商法

# 明治三十二年法律第四十八号 #

第九章 寄託

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和二年四月一日 ( 2020年 4月1日 )
@ 最終更新 : 平成二十九年法律第四十五号による改正
最終編集日 : 2024年 05月30日 09時33分


第一節 総則

1項

商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。

1項

旅館、飲食店、浴場 その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(以下この節において「場屋営業者」という。)は、客から寄託を受けた物品の滅失 又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない

2項

客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う。

3項

客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を表示したときであっても、場屋営業者は、前二項の責任を免れることができない

1項

貨幣、有価証券 その他の高価品については、客がその種類 及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失 又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

1項

前二条の場屋営業者の責任に係る債権は、場屋営業者が寄託を受けた物品を返還し、又は客が場屋の中に携帯した物品を持ち去った時(物品の全部滅失の場合にあっては、客が場屋を去った時)から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

2項

前項の規定は、場屋営業者が同項に規定する物品の滅失 又は損傷につき悪意であった場合には、適用しない

第二節 倉庫営業

1項

この節において「倉庫営業者」とは、他人のために物品を倉庫に保管することを業とする者をいう。

1項

倉庫営業者は、寄託者の請求により、寄託物の倉荷証券を交付しなければならない。

1項

倉荷証券には、次に掲げる事項 及びその番号を記載し、倉庫営業者がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

一 号

寄託物の種類、品質 及び数量 並びにその荷造りの種類、個数 及び記号

二 号
寄託者の氏名 又は名称
三 号
保管場所
四 号
保管料
五 号

保管期間を定めたときは、その期間

六 号

寄託物を保険に付したときは、保険金額、保険期間 及び保険者の氏名 又は名称

七 号
作成地 及び作成の年月日
1項

倉庫営業者は、倉荷証券を寄託者に交付したときは、その帳簿に次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 号

前条第一号第二号 及び第四号から第六号までに掲げる事項

二 号

倉荷証券の番号 及び作成の年月日

1項

倉荷証券の所持人は、倉営業者に対し、寄託物の分割 及びその各部分に対する倉荷証券の交付を請求することができる。


この場合において所持人は、その所持する倉荷証券を倉庫営業者に返還しなければならない。

2項

前項の規定による寄託物の分割 及び倉荷証券の交付に関する費用は、所持人が負担する。

1項

倉庫営業者は、倉荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗することができない

1項

倉荷証券が作成されたときは、寄託物に関する処分は、倉荷証券によってしなければならない。

1項

倉荷証券は、記名式であるときであっても、裏書によって、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。


ただし、倉荷証券に裏書を禁止する旨を記載したときは、この限りでない。

1項

倉荷証券により寄託物を受け取ることができる者に倉荷証券を引き渡したときは、その引渡しは、寄託物について行使する権利の取得に関しては、寄託物の引渡しと同一の効力を有する。

1項

倉荷証券の所持人は、その倉荷証券を喪失したときは、相当の担保を供して、その再交付を請求することができる。


この場合において、倉庫営業者は、その旨を帳簿に記載しなければならない。

1項

寄託者 又は倉荷証券の所持人は、倉庫営業者の営業時間内は、いつでも、寄託物の点検 若しくはその見本の提供を求め、又はその保存に必要な処分をすることができる。

1項

倉庫営業者は、寄託物の保管に関し注意を怠らなかったことを証明しなければ、その滅失 又は損傷につき損害賠償の責任を免れることができない

1項

倉庫営業者は、寄託物の出庫の時以後でなければ、保管料 及び立替金 その他寄託物に関する費用(第六百十六条第一項において「保管料等」という。)の支払を請求することができない


ただし、寄託物の一部を出庫するときは、出庫の割合に応じて、その支払を請求することができる。

1項

当事者が寄託物の保管期間を定めなかったときは、倉庫営業者は、寄託物の入庫の日から六箇月を経過した後でなければ、その返還をすることができない


ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。

1項

倉荷証券が作成されたときは、これと引換えでなければ、寄託物の返還を請求することができない

1項

倉荷証券を質権の目的とした場合において、質権者の承諾があるときは、寄託者は、当該質権の被担保債権の弁済期前であっても、寄託物の一部の返還を請求することができる。


この場合において、倉庫営業者は、返還した寄託物の種類、品質 及び数量を倉荷証券に記載し、かつ、その旨を帳簿に記載しなければならない。

1項

第五百二十四条第一項 及び第二項の規定は、寄託者 又は倉荷証券の所持人が寄託物の受領を拒み、又はこれを受領することができない場合について準用する。

1項

寄託物の損傷 又は一部滅失についての倉庫営業者の責任は、寄託者 又は倉荷証券の所持人が異議をとどめないで寄託物を受け取り、かつ、保管料等を支払ったときは、消滅する。


ただし、寄託物に直ちに発見することができない損傷 又は一部滅失があった場合において、寄託者 又は倉荷証券の所持人が引渡しの日から二週間以内に倉庫営業者に対してその旨の通知を発したときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、倉庫営業者が寄託物の損傷 又は一部滅失につき悪意であった場合には、適用しない

1項

寄託物の滅失 又は損傷についての倉庫営業者の責任に係る債権は、寄託物の出庫の日から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

2項

前項の期間は、寄託物の全部滅失の場合においては、倉庫営業者が倉荷証券の所持人(倉荷証券を作成していないとき又は倉荷証券の所持人が知れないときは、寄託者)に対してその旨の通知を発した日から起算する。

3項

前二項の規定は、倉庫営業者が寄託物の滅失 又は損傷につき悪意であった場合には、適用しない