この法律は、認知症、知的障害 その他の精神上の障害があることにより財産の管理 又は日常生活等に支障がある者を社会全体で支え合うことが、高齢社会における喫緊の課題であり、かつ、共生社会の実現に資すること 及び成年後見制度がこれらの者を支える重要な手段であるにもかかわらず十分に利用されていないことに鑑み、成年後見制度の利用の促進について、その基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及び基本方針 その他の基本となる事項を定めること等により、成年後見制度の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
成年後見制度の利用の促進に関する法律
第一章 総則
この法律において「成年後見人等」とは、次に掲げる者をいう。
この法律において「成年被後見人等」とは、次に掲げる者をいう。
任意後見契約に関する法律(平成十一年法律第百五十号)第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の委任者
この法律において「成年後見等実施機関」とは、自ら成年後見人等となり、又は成年後見人等 若しくはその候補者の育成 及び支援等に関する活動を行う団体をいう。
この法律において「成年後見関連事業者」とは、介護、医療 又は金融に係る事業 その他の成年後見制度の利用に関連する事業を行う者をいう。
成年後見制度の利用の促進は、成年被後見人等が、成年被後見人等でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと 及び成年被後見人等の財産の管理のみならず 身上の保護が適切に行われるべきこと等の成年後見制度の理念を踏まえて行われるものとする。
成年後見制度の利用の促進は、成年後見制度の利用に係る需要を適切に把握すること、市民の中から成年後見人等の候補者を育成し その活用を図ることを通じて成年後見人等となる人材を十分に確保すること等により、地域における需要に的確に対応することを旨として行われるものとする。
成年後見制度の利用の促進は、家庭裁判所、関係行政機関(法務省、厚生労働省、総務省 その他の関係行政機関をいう。以下同じ。)、地方公共団体、民間の団体等の相互の協力 及び適切な役割分担の下に、成年後見制度を利用し 又は利用しようとする者の権利利益を適切かつ確実に保護するために必要な体制を整備することを旨として行われるものとする。
国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、成年後見制度の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、成年後見制度の利用の促進に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
成年後見人等、成年後見等実施機関 及び成年後見関連事業者は、基本理念にのっとり、その業務を行うとともに、国 又は地方公共団体が実施する成年後見制度の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
国民は、成年後見制度の重要性に関する関心と理解を深めるとともに、基本理念にのっとり、国 又は地方公共団体が実施する成年後見制度の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
国 及び地方公共団体 並びに成年後見人等、成年後見等実施機関 及び成年後見関連事業者は、成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施に当たっては、相互の緊密な連携の確保に努めるものとする。
地方公共団体は、成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施に当たっては、特に、その地方公共団体の区域を管轄する家庭裁判所 及び関係行政機関の地方支分部局 並びにその地方公共団体の区域に所在する成年後見人等、成年後見等実施機関 及び成年後見関連事業者 その他の関係者との適切な連携を図るよう、留意するものとする。
政府は、第十一条に定める基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置 その他の措置を速やかに講じなければならない。
この場合において、成年被後見人等の権利の制限に係る関係法律の改正 その他の同条に定める基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上の措置については、この法律の施行後三年以内を目途として講ずるものとする。
政府は、毎年一回、成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施の状況をインターネットの利用 その他適切な方法により公表しなければならない。