自殺対策基本法

# 平成十八年法律第八十五号 #
略称 : 自殺対策法 

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   社会福祉
@ 施行日 : 平成二十八年四月一日
@ 最終更新 : 平成二十八年法律第十一号による改正
最終編集日 : 2023年 08月21日 21時50分


1項

この法律は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移している状況にあり、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これに対処していくことが重要な課題となっていることに鑑み、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

1項

自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進するための環境の整備充実が幅広くかつ適切に図られることを旨として、実施されなければならない。

2項

自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみ捉えられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない。

3項

自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因 及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。

4項

自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応 及び自殺が発生した後 又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。

5項

自殺対策は、保健、医療、福祉、教育、労働 その他の関連施策との有機的な連携が図られ、総合的に実施されなければならない。

1項

国は、前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり、自殺対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2項

地方公共団体は、基本理念にのっとり、自殺対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

3項

国は、地方公共団体に対し、前項の責務が十分に果たされるように必要な助言 その他の援助を行うものとする。

1項

事業主は、国 及び地方公共団体が実施する自殺対策に協力するとともに、その雇用する労働者の心の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

1項

国民は、生きることの包括的な支援としての自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるよう努めるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、自殺対策に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。

1項

国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間 及び自殺対策強化月間を設ける。

2項

自殺予防週間は九月十日から九月十六日までとし、自殺対策強化月間は三月とする。

3項

国 及び地方公共団体は、自殺予防週間においては、啓発活動を広く展開するものとし、それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

4項

国 及び地方公共団体は、自殺対策強化月間においては、自殺対策を集中的に展開するものとし、関係機関 及び関係団体と相互に連携協力を図りながら、相談事業 その他それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

1項

国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校(学校教育法昭和二十二年法律第二十六号第一条に規定する学校をいい、幼稚園 及び特別支援学校の幼稚部を除く第十七条第一項 及び第三項において同じ。)、自殺対策に係る活動を行う民間の団体 その他の関係者は、自殺対策の総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携を図りながら協力するものとする。

1項

自殺対策の実施に当たっては、自殺者 及び自殺未遂者 並びにそれらの者の親族等の名誉 及び生活の平穏に十分配慮し、いやしくも これらを不当に侵害することのないようにしなければならない。

1項

政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上 又は財政上の措置 その他の措置を講じなければならない。

1項

政府は、毎年、国会に、我が国における自殺の概況 及び講じた自殺対策に関する報告書を提出しなければならない。