この法律は、国民が健康な生活 及び長寿を享受することのできる社会(以下「健康長寿社会」という。)を形成するためには、先端的な科学技術を用いた医療、革新的な医薬品等(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第四項に規定する医療機器 又は同条第九項に規定する再生医療等製品をいう。第十三条第一項において同じ。)を用いた医療 その他の世界最高水準の技術を用いた医療(以下「世界最高水準の医療」という。)の提供に資する医療分野の研究開発 並びにその環境の整備 及び成果の普及 並びに健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出 及び活性化 並びにそれらの環境の整備(以下「健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出」という。)を図るとともに、それを通じた我が国経済の成長を図ることが重要となっていることに鑑み、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関し、基本理念、国等の責務、その推進を図るための基本的施策 その他基本となる事項について定めるとともに、政府が講ずべき健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「健康・医療戦略」という。)の作成 及び健康・医療戦略推進本部の設置 その他の健康・医療戦略の推進に必要となる事項について定めることにより、健康・医療戦略を推進し、もって健康長寿社会の形成に資することを目的とする。
健康・医療戦略推進法
第一章 総則
健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出は、医療分野の研究開発における基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの一貫した研究開発の推進 及びその成果の円滑な実用化により、世界最高水準の医療の提供に資するとともに、健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出 及びその海外における展開の促進 その他の活性化により、海外における医療の質の向上にも寄与しつつ、我が国経済の成長に資するものとなることを旨として、行われなければならない。
国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関し、国との適切な役割分担の下、地方公共団体が実施すべき施策として、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
大学、研究開発法人(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成二十年法律第六十三号)第二条第九項に規定する研究開発法人をいう。)その他の研究機関(以下単に「研究機関」という。)は、基本理念にのっとり、医療分野の研究開発 及びその成果の普及 並びに人材の育成に積極的に努めなければならない。
研究機関は、医療分野の研究開発を行うに当たっては、先端的、学際的 又は総合的な研究に努めなければならない。
医療機関は、基本理念にのっとり、第三条の規定に基づき国が実施する施策 及び第四条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出を行う事業者(次条、第十二条 及び第十六条において単に「事業者」という。)は、基本理念にのっとり、自ら研究開発に努めるとともに、第三条の規定に基づき国が実施する施策 及び第四条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
国は、国、地方公共団体、研究機関、医療機関 及び事業者が相互に連携を図りながら協力することにより、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出の効果的な実施が図られることに鑑み、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
国は、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する施策を実施するため必要な法制上 又は財政上の措置 その他の措置を講ずるものとする。
第二章 基本的施策
国は、世界最高水準の医療の提供に必要な医療分野の研究開発の推進 及びその成果の円滑な実用化を図るため、医療分野の研究開発に関し、基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの一貫した研究開発の推進、研究機関における研究開発の成果の移転のための体制の整備、研究開発の成果に係る情報の提供 その他の施策を講ずるものとする。
国は、世界最高水準の医療の提供に必要な医療分野の研究開発が円滑かつ効果的に行われるよう、研究機関における医療分野の研究開発 及び臨床研究において中核的な役割を担う医療機関における臨床研究の環境の整備 その他の施策を講ずるものとする。
国は、研究機関、医療機関 又は事業者が、医療分野の研究開発を行うに当たっては、法令 及び研究開発に関する行政指導指針(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第八号ニの行政指導指針をいう。)を遵守し、生命倫理への配慮 及び個人情報の適切な管理を行うよう、医療分野の研究開発の公正かつ適正な実施の確保に必要な施策を講ずるものとする。
国は、医療分野の研究開発の成果である新たな医薬品等の実用化が迅速かつ安全に図られるよう、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第十四条、第二十三条の二の五 又は第二十三条の二十五の規定による医薬品等の承認のための審査 その他の医薬品等の実用化のために必要な手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備 その他の施策を講ずるものとする。
国は、医療分野の研究開発の成果の実用化に際し、その品質、有効性 及び安全性を科学的知見に基づき適正かつ迅速に予測、評価 及び判断することに関する科学の振興に必要な体制の整備、人材の確保、養成 及び資質の向上 その他の施策を講ずるものとする。
国は、健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の活性化を図るため、医療分野の研究開発の成果の企業化の促進 その他の新たな産業活動の創出 及びその海外における展開の促進に必要な施策を講ずるものとする。
国は、国民が広く健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に対する関心と理解を深めるよう、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する教育 及び学習の振興、広報活動の充実 その他の必要な施策を講ずるものとする。
国は、地方公共団体、研究機関、医療機関 及び事業者と緊密な連携協力を図りながら、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する専門的知識を有する人材の確保、養成 及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
第三章 健康・医療戦略
政府は、基本理念にのっとり、前章に定める基本的施策を踏まえ、健康・医療戦略を定めるものとする。
健康・医療戦略は、次に掲げる事項について定めるものとする。
前号に掲げるもののほか、政府が講ずべき健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、健康・医療戦略を公表するものとする。
前二項の規定は、健康・医療戦略の変更について準用する。
第四章 医療分野の研究開発の推進
健康・医療戦略推進本部は、政府が講ずべき医療分野の研究開発 並びにその環境の整備 及び成果の普及に関する施策(以下「医療分野研究開発等施策」という。)の集中的かつ計画的な推進を図るため、健康・医療戦略に即して、医療分野研究開発等施策の推進に関する計画(以下この条、次条 及び第二十一条第二号において「医療分野研究開発推進計画」という。)を作成するものとする。
医療分野研究開発推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
集中的かつ計画的に講ずべき医療分野研究開発等施策
前二号に掲げるもののほか、医療分野研究開発等施策を集中的かつ計画的に推進するために必要な事項
前項第二号の医療分野研究開発等施策については、当該医療分野研究開発等施策の具体的な目標 及びその達成の期間を定めるものとする。
健康・医療戦略推進本部は、第一項の規定により医療分野研究開発推進計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
健康・医療戦略推進本部は、医療分野の研究開発を取り巻く状況の変化を勘案し、及び医療分野研究開発等施策の効果に関する評価を踏まえ、医療分野研究開発推進計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとする。
第四項の規定は、医療分野研究開発推進計画の変更について準用する。
医療分野研究開発推進計画は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、研究機関の能力を活用して行う医療分野の研究開発 及びその環境の整備 並びに研究機関における医療分野の研究開発 及びその環境の整備の助成において中核的な役割を担うよう作成するものとする。
第五章 健康・医療戦略推進本部
健康・医療戦略の推進を図るため、内閣に、健康・医療戦略推進本部(以下「本部」という。)を置く。
本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構法(平成二十六年法律第四十九号)第八条 又は第二十条の規定により意見を述べること。
前各号に掲げるもののほか、健康・医療に関する先端的研究開発 及び新産業創出に関する施策で重要なものの企画 及び立案 並びに総合調整に関すること。
前各号に掲げるもののほか、他の法令の規定により本部に属させられた事務
本部は、健康・医療戦略推進本部長、健康・医療戦略推進副本部長 及び健康・医療戦略推進本部員をもって組織する。
本部の長は、健康・医療戦略推進本部長(次項、次条第二項 及び第二十五条第二項において「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
本部に、健康・医療戦略推進副本部長(次項 及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官 及び健康・医療戦略担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、健康・医療戦略に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。
副本部長は、本部長の職務を助ける。
本部に、健康・医療戦略推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
本部員は、本部長 及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。
本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長 並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人 又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明 その他必要な協力を求めることができる。
本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
本部に関する事務は、内閣府において処理する。
本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。