裁判員の参加する刑事裁判に関する法律

# 平成十六年法律第六十三号 #
略称 : 裁判員法 

第一節 審理及び裁判の特例

分類 法律
カテゴリ   司法
@ 施行日 : 令和六年二月十五日 ( 2024年 2月15日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第二十八号による改正
最終編集日 : 2024年 07月20日 08時25分


第一款 区分審理決定

1項

裁判所は、被告人を同じくする数個の対象事件の弁論を併合した場合 又は第四条第一項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において、併合した事件(以下「併合事件」という。)を一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間 その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任 又は職務の遂行を確保するため特に必要があると認められるときは、検察官被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で、併合事件の一部を 又は二以上の被告事件ごとに区分し、この区分した 又は二以上の被告事件ごとに、順次、審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができる。


ただし、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるとき その他相当でないと認められるときは、この限りでない。

2項

区分審理決定 又は前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

3項

区分審理決定 又は第一項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判所は、被告人の主張、審理の状況 その他の事情を考慮して、区分事件(区分審理決定により区分して審理することとされた 又は二以上の被告事件をいう。以下同じ。)ごとに審理することが適当でないと認めるときは、検察官被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で、区分審理決定を取り消す決定をすることができる。


ただし、区分事件につき部分判決がされた後は、この限りでない。

2項

裁判所は、被告人の主張、審理の状況 その他の事情を考慮して、適当と認めるときは、検察官被告人 若しくは弁護人の請求により 又は職権で、区分審理決定を変更する決定をすることができる。


この場合においては、前条第一項ただし書の規定を準用する。

3項

前二項の決定 又はこれらの項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

4項

前条第三項の規定は、前項に規定する決定について準用する。

1項

裁判所は、二以上の区分事件があるときは、決定で、区分事件を審理する順序を定めなければならない。

2項

裁判所は、被告人の主張、審理の状況 その他の事情を考慮して、適当と認めるときは、決定で、前項の決定を変更することができる。

3項

前二項の決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

1項

裁判所は、区分事件に含まれる被告事件の全部が、対象事件に該当しないとき 又は刑事訴訟法第三百十二条の規定により罰条が撤回 若しくは変更されたため対象事件に該当しなくなったときは、構成裁判官のみで構成する合議体でその区分事件の審理 及び裁判を行う旨の決定をすることができる。

1項

区分審理決定 並びに第七十二条第一項 及び第二項第七十三条第一項 及び第二項 並びに前条の決定は、公判前整理手続 及び期日間整理手続において行うことができる。


第七十一条第一項 並びに第七十二条第一項 及び第二項の請求を却下する決定についても、同様とする。

1項

裁判所は、区分審理決定をした場合において、第二十六条第一項に規定する必要な員数の補充裁判員を置く決定 又は補充裁判員を置かない決定をするときは、各区分事件の審理 及び裁判(以下「区分事件審判」という。)並びに第八十六条第一項に規定する併合事件審判について、それぞれ、これをしなければならない。

第二款 区分事件審判

1項

区分事件の審理において、証拠調べが終わった後、検察官は、次条第二項第一号 及び第三号から第五号まで 並びに第三項各号に掲げる事項に係る事実 及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。

2項

区分事件の審理において、証拠調べが終わった後、被告人 及び弁護人は、当該区分事件について意見を陳述することができる。

3項

区分事件の審理において、裁判所は、区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人刑事訴訟法第三百十六条の三十三第三項に規定する被害者参加人をいう。第八十九条第一項において同じ。)又はその委託を受けた弁護士から、第一項に規定する事項に係る事実 又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、同項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。

4項

刑事訴訟法第三百十六条の三十八第二項から第四項までの規定は、前項の規定による意見の陳述について準用する。

5項

刑事訴訟法第三百十六条の三十七の規定は、第三項の規定による意見の陳述をするための被告人に対する質問について準用する。

1項

区分事件に含まれる被告事件について、犯罪の証明があったときは、刑事訴訟法第三百三十三条 及び第三百三十四条の規定にかかわらず、部分判決で有罪の言渡しをしなければならない。

2項

部分判決で有罪の言渡しをするには、刑事訴訟法第三百三十五条第一項の規定にかかわらず、次に掲げる事項を示さなければならない。

一 号
罪となるべき事実
二 号
証拠の標目
三 号

罰条の適用 並びに刑法明治四十年法律第四十五号第五十四条第一項の規定の適用 及びその適用に係る判断

四 号

法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実に係る判断

五 号

法律上刑を減免し 又は減免することができる理由となる事実に係る判断

3項

部分判決で有罪の言渡しをする場合は、次に掲げる事項を示すことができる。

一 号

犯行の動機、態様 及び結果 その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実

二 号

没収、追徴 及び被害者還付の根拠となる事実 並びにこれらに関する規定の適用に係る判断

4項

区分事件の審理において第二項第四号 又は第五号に規定する事実が主張されたときは、刑事訴訟法第三百三十五条第二項の規定にかかわらず、部分判決において、これに対する判断を示さなければならない。

5項

第六十三条の規定は、第一項の規定による部分判決の宣告をする場合について準用する。

1項

区分事件に含まれる被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条の規定による管轄違いの判決、同法第三百三十六条の規定による無罪の判決、同法第三百三十七条の規定による免訴の判決 又は同法第三百三十八条の規定による公訴棄却の判決の言渡しをしなければならない事由があるときは、部分判決でその旨の言渡しをしなければならない。

1項

部分判決に対しては、刑事訴訟法第三百七十二条の規定にかかわらず控訴をすることができない

1項

第七十九条の部分判決は、当該部分判決をした事件に係る弁論を刑事訴訟法第三百十三条第一項の決定により分離した場合には、その決定を告知した時に、終局の判決となるものとする。

1項

区分事件審判に関する公判調書は、刑事訴訟法第四十八条第三項の規定にかかわらず、各公判期日後速やかに、遅くとも当該区分事件についての部分判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。


ただし、部分判決を宣告する公判期日の調書 及び公判期日から部分判決を宣告する日までの期間が十日に満たない場合における当該公判期日の調書は、それぞれその公判期日後十日以内に、整理すれば足りる。

2項

前項の公判調書に係る刑事訴訟法第五十一条第一項の規定による異議の申立ては、同条第二項の規定にかかわらず、遅くとも当該区分事件審判における最終の公判期日後十四日以内前項ただし書の規定により部分判決を宣告する公判期日後に整理された調書については、整理ができた日から十四日以内)にこれをしなければならない。

1項

区分事件に含まれる被告事件についての公訴は、刑事訴訟法第二百五十七条の規定にかかわらず、当該区分事件について部分判決の宣告があった後は、これを取り消すことができない

2項

刑事訴訟法第四百六十五条第一項の規定による正式裁判の請求があった被告事件について、区分審理決定があったときは、同法第四百六十六条の規定にかかわらず、当該被告事件を含む区分事件について部分判決の宣告があった後は、当該請求を取り下げることができない

3項

前項の区分審理決定があった場合には、同項の請求に係る略式命令は、刑事訴訟法第四百六十九条の規定にかかわらず、当該被告事件について終局の判決があったときに、その効力を失う。

1項

区分事件審判に係る職務を行う裁判員 及び補充裁判員の任務は、第四十八条の規定にかかわらず次の各号いずれかに該当するときに終了する。

一 号

当該区分事件について部分判決の宣告をしたとき。

二 号

当該区分事件に含まれる被告事件の全部について刑事訴訟法第三百三十九条第一項の規定による公訴を棄却する決定がされたとき。

三 号

当該区分事件について第七十四条の決定がされたとき。

1項

前条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し、新たに第二条第一項合議体に他の区分事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった場合には、第六十一条第一項の規定にかかわらず、公判手続の更新は行わないものとする。

第三款 併合事件審判

1項

裁判所は、すべての区分事件審判が終わった後、区分事件以外の被告事件の審理 及び区分事件の審理(当該区分事件に含まれる被告事件に係る部分判決で示された事項に係るもの(第三項の決定があった場合を除く)を除く)並びに併合事件の全体についての裁判(以下「併合事件審判」という。)をしなければならない。

2項

裁判所は、前項の規定により併合事件の全体についての裁判をする場合においては、部分判決がされた被告事件に係る当該部分判決で示された事項については、次項の決定があった場合を除き、これによるものとする。

3項

裁判所は、構成裁判官合議により、区分事件の審理 又は部分判決について刑事訴訟法第三百七十七条各号第三百七十八条各号 又は第三百八十三条各号に掲げる事由があると認めるときは、職権で、その旨の決定をしなければならない。

1項

第八十四条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し、新たに第二条第一項合議体に併合事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった場合には、第六十一条第一項の規定にかかわらず、併合事件審判をするのに必要な範囲で、区分事件の公判手続を更新しなければならない。

1項

区分事件に含まれる被告事件についての刑事訴訟法第二百九十二条の二第一項の規定による意見の陳述 又は同条第七項の規定による意見を記載した書面の提出は、併合事件審判における審理において行うものとする。


ただし、併合事件審判における審理において行うことが困難である場合 その他当該被告事件を含む区分事件の審理において行うことが相当と認めるときは、当該区分事件の審理において行うことができる。

1項

併合事件審判における審理において行う刑事訴訟法第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述、同条第二項の規定による被告人 及び弁護人の意見の陳述 並びに同法第三百十六条の三十八第一項の規定による区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述は、部分判決で示された事項については、することができない。

2項

裁判長は、前項に規定する意見の陳述が部分判決で示された事項にわたるときは、これを制限することができる。