陪審法

# 大正十二年法律第五十号 #

第三章 陪審手続

分類 法律
カテゴリ   刑事
最終編集日 : 2023年 06月24日 19時53分


第一節 公判準備

1項
陪審ノ評議ニ付スヘキ事件ニ付テハ裁判長ハ公判準備期日ヲ定ムヘシ
1項
被告人公判準備期日前弁護人ヲ選任セサルトキハ裁判長ハ其ノ裁判所所在地ノ弁護士中ヨリ之ヲ選任スヘシ
○2項
被告人ノ利害相反セサルトキハ同一ノ弁護人ヲシテ数人ノ弁護ヲ為サシムルコトヲ得
1項
公判準備期日ニハ被告人及弁護人ヲ召喚スヘシ
○2項
公判準備期日ハ之ヲ検察官ニ通知スヘシ
1項

召喚状ノ送達ノ日ト公判準備期日トノ間ニハ少クトモ五日ノ猶予期間ヲ存スヘシ

1項
公判期日ヲ定メタル後被告人ノ請求ニ因リ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スヘキモノトシタルトキハ其ノ公判期日ヲ公判準備期日トス
1項
公判準備期日ニ於ケル取調ハ定数ノ判事、検察官及裁判所書記列席シテ之ヲ為ス
○2項

公判準備期日ニ於テハ弁護人出頭スルニ非サレハ取調ヲ為スコトヲ得ス弁護人数人アルトキハ其ノ一人ノ出頭ヲ以テ足ル

○3項
公判準備期日ニ於ケル取調ハ之ヲ公行セス
1項

第二条ノ規定ニ依リ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルトキハ裁判長ハ被告人ニ対シ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辞シ得ヘキ旨ヲ告知スヘシ

1項
公判準備期日ニ於テハ裁判長ハ公訴事実ニ付出頭シタル被告人ヲ訊問スヘシ
○2項
陪席判事ハ裁判長ニ告ケ被告人ヲ訊問スルコトヲ得
○3項
検察官及弁護人ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人ヲ訊問スルコトヲ得
1項
公判準備期日ニ於テハ裁判所ハ必要ナル証拠調ノ決定ヲ為スヘシ
○2項
検察官、被告人及弁護人ハ証人訊問、鑑定、検証又ハ証拠物若ハ証拠書類ノ集取ヲ請求スルコトヲ得
○3項

前項ノ請求ヲ却下スルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ

1項
裁判所書記ハ公判準備調書ヲ作リ公判準備期日ニ於ケル被告人ニ対スル訊問及其ノ供述、検察官被告人弁護人ノ申立、裁判所ノ裁判其ノ他一切ノ訴訟手続ヲ記載スヘシ
1項

公判準備調書ニハ前条ニ規定スル事項ノ外被告事件、被告人及出頭シタル弁護人ノ氏名並手続ヲ為シタル裁判所年月日及裁判長陪席判事検察官裁判所書記ノ官氏名ヲ記載シ被告人出頭セサルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ

1項

公判準備調書ハ三日内ニ之ヲ整理シ裁判長及裁判所書記署名捺印スヘシ

○2項
裁判長ハ署名捺印前ニ公判準備調書ヲ検閲シ意見アルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
1項

検察官、被告人及弁護人ハ公判準備期日前第四十三条第二項ノ請求ヲ為スコトヲ得公判期日七日前迄亦同シ

○2項

第四十三条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

1項

裁判所公判準備期日外ニ於テ証拠決定ヲ為シタルトキハ之ヲ検察官、被告人 及弁護人ニ通知スヘシ

1項

公判準備期日外ニ於テ証人 又ハ鑑定人ノ訊問ヲ為ストキハ被告人モ亦之ニ立会フコトヲ得

○2項

裁判所外ニ於テ前項ノ手続ヲ為ストキハ拘禁セラレタル被告人ハ之ニ立会フコトヲ得ス


但シ裁判所必要ト認ムルトキハ之ニ立会ハシムルコトヲ得

1項

前条第一項ノ手続ヲ為スヘキ日時及場所ハ被告人ニ之ヲ通知スヘシ


但シ急速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス

1項
公判準備中陪審ノ評議ニ付スヘカラサル事由生シタルトキハ通常ノ手続ニ従ヒ審判ヲ為スヘシ
○2項

公判準備期日ニ於テ前項ノ事由生シタルトキハ其ノ期日ヲ公判期日トス


但シ訴訟関係人中出頭セサル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス

1項
被告人ハ公判準備期日ニ管轄違ノ申立ヲ為スコトヲ得
○2項

前項ノ申立ハ予審ヲ経タル事件ニ付テハ予審判事ニ対シテ其ノ申立ヲ為シタル場合ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス

1項
裁判所公判準備期日ニ公訴棄却又ハ管轄違ノ原由アルコトヲ認メタルトキハ決定ヲ為スヘシ
1項
裁判所公判準備期日ニ免訴ノ原由アルコトヲ認メタルトキハ決定ヲ為スヘシ
○2項
免訴ノ決定確定シタルトキハ同一ノ事件ニ付更ニ公訴ヲ提起スルコトヲ得ス
1項

前二条ノ決定ヲ為スニハ訴訟関係人ノ意見ヲ聴クヘシ

○2項
決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
1項

第五十一条又ハ第五十三条ノ場合ニ於テ公判準備中ニ為シタル手続ハ其ノ効力ヲ失ハス

1項

公判期日ニハ第二十七条ノ規定ニ依リテ選定シタル陪審員ヲ呼出スヘシ

○2項

第三十八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

1項
陪審員ニ対スル呼出状ニハ出頭スヘキ日時、場所及呼出ニ応セサルトキハ過料ニ処スルコトアルヘキ旨ヲ記載スヘシ
1項
陪審員疾病其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ呼出ニ応スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ職務ヲ辞スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ書面ヲ以テ其ノ事由ヲ疏明スヘシ

第二節 公判手続及公判ノ裁判

1項
陪審構成ノ手続ハ判事、検察官、裁判所書記、被告人、弁護人及陪審員列席シ公判廷ニ於テ之ヲ行フ
○2項

前項ノ手続ハ之ヲ公行セス

1項

前条第一項ノ手続ハ陪審員二十四人以上出頭スルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス

○2項

出頭シタル陪審員二十四人ニ達セサルトキハ裁判長ハ之ヲ補充スル為裁判所所在地又ハ其ノ附近ノ市町村ノ陪審員候補者名簿ヨリ抽籤ヲ以テ必要ナル員数ノ陪審員ヲ選定シ便宜ノ方法ニ依リ之ヲ呼出スヘシ

○3項

前項ノ抽籤ハ裁判所書記ノ立会ヲ以テ之ヲ為スヘシ

1項

陪審員二十四人以上出頭シタルトキハ裁判長ハ其ノ氏名、職業及住居地ヲ記載シタル書面ヲ示シ検察官及被告人ニ対シ陪審員中除斥セラルヘキ者アリヤ否ヲ問フヘシ

○2項
裁判長ハ陪審員ニ被告人ノ氏名、職業及住居地ヲ告ケ除斥ノ原由アリヤ否ヲ問フヘシ
○3項
検察官、被告人及陪審員除斥ノ原由アリトスルトキハ其ノ旨ノ申立ヲ為スヘシ
○4項
除斥ノ原由アリトスルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ
1項

出頭シタル陪審員中第十二条乃至第十四条ノ規定ニ依リ陪審員タル資格ヲ有セサル者アリトスルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ

1項

検察官及被告人ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審員及補充陪審員ノ員数ヲ超過スル員数ニ付各其ノ半数ヲ忌避スルコトヲ得忌避スルコトヲ得ヘキ人員奇数ナルトキハ被告人ハ尚一人ヲ忌避スルコトヲ得

○2項
被告人数人アルトキハ忌避ハ共同シテ之ヲ行フ共同ノ方法ニ付協議整ハサルトキハ忌避ヲ行ハシムル方法ハ裁判長之ヲ定ム
1項
裁判長ハ陪審員ノ氏名票ヲ抽籤函ニ入レタル後検察官及被告人ノ忌避スルコトヲ得ル員数ヲ告知スヘシ
○2項
裁判長ハ氏名票ヲ一票宛抽籤函ヨリ抽出シ之ヲ読上クヘシ
○3項
裁判長氏名ヲ読上ケタルトキハ検察官及被告人ハ承認又ハ忌避スル旨ヲ陳述スヘシ其ノ順序ハ検察官ヲ先ニシ被告人ヲ後ニス
○4項
忌避ノ理由ハ之ヲ陳述スルコトヲ得ス
○5項
次ノ氏名票ヲ抽籤函ヨリ抽出ス迄ニ陳述ヲ為ササルトキハ承認ノ陳述ヲ為シタルモノト看做ス裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言スル迄陳述ヲ為ササルトキ亦同シ
○6項
陳述ハ次ノ氏名票ヲ抽出シタル後ハ之ヲ取消スコトヲ得ス裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言シタル後亦同シ
1項

前条ノ手続ニ依リ陪審ヲ構成スヘキ陪審員及補充陪審員ノ数ヲ充シタルトキハ裁判長ハ抽籤終リタル旨ヲ宣言スヘシ

1項

陪審ヲ構成スヘキ陪審員ハ初ニ当籤シタル十二人ヲ以テ之ニ充テ補充陪審員ハ其ノ他ノ当籤者ヲ以テ之ニ充ツ

1項

陪審員ハ第六十五条ノ規定ニ依リ為シタル抽籤ノ順序ニ従ヒ著席スヘシ

1項
裁判長ハ検察官ノ被告事件陳述前陪審員ニ対シ陪審員ノ心得ヲ諭告シ之ヲシテ宣誓ヲ為サシムヘシ
○2項
宣誓ハ宣誓書ニ依リ之ヲ為スヘシ
○3項
宣誓書ニハ良心ニ従ヒ公平誠実ニ其ノ職務ヲ行フヘキコトヲ誓フ旨ヲ記載スヘシ
○4項
裁判長ハ起立シテ宣誓書ヲ朗読シ陪審員ヲシテ之ニ署名捺印セシムヘシ
1項
裁判長ハ陪席判事ノ一人ヲシテ被告人ノ訊問及証拠調ヲ為サシムルコトヲ得
○2項

陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人、証人、鑑定人、通事及翻訳人ヲ訊問スルコトヲ得

1項
証拠ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外裁判所ノ直接ニ取調ヘタルモノニ限ル
1項
左ニ掲クル書類図画ハ之ヲ証拠ト為スコトヲ得
一 号
公判準備手続ニ於テ取調ヘタル証人ノ訊問調書
二 号
検証、押収又ハ捜索ノ調書及之ヲ補充スル書類図画
三 号
公務員ノ職務ヲ以テ証明スルコトヲ得ヘキ事実ニ付公務員ノ作リタル書類
四 号

前号ノ事実ニ付外国ノ公務員ノ作リタル書類ニシテ其ノ真正ナルコトノ証明アルモノ

五 号
鑑定書又ハ鑑定調書及之ヲ補充スル書類図画
1項

裁判所、予審判事、受命判事、受託判事其ノ他法令ニ依リ特別ニ裁判権ヲ有スル官署、検察官、司法警察官 又ハ訴訟上ノ共助ヲ為ス外国ノ官署ノ作リタル訊問調書及之ヲ補充スル書類図画ハ左ノ場合ニ限リ之ヲ証拠ト為スコトヲ得

一 号

共同被告人 若ハ証人死亡シタルトキ 又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ之ヲ召喚シ難キトキ

二 号

被告人 又ハ証人公判外ノ訊問ニ対シテ為シタル供述ノ重要ナル部分ヲ公判ニ於テ変更シタルトキ

三 号

被告人 又ハ証人公判廷ニ於テ供述ヲ為ササルトキ

1項

前二条ノ場合ノ外裁判外ニ於テ被告人其ノ他ノ者ノ供述ヲ録取シタル書類 又ハ裁判外ニ於テ作成シタル書類図画ハ供述者 若ハ作成者死亡シタルトキ 又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ召喚シ難キトキニ限リ之ヲ証拠ト為スコトヲ得

1項

証拠ト為スコトニ付訴訟関係人ノ異議ナキ書類図画ハ前三条ノ規定ニ拘ラス之ヲ証拠ト為スコトヲ得

1項

証拠調終リタル後検察官、被告人及弁護人ハ犯罪ノ構成要素ニ関スル事実上及法律上ノ問題ノミニ付意見ヲ陳述スヘシ

○2項
弁護人数人アル場合ニ於テ被告人ノ為ニスル意見ノ陳述ハ重複シテ之ヲ為スコトヲ得ス
○3項
公判廷ニ現ハレサル証拠ハ之ヲ援用スルコトヲ得ス
○4項
被告人又ハ弁護人ニハ最終ニ陳述スル機会ヲ与フヘシ
1項

前条ノ弁論終決後裁判長ハ陪審ニ対シ犯罪ノ構成ニ関シ法律上ノ論点及問題ト為ルヘキ事実並証拠ノ要領ヲ説示シ犯罪構成事実ノ有無ヲ問ヒ評議ノ結果ヲ答申スヘキ旨ヲ命スヘシ


但シ証拠ノ信否及罪責ノ有無ニ関シ意見ヲ表示スルコトヲ得ス

1項
裁判長ノ説示ニ対シテハ異議ヲ申立ツルコトヲ得ス
1項
裁判長ノ問ハ主問ト補問トニ区別シ陪審ニ於テ然リ又ハ然ラスト答ヘ得ヘキ文言ヲ以テ之ヲ為スヘシ
○2項
主問ハ公判ニ付セラレタル犯罪構成事実ノ有無ヲ評議セシムル為之ヲ為スモノトス
○3項
補問ハ公判ニ付セラレタルモノト異リタル犯罪構成事実ノ有無ヲ評議セシムル必要アリト認ムル場合ニ於テ之ヲ為スモノトス
○4項
犯罪ノ成立ヲ阻却スル原由ト為ルヘキ事実ノ有無ヲ評議セシムル必要アリト認ムルトキハ其ノ問ハ他ノ問ト分別シテ之ヲ為スヘシ
1項

陪審員、検察官、被告人及弁護人ハ問ノ変更ノ申立ヲ為スコトヲ得

○2項

前項ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ

1項
裁判長ハ問書ニ署名捺印シ之ヲ陪審ニ交付スヘシ
○2項
陪審員ハ問書ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
1項
裁判長ハ評議ヲ為サシムル為陪審員ヲシテ評議室ニ退カシムヘシ
○2項
裁判長ハ公判廷ニ於テ示シタル証拠物及証拠書類ヲ陪審ニ交付スルコトヲ得
1項
陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレハ評議ヲ了ル前評議室ヲ出テ又ハ他人ト交通スルコトヲ得ス
○2項
陪審員ニ非サル者ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレハ評議室ニ入ルコトヲ得ス
1項
陪審ノ答申前陪審員ヲシテ裁判所ヲ退出セシムル場合ニ於テハ裁判長ハ陪審員ニ対シ滞留ノ場所及他人トノ交通ニ関シ遵守スヘキ事項ヲ指示スヘシ
1項

陪審員第八十三条第一項ノ規定ニ違反シタルトキ又ハ前条ノ規定ニ依リ指示セラレタル事項ヲ遵守セサルトキハ裁判所ハ其ノ陪審員ニ対シ職務ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得

1項
陪審員ハ陪審長ヲ互選スヘシ
○2項
陪審長ハ議事ヲ整理ス
1項
陪審ハ評議ヲ了ル前更ニ説示ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ公判廷ニ於テ其ノ申立ヲ為スヘシ
1項

答申ハ問ニ対シ然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ之ヲ為スヘシ


但シ問ニ掲クル事実ノ一部ヲ肯定又ハ否定スルトキハ之ニ付然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ答申スヘシ

1項
評議ハ先ツ主問ニ付之ヲ為スヘシ
○2項
主問ヲ否定シタル場合ニ於テ補問アルトキハ之ニ付評議ヲ為スヘシ
1項
陪審員ハ問ニ付各其ノ意見ヲ表示スヘシ
○2項
陪審長ハ最後ニ其ノ意見ヲ表示スヘシ
1項
犯罪構成事実ヲ肯定スルニハ陪審員ノ過半数ノ意見ニ依ルコトヲ要ス
○2項
犯罪構成事実ヲ肯定スル陪審員ノ意見其ノ過半数ニ達セサルトキハ之ヲ否定シタルモノトス
1項
答申ハ問書ニ記載シ陪審長署名捺印シテ之ヲ裁判長ニ提出スヘシ
○2項
答申ニ不備又ハ齟齬アルトキハ裁判長ハ問書ヲ返付シ更ニ評議ヲ為シ答申ヲ訂正スヘキ旨ヲ命スヘシ
1項
裁判長ハ公判廷ニ於テ裁判所書記ヲシテ問及之ニ対スル陪審ノ答申ヲ朗読セシムヘシ
1項

前条ノ手続終リタルトキハ裁判長ハ陪審員ヲ退廷セシムヘシ

1項
裁判所陪審ノ答申ヲ不当ト認ムルトキハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス決定ヲ以テ事件ヲ更ニ他ノ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ得
1項

陪審犯罪構成事実ヲ肯定スルノ答申ヲ為シタル場合ニ於テ裁判所前条ノ決定ヲ為ササルトキハ検察官ハ適用スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳述スヘシ

○2項
被告人及弁護人ハ意見ヲ陳述スルコトヲ得
○3項
被告人又ハ弁護人ニハ最終ニ陳述スル機会ヲ与フヘシ
1項
陪審ノ答申ヲ採択シテ判決ノ言渡ヲ為スニハ裁判所ハ陪審ノ評議ニ付シテ事実ノ判断ヲ為シタル旨ヲ示スヘシ
○2項
有罪ノ言渡ヲ為スニハ罪ト為ルヘキ事実及法令ノ適用ヲ示スヘシ刑ノ加重減免ノ原由タル事実上ノ主張アリタルトキハ之ニ対スル判断ヲ示スヘシ
○3項
無罪ノ言渡ヲ為スニハ犯罪構成事実ヲ認メサルコト又ハ被告事件罪ト為ラサルコトヲ示スヘシ
1項

引続キ七日以上開廷セサリシ場合ニ於テハ公判手続ヲ更新スヘシ

○2項

陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他ノ事由ニ因リ職務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ補充陪審員ナキトキ亦前項ニ同シ

○3項

前二項ノ場合ニ於テハ新ニ陪審構成ノ手続ヲ為スヘシ

1項
裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス公訴棄却、管轄違又ハ免訴ノ裁判ヲ為スヘキ原由アルコトヲ認メタル場合ニ於テハ陪審ノ評議ニ付セスシテ審判ヲ為スヘシ
1項
裁判所書記ハ陪審員ノ氏名、陪審ノ構成其ノ他陪審ニ関スル訴訟手続及裁判長ノ説示ノ要領ヲ公判調書ニ記載スヘシ

第三節 上訴

1項
陪審ノ答申ヲ採択シテ事実ノ判断ヲ為シタル事件ノ判決ニ対シテハ控訴ヲ為スコトヲ得ス
1項
陪審ノ答申ヲ採択シテ事実ノ判断ヲ為シタル事件ノ判決ニ対シテハ大審院ニ上告ヲ為スコトヲ得
1項

上告ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決ニ対シ上告ヲ為スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ為スコトヲ得


但シ事実ノ誤認ヲ理由トスル場合ハ此ノ限ニ在ラス

1項
左ノ場合ニ於テハ常ニ上告ノ理由アルモノトス
一 号
法律ニ従ヒ陪審ヲ構成セサリシトキ
二 号

第十二条第一項第一号又ハ第十三条ノ規定ニ依リ陪審員タルコトヲ得サル者評議ニ関与シタルトキ


但シ評議ヲ了ル前訴訟関係人異議ヲ述ヘサリシトキハ此ノ限ニ在ラス

三 号

法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルヘキ陪審員評議ニ関与シタルトキ


但シ第六十二条第三項ノ申立ヲ為ササリシトキハ此ノ限ニ在ラス

四 号

忌避セラレタル陪審員評議ニ関与シタルトキ


但シ評議ヲ了ル前訴訟関係人異議ヲ述ヘサリシトキハ此ノ限ニ在ラス

五 号
裁判長ノ説示法律ニ違反シタルトキ
六 号
裁判長証拠トシテ説示シタルモノ法律上証拠ト為スコトヲ得サルモノナルトキ
七 号
裁判長法律上ノ論点ニ関シ不当ノ説示ヲ為シタルトキ
1項

上告裁判所原判決ヲ破毀スル場合ニ於テハ事実ノ審理ヲ為サスシテ自ラ裁判ヲ為ス場合ヲ除クノ外事件ヲ原裁判所ニ差戻シ 又ハ原裁判所ト同等ナル他ノ裁判所ニ移送スヘシ

○2項

破毀ノ理由ト為リタル事項陪審ノ評議ノ結果ニ影響ナキモノナルトキハ陪審ノ答申ハ其ノ効力ヲ有ス此ノ場合ニ於テハ事件ノ差戻 又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ答申以後ノ手続ノミヲ為スヘシ