民法

# 明治二十九年法律第八十九号 #

第三節 多数当事者の債権及び債務

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年五月二十四日 ( 2024年 5月24日 )
@ 最終更新 : 令和六年法律第三十三号による改正
最終編集日 : 2024年 10月25日 21時20分


第一款 総則

1項

数人の債権者 又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者 又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

第二款 不可分債権及び不可分債務

1項

次款連帯債権)の規定(第四百三十三条 及び第四百三十五条の規定を除く)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。

1項

不可分債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。


この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない

1項

第四款連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。

1項

不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。

第三款 連帯債権

1項

債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部 又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

1項

連帯債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない

1項

債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。

1項

連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。

1項

第四百三十二条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為 又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。


ただし、他の連帯債権者の一人 及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該 他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。

第四款 連帯債務

1項

債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部 又は一部の履行を請求することができる。

1項

連帯債務者の一人について法律行為の無効 又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

1項

連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

1項

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

2項

前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

1項

連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

1項

第四百三十八条第四百三十九条第一項 及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。


ただし、債権者 及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

1項

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

2項

前項の規定による求償は、弁済 その他免責があった日以後の法定利息 及び避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。

1項

他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。


この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済 その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

1項

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。

2項

前項に規定する場合において、求償者 及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、等しい割合で分割して負担する。

3項

前二項の規定にかかわらず、償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない

1項

連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。

第五款 保証債務

第一目 総則

1項

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

2項

保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

3項

保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

1項

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

2項

保証人は、その保証債務についてのみ、違約金 又は損害賠償の額を約定することができる。

1項

保証人の負担が債務の目的 又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

2項

主たる債務の目的 又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

1項

行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合 又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。

1項

債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。

一 号
行為能力者であること。
二 号
弁済をする資力を有すること。
2項

保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。

3項

前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない

1項

債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。

1項

債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。


ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

1項

債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

1項

保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

1項

第四百五十二条 又は第四百五十三条の規定により保証人の請求 又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告 又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告 又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。

1項

数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

1項

主たる債務者に対する履行の請求 その他の事由による時効の完成猶予 及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2項

保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。

3項

主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権 又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

1項

第四百三十八条第四百三十九条第一項第四百四十条 及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本 及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無 並びにこれらの残額 及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

1項

主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。

2項

前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)に係る保証債務の履行を請求することができない

3項

前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。

2項

第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。


この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息 及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。

3項

第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない

1項

保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。

一 号

主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。

二 号

債務が弁済期にあるとき。


ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない

三 号

保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。

1項

前条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。

2項

前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。

1項

第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。

2項

主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。


この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

3項

第四百五十九条の二第三項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。


この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。

3項

保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。

1項

連帯債務者 又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。

1項

第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため 又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額 又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

2項

第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額 又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

第二目 貸金等根保証契約

1項

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのもの 及びその保証債務について約定された違約金 又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2項

個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3項

第四百四十六条第二項 及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

1項

個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し 又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。

2項

個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。

3項

個人貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。


ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。

4項

第四百四十六条第二項 及び第三項の規定は、個人貸金等根保証契約における元本確定期日の定め 及びその変更(その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。

1項

次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。


ただし第一号に掲げる場合にあっては、強制執行 又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 号

債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行 又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 号

保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

三 号

主たる債務者 又は保証人が死亡したとき。

2項

前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。


ただし第一号に掲げる場合にあっては、強制執行 又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る

一 号

債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行 又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 号

主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

1項

保証人が法人である根保証契約において、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。

2項

保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め 若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項 若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。


主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。

3項

前二項の規定は、求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に求償権に係る債務が含まれる根保証契約の保証人が法人である場合には、適用しない

第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則

1項

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

2項

前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 号

保証人になろうとする者が、次の 又はに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該 又はに定める事項を公証人に口授すること。

保証契約(ロに掲げるものを除く

主たる債務の債権者 及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものの定めの有無 及びその内容 並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

根保証契約

主たる債務の債権者 及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無 及びその内容 並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日 又は第四百六十五条の四第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由 その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本 及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

二 号

公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。

三 号

保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。


ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

四 号

公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

3項

前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない

1項

前条第一項の保証契約 又は根保証契約の保証人になろうとする者が口がきけない者である場合には、公証人の前で、同条第二項第一号イ 又はに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該 又はに定める事項を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、同号の口授に代えなければならない。


この場合における同項第二号の規定の適用については、

同号
口述」とあるのは、
「通訳人の通訳による申述 又は自書」と

する。

2項

前条第一項の保証契約 又は根保証契約の保証人になろうとする者が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第二項第二号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により保証人になろうとする者に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。

3項

公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

1項

第四百六十五条の六第一項 及び第二項 並びに前条の規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について準用する。


主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。

2項

前項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない

1項

前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない

一 号

主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役 又はこれらに準ずる者

二 号

主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者

主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者

主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社 及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

株式会社以外の法人が主たる債務者である場合における 又はに掲げる者に準ずる者

三 号

主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者 又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者

1項

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 号

財産 及び収支の状況

二 号

主たる債務以外に負担している債務の有無 並びにその額 及び履行状況

三 号

主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨 及びその内容

2項

主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み 又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず 又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り 又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3項

前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない