非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済 及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進し、国の経済の秩序を維持し、その他当該災害に係る重要な課題に対応するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部 又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる。
災害対策基本法
第九章 災害緊急事態
前項の布告には、その区域、布告を必要とする事態の概要 及び布告の効力を発する日時を明示しなければならない。
内閣総理大臣は、前条の規定により災害緊急事態の布告を発したときは、これを発した日から二十日以内に国会に付議して、その布告を発したことについて承認を求めなければならない。
ただし、国会が閉会中の場合 又は衆議院が解散されている場合は、その後 最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない。
内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があつたとき、国会が災害緊急事態の布告の廃止を議決したとき、又は当該布告の必要がなくなつたときは、すみやかに、当該布告を廃止しなければならない。
内閣総理大臣は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、当該災害に係る緊急災害対策本部が既に設置されている場合を除き、第二十八条の二の規定により、緊急災害対策本部を設置するものとする。
政府は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、災害緊急事態への対処に関する基本的な方針(以下この条において「対処基本方針」という。)を定めるものとする。
対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
災害緊急事態への対処に関する全般的な方針
災害応急対策に関する重要事項
国の経済の秩序の維持に関する重要事項
前二号に掲げる事項のほか、当該災害に係る重要な課題への対応に関する重要事項
前三号に掲げる事項に係る事務を的確に遂行するための政府の体制に関する重要事項
内閣総理大臣は、対処基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があつたときは、直ちに、対処基本方針を告示しなければならない。
内閣総理大臣は、災害緊急事態への対処に当たり、対処基本方針に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
第三項 及び第四項の規定は、対処基本方針の変更について準用する。
対処基本方針は、第百六条第二項の規定により災害緊急事態の布告が廃止された時に、その効力を失う。
内閣総理大臣は、前項の規定により対処基本方針がその効力を失つたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
内閣総理大臣は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告に係る災害について、当該災害の状況、これに対してとられた措置の概要 その他の当該災害に関する情報を新聞、放送、インターネット その他適切な方法により公表しなければならない。
内閣総理大臣は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、国民に対し、必要な範囲において、国民生活との関連性が高い物資 又は国民経済上重要な物資をみだりに購入しないこと その他の必要な協力を求めることができる。
国民は、前項の規定により協力を求められたときは、これに応ずるよう努めなければならない。
第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、第八十六条の二第一項、第八十六条の三第一項、第八十六条の四第一項 及び第八十六条の五第一項の規定により当該災害を指定する政令が定められたものとみなして、第八十六条の二第二項 及び第三項、第八十六条の三第二項 及び第三項、第八十六条の四第二項 並びに第八十六条の五第二項から第十三項までの規定を適用する。
この場合において、
第八十六条の二第二項 及び第八十六条の三第二項中
「政令で定める区域 及び期間」とあるのは、
「当該災害に係る緊急災害対策本部の所管区域 及び当該災害に係る災害緊急事態の布告が発せられた時から当該緊急災害対策本部が定める日までの間」と
する。
第百五条の規定による災害緊急事態の布告が発せられる前に第八十六条の二第一項、第八十六条の三第一項、第八十六条の四第一項 又は第八十六条の五第一項のいずれかの規定により当該災害を指定する政令が定められたときは、前項(当該政令に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。
第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成八年法律第八十五号。以下この条において「特定非常災害法」という。)第二条の規定により、当該災害を特定非常災害として指定し、当該災害が発生した日を特定非常災害発生日として定め、及び当該特定非常災害に対し適用すべき措置として特定非常災害法第三条から第六条までに規定する措置を指定する政令が定められたものとみなして、特定非常災害法第三条から第六条まで(特定非常災害法第四条第一項を除く。)の規定を適用する。
この場合において、次の表の上欄に掲げる特定非常災害法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
第三条第一項 | 超えない範囲内において政令で定める | 経過する |
第三条第四項 | 延長期日が定められた | 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第百五条の規定による災害緊急事態の布告があった |
第四条第二項 | 免責期限が定められた | 災害対策基本法第百五条の規定による災害緊急事態の布告があった |
免責期限が到来する | 特定非常災害発生日から起算して四月を経過する | |
到来する特定義務 | 到来する特定義務(特定非常災害発生日以後に法令に規定されている履行期限が到来する義務をいう。以下同じ。) | |
責任 | その不履行に係る行政上 及び刑事上の責任(過料に係るものを含む。) | |
第四条第三項 | 免責期限が定められた | 災害対策基本法第百五条の規定による災害緊急事態の布告があった |
前二項 | 前項 | |
免責期限が到来する | 特定非常災害発生日から起算して四月を経過する | |
前項 | 同項 | |
第四条第四項 | 前三項 | 前二項 |
第五条第一項 | 第二条第一項 又は第二項の政令で この条に定める措置を指定するものの施行の | 災害対策基本法第百五条の規定による災害緊急事態の布告があった |
超えない範囲内において政令で定める | 経過する | |
第五条第五項 | 同項に規定する政令で定める | 同日後二年を経過する |
第六条 | 政令で定めるもの | 法務大臣が告示するもの |
超えない範囲内において政令で定める | 経過する | |
当該政令で定める | 特定非常災害発生日から起算して一年を経過する |
第百五条の規定による災害緊急事態の布告が発せられる前に特定非常災害法第二条第一項の規定により当該災害を特定非常災害として指定する政令が定められたときは、前項の規定は、適用しない。
災害緊急事態に際し国の経済の秩序を維持し、及び公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合において、国会が閉会中 又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置をまついとまがないときは、内閣は、次の各号に掲げる事項について必要な措置をとるため、政令を制定することができる。
その供給が特に不足している生活必需物資の配給 又は譲渡 若しくは引渡しの制限 若しくは禁止
災害応急対策 若しくは災害復旧 又は国民生活の安定のため必要な物の価格 又は役務 その他の給付の対価の最高額の決定
金銭債務の支払(賃金、災害補償の給付金 その他の労働関係に基づく金銭債務の支払 及びその支払のためにする銀行 その他の金融機関の預金等の支払を除く。)の延期 及び権利の保存期間の延長
前項の規定により制定される政令には、その政令の規定に違反した者に対して二年以下の懲役 若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料 若しくは没収の刑を科し、又はこれを併科する旨の規定、法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者がその法人 又は人の業務に関してその政令の違反行為をした場合に、その行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の罰金、科料 又は没収の刑を科する旨の規定 及び没収すべき物件の全部 又は一部を没収することができない場合にその価額を追徴する旨の規定を設けることができる。
内閣は、第一項の規定により政令を制定した場合において、その必要がなくなつたときは、直ちに、これを廃止しなければならない。
内閣は、第一項の規定により政令を制定したときは、直ちに、国会の臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求め、かつ、そのとつた措置をなお継続すべき場合には、その政令に代わる法律が制定される措置をとり、その他の場合には、その政令を制定したことについて承認を求めなければならない。
第一項の規定により制定された政令は、既に廃止され、又はその有効期間が終了したものを除き、前項の国会の臨時会 又は参議院の緊急集会においてその政令に代わる法律が制定されたときは、その法律の施行と同時に、その臨時会 又は緊急集会においてその法律が制定されないこととなつたときは、制定されないこととなつた時に、その効力を失う。
前項の場合を除くほか、第一項の規定により制定された政令は、既に廃止され、又はその有効期間が終了したものを除き、第四項の国会の臨時会が開かれた日から起算して二十日を経過した時 若しくはその臨時会の会期が終了した時のいずれか早い時に、又は同項の参議院の緊急集会が開かれた日から起算して十日を経過した時 若しくはその緊急集会が終了した時のいずれか早い時にその効力を失う。
内閣は、前二項の規定により政令がその効力を失つたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
第一項の規定により制定された政令に罰則が設けられたときは、その政令が効力を有する間に行なわれた行為に対する罰則の適用については、その政令が廃止され、若しくはその有効期間が終了し、又は第五項 若しくは第六項の規定によりその効力を失つた後においても、なお従前の例による。
災害緊急事態に際し法律の規定によつては被災者の救助に係る海外からの支援を緊急かつ円滑に受け入れることができない場合において、国会が閉会中 又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときは、内閣は、当該受入れについて必要な措置をとるため、政令を制定することができる。
前条第三項から第七項までの規定は、前項の場合について準用する。