第一節 公判準備
召喚状ノ送達ノ日ト公判準備期日トノ間ニハ少クトモ五日ノ猶予期間ヲ存スヘシ
公判準備期日ニ於テハ弁護人出頭スルニ非サレハ取調ヲ為スコトヲ得ス弁護人数人アルトキハ其ノ一人ノ出頭ヲ以テ足ル
第二条ノ規定ニ依リ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルトキハ裁判長ハ被告人ニ対シ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辞シ得ヘキ旨ヲ告知スヘシ
前項ノ請求ヲ却下スルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ
公判準備調書ニハ前条ニ規定スル事項ノ外被告事件、被告人及出頭シタル弁護人ノ氏名並手続ヲ為シタル裁判所年月日及裁判長陪席判事検察官裁判所書記ノ官氏名ヲ記載シ被告人出頭セサルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
公判準備調書ハ三日内ニ之ヲ整理シ裁判長及裁判所書記署名捺印スヘシ
検察官、被告人及弁護人ハ公判準備期日前第四十三条第二項ノ請求ヲ為スコトヲ得公判期日七日前迄亦同シ
第四十三条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
裁判所公判準備期日外ニ於テ証拠決定ヲ為シタルトキハ之ヲ検察官、被告人 及弁護人ニ通知スヘシ
公判準備期日外ニ於テ証人 又ハ鑑定人ノ訊問ヲ為ストキハ被告人モ亦之ニ立会フコトヲ得
裁判所外ニ於テ前項ノ手続ヲ為ストキハ拘禁セラレタル被告人ハ之ニ立会フコトヲ得ス
但シ裁判所必要ト認ムルトキハ之ニ立会ハシムルコトヲ得
前条第一項ノ手続ヲ為スヘキ日時及場所ハ被告人ニ之ヲ通知スヘシ
但シ急速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
公判準備期日ニ於テ前項ノ事由生シタルトキハ其ノ期日ヲ公判期日トス
但シ訴訟関係人中出頭セサル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ申立ハ予審ヲ経タル事件ニ付テハ予審判事ニ対シテ其ノ申立ヲ為シタル場合ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
前二条ノ決定ヲ為スニハ訴訟関係人ノ意見ヲ聴クヘシ
第五十一条又ハ第五十三条ノ場合ニ於テ公判準備中ニ為シタル手続ハ其ノ効力ヲ失ハス
公判期日ニハ第二十七条ノ規定ニ依リテ選定シタル陪審員ヲ呼出スヘシ
第三十八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二節 公判手続及公判ノ裁判
前項ノ手続ハ之ヲ公行セス
前条第一項ノ手続ハ陪審員二十四人以上出頭スルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
出頭シタル陪審員二十四人ニ達セサルトキハ裁判長ハ之ヲ補充スル為裁判所所在地又ハ其ノ附近ノ市町村ノ陪審員候補者名簿ヨリ抽籤ヲ以テ必要ナル員数ノ陪審員ヲ選定シ便宜ノ方法ニ依リ之ヲ呼出スヘシ
前項ノ抽籤ハ裁判所書記ノ立会ヲ以テ之ヲ為スヘシ
陪審員二十四人以上出頭シタルトキハ裁判長ハ其ノ氏名、職業及住居地ヲ記載シタル書面ヲ示シ検察官及被告人ニ対シ陪審員中除斥セラルヘキ者アリヤ否ヲ問フヘシ
出頭シタル陪審員中第十二条乃至第十四条ノ規定ニ依リ陪審員タル資格ヲ有セサル者アリトスルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ
検察官及被告人ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審員及補充陪審員ノ員数ヲ超過スル員数ニ付各其ノ半数ヲ忌避スルコトヲ得忌避スルコトヲ得ヘキ人員奇数ナルトキハ被告人ハ尚一人ヲ忌避スルコトヲ得
前条ノ手続ニ依リ陪審ヲ構成スヘキ陪審員及補充陪審員ノ数ヲ充シタルトキハ裁判長ハ抽籤終リタル旨ヲ宣言スヘシ
陪審ヲ構成スヘキ陪審員ハ初ニ当籤シタル十二人ヲ以テ之ニ充テ補充陪審員ハ其ノ他ノ当籤者ヲ以テ之ニ充ツ
陪審員ハ第六十五条ノ規定ニ依リ為シタル抽籤ノ順序ニ従ヒ著席スヘシ
陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人、証人、鑑定人、通事及翻訳人ヲ訊問スルコトヲ得
前号ノ事実ニ付外国ノ公務員ノ作リタル書類ニシテ其ノ真正ナルコトノ証明アルモノ
裁判所、予審判事、受命判事、受託判事其ノ他法令ニ依リ特別ニ裁判権ヲ有スル官署、検察官、司法警察官 又ハ訴訟上ノ共助ヲ為ス外国ノ官署ノ作リタル訊問調書及之ヲ補充スル書類図画ハ左ノ場合ニ限リ之ヲ証拠ト為スコトヲ得
共同被告人 若ハ証人死亡シタルトキ 又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ之ヲ召喚シ難キトキ
被告人 又ハ証人公判外ノ訊問ニ対シテ為シタル供述ノ重要ナル部分ヲ公判ニ於テ変更シタルトキ
被告人 又ハ証人公判廷ニ於テ供述ヲ為ササルトキ
前二条ノ場合ノ外裁判外ニ於テ被告人其ノ他ノ者ノ供述ヲ録取シタル書類 又ハ裁判外ニ於テ作成シタル書類図画ハ供述者 若ハ作成者死亡シタルトキ 又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ召喚シ難キトキニ限リ之ヲ証拠ト為スコトヲ得
証拠ト為スコトニ付訴訟関係人ノ異議ナキ書類図画ハ前三条ノ規定ニ拘ラス之ヲ証拠ト為スコトヲ得
証拠調終リタル後検察官、被告人及弁護人ハ犯罪ノ構成要素ニ関スル事実上及法律上ノ問題ノミニ付意見ヲ陳述スヘシ
前条ノ弁論終決後裁判長ハ陪審ニ対シ犯罪ノ構成ニ関シ法律上ノ論点及問題ト為ルヘキ事実並証拠ノ要領ヲ説示シ犯罪構成事実ノ有無ヲ問ヒ評議ノ結果ヲ答申スヘキ旨ヲ命スヘシ
但シ証拠ノ信否及罪責ノ有無ニ関シ意見ヲ表示スルコトヲ得ス
陪審員、検察官、被告人及弁護人ハ問ノ変更ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ決定ヲ為スヘシ
陪審員第八十三条第一項ノ規定ニ違反シタルトキ又ハ前条ノ規定ニ依リ指示セラレタル事項ヲ遵守セサルトキハ裁判所ハ其ノ陪審員ニ対シ職務ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得
答申ハ問ニ対シ然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ之ヲ為スヘシ
但シ問ニ掲クル事実ノ一部ヲ肯定又ハ否定スルトキハ之ニ付然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ答申スヘシ
前条ノ手続終リタルトキハ裁判長ハ陪審員ヲ退廷セシムヘシ
陪審犯罪構成事実ヲ肯定スルノ答申ヲ為シタル場合ニ於テ裁判所前条ノ決定ヲ為ササルトキハ検察官ハ適用スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳述スヘシ
引続キ七日以上開廷セサリシ場合ニ於テハ公判手続ヲ更新スヘシ
陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他ノ事由ニ因リ職務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ補充陪審員ナキトキ亦前項ニ同シ
前二項ノ場合ニ於テハ新ニ陪審構成ノ手続ヲ為スヘシ
第三節 上訴
上告ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決ニ対シ上告ヲ為スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ為スコトヲ得
但シ事実ノ誤認ヲ理由トスル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十二条第一項第一号又ハ第十三条ノ規定ニ依リ陪審員タルコトヲ得サル者評議ニ関与シタルトキ
但シ評議ヲ了ル前訴訟関係人異議ヲ述ヘサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルヘキ陪審員評議ニ関与シタルトキ
但シ第六十二条第三項ノ申立ヲ為ササリシトキハ此ノ限ニ在ラス
忌避セラレタル陪審員評議ニ関与シタルトキ
但シ評議ヲ了ル前訴訟関係人異議ヲ述ヘサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
上告裁判所原判決ヲ破毀スル場合ニ於テハ事実ノ審理ヲ為サスシテ自ラ裁判ヲ為ス場合ヲ除クノ外事件ヲ原裁判所ニ差戻シ 又ハ原裁判所ト同等ナル他ノ裁判所ニ移送スヘシ
破毀ノ理由ト為リタル事項陪審ノ評議ノ結果ニ影響ナキモノナルトキハ陪審ノ答申ハ其ノ効力ヲ有ス此ノ場合ニ於テハ事件ノ差戻 又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ答申以後ノ手続ノミヲ為スヘシ