医療法

# 昭和二十三年法律第二百五号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第三十一号による改正
最終編集日 : 2024年 04月25日 11時37分


1項

この法律は、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所 及び助産所の開設 及び管理に関し必要な事項 並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担 及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護 及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。

1項

医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師 その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置 及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。

2項

医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局 その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等(居宅 その他厚生労働省令で定める場所をいう。以下同じ。)において、医療提供施設の機能に応じ効率的に、かつ、福祉サービス その他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、前条に規定する理念に基づき、国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない。

1項

医師、歯科医師、薬剤師、看護師 その他の医療の担い手は、第一条の二に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。

2項

医師、歯科医師、薬剤師、看護師 その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。

3項

医療提供施設において診療に従事する医師 及び歯科医師は、医療提供施設相互間の機能の分担 及び業務の連携に資するため、必要に応じ、医療を受ける者を他の医療提供施設に紹介し、その診療に必要な限度において医療を受ける者の診療 又は調剤に関する情報を他の医療提供施設において診療 又は調剤に従事する医師 若しくは歯科医師 又は薬剤師に提供し、及びその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

4項

病院 又は診療所の管理者は、当該病院 又は診療所を退院する患者が引き続き療養を必要とする場合には、保健医療サービス 又は福祉サービスを提供する者との連携を図り、当該患者が適切な環境の下で療養を継続することができるよう配慮しなければならない。

5項

医療提供施設の開設者 及び管理者は、医療技術の普及 及び医療の効率的な提供に資するため、当該医療提供施設の建物 又は設備を、当該医療提供施設に勤務しない医師、歯科医師、薬剤師、看護師 その他の医療の担い手の診療、研究 又は研修のために利用させるよう配慮しなければならない。

1項

この法律において、「病院」とは、医師 又は歯科医師が、公衆 又は特定多数人のため医業 又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。


病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。

2項

この法律において、「診療所」とは、医師 又は歯科医師が、公衆 又は特定多数人のため医業 又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの 又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。

1項

この法律において、「介護老人保健施設」とは、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護老人保健施設をいう。

2項

この法律において、「介護医療院」とは、介護保険法の規定による介護医療院をいう。

1項

この法律において、「助産所」とは、助産師が公衆 又は特定多数人のためその業務(病院 又は診療所において行うものを除く)を行う場所をいう。

2項

助産所は、妊婦、産婦 又はじよく婦十人以上の入所施設を有してはならない。

1項

疾病の治療(助産を含む。)をなす場所であつて、病院 又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院 その他病院 又は診療所に紛らわしい名称を附けてはならない。

2項

診療所は、これに病院、病院分院、産院 その他病院に紛らわしい名称を附けてはならない。

3項

助産所でないものは、これに助産所 その他助産師がその業務を行う場所に紛らわしい名称を付けてはならない。

1項

国、都道府県、市町村、第四十二条の二第一項に規定する社会医療法人 その他厚生労働大臣の定める者の開設する病院であつて、地域における医療の確保のために必要な支援に関する次に掲げる要件に該当するものは、その所在地の都道府県知事の承認を得て地域医療支援病院と称することができる。

一 号

他の病院 又は診療所から紹介された患者に対し医療を提供し、かつ、当該病院の建物の全部 若しくは一部、設備、器械 又は器具を、当該病院に勤務しない医師、歯科医師、薬剤師、看護師 その他の医療従事者(以下単に「医療従事者」という。)の診療、研究 又は研修のために利用させるための体制が整備されていること。

二 号

救急医療を提供する能力を有すること。

三 号

地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせる能力を有すること。

四 号

厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。

五 号

第二十一条第一項第二号から第八号まで 及び第十号から第十二号まで 並びに第二十二条第一号 及び第四号から第九号までに規定する施設を有すること。

六 号

その施設の構造設備が第二十一条第一項 及び第二十二条の規定に基づく厚生労働省令 並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。

2項

都道府県知事は、前項の承認をするに当たつては、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聴かなければならない。

3項

地域医療支援病院でないものは、これに地域医療支援病院 又はこれに紛らわしい名称を付けてはならない。

1項

病院であつて、次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て特定機能病院と称することができる。

一 号

高度の医療を提供する能力を有すること。

二 号

高度の医療技術の開発 及び評価を行う能力を有すること。

三 号

高度の医療に関する研修を行わせる能力を有すること。

四 号

医療の高度の安全を確保する能力を有すること。

五 号

その診療科名中に、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働省令で定める診療科名を有すること。

六 号

厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。

七 号

その有する人員が第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。

八 号

第二十一条第一項第二号から第八号まで 及び第十号から第十二号まで 並びに第二十二条の二第二号第五号 及び第六号に規定する施設を有すること。

九 号

その施設の構造設備が第二十一条第一項 及び第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令 並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。

2項

厚生労働大臣は、前項の承認をするに当たつては、あらかじめ、社会保障審議会の意見を聴かなければならない。

3項

特定機能病院でないものは、これに特定機能病院 又はこれに紛らわしい名称を付けてはならない。

1項

病院であつて、臨床研究の実施の中核的な役割を担うことに関する次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て臨床研究中核病院と称することができる。

一 号

特定臨床研究(厚生労働省令で定める基準に従つて行う臨床研究をいう。以下同じ。)に関する計画を立案し、及び実施する能力を有すること。

二 号

他の病院 又は診療所と共同して特定臨床研究を実施する場合にあつては、特定臨床研究の実施の主導的な役割を果たす能力を有すること。

三 号

他の病院 又は診療所に対し、特定臨床研究の実施に関する相談に応じ、必要な情報の提供、助言 その他の援助を行う能力を有すること。

四 号

特定臨床研究に関する研修を行う能力を有すること。

五 号

その診療科名中に厚生労働省令で定める診療科名を有すること。

六 号

厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。

七 号

その有する人員が第二十二条の三の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。

八 号

第二十一条第一項第二号から第八号まで 及び第十号から第十二号まで 並びに第二十二条の三第二号第五号 及び第六号に規定する施設を有すること。

九 号

その施設の構造設備第二十一条第一項 及び第二十二条の三の規定に基づく厚生労働省令 並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。

十 号

前各号に掲げるもののほか、特定臨床研究の実施に関する厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。

2項

厚生労働大臣は、前項の承認をするに当たつては、あらかじめ、社会保障審議会の意見を聴かなければならない。

3項

臨床研究中核病院でないものは、これに臨床研究中核病院 又はこれに紛らわしい名称を称してはならない。

1項

公衆 又は特定多数人のため往診のみによつて診療に従事する医師 若しくは歯科医師 又は出張のみによつてその業務に従事する助産師については、第六条の四の二第六条の五 又は第六条の七第八条 及び第九条の規定の適用に関し、それぞれその住所をもつて診療所 又は助産所とみなす。

2項

都道府県知事、地域保健法昭和二十二年法律第百一号第五条第一項の規定に基づく政令で定める市(以下「保健所を設置する市」という。)の市長 又は特別区の区長は、必要があると認めるときは、前項に規定する医師、歯科医師 又は助産師に対し、必要な報告を命じ、又は検査のため診療録、助産録、帳簿書類 その他の物件の提出を命ずることができる。

1項

厚生労働大臣は、第七条第一項に規定する臨床研修等修了医師の申請に基づき、当該者が、医師の確保を特に図るべき区域(第三十条の四第六項に規定する区域 その他厚生労働省令で定める区域をいう。以下同じ。)における医療の提供に関する知見を有するために必要な経験その他の厚生労働省令で定める経験を有するものであることの認定をすることができる。

2項

厚生労働大臣は、前項の認定をしたときは、認定証明書を交付するものとする。

3項

厚生労働大臣は、第一項の認定を受けた者が次の各号いずれかに該当するときは、その認定を取り消すことができる。

一 号

医師がその免許を取り消され、又は医業の停止を命ぜられたとき。

二 号

偽りその他不正の手段により第一項の認定を受けたことが判明したとき。

三 号

罰金以上の刑に処せられたとき。

4項

第一項の認定 及びその認定の取消しに関して必要な事項は、政令で定める。

1項

国の開設する病院、診療所 及び助産所に関しては、この法律の規定の適用について、政令で特別の定をすることができる。