科学技術・イノベーション基本法

# 平成七年法律第百三十号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   産業通則
@ 施行日 : 令和三年四月一日 ( 2021年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和二年法律第六十三号による改正
最終編集日 : 2024年 04月29日 13時44分


1項

この法律は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策の基本となる事項を定め、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国における科学技術の水準の向上 及びイノベーションの創出の促進を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的とする。

1項

この法律において「イノベーションの創出」とは、科学的な発見 又は発明、新商品 又は新役務の開発 その他の創造的活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及することにより、経済社会の大きな変化を創出することをいう。

2項

この法律において「科学技術・イノベーション創出の振興」とは、科学技術の振興 及び研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の振興をいう。

3項

この法律において「研究開発」とは、基礎研究、応用研究 及び開発研究をいい、技術の開発を含む。

4項

この法律において「研究者等」とは、研究者 及び技術者(研究開発の補助を行う人材を含む。)並びに研究開発 又はその成果の普及 若しくは実用化に係る運営 及び管理に係る業務(専門的な知識 及び能力を必要とするものに限る)に従事する者をいう。

5項

この法律において「研究開発法人」とは、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律平成二十年法律第六十三号第二条第九項に規定する研究開発法人をいう。

6項

この法律において「大学等」とは、大学(大学院を含む。)及び大学共同利用機関をいう。

1項

科学技術・イノベーション創出の振興は、科学技術 及びイノベーションの創出が我が国 及び人類社会の将来の発展をもたらす源泉であり、科学技術に係る知識の集積が人類にとっての知的資産であることに鑑み、研究者等 及び研究開発の成果を活用した新たな事業の創出を行う人材の創造性が十分に発揮されることを旨として、人間の生活、社会 及び自然との調和を図りつつ、積極的に行われなければならない。

2項

科学技術・イノベーション創出の振興に当たっては、広範な分野における各分野の特性を踏まえた均衡のとれた研究開発能力の涵養、学際的 又は総合的な研究開発の推進、基礎研究、応用研究 及び開発研究の調和のとれた発展、学術研究 及び学術研究以外の研究の均衡のとれた推進 並びに国の試験研究機関、研究開発法人、大学等、民間事業者 その他の関係者の国内外にわたる有機的な連携について配慮されなければならず、また、自然科学と人文科学との相互の関わり合いが科学技術の進歩 及びイノベーションの創出にとって重要であることに鑑み、両者の調和のとれた発展について留意されなければならない。

3項

科学技術の振興は、科学技術がイノベーションの創出に寄与するという意義のみならず学術的価値の創出に寄与するという意義 その他の多様な意義を持つことに留意するとともに、研究開発において公正性を確保する必要があることに留意して行われなければならない。

4項

イノベーションの創出の振興は、科学技術の振興によってもたらされる研究開発の成果がイノベーションの創出に最大限つながるよう、科学技術の振興との有機的な連携を図りつつ、行われなければならない。

5項

科学技術・イノベーション創出の振興は、全ての国民が科学技術 及びイノベーションの創出の恵沢をあまねく享受できる社会が実現されることを旨として、行われなければならない。

6項

科学技術・イノベーション創出の振興に当たっては、あらゆる分野の科学技術に関する知見を総合的に活用して、次に掲げる課題 その他の社会の諸課題への的確な対応が図られるよう留意されなければならない。

一 号
少子高齢化、人口の減少、国境を越えた社会経済活動の進展への対応 その他の我が国が直面する課題
二 号
食料問題、エネルギーの利用の制約、地球温暖化問題 その他の人類共通の課題
三 号
科学技術の活用により生ずる社会経済構造の変化に伴う雇用 その他の分野における新たな課題
1項

国は、前条に規定する科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針(次条から第七条までにおいて「振興方針」という。)にのっとり、科学技術・イノベーション創出の振興に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

1項

地方公共団体は、振興方針にのっとり、科学技術・イノベーション創出の振興に関し、国の施策に準じた施策 及び その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

1項

研究開発法人 及び大学等は、その活動が科学技術の水準の向上 及びイノベーションの創出の促進に資するものであることに鑑み、振興方針にのっとり、科学技術の進展 及び社会の要請に的確に対応しつつ、人材の育成 並びに研究開発 及び その成果の普及に自主的かつ計画的に努めるものとする。

2項

研究開発法人 及び大学等は、その活動において研究者等 及び研究開発に係る支援を行う人材の果たす役割の重要性に鑑み、これらの者の職務 及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、これらの者の適切な処遇の確保 及び研究施設等(研究施設 及び研究設備をいう。以下同じ。)の整備に努めるものとする。

1項

民間事業者は、振興方針にのっとり、その事業活動に関し、研究開発法人 及び大学等と積極的に連携し、研究開発 及びその成果の実用化によるイノベーションの創出に努めるものとする。

2項

民間事業者は、研究開発 及びその成果の実用化によるイノベーションの創出において研究者等 及び研究開発の成果を活用した新たな事業の創出を行う人材の果たす役割の重要性に鑑み、これらの者の活用に努めるとともに、これらの者の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、これらの者の適切な処遇の確保に努めるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、基礎研究が新しい現象の発見 及び解明 並びに独創的な新技術の創出等をもたらすものであること、その成果の見通しを当初から立てることが難しく、また、その成果が実用化に必ずしも結び付くものではないこと等の性質を有するものであることに鑑み、基礎研究の推進において国 及び地方公共団体が果たす役割の重要性に配慮しなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策で大学等に係るものを策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学等における研究活動の活性化を図るよう努めるとともに、研究者等の自主性の尊重 その他の大学等における研究の特性に配慮しなければならない。

1項
政府は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上 又は金融上の措置 その他の措置を講じなければならない。
1項

政府は、毎年、国会に、政府が科学技術・イノベーション創出の振興に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。