この法律は、国際的に協力して気候に及ぼす潜在的な影響に配慮しつつオゾン層の保護を図るため、オゾン層の保護のためのウィーン条約(以下「条約」という。)及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「議定書」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するための特定物質等の製造の規制 並びに排出の抑制 及び使用の合理化に関する措置等を講じ、もつて人の健康の保護 及び生活環境の保全に資することを目的とする。
特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律
第一章 総則
この法律において「特定物質」とは、オゾン層を破壊する物質であつて政令で定めるものをいう。
この法律において「特定物質等」とは、特定物質 及び特定物質代替物質(特定物質に代替する物質であつて地球温暖化に深刻な影響をもたらすものとして政令で定めるものをいう。第四項第二号において同じ。)をいう。
この法律における特定物質等の数量は、特定物質等の量に、次の各号に掲げる特定物質等ごとに当該各号に定める係数を乗じたものとする。
前各項の政令は、議定書の規定に即して定めるものとする。
経済産業大臣 及び環境大臣は、条約 及び議定書の的確かつ円滑な実施を図るため、次に掲げる事項を定めて公表するものとする。
これを変更したときも、同様とする。
議定書の規定に基づき我が国が遵守しなければならない特定物質等の種類ごとの生産量 及び消費量(議定書に規定する生産量 及び消費量の算定値をいう。以下同じ。)の基準限度
前号に掲げるもののほか、オゾン層の保護についての施策の実施に関する重要な事項
経済産業大臣は、特定物質等について、その種類 及び次条第一項の規制年度ごとに、その生産量 及び消費量 その他経済産業省令で定める数量の実績を公表するものとする。
第二章 特定物質等の製造等の規制
特定物質等を製造しようとする者は、その種類 及び規制年度(議定書の規定に即して特定物質等の種類ごとに経済産業省令で定める期間をいう。以下同じ。)ごとに、当該規制年度において製造しようとする数量について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
ただし、次の場合には、この限りでない。
第五条の二第一項の許可を受けた者が当該許可に係る数量以下の当該特定物質等を製造するとき。
第十一条第一項 又は第十二条第一項の確認を受けた者が当該確認に係る数量以下の当該種類の特定物質等を製造するとき。
第十三条第一項の確認を受けた者が当該確認に係る数量以下の当該特定物質等を製造するとき。
前項の許可を受けようとする者は、経済産業大臣が告示する期間内に、次の事項を記載した申請書を経済産業大臣に提出しなければならない。
前項の許可を受けて製造しようとする数量
その製造に係る特定物質等のうち当該規制年度において輸出されることが見込まれるものの数量(第八条第二項において「輸出予定数量」という。)及びその仕向地
第一項第四号の政令で定める一定数量以下の特定物質等を製造しようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、製造数量を経済産業大臣に届け出なければならない。
経済産業大臣は、前条第一項の許可をする場合には、当該許可に係る数量の全部 又は一部を輸出用製造数量として指定することができる。
前項の規定による輸出用製造数量の指定は、仕向地を定めて行う。
経済産業大臣は、第一項の規定による指定に係る者の申請に基づき、その指定を変更することができる。
第一項の規定による指定があつたときは、その指定に係る者は、輸出用製造数量に係る特定物質等の製造においては、その製造に係る数量がその製造の時における確定輸出数量(その製造に係る特定物質等(当該指定に係る種類のものに限る。)であつて、経済産業省令で定めるところにより、当該規制年度において同項の指定に係る仕向地に輸出されたこと 又は輸出されることが確実であることについての経済産業大臣の確認を受けたものの数量をいう。)を超えることとならないようにしなければならない。
第三項の申請の手続は、経済産業省令で定める。
経済産業大臣は、議定書の的確な実施を確保するために必要があると認めるときは、第四条第一項の許可のほかに、特定物質等 及び規制年度ごとに、当該規制年度において製造しようとする特定物質等の数量について、許可を行うことができる。
経済産業大臣は、前項の規定による特定物質等ごとの製造数量の許可を行おうとするときは、その旨を告示するものとする。
第四条第二項の規定は、第一項の許可について準用する。
特定物質等を輸入しようとする者は、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第五十二条の規定により、輸入の承認を受ける義務を課せられるものとする。
経済産業大臣は、我が国の特定物質等の種類ごとの生産量 及び消費量が議定書の規定に基づき我が国が遵守しなければならない限度を超えるものとならないように、かつ、特定物質等の製造 及び輸出入の状況 及び動向 その他の事情を勘案して、第四条第一項 若しくは第五条の二第一項の許可、第五条第一項の規定による指定 若しくは同条第三項の規定による変更 又は前条の輸入の承認に関する処分を行うものとする。
第四条第一項 又は第五条の二第一項の許可を受けた者(以下「許可製造者」という。)は、その許可に係る規制年度内において、経済産業大臣が告示する期間内に、第四条第一項 又は第五条の二第一項の許可に係る数量(以下「許可製造数量」という。)の増加の許可を申請することができる。
前項の規定による申請は、次の事項を記載した申請書を経済産業大臣に提出してしなければならない。
第五条 及び前条の規定は第一項の増加の許可について準用する。
許可製造者は、第四条第二項第一号、第三号 又は第四号(第五条の二第三項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)に掲げる事項に変更があつたときは、経済産業省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
許可製造者は、許可に係る規制年度において製造しようとする特定物質等の数量(以下「製造予定数量」という。)が許可製造数量(前条第一項の増加の許可、第十六条第一項の規定による削減 又は同条第二項の規定による減少の処分があつたときは、これらの処分による変更後のもの)を下回ることが確実となつたときは、遅滞なく、経済産業省令で定めるところにより、当該製造予定数量を経済産業大臣に届け出なければならない。
前項の規定による届出があつたときは、届出をした者の許可製造数量は、届出に係る製造予定数量に変更されるものとする。
第四条第一項 若しくは第五条の二第一項の許可 又は第八条第一項の増加の許可には、条件を付し、及びこれを変更することができる。
前項の条件は、議定書の的確かつ円滑な実施を確保し、又は許可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、許可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。
特定物質等を製造しようとする者は、その種類 及び規制年度ごとに、特定物質等が経済産業省令、環境省令で定める基準に従い当該規制年度内に破壊されたこと 又は破壊されることが確実であることを経済産業省令で定めるところにより証明して、当該証明に係る数量の特定物質等(当該証明に係る種類のものに限る。)を製造することができる旨の経済産業大臣の確認を受けることができる。
前項の確認を受けようとする者は、特定物質等の種類ごとに、次の事項を記載した申請書に同項の規定による証明に係る書面を添付して、経済産業大臣に提出しなければならない。
特定物質等を製造しようとする者は、その種類 及び規制年度ごとに、特定物質等が当該規制年度内に当該特定物質等以外の物質(当該特定物質等と当該特定物質等以外の物質の混合物を除く。)の製造工程において原料として使用されたこと 又は使用されることが確実であることを経済産業省令で定めるところにより証明して、当該証明に係る数量の特定物質等(当該証明に係る種類のものに限る。)を製造することができる旨の経済産業大臣の確認を受けることができる。
前項の確認を受けようとする者は、特定物質等の種類ごとに、次の事項を記載した申請書に同項の規定による証明に係る書面を添付して、経済産業大臣に提出しなければならない。
政令で定める特定物質等を製造しようとする者は、規制年度ごとに、当該特定物質等が当該規制年度内に政令で定める用途(以下この条において「特定用途」という。)に使用されたこと 又は使用されることが確実であることを経済産業省令で定めるところにより証明して、当該証明に係る数量の当該特定物質等を製造することができる旨の経済産業大臣の確認を受けることができる。
前項の確認を受けようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書に同項の規定による証明に係る書面を添付して、経済産業大臣に提出しなければならない。
第一項の政令で定める特定物質等を製造する者が、その製造に係る当該特定物質等にこれが特定用途以外の用途に使用されることを防止するための措置を講じて、これを他の者に引き渡す場合として政令で定める場合にあつては、当該引渡しに係る当該特定物質等の製造は、第四条第一項の規定の適用については、第一項の確認を受けた者がその確認に係る数量の範囲内で行うものとみなす。
第十一条第一項、第十二条第一項 又は前条第一項の確認を受けた者(以下「確認製造者」という。)は、第十一条第二項第一号 若しくは第四号、第十二条第二項第一号 若しくは第四号 又は前条第二項第一号 若しくは第三号に掲げる事項に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
許可製造者 若しくは確認製造者が当該許可 若しくは確認に係る種類の特定物質等の製造の事業の全部を譲渡し、又は許可製造者 若しくは確認製造者について相続、合併 若しくは分割(当該許可 又は確認に係る種類の特定物質等の製造の事業の全部を承継させるものに限る。)があつたときは、当該事業の全部を譲り受けた者 又は相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により事業を継続すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人 若しくは合併により設立した法人 若しくは分割により当該事業の全部を承継した法人は、許可製造者 又は確認製造者の地位を承継する。
前項の規定により許可製造者 又は確認製造者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
経済産業大臣は、許可製造者が次の各号のいずれかに該当するときは、第四条第一項 若しくは第五条の二第一項の許可を取り消し、又は許可製造数量を削減することができる。
不正の手段により第四条第一項 若しくは第五条の二第一項の許可 又は第五条第三項の規定による変更 若しくは第八条第一項の増加の許可を受けたことが判明したとき。
第五条第四項の規定に違反して特定物質等を製造したとき。
第十条第一項の条件に違反したとき。
経済産業大臣は、許可製造者が、製造予定数量が許可製造数量(第八条第一項の増加の許可、第九条第二項の規定による届出 又は前項の規定による削減があつたときは、これらの処分 又は届出による変更後のもの)を下回ることが確実となつた場合として経済産業省令で定める要件に該当する場合において、第七条に規定する事情を勘案して特に必要があると認めるときは、許可製造数量を減少させることができる。
経済産業大臣は、確認製造者が不正の手段により第十一条第一項、第十二条第一項 又は第十三条第一項の確認を受けたことが判明したときは、当該確認を取り消し、又は当該確認をした数量を削減することができる。
第三章 特定物質等その他の物質に関する届出
特定物質等の輸出を行つた者は、経済産業省令で定めるところにより、毎年、前年の輸出数量 その他経済産業省令で定める事項を経済産業大臣に届け出なければならない。
前条に定めるもののほか、特定物質等の種類ごとの生産量 及び消費量の限度を定めるに当たり必要とされる数量 その他の議定書において我が国が報告しなければならないものとされる事項を把握するために必要と認められる範囲内において、政令で、オゾン層を破壊する物質 又はオゾン層を破壊する物質に代替する物質であつて地球温暖化に深刻な影響をもたらすものの製造数量、輸出数量 又は輸入数量 その他の事項の届出に関し必要な規定を設けることができる。
第四章 特定物質等の排出の抑制及び使用の合理化
特定物質等(特定物質等以外の物質であつて政令で定めるものを含む。以下この条から第二十二条までにおいて同じ。)を業として使用する者は、その使用に係る特定物質等の排出の抑制 及び使用の合理化(特定物質等に代替する物質の利用を含む。次条において同じ。)に努めなければならない。
経済産業大臣 及び環境大臣は、条約 及び議定書の円滑な実施を確保するために必要があると認めるときは、特定物質等を業として使用する者が特定物質等の排出の抑制 又は使用の合理化を図るための指針(以下「排出抑制・使用合理化指針」という。)を定め、これを公表するものとする。
環境大臣は、前項の規定による排出の抑制についての指導 及び助言の実施に関し、主務大臣に意見を述べることができる。
経済産業大臣は、第二項の規定による使用の合理化についての指導 及び助言の実施に関し、主務大臣に意見を述べることができる。
第二項における主務大臣は、同項の指導 及び助言の対象となる者の事業を所管する大臣とする。
第五章 雑則
環境大臣は、前項の規定による観測の成果等を活用しつつ、特定物質(特定物質以外の物質であつて政令で定めるものを含む。次条において同じ。)によるオゾン層の破壊の状況 及び大気中における特定物質等の濃度変化の状況を監視し、その状況を公表するものとする。
許可製造者は、帳簿を備え、当該許可に係る規制年度の当該許可に係る種類の特定物質等の製造数量 及び輸出数量 その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
前項の帳簿は、経済産業省令で定めるところにより、保存しなければならない。
前項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査、質問 及び収去の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
経済産業大臣は、第十六条第一項の規定による削減、同条第二項の規定による減少 又は同条第三項の規定による削減の処分をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
第十六条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
前項の聴聞の主宰者は、行政手続法第十七条第一項の規定により当該処分に係る利害関係人が当該聴聞に関する手続に参加することを求めたときは、これを許可しなければならない。
この法律の規定による処分 又はその不作為についての審査請求に対する裁決は、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二十四条の規定により当該審査請求を却下する場合を除き、審査請求人に対し、相当な期間をおいて予告をした上、同法第十一条第二項に規定する審理員が公開による意見の聴取をした後にしなければならない。
前項の意見の聴取に際しては、審査請求人 及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
第一項に規定する審査請求については、行政不服審査法第三十一条の規定は適用せず、同項の意見の聴取については、同条第二項から第五項までの規定を準用する。
経済産業大臣は、次の場合には、農林水産大臣と協議しなければならない。
政令で定める特定物質を含む種類の特定物質の製造についての第四条第一項の許可をしようとするとき。
前号の許可に係る数量について、第五条第一項の規定による指定をし、又は同条第三項の規定によりこれを変更しようとするとき。
第一号の政令で定める特定物質の製造についての第五条の二第一項の許可をしようとするとき。
第一号 又は前号の許可に係る数量について、第八条第一項の増加の許可をし、又は第十六条第一項の規定による削減 若しくは同条第二項の規定による減少の処分をしようとするとき。
第一号 又は第三号の許可について、第十条第一項の規定により条件を付し、若しくはこれを変更し、又は第十六条第一項の規定による取消しをしようとするとき。
経済産業大臣 及び環境大臣は、排出抑制・使用合理化指針を定めようとするときは、前項第一号の政令で定める特定物質に係る事項に関し、農林水産大臣と協議しなければならない。
この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第六章 罰則
第四条第一項 又は第五条第四項の規定に違反して特定物質等を製造した者は、三年以下の懲役 若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
第十七条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
第二十四条第一項の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は同条第二項の規定に違反して帳簿を保存しなかつた者
第二十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第二十六条第一項の規定による検査 若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第四条第三項、第九条第一項、第十四条 又は第十五条第二項による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。
第十八条の規定に基づく政令には、その政令の規定に違反した者を二十万円以下の罰金に処する旨の規定 及び法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者がその法人 又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の刑を科する旨の規定を設けることができる。