不動産(登記することができない土地の定着物を除き、第四十三条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。
民事執行法
第三章 担保権の実行としての競売等
担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法
担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法
不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。
担保権の存在を証する確定判決 若しくは家事事件手続法第七十五条の審判 又はこれらと同一の効力を有するものの謄本
担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
担保権の登記(仮登記を除く。)に関する登記事項証明書
一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書
抵当証券の所持人が不動産担保権の実行の申立てをするには、抵当証券を提出しなければならない。
担保権について承継があつた後不動産担保権の実行の申立てをする場合には、相続 その他の一般承継にあつてはその承継を証する文書を、その他の承継にあつてはその承継を証する裁判の謄本 その他の公文書を提出しなければならない。
不動産担保権の実行の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、開始決定の送達に際し、不動産担保権の実行の申立てにおいて提出された前三項に規定する文書の目録 及び第一項第四号に掲げる文書の写しを相手方に送付しなければならない。
不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告 又は執行異議の申立てにおいては、債務者 又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在 又は消滅を理由とすることができる。
不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本
第百八十一条第一項第一号に掲げる裁判 若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項第三号に掲げる登記を抹消すべき旨を命ずる確定判決の謄本
担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨 又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書 その他の公文書の謄本
担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書
不動産担保権の実行の手続の停止 及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本
不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本
担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本
前項第一号から第五号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
第十二条の規定は、前項の規定による決定については適用しない。
担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在 又は消滅により妨げられない。
執行裁判所は、担保不動産競売の開始決定前であつても、債務者 又は不動産の所有者 若しくは占有者が価格減少行為(第五十五条第一項に規定する価格減少行為をいう。以下この項において同じ。)をする場合において、特に必要があるときは、当該不動産につき担保不動産競売の申立てをしようとする者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、同条第一項各号に掲げる保全処分 又は公示保全処分を命ずることができる。
ただし、当該価格減少行為による価格の減少 又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。
前項の場合において、第五十五条第一項第二号 又は第三号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。
前項の債務者 又は同項の不動産の所有者が当該不動産を占有する場合
前項の不動産の占有者の占有の権原が同項の規定による申立てをした者に対抗することができない場合
第一項の規定による申立てをするには、担保不動産競売の申立てをする場合において第百八十一条第一項から第三項までの規定により提出すべき文書を提示しなければならない。
執行裁判所は、申立人が第一項の保全処分を命ずる決定の告知を受けた日から三月以内に同項の担保不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、被申立人 又は同項の不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。
第五十五条第三項から第五項までの規定は第一項の規定による決定について、同条第六項の規定は第一項 又はこの項において準用する同条第五項の申立てについての裁判について、同条第七項の規定はこの項において準用する同条第五項の規定による決定について、同条第八項 及び第九項 並びに第五十五条の二の規定は第一項の規定による決定(第五十五条第一項第一号に掲げる保全処分 又は公示保全処分を命ずるものを除く。)について、第五十五条第十項の規定は第一項の申立て又は同項の規定による決定(同条第一項第一号に掲げる保全処分 又は公示保全処分を命ずるものを除く。)の執行に要した費用について、第八十三条の二の規定は第一項の規定による決定(第五十五条第一項第三号に掲げる保全処分 及び公示保全処分を命ずるものに限る。)の執行がされた場合について準用する。
この場合において、
第五十五条第三項中
「債務者以外の占有者」とあるのは、
「債務者 及び不動産の所有者以外の占有者」と
読み替えるものとする。
第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。
前章第二節第二款 及び第百八十一条から第百八十四条までの規定は、船舶を目的とする担保権の実行としての競売について準用する。
この場合において、
第百十五条第三項中
「執行力のある債務名義の正本」とあるのは
「第百八十九条において準用する第百八十一条第一項から第三項までに規定する文書」と、
第百八十一条第一項第四号中
「一般の先取特権」とあるのは
「先取特権」と
読み替えるものとする。
動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。
債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合
債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合
債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、第百九十二条において準用する第百二十三条第二項の規定による捜索に先立つて 又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合
執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。
ただし、当該動産が第百二十三条第二項に規定する場所 又は容器にない場合は、この限りでない。
前項の許可の決定は、債務者に送達しなければならない。
第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
動産競売に係る差押えに対する執行異議の申立てにおいては、債務者 又は動産の所有者は、担保権の不存在 若しくは消滅 又は担保権によつて担保される債権の一部の消滅を理由とすることができる。
前章第二節第三款(第百二十三条第二項、第百二十八条、第百三十一条 及び第百三十二条を除く。)及び第百八十三条の規定は動産競売について、第百二十八条、第百三十一条 及び第百三十二条の規定は一般の先取特権の実行としての動産競売について、第百二十三条第二項の規定は第百九十条第一項第三号に掲げる場合における動産競売について準用する。
第百四十三条に規定する債権 及び第百六十七条第一項に規定する財産権(以下この項において「その他の財産権」という。)を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書(権利の移転について登記等を要するその他の財産権を目的とする担保権で一般の先取特権以外のものについては、第百八十一条第一項第一号から第三号まで、第二項 又は第三項に規定する文書)が提出されたときに限り、開始する。
担保権を有する者が目的物の売却、賃貸、滅失 若しくは損傷 又は目的物に対する物権の設定 若しくは土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)による収用 その他の行政処分により債務者が受けるべき金銭 その他の物に対して民法 その他の法律の規定によつてするその権利の行使についても、同様とする。
前章第二節第四款第一目(第百四十六条第二項、第百五十二条 及び第百五十三条を除く。)及び第百八十二条から第百八十四条までの規定は前項に規定する担保権の実行 及び行使について、第百四十六条第二項、第百五十二条 及び第百五十三条の規定は前項に規定する一般の先取特権の実行 及び行使について準用する。
第三十八条、第四十一条 及び第四十二条の規定は、担保権の実行としての競売、担保 不動産収益執行 並びに前条第一項に規定する担保権の実行 及び行使について準用する。
留置権による競売 及び民法、商法 その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。