公訴は、検察官がこれを行う。
刑事訴訟法
第二章 公訴
犯人の性格、年齢 及び境遇、犯罪の軽重 及び情状 並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
無期の懲役 又は禁錮に当たる罪については三十年
長期二十年の懲役 又は禁錮に当たる罪については二十年
前二号に掲げる罪以外の罪については十年
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
死刑に当たる罪については二十五年
無期の懲役 又は禁錮に当たる罪については十五年
長期十五年以上の懲役 又は禁錮に当たる罪については十年
長期十五年未満の懲役 又は禁錮に当たる罪については七年
長期十年未満の懲役 又は禁錮に当たる罪については五年
長期五年未満の懲役 若しくは禁錮 又は罰金に当たる罪については三年
拘留 又は科料に当たる罪については一年
前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
刑法第百八十一条の罪(人を負傷させたときに限る。)若しくは同法第二百四十一条第一項の罪 又は盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第四条の罪(同項の罪に係る部分に限る。)
二十年
刑法第百七十七条 若しくは第百七十九条第二項の罪 又はこれらの罪の未遂罪
十五年
刑法第百七十六条 若しくは第百七十九条第一項の罪 若しくはこれらの罪の未遂罪 又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る。)
十二年
前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中 その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。
刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第二百五十条の規定を適用する。
時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。
時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違 又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。
この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
犯人が国外にいる場合 又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達 若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間 又は逃げ隠れている期間 その進行を停止する。
犯人が国外にいること 又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達 若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。
公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
被告人の氏名 その他被告人を特定するに足りる事項
公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。
訴因を明示するには、できる限り日時、場所 及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。
但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
数個の訴因 及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類 その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
検察官は、公訴の提起と同時に、被告人に送達するものとして、起訴状の謄本を裁判所に提出しなければならない。
ただし、やむを得ない事情があるときは、公訴の提起後速やかにこれを提出すれば足りる。
公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
検察官は、事件がその所属検察庁の対応する裁判所の管轄に属しないものと思料するときは、書類 及び証拠物とともにその事件を管轄裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
検察官は、告訴、告発 又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人 又は請求人に通知しなければならない。
公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
検察官は、告訴、告発 又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人 又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人 又は請求人にその理由を告げなければならない。
刑法第百九十三条から第百九十六条まで 又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条 若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第四十二条 若しくは第四十三条の罪について告訴 又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。
前項の請求は、第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、請求書を公訴を提起しない処分をした検察官に差し出してこれをしなければならない。
前条第一項の請求は、第二百六十六条の決定があるまでこれを取り下げることができる。
前項の取下をした者は、その事件について更に前条第一項の請求をすることができない。
検察官は、第二百六十二条第一項の請求を理由があるものと認めるときは、公訴を提起しなければならない。
第二百六十二条第一項の請求についての審理 及び裁判は、合議体でこれをしなければならない。
裁判所は、必要があるときは、合議体の構成員に事実の取調をさせ、又は地方裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。
この場合には、受命裁判官 及び受託裁判官は、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。
裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。
請求が法令上の方式に違反し、若しくは請求権の消滅後にされたものであるとき、又は請求が理由のないときは、請求を棄却する。
請求が理由のあるときは、事件を管轄地方裁判所の審判に付する。
前条第二号の決定があつたときは、その事件について公訴の提起があつたものとみなす。
裁判所は、第二百六十六条第二号の決定をした場合において、同一の事件について、検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)第二条第一項第一号に規定する審査を行う検察審査会 又は同法第四十一条の六第一項の起訴議決をした検察審査会(同法第四十一条の九第一項の規定により公訴の提起 及び その維持に当たる者が指定された後は、その者)があるときは、これに当該決定をした旨を通知しなければならない。
裁判所は、第二百六十六条第二号の規定により事件がその裁判所の審判に付されたときは、その事件について公訴の維持にあたる者を弁護士の中から指定しなければならない。
前項の指定を受けた弁護士は、事件について公訴を維持するため、裁判の確定に至るまで検察官の職務を行う。
但し、検察事務官 及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない。
前項の規定により検察官の職務を行う弁護士は、これを法令により公務に従事する職員とみなす。
裁判所は、第一項の指定を受けた弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、何時でもその指定を取り消すことができる。
第一項の指定を受けた弁護士には、政令で定める額の手当を給する。
裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を棄却する場合 又はその請求の取下があつた場合には、決定で、請求者に、その請求に関する手続によつて生じた費用の全部 又は一部の賠償を命ずることができる。
この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
検察官は、公訴の提起後は、訴訟に関する書類 及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。
前項の規定にかかわらず、第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体は、謄写することができない。