次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
民法
第二節 先取特権の種類
⤏ 第一款 一般の先取特権
共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算 又は配当に関する費用について存在する。
前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
雇用関係の先取特権は、給料 その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。
前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。
日用品の供給の先取特権は、債務者 又はその扶養すべき同居の親族 及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料 及び電気の供給について存在する。
⤏ 第二款 動産の先取特権
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
種苗 又は肥料(蚕種 又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料 その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
土地の賃貸人の先取特権は、その土地 又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産 及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。
建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
賃借権の譲渡 又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人 又は転借人の動産にも及ぶ。
譲渡人 又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。
賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期 及び次期の賃料 その他の債務 並びに前期 及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。
賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料 及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。
運輸の先取特権は、旅客 又は荷物の運送賃 及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。
第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用 又は動産に関する権利の保存、承認 若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
動産の売買の先取特権は、動産の代価 及びその利息に関し、その動産について存在する。
種苗 又は肥料の供給の先取特権は、種苗 又は肥料の代価 及びその利息に関し、その種苗 又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種 又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。
農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。
工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。
⤏ 第三款 不動産の先取特権
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用 又は不動産に関する権利の保存、承認 若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。
不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工 又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
不動産の売買の先取特権は、不動産の代価 及びその利息に関し、その不動産について存在する。