事業者(路線を定めて定期に運行する自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る。)
自動車ターミナル法(昭和三十四年法律第百三十六号)によるバスターミナル事業を営む者
海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)による一般旅客定期航路事業(日本の国籍を有する者 及び日本の法令により設立された法人 その他の団体以外の者が営む同法による対外旅客定期航路事業を除く。次項第四号において同じ。)を営む者
航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)による本邦航空運送事業者(旅客の運送を行うものに限る。)
前各号に掲げる者以外の者で次項第一号、第四号 又は第五号の旅客施設を設置し、又は管理するもの
この法律において「旅客施設」とは、次に掲げる施設であって、公共交通機関を利用する旅客の乗降、待合い その他の用に供するものをいう。
鉄道事業法による鉄道施設
軌道法による軌道施設
自動車ターミナル法によるバスターミナル
海上運送法による輸送施設(船舶を除き、同法による一般旅客定期航路事業の用に供するものに限る。)
この法律において「車両等」とは、公共交通事業者等が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両、自動車(道路運送法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行の用に供するものに限る。)、船舶 及び航空機をいう。
第二章 基本方針
国土交通大臣は、国際観光の振興を図るための基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
基本方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
国際観光の振興に関する基本的な事項
国際観光旅客の円滑かつ快適な旅行のための環境の整備に関する事項
我が国の多様な観光の魅力に関する情報の入手の容易化に関する事項
地域固有の文化、自然 その他の特性を活用した観光資源の開発 及び活用による当該地域における体験 及び滞在の質の向上に関する事項
その他国際観光の振興のために必要な事項
国土交通大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
国土交通大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
国土交通大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第三章 外国人観光旅客の来訪を促進するための措置
第一節 協議会
次に掲げる者は、一 又は二以上の都道府県の区域を単位とする地域ごとに、当該地域における外国人観光旅客の来訪の促進に関し必要な協議 並びに次条第一項に規定する外客来訪促進計画の策定 及び当該外客来訪促進計画の実施に係る連絡調整を行うため、共同で協議会を組織することができる。
地方運輸局(運輸監理部を含む。)
当該地域の観光の振興の推進を目的とする観光関係団体
前項の規定により同項の協議会(以下単に「協議会」という。)を組織する同項各号に掲げる者は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。
国の関係地方行政機関(前項第一号に掲げる者を除く。)
その他前項各号に掲げる者が必要と認める者
協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。
前三項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第二節 外客来訪促進計画等
協議会は、単独で 又は共同して、次に掲げる事項について、当該協議会の構成員である都道府県内の地域への外国人観光旅客の来訪の促進に関する計画(以下「外客来訪促進計画」という。)を定めることができる。
外客来訪促進計画の区域(以下「計画区域」という。)
計画区域における外国人観光旅客の円滑かつ快適な旅行のための環境の整備の方針
計画区域の多様な観光の魅力に関する情報の入手の容易化の方針
計画区域における地域固有の文化、自然 その他の特性を活用した観光資源の開発 及び活用による当該地域における体験 及び滞在の質の向上の方針
その他計画区域への外国人観光旅客の来訪の促進に関する事項
協議会は、外客来訪促進計画を定めようとするときは、観光庁長官の同意を得なければならない。
観光庁長官は、外客来訪促進計画が次の各号に該当するものであると認めるときは、同意をするものとする。
計画区域への外国人観光旅客の来訪が、我が国に対する理解の増進に資するものであること。
計画区域の海外における宣伝の適切な実施 及び当該宣伝の実施による外国人観光旅客の来訪の促進が見込まれるものであること。
その他その外客来訪促進計画を実施することが計画区域への外国人観光旅客の来訪の促進に資すると認められるものであること。
協議会は、外客来訪促進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
協議会は、外客来訪促進計画を変更しようとするときは、観光庁長官の同意を得なければならない。
この場合においては、前二項の規定を準用する。
協議会は、定期的に、その定めた外客来訪促進計画について、調査、分析 及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該外客来訪促進計画を変更するものとする。
運送事業者は、外国人観光旅客を対象とする共通乗車船券(二以上の運送事業者が期間、区間 その他の条件を定めて共同で発行する証票であって、その証票を提示することにより、当該条件の範囲内で、当該各運送事業者の運送サービスの提供を受けることができるものをいう。以下同じ。)に係る運賃 又は料金の割引を行おうとするときは、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を共同で国土交通大臣に届け出ることができる。
前項の届出をした者は、鉄道事業法第十六条第三項後段 若しくは第三十六条、軌道法第十一条第二項、道路運送法第九条第三項後段、海上運送法第八条第一項後段(同法第二十一条の五において準用する場合を含む。)又は航空法第百五条第一項後段の規定による届出をしたものとみなす。
第三節 公共交通事業者等が講ずべき措置等
公共交通事業者等は、観光庁長官が定める基準に従い、その事業の用に供する旅客施設 及び車両等について、外国語等による情報の提供、インターネットを利用した観光に関する情報の閲覧を可能とするための措置、座便式の水洗便所の設置 その他の外国人観光旅客の公共交通機関の利用に係る利便を増進するために必要な措置(以下「外国人観光旅客利便増進措置」という。)を講ずるよう努めなければならない。
観光庁長官は、公共交通事業者等の事業に係る路線 又は航路について、外国人観光旅客の利便の増進を図ることが特に必要であると認めるときは、多数の外国人観光旅客が利用する区間 又は外国人観光旅客の利用の増加が見込まれる区間であって、国土交通省令で定める要件に該当するものを外国人観光旅客利便増進措置を講ずべき区間として指定することができる。
前項の規定による指定は、告示によって行う。
観光庁長官は、第一項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、関係する公共交通事業者等(協議会が組織されているときは、関係する公共交通事業者等 及び当該協議会)の意見を聴くものとする。
前二項の規定は、第一項の規定により指定された区間の指定の解除 及びその区間の変更について準用する。
前条第一項の規定により指定された区間において事業を経営している公共交通事業者等は、単独で 又は共同して、その指定された区間において事業の用に供する旅客施設 及び車両等に係る外国人観光旅客利便増進措置を実施するための計画(以下この条において「外国人観光旅客利便増進実施計画」という。)を作成し、これに基づき、当該外国人観光旅客利便増進措置を実施しなければならない。
外国人観光旅客利便増進実施計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
外国人観光旅客利便増進措置の対象となる旅客施設 又は車両等
外国人観光旅客利便増進措置の実施予定期間
公共交通事業者等は、外国人観光旅客利便増進実施計画を作成したときは、遅滞なく、これを観光庁長官に提出しなければならない。
これを変更したときも、同様とする。
観光庁長官は、公共交通事業者等が前条第一項の規定による外国人観光旅客利便増進措置を実施していないと認めるときは、当該公共交通事業者等に対し、当該外国人観光旅客利便増進措置を実施すべきことを勧告することができる。
観光庁長官は、前項の規定による勧告をした場合において、当該勧告を受けた者が正当な理由なく その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
独立行政法人国際観光振興機構(以下「機構」という。)は、外国人観光旅客に対する接遇の向上を図るため、地方公共団体 その他の者に対し、観光案内に関する助言 その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
第四章 国際観光振興施策に必要な経費の財源
政府は、国際観光旅客税(国際観光旅客税法(平成三十年法律第十六号)に規定する国際観光旅客税をいう。第三項第一号において同じ。)の収入見込額に相当する金額を、国際観光振興施策(国際観光旅客の円滑かつ快適な旅行のための環境の整備に関する施策、我が国の多様な観光の魅力に関する情報の入手の容易化に関する施策 並びに地域固有の文化、自然 その他の特性を活用した観光資源の開発 及び活用による当該地域における体験 及び滞在の質の向上に関する施策をいう。)に必要な経費に充てるものとする。
前項の規定の適用については、金額の算出は、各年度において、その年度の予算金額によるものとする。
第一項の国際観光振興施策として行われる施策は、次に掲げる要件に該当するものを基本とするものとする。
国際観光旅客税の納税者の理解を得られるものであること。
先進的なもので、かつ、費用に比してその効果が高いものであること。
地域経済の活性化 その他の我が国における政策課題の解決に資するものであること。
第五章 雑則
国 及び地方公共団体は、外客来訪促進計画の達成に資するため、外客来訪促進計画の実施に必要な事業を行う者に対する必要な助言、指導 その他の援助を行うよう努めなければならない。
地方公共団体が外客来訪促進計画を達成するために行う事業に要する費用に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情 及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
機構は、外国人観光旅客の来訪を促進するため、計画区域について、海外における宣伝を行うほか、これに関連して関係地方公共団体が行う海外における宣伝に関する助言 その他の措置を講ずるとともに、必要に応じて、その他の地域の海外における宣伝を行うよう努めなければならない。
国土交通大臣、観光庁長官、機構、関係地方公共団体、関係団体 及び関係事業者は、外国人観光旅客の来訪を促進するため、外客来訪促進計画の実施 及び外国人観光旅客に対する接遇の向上に関し相互に連携を図りながら協力しなければならない。
この法律に規定する国土交通大臣 及び観光庁長官の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方運輸局長に委任することができる。
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、国土交通省令で定める。
この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。