水難救護法
第一章 遭難船舶
遭難船舶アルコトヲ発見シタル者ハ遅滞ナク最近地ノ市町村長 又ハ警察官吏ニ報告スヘシ
前項ノ規定ハ市町村長ニ於テ船長ノ人命ヲ保護スル手段ヲ不充分ナリト認メ 又ハ船長ニ悪意アリト認メタル場合ニハ之ヲ適用セス
市町村長ハ救護ノ為人ヲ招集シ船舶車馬其ノ他ノ物件ヲ徴用シ 又ハ他人ノ所有地ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ招集セラレタル者ハ市町村長ノ指揮ニ従ヒ救護ニ従事スヘシ
市町村長前項ノ処分ヲ為スニ当リ助力ヲ命セラレタル者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
市町村長ハ救護ニ際シ遭難物件ヲ隠匿シタル者アリト認ムルトキハ其ノ物件ヲ捜索シ 又ハ之ヲ差押フルコトヲ得
市町村長ハ遭難船舶其ノ他救上ケタル物件 及前条ノ規定ニ依リ差押ヘタル物件ヲ保管スヘシ
前項ノ物件中ニ郵便物 又ハ民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項ニ規定スル信書便物アルトキハ市町村長ハ遅滞ナク最寄ノ日本郵便株式会社ノ事業所(郵便ノ業務ヲ行フモノニ限ル)又ハ同条第六項ニ規定スル一般信書便事業者 若ハ同条第九項ニ規定スル特定信書便事業者ノ事業所ニ引渡スヘシ
船長ハ遭難後遅滞ナク船難報告書ヲ作リ市町村長ニ差出スヘシ
但シ船舶国籍証書ノ交付ヲ申請スルコトヲ要セサル船舶 又ハ湖川港湾ノミヲ限リ航行スル船舶ノ遭難ニ付テハ此ノ限ニアラス
市町村長ハ報告書ノ事実ヲ審査スル為船内書類ノ提出ヲ命シ 又ハ船員、旅客其ノ他船中ニ在リタル者ヲ呼出シ訊問ヲ為スコトヲ得
物件久ニ耐ヘ難キコト 又ハ著シク其ノ価格ヲ減スル虞アルコト
爆発物、容易ニ燃焼スヘキ物 又ハ其ノ他ノ物件ニシテ保管上危険ノ虞アルコト
保管ノ費用其ノ物件ノ価格ニ超過シ 又ハ其ノ価格ニ比シ不相当ナルコト
前項ノ規定ニ依リ公売ヲ為サントスル場合ニ於テ船長 其ノ地ニ在ルトキハ市町村長ハ期間ヲ定メ其ノ期間内ニ市町村長ノ相当ト認ムル担保ヲ供シテ物件ノ引渡ヲ請求セサルトキハ公売ニ付スヘキ旨ヲ船長ニ告知スヘシ
遭難船舶ノ所在地船籍港ナルトキハ前項ノ告知ハ船舶所有者ニ之ヲ為スヘシ
船長又ハ船舶所有者ニ於テ第二項ノ規定ニ依リ物件ノ引渡ヲ請求シタルトキハ公売ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ左ニ掲クル者ニハ之ヲ適用セス
救護セラレタル船舶ノ所有者 又ハ其ノ船舶ノ船員
故意、懈怠 又ハ過失ニ因リ遭難ヲ惹起シタル者
第五条ノ規定ニ違反シテ救護シタル者
救護ニ際シ妨害ヲ為シ 又ハ不正ノ行為ヲ為シタル者
遭難物件ヲ持去リ 又ハ其ノ引渡ヲ拒ミタル者
第六条ノ規定ニ依ル土地ノ使用 又ハ物件ノ徴用ニ対スル補償
救上ケタル物件ノ運搬、保管 又ハ公売ニ要シタル費用
前項ノ手続ヲ為ササル者ハ救護費用ノ支給ヲ受クルコトヲ得ス
遭難船舶ノ所在地船籍港ナルトキ 又ハ船長在ラサルトキハ前項ノ告知ハ船舶所有者ニ之ヲ為スヘシ
船長 又ハ船舶所有者ハ救護費用ヲ納付シテ市町村長ノ保管ニ係ル金銭其ノ他ノ物件ノ引渡ヲ受クヘシ
船長 又ハ船舶所有者ニ於テ市町村長ノ相当ト認ムル担保ヲ供スルトキハ前項ノ金銭其ノ他ノ物件ノ全部若ハ一部ノ引渡ヲ受クルコトヲ得
左ニ掲クル物件ハ前二項ノ規定ニ拘ラス其ノ引渡ヲ受クルコトヲ得
船員 及旅客ノ食料
第十七条第二項ニ掲クル物件
市町村長ノ保管スル船舶 又ハ積荷ヲ売却シ抵当ト為シ 又ハ質入セントスルトキハ市町村長ノ認可ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テ市町村長必要アリト認ムルトキハ之ニ立会フヘシ
前項ノ処分ニ因リ取得シタル金銭其ノ他ノ物件ハ市町村長之ヲ保管スヘシ
市町村長ニ於テ第十一条 又ハ前項ノ規定ニ依リ金銭ヲ保管スル場合ニ其ノ金銭救護費用ノ金額ニ達シタルトキハ直ニ其ノ金銭ヲ以テ救護費用ヲ支弁シ其ノ残額ハ保管ニ係ル他ノ物件ト共ニ船長 又ハ船舶所有者ニ引渡スヘシ
船長 又ハ船舶所有者ニ於テ市町村長ノ定メタル期間内ニ救護費用ヲ納付セサルトキハ市町村長ハ保管ノ物件 又ハ担保トシテ差出シタル物件ヲ公売シ其ノ代金ヲ保管スヘシ
前項ノ規定ハ市町村長ニ於テ公売ヲ為スモ其ノ代金ヲ以テ公売ノ費用ヲ償フニ足ラスト認メタル物件ニハ之ヲ適用セス
市町村長ハ納付ヲ受ケタル金額 又ハ其ノ保管ニ係ル金銭ヲ以テ救護費用ヲ支弁スヘシ
船長 又ハ船舶所有者救護費用ヲ納付セサル場合ニ於テ第十七条ニ定ムル手続ヲ為シタル後市町村長ノ保管ニ係ル金額ヲ以テ救護費用ヲ支弁スルニ残余アルトキハ船長 又ハ船舶所有者ニ之ヲ還付ス
本章ノ規定ハ市町村長ノ招集ヲ待タスシテ救護ニ従事シタル者ニ亦之ヲ適用ス
但シ市町村長ニ於テ救護ニ干与セサルトキハ此ノ限ニアラス
第一条乃至第四条、第五条第一項、第六条乃至第九条、第十二条乃至第十四条、第十五条第一項第二項、第十八条、第二十条及第二十一条ノ規定ハ海軍艦船 其ノ他官庁ノ所有スル船舶ニ亦之ヲ準用ス
本章ノ規定ハ条約ニ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス