この法律は、消費者と事業者との間の情報の質 及び量 並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護 及び増進に関し、消費者の権利の尊重 及びその自立の支援 その他の基本理念を定め、国、地方公共団体 及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護 及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定 及び向上を確保することを目的とする。
消費者基本法
第一章 総則
消費者の利益の擁護 及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品 及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報 及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護 及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。
消費者の自立の支援に当たつては、消費者の安全の確保等に関して事業者による適正な事業活動の確保が図られるとともに、消費者の年齢 その他の特性に配慮されなければならない。
消費者政策の推進は、高度情報通信社会の進展に的確に対応することに配慮して行われなければならない。
消費者政策の推進は、消費生活における国際化の進展にかんがみ、国際的な連携を確保しつつ行われなければならない。
消費者政策の推進は、環境の保全に配慮して行われなければならない。
国は、経済社会の発展に即応して、前条の消費者の権利の尊重 及びその自立の支援 その他の基本理念にのつとり、消費者政策を推進する責務を有する。
地方公共団体は、第二条の消費者の権利の尊重 及びその自立の支援 その他の基本理念にのつとり、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、当該地域の社会的、経済的状況に応じた消費者政策を推進する責務を有する。
事業者は、第二条の消費者の権利の尊重 及びその自立の支援 その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品 及び役務について、次に掲げる責務を有する。
消費者の安全 及び消費者との取引における公正を確保すること。
消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
消費者との取引に際して、消費者の知識、経験 及び財産の状況等に配慮すること。
消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
国 又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
事業者は、その供給する商品 及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品 及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない。
事業者団体は、事業者の自主的な取組を尊重しつつ、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理の体制の整備、事業者自らがその事業活動に関し遵守すべき基準の作成の支援 その他の消費者の信頼を確保するための自主的な活動に努めるものとする。
消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等 自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。
消費者は、消費生活に関し、環境の保全 及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めなければならない。
消費者団体は、消費生活に関する情報の収集 及び提供 並びに意見の表明、消費者に対する啓発 及び教育、消費者の被害の防止 及び救済のための活動 その他の消費者の消費生活の安定 及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めるものとする。
政府は、消費者政策の計画的な推進を図るため、消費者政策の推進に関する基本的な計画(以下「消費者基本計画」という。)を定めなければならない。
消費者基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
前号に掲げるもののほか、消費者政策の計画的な推進を図るために必要な事項
内閣総理大臣は、消費者基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があつたときは、遅滞なく、消費者基本計画を公表しなければならない。
前二項の規定は、消費者基本計画の変更について準用する。
国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定 又は改正を行なわなければならない。
政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講じなければならない。
政府は、毎年、国会に、政府が講じた消費者政策の実施の状況に関する報告書を提出しなければならない。