中央省庁等改革基本法

# 平成十年法律第百三号 #

第四章 国の行政組織等の減量、効率化等

分類 法律
カテゴリ   行政組織
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


第一節 国の行政組織等の減量、効率化等の推進方針

1項

政府は、次に掲げる方針に従い、国の行政組織 並びに事務 及び事業の減量、その運営の効率化 並びに国が果たす役割の重点化(第五十三条第三号において「国の行政組織等の減量、効率化等」という。)を積極的かつ計画的に推進し、その具体化のための措置を講ずるものとする。

一 号
国の事務 及び事業の見直しを行い、国の事務 及び事業とする必要性が失われ、又は減少しているものについては、民間事業への転換、民間 若しくは地方公共団体への移譲 又は廃止を進めること。
二 号

前号の見直しの結果、民間事業への転換、民間 若しくは地方公共団体への移譲 又は廃止を行わないこととされた事務 及び事業のうち、政策の実施に係るものについては、第三十六条に規定する独立行政法人の活用等を進め、その自律的 及び効率的な運営を図ること。

三 号
国の事務 及び事業であっても、国が自ら実施する必要性に乏しく、民間に委託して実施する方が効率的であるものについては、民間への委託を進めること。
四 号

国の規制の撤廃 又は緩和、国の補助金等(財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)第三十四条に規定する補助金等をいう。以下同じ。)の削減 又は合理化 その他行政の在り方の見直しを進め、民間 及び地方公共団体に対する国の関与の縮減を図ること。

第二節 現業の改革

1項

政府は、次に掲げる方針に従い、総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社(以下「郵政公社」という。)を設立するために必要な措置を講ずるものとする。

一 号

郵政公社は、第十七条第七号ロに定めるところによる移行の時に、法律により直接に設立されるものとすること。

二 号
郵政公社の経営については、独立採算制の下、自律的かつ弾力的な経営を可能とすること。
三 号
主務大臣による監督については、法令で定めるものに限定するものとすること。
四 号
予算 及び決算は、企業会計原則に基づき処理するものとし、その予算について毎年度の国会の議決を要しないものとするほか、繰越し、移用、流用、剰余金の留保を可能とするなど その統制を必要最小限のものとすること。
五 号
経営に関する具体的な目標の設定、中期経営計画の策定 及びこれに基づく業績評価を実施するものとすること。
六 号

前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。

七 号
財務、業務 及び組織の状況、経営目標、業績評価の結果 その他経営内容に関する情報の公開を徹底するものとすること。
八 号
職員については、郵政公社を設立する法律において国家公務員としての身分を特別に付与し、その地位については、次に掲げるところを基本とするものとすること。
団結する権利 及び団体交渉を行う権利を有するものとし、争議行為をしてはならないものとすること。
一般職の国家公務員と同様の身分保障を行うこと。

職員の定員については、行政機関の職員の定員に関する法律昭和四十四年法律第三十三号)及び同法に基づく政令による管理の対象としないこと。

2項
政府は、資金運用部資金法第二条第一項に基づく資金運用部への預託を廃止し、当該資金の全額を自主運用とすることについて必要な措置を講ずるものとする。
3項
政府は、郵便事業への民間事業者の参入について、その具体的条件の検討に入るものとする。
4項
政府は、郵便貯金への預入 及び簡易生命保険への加入の勧奨を奨励する手当について、郵政公社の設立に併せて検討するものとする。
1項
政府は、国有林野事業に関し、次に掲げる改革を総合的かつ計画的に推進するものとする。
一 号
森林の有する公益的機能の維持増進を旨とする管理経営への転換、民間事業者への業務の委託の推進等による国有林野事業の業務運営の適正化
二 号
その職員数を業務に応じた必要最小限のものとするとともに、簡素かつ効率的な組織に再編することによる国有林野事業の実施体制の効率化
三 号
特定の債務を一般会計に帰属させること等による国有林野事業の財務の健全化
1項
政府は、造幣事業 及び印刷事業について、その経営形態の在り方を検討するものとする。

第三節 独立行政法人制度の創設等

1項

政府は、国民生活 及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務 及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要はないが、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるか、又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものについて、これを効率的かつ効果的に行わせるにふさわしい自律性、自発性 及び透明性を備えた法人(以下「独立行政法人」という。)の制度を設けるものとする。

1項
政府は、独立行政法人について、その運営の基本、監督、職員の身分 その他の制度の基本となる共通の事項を定める法令を整備するものとする。
2項
それぞれの独立行政法人の目的 及び業務の範囲は、当該独立行政法人を設立する法令において明確に定めるものとする。
3項

それぞれの独立行政法人を所管する大臣(次条において「所管大臣」という。)が独立行政法人に対し監督 その他の関与を行うことができる事項は、法令において定めるものに限るものとする。

1項
独立行政法人の運営に係る制度の基本は、次に掲げるものとする。
一 号

所管大臣は、三年以上 五年以下の期間を定め、当該期間において当該独立行政法人が達成すべき業務運営の効率化、国民に対して提供するサービス等の質の向上、財務内容の改善 その他の業務運営に関する目標(次号において「中期目標」という。)を設定するものとすること。

二 号

独立行政法人は、中期目標を達成するための計画(以下「中期計画」という。)及び中期計画の期間中の各事業年度の業務運営に関する計画(第七号において「年度計画」という。)を策定し、実施するものとすること。

三 号
独立行政法人の会計は、原則として企業会計原則によるものとするとともに、各事業年度において生じた損益計算上の利益は、これを積み立て、法令の定めるところにより、中期計画に定められた使途の範囲内において使用することができるものとする等弾力的かつ効率的な財務運営を行うことができる仕組みとすること。
四 号
国は、独立行政法人に対し、運営費の交付 その他の所要の財源措置を行うものとすること。
五 号
独立行政法人の業務については、その実績に関する評価の結果に基づき、業務運営の改善等所要の措置を講ずるものとすること。
六 号
独立行政法人の職員の給与 その他の処遇について、当該職員の業績 及び当該独立行政法人の業務の実績が反映されるものとすること。
七 号
独立行政法人は、各事業年度において、業務の概要、財務内容、中期計画 及び年度計画、業務の実績 及びこれについての評価の結果、人員 及び人件費の効率化に関する目標 その他 その組織 及び業務に関する所要の事項を公表するものとすること。
八 号
所管大臣は、中期計画の期間の終了時において、当該独立行政法人の業務を継続させる必要性、組織の在り方 その他 その組織 及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずるものとすること。
1項

独立行政法人の業務の実績に関する評価が、専門性 及び実践的な知見を踏まえ、客観的かつ中立公正に行われるようにするため、府省に、当該評価の基準の作成 及びこれに基づく評価等を行うための委員会を置くとともに、総務省に、府省に置かれる委員会の実施した評価の結果に関する意見の表明、独立行政法人の主要な事務 及び事業の改廃の勧告等を行う委員会を置くものとする。

1項
独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活 又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他 当該独立行政法人の目的、業務の性質等を総合的に勘案して必要と認められるものについては、法令により、その職員に国家公務員の身分を与えるものとし、その地位等については、次に掲げるところを基本とするものとする。
一 号

団結する権利 及び団体交渉を行う権利(労働協約を締結する権利を含む。)を有するものとし、争議行為をしてはならないものとすること。

二 号
法令に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることがないものとすること。
三 号
給与、勤務時間 その他の勤務条件に関する事項は、独立行政法人が中期計画に照らして適正に決定するものとし、団体交渉 並びに中央労働委員会のあっせん、調停 及び仲裁の対象とするものとすること。
四 号

定員については、行政機関の職員の定員に関する法律 その他の法令に基づく管理の対象としないものとするとともに、職員の数については、毎年、政府が国会に対して報告するものとすること。

1項
政府は、それぞれの独立行政法人に行わせる業務 及び その職員の身分等を決定するに当たっては、これまで維持されてきた良好な労働関係に配慮するものとする。
1項

政府は、特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人(総務庁設置法昭和五十八年法律第七十九号第四条第十一号の規定の適用を受けない法人を除く第五十九条第一項において「特殊法人」という。)について、中央省庁等改革の趣旨を踏まえ、その整理 及び合理化を進めるものとする。

第四節 その他の見直し

1項

政府は、施設等機関について、国として必要なもの以外のものについては、民間 若しくは地方公共団体への移譲 又は廃止を推進するほか、その必要性が認められるものについても、府省の編成に併せてその統合を推進するとともに、各施設等機関の性格に応じて独立行政法人への移行を検討するものとする。

2項
政府は、国立大学が教育研究の質的向上、大学の個性の伸長、産業界 及び地域社会との有機的連携の確保、教育研究の国際競争力の向上 その他の改革に積極的かつ自主的に取り組むことが必要とされることにかんがみ、その教育研究についての適正な評価体制 及び大学ごとの情報の公開の充実を推進するとともに、外部との交流の促進 その他人事、会計 及び財務の柔軟性の向上、大学の運営における権限 及び責任の明確化 並びに事務組織の簡素化、合理化 及び専門化を図る等の観点から、その組織 及び運営体制の整備等必要な改革を推進するものとする。
3項

政府は、国立病院 及び国立療養所に関し、国の医療政策として行うこととされてきた医療について、真に国として担うべきものに特化することとし、かかる機能を担う機関以外の機関の民間 若しくは地方公共団体への移譲、統合 又は廃止を推進すること等により、その再編成を一層促進するとともに、国として担うべき医療を行う機関の間の緊密な連携を阻害しないよう留意しつつ、高度かつ専門的な医療センター、ハンセン病療養所等特に必要があるものを除き、独立行政法人に移行すべく具体的な検討を行うものとする。

4項
政府は、国の試験研究機関について、府省の編成に対応して、次に掲げるところにより、その見直しを行うものとする。
一 号
その業務を国として本来担うべき機能にふさわしいものとし、その規模を適切なものとするとともに、その組織 及び人員の効率化 及び重点化を推進すること。
二 号
類似の研究を行っている機関、必要以上に細分化されている小規模な機関、地域別 又は業種別の機関等 その機能の見直しが求められる機関については、原則として廃止 又は統合を行いつつ、国として総合的に取り組む必要のある重要な研究分野 及び広範な行政目的に関係する横断的な研究分野を担う中核的な機関を育成すること。
三 号

その活動の自律性、柔軟性 及び競争性を高めることを基本とし、その管理運営の仕組みの改善 及び評価体制の確立を図るとともに、政策研究等の国が直接に実施する必要のある業務を行う機関以外の機関は、原則として独立行政法人に移行すべく具体的な検討を行うこと。

5項

政府は、検査検定機関について、その事業の必要性を厳しく見直し、民間への移譲 及び廃止を推進するとともに、府省の編成に併せてその統合を推進するものとする。


この場合において、事業の性質に応じて独立行政法人への移行を検討するとともに、国の事業として行うものについても、できる限り外部への委託を進め、その効率化を図るものとする。

6項

政府は、文教研修施設(国立学校を除く)及び作業施設について、国の行政機関としての必要性を見直し、その結果に基づき、民間事業への転換をはじめ、民間 若しくは地方公共団体への移譲 若しくは廃止 又は府省の編成に併せた統合を推進するほか、行政機関の職員のみを対象とする研修施設以外のものの独立行政法人への移行等により、その運営の効率化を図るものとする。

7項
政府は、矯正収容施設について、その特性を考慮しつつ、可能な限り、その運営につき効率化 及び質的向上を進めるものとする。
1項
政府は、次に掲げる観点から、国の規制の見直しを行うものとする。
一 号
規制の在り方について、事前の規制から民間の自由な意思に基づく活動を重視したものに転換すること。
二 号
市場原理にゆだねることができる場合における経済活動に対する規制は廃止するとともに、その他の規制についても その目的に照らして必要最小限のものとすること。
三 号
国際的な整合性の確保を図ること。
四 号
手続を簡素化するとともに、規制の実施に係る事務について、民間の能力の活用等により、その効率化を進めること。
五 号
基準の明確化、その公表等により国民に説明する責任を明確化すること。
2項
政府は、次に掲げる観点から、国の補助金等の見直しを行うものとする。
一 号
地方公共団体に対するものについては、地方分権推進委員会の勧告に沿って、その削減 又は合理化を推進すること。
二 号
事業等の振興 又は助成を図るためのものであって、長期間の継続によりその効果が乏しくなっているもの又は少額なものは、原則として廃止すること。
三 号
補助の効果をできる限り客観的に評価して公表する仕組みを整備すること。
1項
政府は、次に掲げる方針に従い、地方支分部局の整理 及び合理化のために必要な措置を講ずるものとする。
一 号
社会経済情勢の変化等を踏まえ、地方支分部局の事務 及び事業の必要性を見直し、その再配置、統合 及び廃止 並びにその内部組織 及び職員の定員の整理 及び合理化 その他必要な措置を講ずること。
二 号
府省の編成に併せ、一の府省に置かれ、その管轄区域が一の都府県の区域を超え 又は道の区域である地方支分部局は、可能な限り、一の都府県の区域を超える各地方 又は道の区域を単位として総合化すること。
三 号
府省の編成に併せ、一の府省に置かれ、その管轄区域が一の都府県の区域である地方支分部局は、管轄区域が当該都府県の区域を超える同種の事務 及び事業を行う地方支分部局が存在しない場合には、可能な限り、当該都府県の区域を単位として総合化すること。
四 号

前二号の地方支分部局以外の地方支分部局は、可能な限り、整理すること。

五 号
各府省の地方支分部局がもつ地域の振興、施設の整備等に係る企画立案、調査、助言等を行う機能について、地方公共団体 その他地域の必要に応じ、一の都府県の区域を超える各地方 又は道の区域の単位ごとに調整する仕組みを整備すること。
六 号
地方支分部局が関与する許可、認可、補助金等の交付の決定 その他の処分に係る手続について、できる限り、当該処分に係る府省の長の権限を当該地方支分部局の長に委任し、これらの手続が当該地方支分部局において完結するようにすること。
1項
政府は、次に掲げる方針に従い、公共事業の見直しを行うものとする。
一 号
公共事業に関し、国が直接行うものは、全国的な政策 及び計画の企画立案 並びに全国的な見地から必要とされる基礎的 又は広域的事業の実施に限定し、その他の事業については、地方公共団体にゆだねていくことを基本とすること。
二 号
国が個別に補助金等を交付する事業は、国の直轄事業に関連する事業、国家的な事業に関連する事業、先導的な施策に係る事業、短期間に集中的に施行する必要がある事業等特に必要があるものに限定し、その他の事業に対する助成については、できる限り、個別の補助金等に代えて、適切な目的を付した統合的な補助金等を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させること。
三 号
次に掲げるところにより、地方支分部局にその管轄区域内において実施される公共事業に関する国の事務を主体的かつ一体的に処理させること。
事業の決定 及び執行に関する府省の長の権限について、明確な法令の規定により、できる限り地方支分部局の長に委任すること。

府省の長は、に規定する権限の委任を受けた地方支分部局の長がその判断で事業の決定 及び執行を行うことができるよう、各地方支分部局ごとに所要の予算額を一括して配分すること。


この場合において、併せて、各事業間 及び各地方支分部局間における調整を円滑に行うための措置を講ずること。

四 号
国の直轄事業の実施を担当する組織については、その業務を事業計画の決定等に重点化し、その他の業務は施工監理を含め民間への委託を徹底すること等により、業務の効率化を図ること。
五 号
社会資本の整備に関する計画等において主要な事業の実施場所等 その具体的内容をできる限り明らかにすること、及び事業の実施の前後において、それぞれ、できる限り客観的な費用効果分析を行い、その結果を公表することにより、公共事業の決定過程の透明化 及び評価の適正化を図ること。
1項
政府は、国の事務 及び事業の減量、その運営の効率化 並びに府省の編成を推進することにより、次に掲げるところに従い、国の行政組織の整理 及び簡素化 並びに定員の削減を行うものとする。
一 号

府省の編成の時において、府省の内部部局として置かれる官房 及び局の総数をできる限り九十に近い数とすること。

二 号

府省の編成の時において、府省、その外局 及び国家公安委員会に置かれる庁の内部部局に置かれる課 及びこれに準ずる室の総数(次号において「課等の総数」という。)を千程度とすること。

三 号

府省の編成以後の五年間において、課等の総数について、十分の一程度の削減を行うことを目標とし、できる限り九百に近い数とするよう努めること。

四 号

府省の編成に併せ、行政機関の職員の定員に関する法律を改正するための措置を執るとともに、国の行政機関の職員(法律で定数が定められている特別職の職員 及び国際平和協力隊の隊員を除く)の定員について、十年間で少なくとも十分の一の削減を行うための新たな計画を策定した上、当該計画に沿った削減を進めつつ、郵政公社の設立 及び独立行政法人への移行により、その一層の削減を行うこと。