炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
炭鉱災害
石炭鉱業を行なう事業場におけるガス 又は炭じんの爆発 その他厚生労働省令で定める災害をいう。
一酸化炭素中毒症
一酸化炭素による中毒 及びその続発症をいう。
使用者
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二条第三号に規定する事業者をいう。
労働者
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業 又は事務所に使用される者 及び家事使用人を除く。)をいう。
使用者 及び労働者は、労働安全衛生法 及び鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)の規定によるほか、炭鉱災害により一酸化炭素が発生した場合における一酸化炭素中毒症の防止について適切な措置を講ずるように努めなければならない。
使用者は、炭鉱災害により一酸化炭素が発生した際業務上の必要によりその発生に係る場所におり、又はその直後業務上の必要により当該場所に立ち入つた労働者(以下「被災労働者」という。)に対し、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、専門の医師による一酸化炭素中毒症に関する健康診断を行なわなければならない。
使用者(被災労働者を当該炭鉱災害が起こつた時から引き続き使用する使用者に限る。以下第七条までにおいて同じ。)は、当該被災労働者(当該炭鉱災害による一酸化炭素中毒症について現に労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定による療養補償給付 又は労働基準法の規定による療養補償を受けている被災労働者 及び第九条に規定する被災労働者を除く。)に対し、当該炭鉱災害が起こつた日から起算して二年を経過するまでの間(当該炭鉱災害による一酸化炭素中毒症にかかつたと認められた被災労働者については、当該一酸化炭素中毒症が治つたと認められた日から起算して二年を経過するまでの間)、厚生労働省令で定めるところにより、定期に、専門の医師による一酸化炭素中毒症に関する健康診断を行わなければならない。
被災労働者は、正当な理由がある場合を除き、前二項の規定により使用者が行なう健康診断を受けなければならない。
ただし、使用者が指定した医師の行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の専門の医師の行なう前二項の規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面 その他厚生労働省令で定める物件を使用者に提出したときは、この限りでない。
使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項 及び第二項の規定による健康診断 並びに前項ただし書に規定する健康診断に関する記録を作成し、これを五年間保存しなければならない。
使用者は、第一項 又は第二項の規定により健康診断を行なつた場合においては、その限度において、労働安全衛生法第六十六条第一項 又は第二項の規定による健康診断を行なわなくてもよい。
被災労働者が第三項ただし書に規定する健康診断を受けた場合においても、同様とする。
使用者は、前条第一項 若しくは第二項の規定による健康診断 又は同条第三項ただし書に規定する健康診断の結果に基づき、被災労働者に関し、危害防止 又は健康保持のため必要があるときは、当該被災労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮 その他の適切な措置を講じなければならない。
第九条に規定する被災労働者に関し、危害防止 又は健康保持のため必要があるときも、同様とする。
使用者は、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症にかかつた被災労働者であつて、当該一酸化炭素中毒症に係る療養の開始後三年を経過した日において労働者災害補償保険法の規定による傷病補償年金を受けているもの又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつたものが、それぞれ当該三年を経過した日 又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、住宅 その他の福利厚生に関する施設であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「福利厚生施設」という。)の供与を引き続き受けることを希望したときは、厚生労働省令で定める期間、当該福利厚生施設を供与しなければならない。
使用者は、前項の規定による福利厚生施設の供与については、当該被災労働者が使用されていた事業場に使用される労働者に対する福利厚生施設の供与との均衡を失わないようにしなければならない。
前条の規定による診察等の措置は、労働者災害補償保険法第二十九条第一項の社会復帰促進等事業とする。
前条の規定による診察等の措置に要する費用の額は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第十二条第三項の規定の適用については、同項に規定する保険給付の額とみなす。
前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行なう。
次の各号のいずれかに該当する者は、五千円以下の罰金に処する。
第五条第一項、第二項 又は第四項の規定に違反した者
第十三条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
前条の規定による報告を命ぜられて報告をせず、又は虚偽の報告をした者
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても、同項の刑を科する。