民法

# 明治二十九年法律第八十九号 #

第四章 相続の承認及び放棄

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第百二号による改正
最終編集日 : 2024年 04月27日 20時49分


第一節 総則

1項

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純 若しくは限定の承認 又は放棄をしなければならない。


ただし、この期間は、利害関係人 又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

2項

相続人は、相続の承認 又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

1項

相続人が相続の承認 又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

1項

相続人が未成年者 又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者 又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

1項

相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。


ただし、相続の承認 又は放棄をしたときは、この限りでない。

1項

相続の承認 及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない

2項

前項の規定は、第一編総則)及び前編親族)の規定により相続の承認 又は放棄の取消しをすることを妨げない。

3項

前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。


相続の承認 又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。

4項

第二項の規定により限定承認 又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

第二節 相続の承認

第一款 単純承認

1項

相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

1項

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 号

相続人が相続財産の全部 又は一部を処分したとき。


ただし、保存行為 及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二 号

相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認 又は相続の放棄をしなかったとき。

三 号

相続人が、限定承認 又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部 若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。


ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

第二款 限定承認

1項

相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ 被相続人の債務 及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

1項

相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

1項

相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

1項

相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。

1項

限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。

2項

第六百四十五条第六百四十六条 並びに第六百五十条第一項 及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。

1項

限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと 及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。


この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

2項

前項の規定による公告には、相続債権者 及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。


ただし、限定承認者は、知れている相続債権者 及び受遺者を除斥することができない

3項

限定承認者は、知れている相続債権者 及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

4項

第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

1項

限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者 及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

1項

第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者 その他知れている相続債権者に、それぞれ その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。


ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない

1項

限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。

2項

条件付きの債権 又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

1項

限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない

1項

前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。


ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部 又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

1項

相続債権者 及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売 又は鑑定に参加することができる。


この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。

1項

限定承認者は、第九百二十七条の公告 若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内に相続債権者 若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者 若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


第九百二十九条から第九百三十一条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。

2項

前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者 又は受遺者に対する他の相続債権者 又は受遺者の求償を妨げない。

3項

第七百二十四条の規定は、前二項の場合について準用する。

1項

第九百二十七条第一項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者 及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産についてのみ その権利を行使することができる。


ただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

1項

相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の清算人を選任しなければならない。

2項

前項の相続財産の清算人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理 及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。

3項

第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の清算人について準用する。


この場合において、

第九百二十七条第一項
限定承認をした後五日以内」とあるのは、
「その相続財産の清算人の選任があった後十日以内」と

読み替えるものとする。

1項

限定承認をした共同相続人の一人 又は数人について第九百二十一条第一号 又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、当該共同相続人に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる。

第三節 相続の放棄

1項

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

1項

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

1項

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人 又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

2項

第六百四十五条第六百四十六条 並びに第六百五十条第一項 及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。