民事執行法

# 昭和五十四年法律第四号 #
略称 : 民執法 

第三款 動産に対する強制執行

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第十七号による改正
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分

1項

動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で一月以内に収穫することが確実であるもの及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む。以下この節次章 及び第四章において同じ。)に対する強制執行(以下「動産執行」という。)は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。

2項

動産執行においては、執行官は、差押債権者のためにその債権 及び執行費用の弁済を受領することができる。

1項

債務者の占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。

2項

執行官は、前項の差押えをするに際し、債務者の住居 その他債務者の占有する場所に立ち入り、その場所において、又は債務者の占有する金庫 その他の容器について目的物を捜索することができる。


この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸 及び金庫 その他の容器を開くため必要な処分をすることができる。

3項

執行官は、相当であると認めるときは、債務者に差し押さえた動産(以下「差押物」という。)を保管させることができる。


この場合においては、差押えは、差押物について封印 その他の方法で差押えの表示をしたときに限り、その効力を有する。

4項

執行官は、前項の規定により債務者に差押物を保管させる場合において、相当であると認めるときは、その使用を許可することができる。

5項

執行官は、必要があると認めるときは、第三項の規定により債務者に保管させた差押物を自ら保管し、又は前項の規定による許可を取り消すことができる。

1項

前条第一項 及び第三項から第五項までの規定は、債権者 又は提出を拒まない第三者の占有する動産の差押えについて準用する。

1項

執行官は、差押物 又は仮差押えの執行をした動産を更に差し押さえることができない

2項

差押えを受けた債務者に対しその差押えの場所について更に動産執行の申立てがあつた場合においては、執行官は、まだ差し押さえていない動産があるときはこれを差し押さえ、差し押さえるべき動産がないときはその旨を明らかにして、その動産執行事件と先の動産執行事件とを併合しなければならない。


仮差押えの執行を受けた債務者に対しその執行の場所について更に動産執行の申立てがあつたときも、同様とする。

3項

前項前段の規定により二個の動産執行事件が併合されたときは、後の事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、先の事件において差し押さえられたものとみなし、後の事件の申立ては、配当要求の効力を生ずる。


先の差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、又はその申立てに係る手続が停止され、若しくは取り消されたときは、先の事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、後の事件のために差し押さえられたものとみなす。

4項

第二項後段の規定により仮差押執行事件と動産執行事件とが併合されたときは、仮差押えの執行がされた動産は、併合の時に、動産執行事件において差し押さえられたものとみなし、仮差押執行事件の申立ては、配当要求の効力を生ずる。


差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、又はその申立てに係る手続が取り消されたときは、動産執行事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、仮差押執行事件において仮差押えの執行がされたものとみなす。

1項

差押えの効力は、差押物から生ずる天然の産出物に及ぶ。

1項

差押物を第三者が占有することとなつたときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その第三者に対し、差押物を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができる。

2項

前項の申立ては、差押物を第三者が占有していることを知つた日から一週間以内にしなければならない。

3項

第一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

4項

第五十五条第八項から第十項までの規定は、第一項の規定による決定について準用する。

1項

動産の差押えは、差押債権者の債権 及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。

2項

差押えの後にその差押えが前項の限度を超えることが明らかとなつたときは、執行官は、その超える限度において差押えを取り消さなければならない。

1項

差し押さえるべき動産の売得金の額が手続費用の額を超える見込みがないときは、執行官は、差押えをしてはならない。

2項

差押物の売得金の額が手続費用 及び差押債権者の債権に優先する債権の額の合計額以上となる見込みがないときは、執行官は、差押えを取り消さなければならない。

1項

差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官は、その差押物の差押えを取り消すことができる。

1項

次に掲げる動産は、差し押さえてはならない

一 号

債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳 及び建具

二 号

債務者等の一月間の生活に必要な食料 及び燃料

三 号

標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭

四 号

主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜 及びその飼料 並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子 その他これに類する農産物

五 号

主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕 又は養殖に欠くことができない漁網 その他の漁具、えさ 及び稚魚 その他これに類する水産物

六 号

技術者、職人、労務者 その他の主として自己の知的 又は肉体的な労働により職業 又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く)のその業務に欠くことができない器具 その他の物(商品を除く

七 号

実印 その他の印で職業 又は生活に欠くことができないもの

八 号

仏像、位牌 その他礼拝 又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

九 号

債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿 及びこれらに類する書類

十 号

債務者 又はその親族が受けた勲章 その他の名誉を表章する物

十一 号

債務者等の学校 その他の教育施設における学習に必要な書類 及び器具

十二 号

発明 又は著作に係る物で、まだ公表していないもの

十三 号

債務者等に必要な義手、義足 その他の身体の補足に供する物

十四 号

建物 その他の工作物について、災害の防止 又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械 又は器具、避難器具 その他の備品

1項

執行裁判所は、申立てにより、債務者 及び債権者の生活の状況 その他の事情を考慮して、差押えの全部 若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。

2項

事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押えが取り消された動産の差押えを許し、又は同項の規定による差押えの全部 若しくは一部の取消しを命ずることができる。

3項

前二項の規定により差押えの取消しの命令を求める申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで強制執行の停止を命ずることができる。

4項

第一項 又は第二項の申立てを却下する決定 及びこれらの規定により差押えを許す決定に対しては、執行抗告をすることができる。

5項

第三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない

1項

先取特権 又は質権を有する者は、その権利を証する文書を提出して、配当要求をすることができる。

1項

執行官は、差押物を売却するには、入札 又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。

1項

第六十五条 及び第六十八条の規定は、差押物を売却する場合について準用する。

1項

執行官は、手形、小切手 その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け 若しくは支払のための提示 又は支払の請求(以下「提示等」という。)を要するもの(以下「手形等」という。)を差し押さえた場合において、その期間の始期が到来したときは、債務者に代わつて手形等の提示等をしなければならない。

1項

第三十九条第一項第七号 又は第八号に掲げる文書の提出があつた場合において、差押物について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、その差押物を売却することができる。

2項

執行官は、前項の規定により差押物を売却したときは、その売得金を供託しなければならない。

1項

執行官は、有価証券を売却したときは、買受人のために、債務者に代わつて裏書 又は名義書換えに必要な行為をすることができる。

1項

債権者が一人である場合 又は債権者が二人以上であつて売得金、差押金銭 若しくは手形等の支払金(以下「売得金等」という。)で各債権者の債権 及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行官は、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。

2項

前項に規定する場合を除き、売得金等の配当について債権者間に協議が調つたときは、執行官は、その協議に従い配当を実施する。

3項

前項の協議が調わないときは、執行官は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

4項

第八十四条第三項 及び第四項 並びに第八十八条の規定は、第一項 又は第二項の規定により配当等を実施する場合について準用する。

1項

配当等を受けるべき債権者は、差押債権者のほか、売得金については執行官がその交付を受けるまで(第百三十七条 又は民事保全法第四十九条第三項の規定により供託された売得金については、動産執行が続行されることとなるまで)に、差押金銭についてはその差押えをするまでに、手形等の支払金についてはその支払を受けるまでに配当要求をした債権者とする。

1項

第百三十九条第一項 又は第二項の規定により配当等を実施する場合において、配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、執行官は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

一 号

停止条件付 又は不確定期限付であるとき。

二 号

仮差押債権者の債権であるとき。

三 号

第三十九条第一項第七号 又は第百九十二条において準用する第百八十三条第一項第六号に掲げる文書が提出されているとき。

四 号

その債権に係る先取特権 又は質権の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき。

2項

執行官は、配当等の受領のために出頭しなかつた債権者に対する配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。

1項

執行裁判所は、第百三十九条第三項の規定による届出があつた場合には直ちに、前条第一項の規定による届出があつた場合には供託の事由が消滅したときに、配当等の手続を実施しなければならない。

2項

第八十四条第八十五条 及び第八十八条から第九十二条までの規定は、前項の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。