起業者は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに、権利取得裁決に係る補償金、加算金 及び過怠金(以下「補償金等」という。)の払渡、替地の譲渡 及び引渡 又は第八十六条第二項の規定に基く宅地の造成をしなければならない。
土地収用法
第七章 収用又は使用の効果
起業者は、次に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、権利取得の時期までに補償金等を供託することができる。
補償金等の提供をした場合において、補償金等を受けるべき者がその受領を拒んだとき。
補償金等を受けるべき者が補償金等を受領することができないとき。
起業者が補償金等を受けるべき者を確知することができないとき。
ただし、起業者に過失があるときは、この限りでない。
起業者が収用委員会の裁決した補償金等の額に対して不服があるとき。
起業者が差押え 又は仮差押えにより補償金等の払渡しを禁じられたとき。
前項第四号の場合において補償金等を受けるべき者の請求があるときは、起業者は、自己の見積金額を払い渡し、裁決による補償金等の額との差額を供託しなければならない。
起業者は、第四十八条第五項の規定による裁決があつた場合においては、第一項の規定にかかわらず、権利取得の時期までに、その裁決においてあるものとされた権利に係る補償金等(その裁決において併存し得ない二以上の権利があるものとされた場合においては、それらの権利に対する補償金等のうち最高額のもの)を供託しなければならない。
裁決手続開始の登記前に仮登記 又は買戻しの特約の登記がされた権利に係る補償金等についても、同様とする。
起業者は、次に掲げる場合においては、第一項の規定にかかわらず、権利取得の時期までに替地を供託することができる。
替地の提供をした場合において、替地を受けるべき者がその受領を拒んだとき。
替地を受けるべき者が替地の譲渡 又は引渡しを受けることができないとき。
起業者が差押え 又は仮差押えにより替地の譲渡 又は引渡しを禁じられたとき。
起業者は、裁決で定められた工事を完了すべき時期までに、権利取得裁決に係る第八十三条第二項の規定に基く耕地の造成をしなければならない。
裁決手続開始の登記前にされた差押えに係る権利(先取特権、質権、抵当権 その他当該差押えによる換価手続において消滅すべき権利を含むものとし、以下この条において、単に「差押えに係る権利」という。)について権利取得裁決 又は明渡裁決があつたとき(明渡裁決にあつては、第七十八条 又は第七十九条の規定による請求があつた場合に限る。)は、起業者は、前条の規定にかかわらず、権利取得の時期 又は明渡しの期限までに、当該差押えに係る権利に対する補償金等を当該差押えによる配当手続を実施すべき機関に払い渡さなければならない。
ただし、強制執行 若しくは競売による代金の納付 又は滞納処分による売却代金の支払があつた後においては、この限りでない。
前項の規定により配当手続を実施すべき機関が払渡しを受けた金銭は、配当に関しては、強制執行 若しくは競売による代金 又は滞納処分による売却代金(使用の裁決に係るときは、それらの一部)とみなし、収用の裁決に係る場合におけるその払渡しを受けた時が強制競売 又は競売に係る配当要求の終期の到来前であるときは、その時に配当要求の終期が到来したものとみなす。
強制競売 若しくは競売に係る売却許可決定後代金の納付前 又は滞納処分による売却決定後売却代金の支払前に第一項本文の規定による払渡しがあつたときは、売却許可決定 又は売却決定は、その効力を失う。
起業者は、収用委員会の裁決した補償金等の額に対して不服があるときは、第一項の規定による払渡しをする際、自己の見積り金額を同項に規定する配当手続を実施すべき機関に通知しなければならない。
第一項 及び前項の規定は、裁決手続開始の登記前にされた仮差押えの執行に係る権利に対する補償金等の払渡しに準用する。
起業者に第一項 又は前項に規定する権利に対する補償金等の支払を命ずる判決が確定したときは、その補償金等の支払に関しては、第一項の規定による補償金等の例による。
この場合において、起業者が補償金等を配当手続を実施すべき機関に払い渡したときは、補償金等の支払を命ずる判決に基づく給付をしたものとみなす。
第一項 又は前二項の規定による補償金等の裁判所への払渡し及びその払渡しがあつた場合における強制執行、仮差押えの執行 又は競売に関しては、最高裁判所規則で民事執行法 又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)の特例 その他必要な事項を、その補償金等の裁判所以外の配当手続を実施すべき機関への払渡し 及びその払渡しがあつた場合における滞納処分に関しては、政令で国税徴収法の特例 その他必要な事項を定めることができる。
起業者は、明渡裁決で定められた明渡しの期限までに、明渡裁決に係る補償金の払渡し、第八十五条第二項の規定に基づく物件の移転の代行 又は第八十六条第二項の規定に基づく宅地の造成をしなければならない。
第九十五条第二項から第四項まで 及び第六項の規定は、前項の場合に準用する。
この場合において、
同条第二項中
「権利取得の時期」とあるのは
「明渡しの期限」と、
同条第四項中
「第四十八条第五項」とあるのは
「第四十九条第二項において準用する第四十八条第五項」と、
「権利取得の時期」とあるのは
「明渡しの期限」と、
同条第六項中
「権利取得裁決に係る第八十三条第二項の規定に基く耕地の造成」とあるのは
「明渡裁決に係る第八十四条第二項の規定に基づく工事の代行」と
読み替えるものとする。
権利取得裁決 又は明渡裁決に係る第八十三条第四項(第八十四条第三項において準用する場合を含む。以下第九十九条において同じ。)の規定に基く金銭 又は有価証券の供託は、権利取得の時期 又は明渡しの期限までにしなければならない。
第八十三条第四項 及び第九十五条第二項から第四項までの規定による金銭 又は有価証券の供託は、収用し、又は使用しようとする土地の所在地の供託所にしなければならない。
民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百九十五条第二項 並びに非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十四条 及び第九十八条の規定は、第九十五条第五項の規定による替地の供託について準用する。
起業者は、前二項に規定する供託をしたときは、遅滞なく、その旨を補償金等、替地 又は担保を取得すべき者(その供託が第九十五条第四項の規定によるものであるときは、土地所有者 及び関係人)に通知しなければならない。
起業者が権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに、権利取得裁決に係る補償金等の払渡 若しくは供託、替地の譲渡 及び引渡 若しくは供託、第八十六条第二項の規定に基く宅地の造成の提供 又は第八十三条第四項の規定に基く金銭 若しくは有価証券の供託をしないときは、権利取得裁決は、その効力を失い、裁決手続開始の決定は、取り消されたものとみなす。
起業者が、明渡裁決において定められた明渡しの期限までに、明渡裁決に係る補償金の払渡し若しくは供託、第八十五条第二項の規定に基づく物件の移転の代行の提供、第八十六条第二項の規定に基づく宅地の造成の提供 又は第八十四条第三項において準用する第八十三条第四項の規定に基づく金銭 若しくは有価証券の供託をしないときは、明渡裁決は、その効力を失う。
この場合において、第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から四年を経過していないときは、その期間経過前に限り、なお明渡裁決の申立てをすることができるものとし、その期間を経過しているときは、裁決手続開始の決定 及び権利取得裁決は、取り消されたものとみなす。
起業者が、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに払渡しをすべき補償金等の全部を現金 又は小切手等(銀行が振り出した小切手 その他これと同程度の支払の確実性があるものとして国土交通省令で定める支払手段をいう。次項において同じ。)により書留郵便(国土交通大臣が定める方法によるものに限る。同項において同じ。)又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者 若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして国土交通大臣が定めるもの(次項において「書留郵便等」という。)に付して、当該権利取得の時期から国内において郵便物が配達されるために通常要する期間を勘案して政令で定める一定の期間前までに、補償金等を受けるべき者の住所(国内にあるものに限る。)にあてて発送した場合における前条第一項の規定の適用については、当該補償金等の全部は、当該権利取得の時期までに払い渡されたものとみなす。
起業者が、明渡裁決において定められた明渡しの期限までに払渡しをすべき補償金の全部を現金 又は小切手等により書留郵便等に付して、当該明渡しの期限から前項の政令で定める一定の期間前までに、補償金を受けるべき者の住所(国内にあるものに限る。)にあてて発送した場合における前条第二項の規定の適用については、当該補償金の全部は、当該明渡しの期限までに払い渡されたものとみなす。
第九十四条第十項から第十二項までの規定は、前二項の場合において、権利取得裁決において定められた権利取得の時期 又は明渡裁決において定められた明渡しの期限が経過した後に補償金等を受けるべき者がその払渡しを受けていないときに準用する。
この場合において、
同条第十項中
「前項の規定による訴えの提起がなかつたときは、第八項の規定によつてされた裁決」とあるのは、
「権利取得裁決 又は明渡裁決」と
読み替えるものとする。
土地を収用するときは、権利取得裁決において定められた権利取得の時期において、起業者は、当該土地の所有権を取得し、当該土地に関するその他の権利 並びに当該土地 又は当該土地に関する所有権以外の権利に係る仮登記上の権利 及び買戻権は消滅し、当該土地 又は当該土地に関する所有権以外の権利に係る差押え、仮差押えの執行 及び仮処分の執行はその効力を失う。
但し、第七十六条第二項 又は第八十一条第二項の規定に基く請求に係る裁決で存続を認められた権利については、この限りでない。
土地を使用するときは、起業者は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期において、裁決で定められたところにより、当該土地を使用する権利を取得し、当該土地に関するその他の権利は、使用の期間中は、行使することができない。
但し、裁決で認められた方法による当該土地の使用を妨げない権利については、この限りでない。
第一項本文の規定は、第七十八条 又は第七十九条の規定によつて物件を収用する場合に準用する。
この場合において、
同項中
「権利取得裁決において定められた権利取得の時期」とあるのは、
「明渡裁決において定められた明渡しの期限」と
読み替えるものとする。
前条第一項の規定により起業者が土地の所有権を取得した際、同項の規定により失つた権利に基づき当該土地を占有している者 及びその承継人は、明渡裁決において定められる明渡しの期限までは、従前の用法に従い、その占有を継続することができる。
ただし、第二十八条の三 及び第八十九条の規定の適用を妨げない。
明渡裁決があつたときは、当該土地 又は当該土地にある物件を占有している者は、明渡裁決において定められた明渡しの期限までに、起業者に土地 若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転しなければならない。
前条の場合において次の各号の一に該当するときは、市町村長は、起業者の請求により、土地 若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者に代わつて、土地 若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転しなければならない。
土地 若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者がその責めに帰することができない理由に因りその義務を履行することができないとき。
起業者が過失がなくて土地 若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者を確知することができないとき。
前条の場合において、土地 若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者がその義務を履行しないとき、履行しても充分でないとき、又は履行しても明渡しの期限までに完了する見込みがないときは、都道府県知事は、起業者の請求により、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
物件を移転すべき者が明渡裁決に係る第八十五条第二項の規定に基づく移転の代行の提供の受領を拒んだときも、同様とする。
前項前段の場合において、都道府県知事は、義務者 及び起業者にあらかじめ通知した上で、当該代執行に要した費用に充てるため、その費用の額の範囲内で、義務者が起業者から受けるべき明渡裁決に係る補償金を義務者に代わつて受けることができる。
起業者が前項の規定に基づき補償金の全部 又は一部を都道府県知事に支払つた場合においては、この法律の適用については、起業者が都道府県知事に支払つた金額の限度において、起業者が土地所有者 又は関係人に明渡裁決に係る補償金を支払つたものとみなす。
第二項後段の場合においては、物件の移転に要した費用は、行政代執行法第二条の規定にかかわらず、起業者から徴収するものとし、起業者がその費用を支払つたときは、起業者は、移転の代行による補償をしたものとみなす。
権利取得裁決 又は明渡裁決があつた後に、収用し、若しくは使用すべき土地 又は収用すべき物件が土地所有者 又は関係人の責に帰することができない事由に因つて滅失し、又はき損したときは、その滅失 又はき損に因る損失は、起業者の負担とする。
先取特権、質権 若しくは抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合においては、これらの権利は、その目的物の収用 又は使用に因つて債務者が受けるべき補償金等 又は替地に対しても行うことができる。
但し、その払渡 又は引渡前に差押をしなければならない。
第九十四条第十項から第十二項までの規定は、権利取得裁決中第九十条の三第一項第二号に掲げる起業者が返還を受けることができる額に関する部分について、第百三十三条第二項 及び第三項の規定による訴えの提起がなかつた場合に準用する。
この場合において、
第九十四条第十項中
「第八項の規定によつてされた裁決」とあるのは、
「第九十条の三第一項第二号の規定によつて起業者が返還を受けることができる額についてされた裁決」と
読み替えるものとする。
起業者は、土地を使用する場合において、その期間が満了したとき、又は事業の廃止、変更 その他の事由に因つて使用する必要がなくなつたときは、遅滞なく、その土地を土地所有者 又はその承継人に返還しなければならない。
起業者は、前項の場合において、土地所有者の請求があつたときは、土地を原状に復しなければならない。
但し、当該土地が第八十条の二第一項の規定によつて補償されたものであるときは、この限りでない。
第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示の日から二十年以内に、事業の廃止、変更 その他の事由に因つて起業者が収用した土地の全部 若しくは一部が不用となつたとき、又は事業の認定の告示の日から十年を経過しても収用した土地の全部を事業の用に供しなかつたときは、権利取得裁決において定められた権利取得の時期に土地所有者であつた者 又はその包括承継人(以下「買受権者」と総称する。)は、当該土地が不用となつた時期から五年 又は事業の認定の告示の日から二十年のいずれか遅い時期までに、起業者が不用となつた部分の土地 又は事業の用に供しなかつた土地 及びその土地に関する所有権以外の権利に対して支払つた補償金に相当する金額を当該収用に係る土地の現在の所有者(以下「収用地の現所有者」という。)に提供して、その土地を買い受けることができる。
但し、第七十六条第一項の規定によつて収用した残地は、その残地とともに収用された土地でその残地に接続する部分が不用となつたときでなければ買い受けることができない。
前項の規定は、第八十二条の規定によつて土地所有者が収用された土地の全部 又は一部について替地による損失の補償を受けたときは、適用しない。
第一項の場合において、土地の価格が権利取得裁決において定められた権利取得の時期に比して著しく騰貴したときは、収用地の現所有者は、訴をもつて同項の金額の増額を請求することができる。
第一項の規定による買受権は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)の定めるところに従つて収用の登記がされたときは、第三者に対して対抗することができる。
前条第一項に規定する不用となつた土地 又は事業の用に供しなかつた土地があるときは、起業者(当該土地を収用した事業が関連事業であるときは、当該関連事業を行なう者。以下この項において同じ。)は、遅滞なく、その旨を買受権者に通知しなければならない。
但し、起業者が過失がなくて買受権者を確知することができないときは、その土地が存する地方の新聞紙に、通知すべき内容を少くとも一月の期間をおいて三回公告しなければならない。
買受権者は、前項の規定による通知を受けた日 又は第三回の公告があつた日から六月を経過した後においては、前条第一項の規定にかかわらず、買受権を行使することができない。