科学技術・イノベーション基本法

平成七年法律第百三十号
分類 法律
カテゴリ   産業通則
@ 施行日 : 令和三年四月一日 ( 2021年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和二年法律第六十三号による改正
最終編集日 : 2024年 03月08日 09時38分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 科学技術・イノベーション基本計画

  • 第三章 研究開発の推進等

  • 第四章 国際的な交流等の推進

  • 第五章 科学技術に関する学習の振興等

第一章 総則

1項

この法律は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策の基本となる事項を定め、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国における科学技術の水準の向上 及びイノベーションの創出の促進を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的とする。

1項

この法律において「イノベーションの創出」とは、科学的な発見 又は発明、新商品 又は新役務の開発 その他の創造的活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及することにより、経済社会の大きな変化を創出することをいう。

2項

この法律において「科学技術・イノベーション創出の振興」とは、科学技術の振興 及び研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の振興をいう。

3項

この法律において「研究開発」とは、基礎研究、応用研究 及び開発研究をいい、技術の開発を含む。

4項

この法律において「研究者等」とは、研究者 及び技術者(研究開発の補助を行う人材を含む。)並びに研究開発 又はその成果の普及 若しくは実用化に係る運営 及び管理に係る業務(専門的な知識 及び能力を必要とするものに限る)に従事する者をいう。

5項

この法律において「研究開発法人」とは、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律平成二十年法律第六十三号第二条第九項に規定する研究開発法人をいう。

6項

この法律において「大学等」とは、大学(大学院を含む。)及び大学共同利用機関をいう。

1項

科学技術・イノベーション創出の振興は、科学技術 及びイノベーションの創出が我が国 及び人類社会の将来の発展をもたらす源泉であり、科学技術に係る知識の集積が人類にとっての知的資産であることに鑑み、研究者等 及び研究開発の成果を活用した新たな事業の創出を行う人材の創造性が十分に発揮されることを旨として、人間の生活、社会 及び自然との調和を図りつつ、積極的に行われなければならない。

2項

科学技術・イノベーション創出の振興に当たっては、広範な分野における各分野の特性を踏まえた均衡のとれた研究開発能力の涵養、学際的 又は総合的な研究開発の推進、基礎研究、応用研究 及び開発研究の調和のとれた発展、学術研究 及び学術研究以外の研究の均衡のとれた推進 並びに国の試験研究機関、研究開発法人、大学等、民間事業者 その他の関係者の国内外にわたる有機的な連携について配慮されなければならず、また、自然科学と人文科学との相互の関わり合いが科学技術の進歩 及びイノベーションの創出にとって重要であることに鑑み、両者の調和のとれた発展について留意されなければならない。

3項

科学技術の振興は、科学技術がイノベーションの創出に寄与するという意義のみならず学術的価値の創出に寄与するという意義 その他の多様な意義を持つことに留意するとともに、研究開発において公正性を確保する必要があることに留意して行われなければならない。

4項

イノベーションの創出の振興は、科学技術の振興によってもたらされる研究開発の成果がイノベーションの創出に最大限つながるよう、科学技術の振興との有機的な連携を図りつつ、行われなければならない。

5項

科学技術・イノベーション創出の振興は、全ての国民が科学技術 及びイノベーションの創出の恵沢をあまねく享受できる社会が実現されることを旨として、行われなければならない。

6項

科学技術・イノベーション創出の振興に当たっては、あらゆる分野の科学技術に関する知見を総合的に活用して、次に掲げる課題 その他の社会の諸課題への的確な対応が図られるよう留意されなければならない。

一 号
少子高齢化、人口の減少、国境を越えた社会経済活動の進展への対応 その他の我が国が直面する課題
二 号
食料問題、エネルギーの利用の制約、地球温暖化問題 その他の人類共通の課題
三 号
科学技術の活用により生ずる社会経済構造の変化に伴う雇用 その他の分野における新たな課題
1項

国は、前条に規定する科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針(次条から第七条までにおいて「振興方針」という。)にのっとり、科学技術・イノベーション創出の振興に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

1項

地方公共団体は、振興方針にのっとり、科学技術・イノベーション創出の振興に関し、国の施策に準じた施策 及び その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

1項

研究開発法人 及び大学等は、その活動が科学技術の水準の向上 及びイノベーションの創出の促進に資するものであることに鑑み、振興方針にのっとり、科学技術の進展 及び社会の要請に的確に対応しつつ、人材の育成 並びに研究開発 及び その成果の普及に自主的かつ計画的に努めるものとする。

2項

研究開発法人 及び大学等は、その活動において研究者等 及び研究開発に係る支援を行う人材の果たす役割の重要性に鑑み、これらの者の職務 及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、これらの者の適切な処遇の確保 及び研究施設等(研究施設 及び研究設備をいう。以下同じ。)の整備に努めるものとする。

1項

民間事業者は、振興方針にのっとり、その事業活動に関し、研究開発法人 及び大学等と積極的に連携し、研究開発 及びその成果の実用化によるイノベーションの創出に努めるものとする。

2項

民間事業者は、研究開発 及びその成果の実用化によるイノベーションの創出において研究者等 及び研究開発の成果を活用した新たな事業の創出を行う人材の果たす役割の重要性に鑑み、これらの者の活用に努めるとともに、これらの者の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、これらの者の適切な処遇の確保に努めるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、基礎研究が新しい現象の発見 及び解明 並びに独創的な新技術の創出等をもたらすものであること、その成果の見通しを当初から立てることが難しく、また、その成果が実用化に必ずしも結び付くものではないこと等の性質を有するものであることに鑑み、基礎研究の推進において国 及び地方公共団体が果たす役割の重要性に配慮しなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策で大学等に係るものを策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学等における研究活動の活性化を図るよう努めるとともに、研究者等の自主性の尊重 その他の大学等における研究の特性に配慮しなければならない。

1項
政府は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上 又は金融上の措置 その他の措置を講じなければならない。
1項

政府は、毎年、国会に、政府が科学技術・イノベーション創出の振興に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。

第二章 科学技術・イノベーション基本計画

1項

政府は、科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、科学技術・イノベーション創出の振興に関する基本的な計画(以下この条において「科学技術・イノベーション基本計画」という。)を策定しなければならない。

2項
科学技術・イノベーション基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 号
研究開発の推進に関する総合的な方針
二 号
次に掲げる人材の確保、養成 及び資質の向上 並びにその適切な処遇の確保に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
研究者等

研究開発に係る支援を行う人材(に該当するものを除く

研究開発の成果を活用した新たな事業の創出を行う人材
研究開発の成果を活用した新たな事業の創出に係る支援を行う人材
三 号
研究施設等の整備、研究開発に係る情報化の促進 その他の研究開発の推進のための環境の整備に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
四 号
研究開発の成果の実用化 及びこれによるイノベーションの創出の促進を図るための環境の整備に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
五 号
その他科学技術・イノベーション創出の振興に関し必要な事項
3項

政府は、科学技術・イノベーション基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ、総合科学技術・イノベーション会議の議を経なければならない。

4項

政府は、科学技術 及びイノベーションの創出の進展の状況、政府が科学技術・イノベーション創出の振興に関して講じた施策の効果等を勘案して、適宜、科学技術・イノベーション基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。


この場合においては、前項の規定を準用する。

5項

政府は、第一項の規定により科学技術・イノベーション基本計画を策定し、又は前項の規定によりこれを変更したときは、これを公表しなければならない。

6項

政府は、科学技術・イノベーション基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等 その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

第三章 研究開発の推進等

1項

国は、広範な分野における各分野の特性を踏まえた多様な研究開発の均衡のとれた推進に必要な施策を講ずるとともに、国として特に振興を図るべき重要な科学技術の分野に関する研究開発の一層の推進を図るため、その企画、実施等に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、科学技術の進展等に対応した研究開発を推進するため、大学院における教育研究の充実 その他の研究者等の確保、養成 及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。

2項
国は、研究者等の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、研究者等の適切な処遇の確保に必要な施策を講ずるものとする。
3項

国は、研究開発の円滑な推進にとっては第十二条第二項第二号ロに掲げる人材が、研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の推進にとっては同号ハ 及びに掲げる人材が、それぞれ不可欠であることに鑑み、これらの人材の確保、養成 及び資質の向上 並びにその適切な処遇の確保を図るため、前二項に規定する施策に準じて施策を講ずるものとする。

1項

国は、科学技術の進展等に対応した研究開発を推進するため、研究開発機関(国の試験研究機関、研究開発法人、大学等 及び民間事業者等における研究開発に係る機関をいう。次条 及び第十七条において同じ。)の研究施設等の整備に必要な施策を講ずるものとする。

2項

国は、研究開発の効果的かつ効率的な推進を図るため、研究材料の円滑な供給等研究開発に係る支援機能の充実に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、研究開発の効果的かつ効率的な推進を図るため、科学技術に関する情報処理の高度化、科学技術に関するデータベースの充実、研究開発機関等の間の情報ネットワークの構築等研究開発に係る情報化の促進に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、研究開発機関 又は研究者等相互の間の交流により研究者等の多様な知識の融合等を図ることが新たな研究開発の進展をもたらす源泉となるものであり、また、その交流が研究開発の効果的かつ効率的な推進にとって不可欠なものであることに鑑み、研究者等の交流、研究開発機関による共同研究開発、研究開発機関の研究施設等の共同利用等研究開発に係る交流の促進に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、研究開発の円滑な推進を図るため、研究開発の展開に応じて研究開発に係る資金を効果的かつ効率的に使用できるようにする等 その活用に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、研究開発の成果の活用を図るため、研究開発の成果の適切な保護 及び公開、研究開発に関する情報の提供等 その普及に必要な施策 並びにその適切な実用化 及びこれによるイノベーションの創出の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、我が国の科学技術活動 及びイノベーションの創出に係る活動において民間事業者が果たす役割の重要性に鑑み、民間事業者の自主的な努力を助長することによりその研究開発 及び研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出を促進するよう、必要な施策を講ずるものとする。

第四章 国際的な交流等の推進

1項

国は、国際的な科学技術活動 及びイノベーションの創出に係る活動を強力に展開することにより、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすとともに、我が国における科学技術 及びイノベーションの創出の一層の進展に資するため、研究者等の国際的交流、国際的な共同研究開発、科学技術に関する情報の国際的流通等科学技術 及びイノベーションの創出に関する国際的な交流等の推進に必要な施策を講ずるものとする。

第五章 科学技術に関する学習の振興等

1項

国は、青少年をはじめ広く国民があらゆる機会を通じて科学技術に対する理解と関心を深めることができるよう、学校教育 及び社会教育における科学技術に関する学習の振興 並びに科学技術に関する啓発 及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。