文部科学省が著作の名義を有する教科書(以下単に「教科書」という。)の著作権は、文部科学大臣が管理するものとする。
文部科学省著作教科書の出版権等に関する法律
文部科学大臣は、教科書の出版権(以下単に「出版権」という。)を設定することができる。
この法律で「著作権」とは、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二十一条から 第二十八条までに規定する権利を、「出版権」とは、同法第七十九条第一項の規定により設定する権利をいう。
出版権を取得しようとする者は、その資格について文部科学大臣の審査を受けなければならない。
前項の審査は、教育上支障を生じないことを期するために、出版権を取得しようとする者が良質の教科書を学校において必要とする時期までに製造供給するにたる事業能力 及び信用状態を有するかどうかを、第三条の規定による競争を行わせるに先立つて審査することを目的とする。
出版権の設定は、前条の審査に合格した者の競争によつて行う。
但し、競争に付するいとまがないときは、同条の審査に合格した者との随意契約によることができる。
競争に加わろうとする者は、現金 又は国債をもつて、その見積つた予定製造原価に最初に発行する予定部数を乗じて得た額の百分の一以上の保証金を納めなければならない。
競落者が契約を結ばないときは、保証金は、国庫に帰属する。
競争は、教科書一部当りの製造原価について入札の方法によつて行い、文部科学大臣の予定した製造原価以内において最も低額の入札をした者に出版権を設定するものとする。
競争に付しようとするときは、その入札期日の前日から起算し少くとも十日前に、官報、新聞紙、掲示 その他の方法をもつて公告しなければならない。
但し、急を要する場合においては、その期間を五日までに短縮することができる。
前項の規定による公告は、左に掲げる事項について行うものとする。
教科書の種類 及び最初に発行を予定される部数
前項第三号の製造原価の算出の基礎については、あらかじめ文部科学省令で定める。
文部科学大臣 又は その委任を受けた官吏は、競争入札に付する教科書の製造原価を予定し、その予定製造原価を封書にし、開札の際 これを開札場所に置かなければならない。
教科書の定価は、第一項の規定による製造原価の入札価格を基準として算定するものとする。
開札は、公告に示した場所 及び日時において、入札者の面前において行わなければならない。
但し、入札者で出席しない者があるときは、入札事務に関係のない官吏をして開札に立ち合わせなければならない。
入札者は一旦提出した入札書の引換、変更 又は取消をすることができない。
開札の場合において各人の入札のうち、第五条第五項の規定により予定した製造原価の制限に達したものがないときは、直ちに、再度の入札をすることができる。
落札となるべき同価の入札をした者が二人以上あるときは、直ちに、くじで落札者を定めなければならない。
前項の場合において、当該入札者のうち出席しない者 又はくじを引かない者があるときは、入札事務に関係のない官吏をしてこれに代りくじを引かせることができる。
入札者 若しくは落札者がない場合又は落札者が契約を結ばない場合において、更に入札に付しようとするときは、第五条第二項の期間は、五日までに短縮することができる。
出版権の設定を受けた者(以下「出版権者」という。)は、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)第八条の規定により、文部科学大臣が都道府県教育委員会の報告した教科書の需要数を基礎にして発行すべき教科書の種類 及び部数を指示したときは、その指示した発行を引き受けなければならない。
出版権の存続期間中物価の変動 その他やむを得ない事由によつて、出版権者の引き受けた製造原価を変更する必要が生じたときは、文部科学大臣は、出版権者と協議してこれを改定することができる。
出版権者は、発行の指示があつたときは、すみやかに発行の指示があつた部数に応じ、定価(出版料相当額を除く。)の百分の二から 百分の十六・六までの範囲内で文部科学省令の定めるところにより算定した額の出版料を国庫に納付しなければならない。
但し、文部科学大臣は、発行の指示があつた日から四箇月を限度として、出版料納付の時期を定めることができる。
文部科学大臣は、出版権者が災害 その他 出版権者の責に帰することのできない事由によつて教科書の全部 若しくは一部の製造供給ができなくなり、出版料の納付が困難であると認められるとき、又は教科書の発行部数が五万部を越えない場合において、義務教育上の見地から特にその定価をやすくする必要があると認められるときは、出版料を軽減し、又は免除することができる。
左の各号の一に該当する事由がある場合には、文部科学大臣は、出版権を消滅させることができる。
出版権者の事業能力、信用状態が出版権設定当時の状況より低下し、教育上 支障のないように教科書を製造供給することができないと認められるに至つたとき。
第十条 又は第十二条に規定する義務を怠つたとき。
教科書の発行に関する臨時措置法第十四条 又は第十五条の規定により文部科学大臣が発行の指示を取り消したとき。
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号)第十九条の規定により文部科学大臣が教科用図書発行者の指定を取り消したとき。
第十一条の協議がととのわないときは、出版権者 又は文部科学大臣は、出版権を消滅させることができる。
出版権が消滅したときは、文部科学大臣は、出版権の設定をしていた者に対して、消滅の際に有した教科書、 その半製品 及び版型について、新たに第三条の規定により文部科学大臣が出版権を設定した者と譲渡に関する協議をすることを命ずることができる。
前項に規定する協議の命令は、出版権の消滅の日から 一箇月を経過したときは、行うことができない。
第一項の協議がととのわないとき、又は協議することができないときは、譲渡に関して文部科学大臣が裁定する。
前項の裁定があつたときは、その裁定の定めるところにより当事者間に協議がととのつたものとみなす。
第三項の裁定中 対価について不服のある譲渡の当事者は、その裁定の通知を受けた日から 六箇月以内に、訴えをもつてその金額の増減を請求することができる。
前項の訴においては、譲渡の当事者の一方を被告とする。
第三項の裁定についての審査請求においては、対価についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。
出版権は文部科学大臣の認可を経なければ、譲渡することができない。
第十条の規定は、前項の規定によつて出版権を譲り受けた者に準用する。
出版権は、質入することができない。
この法律の規定は、政令の定めるところにより、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条第二項(同法第四十九条、第四十九条の八、第六十二条、第七十条第一項 及び第八十二条において準用する場合を含む。)に規定する教材 その他の教科書以外の教授上用いられる著作物であつて文部科学省が著作の名義を有するものに準用する。
教科書の著作権の管理 及び出版権の設定に関してこの法律に定のない事項については、その性質に反しない限り、著作権法、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)、及び国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)並びにこれらの法律の規定に基く命令の規定を適用するものとする。
この法律の実施のための手続 その他の施行について必要な事項は、政令で定める。