この法律は、相続税 及び贈与税について、納税義務者、課税財産の範囲、税額の計算の方法、申告、納付 及び還付の手続 並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
相続税法
第一章 総則
第一節 通則
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
扶養義務者
配偶者 及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条(扶養義務者)に規定する親族をいう。
期限内申告書
第五十条第二項の場合を除き、第二十七条第一項 及び第二項、第二十八条第一項 及び第二項 並びに第二十九条の規定による申告書をいう。
期限後申告書
国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第十八条第二項(期限後申告書)に規定する期限後申告書をいう。
修正申告書
国税通則法第十九条第三項(修正申告書)に規定する修正申告書をいう。
更正
国税通則法第二十四条(更正) 又は第二十六条(再更正)の規定による更正をいう。
決定
第三十三条の二の場合を除き、国税通則法第二十五条(決定)の規定による決定をいう。
次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
相続 又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
一時居住者でない個人
一時居住者である個人(当該相続 又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人 又は非居住被相続人である場合を除く。)
相続 又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの
日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの
当該相続 又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの
当該相続 又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続 又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人 又は非居住被相続人である場合を除く。)
日本国籍を有しない個人(当該相続 又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人 又は非居住被相続人である場合を除く。)
相続 又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第一号に掲げる者を除く。)
相続 又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第二号に掲げる者を除く。)
贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)
所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第百三十七条の二(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予) 又は第百三十七条の三(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第一号ロ 又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。
所得税法第百三十七条の二第一項(同条第二項の規定により適用する場合を含む。次条第二項第一号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第一号ロ 又は第二号イ(2) 若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
所得税法第百三十七条の三第一項(同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下 この号 及び次条第二項第二号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第百三十七条の三第一項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下 この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第一号ロ 又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
ただし、当該受贈者が同条第一項の規定の適用に係る贈与前十年以内のいずれの時においても この法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
所得税法第百三十七条の三第二項(同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下 この号 及び次条第二項第三号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下 この号 及び次条第二項第三号において同じ。)が死亡(以下 この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第一号ロ 又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
ただし、当該相続人が所得税法第百三十七条の三第二項の規定の適用に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一時居住者
相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号 及び次条第三項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。
外国人被相続人
相続開始の時において、在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人をいう。
非居住被相続人
相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの 又は当該相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。
次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。
贈与により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
一時居住者でない個人
一時居住者である個人(当該贈与をした者が外国人贈与者 又は非居住贈与者である場合を除く。)
贈与により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの
日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの
当該贈与前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの
当該贈与前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該贈与をした者が外国人贈与者 又は非居住贈与者である場合を除く。)
日本国籍を有しない個人(当該贈与をした者が外国人贈与者 又は非居住贈与者である場合を除く。)
贈与によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第一号に掲げる者を除く。)
贈与によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第二号に掲げる者を除く。)
所得税法第百三十七条の二(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予) 又は第百三十七条の三(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第一号ロ 又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。
所得税法第百三十七条の二第一項の規定の適用を受ける個人が財産の贈与をした場合には、当該贈与に係る贈与税の前項第一号ロ 又は第二号イ(2) 若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該贈与前 十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
所得税法第百三十七条の三第一項の規定の適用を受ける者から同項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下 この号において「受贈者」という。)が財産の贈与(以下 この号において「二次贈与」という。)をした場合には、当該二次贈与に係る贈与税の前項第一号ロ 又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該二次贈与前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
ただし、当該受贈者が同条第一項の規定の適用に係る贈与前十年以内のいずれの時においても この法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
所得税法第百三十七条の三第二項の規定の適用を受ける相続人が財産の贈与をした場合には、当該贈与に係る贈与税の前項第一号ロ 又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該贈与前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
ただし、当該相続人が同条第二項の規定の適用に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においても この法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一時居住者
贈与の時において在留資格を有する者であつて当該贈与前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。
外国人贈与者
贈与の時において、在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該贈与をした者をいう。
非居住贈与者
贈与の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該贈与をした者であつて、当該贈与前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの 又は当該贈与前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。
第一条の三第一項第一号 又は第二号の規定に該当する者については、その者が相続 又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。
第一条の三第一項第三号 又は第四号の規定に該当する者については、その者が相続 又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものに対し、相続税を課する。
第一条の四第一項第一号 又は第二号の規定に該当する者については、その者が贈与により取得した財産の全部に対し、贈与税を課する。
第一条の四第一項第三号 又は第四号の規定に該当する者については、その者が贈与により取得した財産でこの法律の施行地にあるものに対し、贈与税を課する。
第二節 相続若しくは遺贈又は贈与により取得したものとみなす場合
次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続 又は遺贈により取得したものとみなす。
この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者 及び相続権を失つた者を含まない。第十五条、第十六条、第十九条の二第一項、第十九条の三第一項、第十九条の四第一項 及び第六十三条の場合 並びに「第十五条第二項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
被相続人の死亡により相続人 その他の者が生命保険契約(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第三項(定義)に規定する生命保険会社と締結した保険契約(これに類する共済に係る契約を含む。以下同じ。)その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(共済金を含む。以下同じ。)又は損害保険契約(同条第四項に規定する損害保険会社と締結した保険契約 その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限る。)を取得した場合においては、当該保険金受取人(共済金受取人を含む。以下同じ。)について、当該保険金(次号に掲げる給与 及び第五号 又は第六号に掲げる権利に該当するものを除く。)のうち被相続人が負担した保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
被相続人の死亡により相続人 その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金 その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与
相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。以下同じ。)が発生していない生命保険契約(一定期間内に保険事故が発生しなかつた場合において返還金 その他これに準ずるものの支払がない生命保険契約を除く。)で被相続人が保険料の全部 又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合においては、当該生命保険契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
相続開始の時において、まだ定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で被相続人が掛金 又は保険料の全部 又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該定期金給付契約の契約者であるものがある場合においては、当該定期金給付契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金 又は保険料の金額の当該契約に係る掛金 又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
定期金給付契約で定期金受取人に対し その生存中 又は一定期間にわたり定期金を給付し、かつ、その者が死亡したときはその死亡後遺族 その他の者に対して定期金 又は一時金を給付するものに基づいて定期金受取人たる被相続人の死亡後相続人 その他の者が定期金受取人 又は一時金受取人となつた場合においては、当該定期金受取人 又は一時金受取人となつた者について、当該定期金給付契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金 又は保険料の金額の当該契約に係る掛金 又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
被相続人の死亡により相続人 その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(恩給法(大正十二年法律第四十八号)の規定による扶助料に関する権利を除く。)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第二号に掲げる給与に該当するものを除く。)
前項第一号 又は第三号から第五号までの規定の適用については、被相続人の被相続人が負担した保険料 又は掛金は、被相続人が負担した保険料 又は掛金とみなす。
ただし、同項第三号 又は第四号の規定により当該各号に掲げる者が当該被相続人の被相続人から当該各号に掲げる財産を相続 又は遺贈により取得したものとみなされた場合においては、当該被相続人の被相続人が負担した保険料 又は掛金については、この限りでない。
第一項第三号 又は第四号の規定の適用については、被相続人の遺言により払い込まれた保険料 又は掛金は、被相続人が負担した保険料 又は掛金とみなす。
民法第九百五十八条の二第一項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により同項に規定する相続財産の全部 又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす。
特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合においては、当該特別寄与者が、当該特別寄与料の額に相当する金額を当該特別寄与者による特別の寄与を受けた被相続人から遺贈により取得したものとみなす。
生命保険契約の保険事故(傷害、疾病 その他これらに類する保険事故で死亡を伴わないものを除く。)又は損害保険契約の保険事故(偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限る。)が発生した場合において、これらの契約に係る保険料の全部 又は一部が保険金受取人以外の者によつて負担されたものであるときは、これらの保険事故が発生した時において、保険金受取人が、その取得した保険金(当該損害保険契約の保険金については、政令で定めるものに限る。)のうち当該保険金受取人以外の者が負担した保険料の金額のこれらの契約に係る保険料でこれらの保険事故が発生した時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分を当該保険料を負担した者から贈与により取得したものとみなす。
前項の規定は、生命保険契約 又は損害保険契約(傷害を保険事故とする損害保険契約で政令で定めるものに限る。)について返還金 その他これに準ずるものの取得があつた場合について準用する。
前二項の規定の適用については、第一項(前項において準用する場合を含む。)に規定する保険料を負担した者の被相続人が負担した保険料は、その者が負担した保険料とみなす。
ただし、第三条第一項第三号の規定により前二項に規定する保険金受取人 又は返還金 その他これに準ずるものの取得者が当該被相続人から同号に掲げる財産を相続 又は遺贈により取得したものとみなされた場合においては、当該被相続人が負担した保険料については、この限りでない。
第一項の規定は、第三条第一項第一号 又は第二号の規定により第一項に規定する保険金受取人が同条第一項第一号に掲げる保険金 又は同項第二号に掲げる給与を相続 又は遺贈により取得したものとみなされる場合においては、当該保険金 又は給与に相当する部分については、適用しない。
定期金給付契約(生命保険契約を除く。次項において同じ。)の定期金給付事由が発生した場合において、当該契約に係る掛金 又は保険料の全部 又は一部が定期金受取人以外の者によつて負担されたものであるときは、当該定期金給付事由が発生した時において、定期金受取人が、その取得した定期金給付契約に関する権利のうち当該定期金受取人以外の者が負担した掛金 又は保険料の金額の当該契約に係る掛金 又は保険料で当該定期金給付事由が発生した時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分を当該掛金 又は保険料を負担した者から贈与により取得したものとみなす。
前項の規定は、定期金給付契約について返還金 その他これに準ずるものの取得があつた場合について準用する。
第三条第一項第五号の規定に該当する場合において、同号に規定する定期金給付契約に係る掛金 又は保険料の全部 又は一部が同号に規定する定期金受取人 又は一時金受取人 及び被相続人以外の第三者によつて負担されたものであるときは、相続の開始があつた時において、当該定期金受取人 又は一時金受取人が、その取得した定期金給付契約に関する権利のうち当該第三者が負担した掛金 又は保険料の金額の当該契約に係る掛金 又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分を当該第三者から贈与により取得したものとみなす。
前三項の規定の適用については、第一項(第二項において準用する場合を含む。)又は前項に規定する掛金 又は保険料を負担した者の被相続人が負担した掛金 又は保険料は、その者が負担した掛金 又は保険料とみなす。
ただし、第三条第一項第四号の規定により前三項に規定する定期金受取人 若しくは一時金受取人 又は返還金 その他これに準ずるものの取得者が当該被相続人から同号に掲げる財産を相続 又は遺贈により取得したものとみなされた場合においては、当該被相続人が負担した掛金 又は保険料については、この限りでない。
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただし、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与 又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け 又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け 又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け 又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け 又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け 又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け 又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただし、当該債務の免除、引受け 又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与 又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部 又は一部の免除を受けたとき。
債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部 又は一部の引受け 又は弁済がなされたとき。
第五条から前条まで 及び次節に定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与 又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
第三節 信託に関する特例
信託(退職年金の支給を目的とする信託 その他の信託で政令で定めるものを除く。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者 及び特定委託者をいう。以下 この節において同じ。)となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至つた場合(第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、当該受益者等が存するに至つた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して受益者等が存するに至つた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
受益者等の存する信託について、当該信託の一部の受益者等が存しなくなつた場合において、適正な対価を負担せずに既に当該信託の受益者等である者が当該信託に関する権利について新たに利益を受けることとなるときは、当該信託の一部の受益者等が存しなくなつた時において、当該利益を受ける者は、当該利益を当該信託の一部の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して当該利益を受けた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、当該給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた時において、当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた者は、当該信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であつた場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除く。)を当該信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
第一項の「特定委託者」とは、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除く。)をいう。
第一項から第三項までの規定により贈与 又は遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利 又は利益を取得した者は、当該信託の信託財産に属する資産 及び負債を取得し、又は承継したものとみなして、この法律(第四十一条第二項を除く。)の規定を適用する。
ただし、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託 又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産 及び負債 並びに信託財産に帰せられる収益 及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託の信託財産に属する資産 及び負債については、この限りでない。
受益者連続型信託(信託法(平成十八年法律第百八号)第九十一条(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)に規定する信託、同法第八十九条第一項(受益者指定権等)に規定する受益者指定権等を有する者の定めのある信託 その他これらの信託に類するものとして政令で定めるものをいう。以下 この項において同じ。)に関する権利を受益者(受益者が存しない場合にあつては、前条第五項に規定する特定委託者)が適正な対価を負担せずに取得した場合において、当該受益者連続型信託に関する権利(異なる受益者が性質の異なる受益者連続型信託に係る権利(当該権利のいずれかに収益に関する権利が含まれるものに限る。)をそれぞれ有している場合にあつては、収益に関する権利が含まれるものに限る。)で当該受益者連続型信託の利益を受ける期間の制限 その他の当該受益者連続型信託に関する権利の価値に作用する要因としての制約が付されているものについては、当該制約は、付されていないものとみなす。
ただし、当該受益者連続型信託に関する権利を有する者が法人(代表者 又は管理者の定めのある人格のない社団 又は財団を含む。以下第六十四条までにおいて同じ。)である場合は、この限りでない。
前項の「受益者」とは、受益者としての権利を現に有する者をいう。
受益者等が存しない信託の効力が生ずる場合において、当該信託の受益者等となる者が当該信託の委託者の親族として政令で定める者(以下 この条 及び次条において「親族」という。)であるとき(当該信託の受益者等となる者が明らかでない場合にあつては、当該信託が終了した場合に当該委託者の親族が当該信託の残余財産の給付を受けることとなるとき)は、当該信託の効力が生ずる時において、当該信託の受託者は、当該委託者から当該信託に関する権利を贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生ずる場合にあつては、遺贈)により取得したものとみなす。
受益者等の存する信託について、当該信託の受益者等が存しないこととなつた場合(以下 この項において「受益者等が不存在となつた場合」という。)において、当該受益者等の次に受益者等となる者が当該信託の効力が生じた時の委託者 又は当該次に受益者等となる者の前の受益者等の親族であるとき(当該次に受益者等となる者が明らかでない場合にあつては、当該信託が終了した場合に当該委託者 又は当該次に受益者等となる者の前の受益者等の親族が当該信託の残余財産の給付を受けることとなるとき)は、当該受益者等が不存在となつた場合に該当することとなつた時において、当該信託の受託者は、当該次に受益者等となる者の前の受益者等から当該信託に関する権利を贈与(当該次に受益者等となる者の前の受益者等の死亡に基因して当該次に受益者等となる者の前の受益者等が存しないこととなつた場合にあつては、遺贈)により取得したものとみなす。
前二項の規定の適用がある場合において、これらの信託の受託者が個人以外であるときは、当該受託者を個人とみなして、この法律 その他相続税 又は贈与税に関する法令の規定を適用する。
前三項の規定の適用がある場合において、これらの規定により第一項 又は第二項の受託者に課される贈与税 又は相続税の額については、政令で定めるところにより、当該受託者に課されるべき法人税 その他の税の額に相当する額を控除する。
受益者等が存しない信託について、当該信託の契約が締結された時 その他の時として政令で定める時(以下この条において「契約締結時等」という。)において存しない者が当該信託の受益者等となる場合において、当該信託の受益者等となる者が当該信託の契約締結時等における委託者の親族であるときは、当該存しない者が当該信託の受益者等となる時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を個人から贈与により取得したものとみなす。
受益者等の有する信託に関する権利が当該信託に関する権利の全部でない場合における第九条の二第一項の規定の適用、同条第五項に規定する信託財産の給付を受けることとされている者に該当するか否かの判定 その他この節の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
第四節 財産の所在
次の各号に掲げる財産の所在については、当該各号に規定する場所による。
動産 若しくは不動産 又は不動産の上に存する権利については、その動産 又は不動産の所在。
ただし、船舶 又は航空機については、船籍 又は航空機の登録をした機関の所在
鉱業権 若しくは租鉱権 又は採石権については、鉱区 又は採石場の所在
漁業権 又は入漁権については、漁場に最も近い沿岸の属する市町村 又はこれに相当する行政区画
金融機関に対する預金、貯金、積金 又は寄託金で政令で定めるものについては、その預金、貯金、積金 又は寄託金の受入れをした営業所 又は事業所の所在
保険金については、その保険(共済を含む。)の契約に係る保険会社等(保険業 又は共済事業を行う者をいう。第五十九条第一項 及び第二項において同じ。)の本店 又は主たる事務所(この法律の施行地に本店 又は主たる事務所がない場合において、この法律の施行地に当該保険の契約に係る事務を行う営業所、事務所 その他これらに準ずるものを有するときにあつては、当該営業所、事務所 その他これらに準ずるもの。次号において同じ。)の所在
退職手当金、功労金 その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)については、当該給与を支払つた者の住所 又は本店 若しくは主たる事務所の所在
貸付金債権については、その債務者(債務者が二以上ある場合においては、主たる債務者とし、主たる債務者がないときは政令で定める一の債務者)の住所 又は本店 若しくは主たる事務所の所在
社債(特別の法律により法人の発行する債券 及び外国法人の発行する債券を含む。)若しくは株式、法人に対する出資 又は政令で定める有価証券については、当該社債 若しくは株式の発行法人、当該出資のされている法人 又は当該有価証券に係る政令で定める法人の本店 又は主たる事務所の所在
法人税法第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託 又は同条第二十九号の二に規定する法人課税信託に関する権利については、これらの信託の引受けをした営業所、事務所 その他これらに準ずるものの所在
特許権、実用新案権、意匠権 若しくはこれらの実施権で登録されているもの、商標権 又は回路配置利用権、育成者権 若しくはこれらの利用権で登録されているものについては、その登録をした機関の所在
著作権、出版権 又は著作隣接権でこれらの権利の目的物が発行されているものについては、これを発行する営業所 又は事業所の所在
第七条の規定により贈与 又は遺贈により取得したものとみなされる金銭については、そのみなされる基因となつた財産の種類に応じ、この条に規定する場所
前各号に掲げる財産を除くほか、営業所 又は事業所を有する者の当該営業所 又は事業所に係る営業上 又は事業上の権利については、その営業所 又は事業所の所在
国債 又は地方債は、この法律の施行地にあるものとし、外国 又は外国の地方公共団体 その他これに準ずるものの発行する公債は、当該外国にあるものとする。
第一項各号に掲げる財産 及び前項に規定する財産以外の財産の所在については、当該財産の権利者であつた被相続人 又は贈与をした者の住所の所在による。
前三項の規定による財産の所在の判定は、当該財産を相続、遺贈 又は贈与により取得した時の現況による。