この編(第七百四十七条を除く。)において「船舶」とは、商行為をする目的で航海の用に供する船舶(端舟 その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟を除く。)をいう。
商法
第一章 船舶
第二節 船舶の所有
⤏ 第一款 総則
船舶所有者は、船舶法(明治三十二年法律第四十六号)の定めるところに従い、登記をし、かつ、船舶国籍証書の交付を受けなければならない。
前項の規定は、総トン数二十トン未満の船舶については、適用しない。
船舶所有権の移転は、その登記をし、かつ、船舶国籍証書に記載しなければ、第三者に対抗することができない。
航海中の船舶を譲渡したときは、その航海によって生ずる損益は、譲受人に帰属する。
差押え 及び仮差押えの執行(仮差押えの登記をする方法によるものを除く。)は、航海中の船舶(停泊中のものを除く。)に対してはすることができない。
船舶所有者は、船長 その他の船員がその職務を行うについて故意 又は過失によって他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
持分会社の業務を執行する社員の持分の移転により当該持分会社の所有する船舶が日本の国籍を喪失することとなるときは、他の業務を執行する社員は、相当の対価でその持分を売り渡すことを請求することができる。
⤏ 第二款 船舶の共有
船舶共有者の間においては、船舶の利用に関する事項は、各船舶共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
船舶共有者は、その持分の価格に応じ、船舶の利用に関する費用を負担しなければならない。
船舶共有者が次に掲げる事項を決定したときは、その決定について異議のある船舶共有者は、他の船舶共有者に対し、相当の対価で自己の持分を買い取ることを請求することができる。
新たな航海(船舶共有者の間で予定されていなかったものに限る。)をすること。
前項の規定による請求をしようとする者は、同項の決定の日(当該決定に加わらなかった場合にあっては、当該決定の通知を受けた日の翌日)から三日以内に、他の船舶共有者 又は船舶管理人に対してその旨の通知を発しなければならない。
船舶共有者は、その持分の価格に応じ、船舶の利用について生じた債務を弁済する責任を負う。
船舶共有者の間に組合契約があるときであっても、各船舶共有者(船舶管理人であるものを除く。)は、他の船舶共有者の承諾を得ないで、その持分の全部 又は一部を他人に譲渡することができる。
船舶管理人である船舶共有者は、他の船舶共有者の全員の承諾を得なければ、その持分の全部 又は一部を他人に譲渡することができない。
船舶共有者は、船舶管理人を選任しなければならない。
船舶共有者でない者を船舶管理人とするには、船舶共有者の全員の同意がなければならない。
船舶共有者が船舶管理人を選任したときは、その登記をしなければならない。
船舶管理人の代理権の消滅についても、同様とする。
第九条の規定は、前項の規定による登記について準用する。
船舶管理人は、次に掲げる行為を除き、船舶共有者に代わって船舶の利用に関する一切の裁判上 又は裁判外の行為をする権限を有する。
船舶を賃貸し、又はこれについて抵当権を設定すること。
新たな航海(船舶共有者の間で予定されていなかったものに限る。)をすること。
船舶管理人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
船舶管理人は、その職務に関する帳簿を備え、船舶の利用に関する一切の事項を記載しなければならない。
船舶管理人は、一定の期間ごとに、船舶の利用に関する計算を行い、各船舶共有者の承認を求めなければならない。
船舶共有者の持分の移転 又は国籍の喪失により船舶が日本の国籍を喪失することとなるときは、他の船舶共有者は、相当の対価でその持分を売り渡すことを請求し、又は競売に付することができる。
第三節 船舶賃貸借
船舶の賃貸借は、これを登記したときは、その後その船舶について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
船舶の賃借人であって商行為をする目的でその船舶を航海の用に供しているものは、その船舶を受け取った後にこれに生じた損傷があるときは、その利用に必要な修繕をする義務を負う。
ただし、その損傷が賃貸人の責めに帰すべき事由によるものであるときは、この限りでない。
前条に規定する船舶の賃借人は、その船舶の利用に関する事項については、第三者に対して、船舶所有者と同一の権利義務を有する。
前項の場合において、その船舶の利用について生じた先取特権は、船舶所有者に対しても、その効力を生ずる。
ただし、船舶の賃借人によるその利用の態様が船舶所有者との契約に反することを先取特権者が知っていたときは、この限りでない。
第四節 定期傭船
定期傭船契約は、当事者の一方が艤装した船舶に船員を乗り組ませて当該船舶を一定の期間相手方の利用に供することを約し、相手方がこれに対してその傭船料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
定期傭船者は、船長に対し、航路の決定 その他の船舶の利用に関し必要な事項を指示することができる。
ただし、発航前の検査 その他の航海の安全に関する事項については、この限りでない。
船舶の燃料、水先料、入港料 その他船舶の利用に関する通常の費用は、定期傭船者の負担とする。
第五百七十二条、第七百三十九条第一項 並びに第七百四十条第一項 及び第三項の規定は定期傭船契約に係る船舶により物品を運送する場合について、第七百三条第二項の規定は定期傭船者の船舶の利用について生ずる先取特権について、それぞれ準用する。
この場合において、
第七百三十九条第一項中
「発航の当時」とあるのは、
「各航海に係る発航の当時」と
読み替えるものとする。