この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発 及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済 及び社会の発展に寄与することを目的とする。
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
第一章 総則
この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(当該事業主に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業主に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。
この法律において「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいう。
この法律において「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者 及び有期雇用労働者をいう。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者について、その就業の実態等を考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実 その他の雇用管理の改善 及び通常の労働者への転換(短時間・有期雇用労働者が雇用される事業所において通常の労働者として雇い入れられることをいう。以下同じ。)の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする。
事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関し、必要な助言、協力 その他の援助を行うように努めるものとする。
国は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等について事業主 その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつ その実情に応じてこれらの者に対し必要な指導、援助等を行うとともに、短時間・有期雇用労働者の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るために必要な広報 その他の啓発活動を行うほか、その職業能力の開発 及び向上等を図る等、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の促進 その他その福祉の増進を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする。
地方公共団体は、前項の国の施策と相まって、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を推進するように努めるものとする。
第二章 短時間・有期雇用労働者対策基本方針
厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図るため、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の促進、職業能力の開発 及び向上等に関する施策の基本となるべき方針(以下 この条において「短時間・有期雇用労働者対策基本方針」という。)を定めるものとする。
短時間・有期雇用労働者対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
短時間・有期雇用労働者の職業生活の動向に関する事項
短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を促進し、並びにその職業能力の開発 及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
前二号に掲げるもののほか、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
短時間・有期雇用労働者対策基本方針は、短時間・有期雇用労働者の労働条件、意識 及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。
厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者対策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。
厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
前二項の規定は、短時間・有期雇用労働者対策基本方針の変更について準用する。
第三章 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等
第一節 雇用管理の改善等に関する措置
事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間・有期雇用労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項 及び第十四条第一項において「特定事項」という。)を文書の交付 その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。
事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項 及び労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。
事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。
前項の規定は、事業主が有期雇用労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとする場合について準用する。
この場合において、
「短時間労働者」とあるのは、
「有期雇用労働者」と
読み替えるものとする。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与 その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者 及び通常の労働者の業務の内容 及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容 及び配置の変更の範囲 その他の事情のうち、当該待遇の性質 及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行 その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容 及び配置が当該通常の労働者の職務の内容 及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条 及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間・有期雇用労働者(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者を除く。次条第二項 及び第十二条において同じ。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力 又は経験 その他の就業の実態に関する事項を勘案し、その賃金(通勤手当 その他の厚生労働省令で定めるものを除く。)を決定するように努めるものとする。
事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間・有期雇用労働者(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者を除く。以下この項において同じ。)が既に当該職務に必要な能力を有している場合 その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間・有期雇用労働者に対しても、これを実施しなければならない。
事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力 及び経験 その他の就業の実態に関する事項に応じ、当該短時間・有期雇用労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする。
事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持 又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない。
事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間・有期雇用労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間 その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に周知すること。
通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に対して与えること。
一定の資格を有する短時間・有期雇用労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。
事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第八条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項 及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容 及び理由 並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇 その他不利益な取扱いをしてはならない。
厚生労働大臣は、第六条から前条までに定める措置その他の第三条第一項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下 この節において「指針」という。)を定めるものとする。
第五条第三項から第五項までの規定は指針の策定について、同条第四項 及び第五項の規定は指針の変更について、それぞれ準用する。
事業主は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない。
事業主は、常時 厚生労働省令で定める数以上の短時間・有期雇用労働者を雇用する事業所ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、指針に定める事項 その他の短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間・有期雇用管理者を選任するように努めるものとする。
厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導 若しくは勧告をすることができる。
厚生労働大臣は、第六条第一項、第九条、第十一条第一項、第十二条から第十四条まで 及び第十六条の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。
前二項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
第二節 事業主等に対する国の援助等
国は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の促進 その他その福祉の増進を図るため、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主、事業主の団体 その他の関係者に対して、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談 及び助言 その他の必要な援助を行うことができる。
国、都道府県 及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間・有期雇用労働者 及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者がその職業能力の開発 及び向上を図ることを促進するため、短時間・有期雇用労働者、短時間・有期雇用労働者になろうとする者 その他 関係者に対して職業能力の開発 及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の配慮をするものとする。
国は、短時間・有期雇用労働者になろうとする者がその適性、能力、経験、技能の程度等にふさわしい職業を選択し、及び職業に適応することを容易にするため、雇用情報の提供、職業指導 及び職業紹介の充実等 必要な措置を講ずるように努めるものとする。
第四章 紛争の解決
第一節 紛争の解決の援助等
事業主は、第六条第一項、第八条、第九条、第十一条第一項 及び第十二条から第十四条までに定める事項に関し、短時間・有期雇用労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者 及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
前条の事項についての短時間・有期雇用労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条、第五条 及び第十二条から第十九条までの規定は適用せず、次条から第二十七条までに定めるところによる。
都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方 又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導 又は勧告をすることができる。
事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇 その他不利益な取扱いをしてはならない。
第二節 調停
都道府県労働局長は、第二十三条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方 又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。
前条第二項の規定は、短時間・有期雇用労働者が前項の申請をした場合について準用する。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第十九条から第二十六条までの規定は、前条第一項の調停の手続について準用する。
この場合において、
同法第十九条第一項中
「前条第一項」とあるのは
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第二十五条第一項」と、
同法第二十条中
「事業場」とあるのは
「事業所」と、
同法第二十五条第一項中
「第十八条第一項」とあるのは
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第二十三条」と
読み替えるものとする。
この節に定めるもののほか、調停の手続に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第五章 雑則
厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするため、短時間・有期雇用労働者のその職域の拡大に応じた雇用管理の改善等に関する措置 その他短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関し必要な事項について、調査、研究 及び資料の整備に努めるものとする。
この法律は、国家公務員 及び地方公務員並びに船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号) 第六条第一項に規定する船員については、適用しない。
第十八条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。
第六条第一項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。