文化財保護法

# 昭和二十五年法律第二百十四号 #

第三款 保護

分類 法律
カテゴリ   文化
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 05月06日 18時11分

1項

重要文化財の修理は、所有者が行うものとする。


但し、管理団体がある場合は、管理団体が行うものとする。

1項

管理団体が修理を行う場合は、管理団体は、あらかじめ、その修理の方法 及び時期について当該重要文化財の所有者(所有者が判明しない場合を除く)及び権原に基く占有者の意見を聞かなければならない。

2項

管理団体が修理を行う場合には、第三十二条の二第五項 及び第三十二条の四の規定を準用する。

1項

重要文化財の管理 又は修理につき多額の経費を要し、 重要文化財の所有者 又は管理団体がその負担に堪えない場合 その他 特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部に充てさせるため、 重要文化財の所有者 又は管理団体に対し補助金を交付することができる。

2項

前項の補助金を交付する場合には、文化庁長官は、その補助の条件として管理 又は修理に関し必要な事項を指示することができる。

3項

文化庁長官は、必要があると認めるときは、第一項の補助金を交付する重要文化財の管理 又は修理について指揮監督することができる。

1項

重要文化財を管理する者が不適任なため又は管理が適当でないため重要文化財が滅失し、き損し、又は盗み取られる虞があると認めるときは、文化庁長官は、所有者、管理責任者 又は管理団体に対し、重要文化財の管理をする者の選任 又は変更、管理方法の改善、防火施設 その他の保存施設の設置 その他 管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。

2項

前項の規定による命令 又は勧告に基いてする措置のために要する費用は、文部科学省令の定めるところにより、その全部 又は一部を国庫の負担とすることができる。

3項

前項の規定により国庫が費用の全部 又は一部を負担する場合には、前条第三項の規定を準用する。

1項

文化庁長官は、国宝がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者 又は管理団体に対し、その修理について必要な命令 又は勧告をすることができる。

2項

文化庁長官は、国宝以外の重要文化財がき損している場合において、 その保存のため必要があると認めるときは、所有者 又は管理団体に対し、 その修理について必要な勧告をすることができる。

3項

前二項の規定による命令 又は勧告に基いてする修理のために要する費用は、文部科学省令の定めるところにより、その全部 又は一部を国庫の負担とすることができる。

4項

前項の規定により国庫が費用の全部 又は一部を負担する場合には、第三十五条第三項の規定を準用する。

1項

文化庁長官は、左の各号の一に該当する場合においては、国宝につき自ら修理を行い、又は滅失、き損 若しくは盗難の防止の措置をすることができる。

一 号

所有者、管理責任者 又は管理団体が前二条の規定による命令に従わないとき。

二 号

国宝がき損している場合 又は滅失し、き損し、若しくは盗み取られる虞がある場合において、所有者、管理責任者 又は管理団体に修理 又は滅失、き損 若しくは盗難の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。

2項

前項の規定による修理 又は措置をしようとするときは、文化庁長官は、あらかじめ、所有者、管理責任者 又は管理団体に対し、当該国宝の名称、修理 又は措置の内容、着手の時期 その他 必要と認める事項を記載した令書を交付するとともに、権原に基く占有者にこれらの事項を通知しなければならない。

1項

文化庁長官は、前条第一項の規定による修理 又は措置をするときは、文化庁の職員のうちから、当該修理 又は措置の施行 及び当該国宝の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。

2項

前項の規定により責に任ずべき者と定められた者は、当該修理 又は措置の施行に当るときは、その身分を証明する証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。

3項

前条第一項の規定による修理 又は措置の施行には、第三十二条の二第五項の規定を準用する。

1項

第三十八条第一項の規定による修理 又は措置のために要する費用は、国庫の負担とする。

2項

文化庁長官は、文部科学省令の定めるところにより、第三十八条第一項の規定による修理 又は措置のために要した費用の一部を所有者(管理団体がある場合は、その者)から徴収することができる。


但し同条第一項第二号の場合には、修理 又は措置を要するに至つた事由が所有者、管理責任者 若しくは管理団体の責に帰すべきとき、又は所有者 若しくは管理団体がその費用の一部を負担する能力があるときに限る

3項

前項の規定による徴収については、行政代執行法昭和二十三年法律第四十三号第五条 及び第六条の規定を準用する。

1項

第三十八条第一項の規定による修理 又は措置によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

2項

前項の補償の額は、文化庁長官が決定する。

3項

前項の規定による補償額に不服のある者は、訴えをもつて その増額を請求することができる。


ただし前項の補償の決定の通知を受けた日から六箇月を経過したときは、この限りでない。

4項

前項の訴えにおいては、国を被告とする。

1項

国が修理 又は滅失、き損 若しくは盗難の防止の措置(以下この条において、「修理等」という。)につき第三十五条第一項の規定により補助金を交付し、又は第三十六条第二項第三十七条第三項 若しくは第四十条第一項の規定により費用を負担した重要文化財のその当時における所有者 又は その相続人、受遺者 若しくは受贈者(第二次以下の相続人、受遺者 又は受贈者を含む。以下この条において同じ。)(以下この条において、「所有者等」という。)は、補助 又は費用負担に係る修理等が行われた後 当該重要文化財を有償で譲り渡した場合においては、当該補助金 又は負担金の額(第四十条第一項の規定による負担金については、同条第二項の規定により所有者から 徴収した部分を控除した額をいう。以下この条において同じ。)の合計額から当該修理等が行われた後重要文化財の修理等のため自己の費した金額を控除して得た金額(以下この条において、「納付金額」という。)を、文部科学省令の定めるところにより国庫に納付しなければならない。

2項

前項に規定する「補助金 又は負担金の額」とは、補助金 又は負担金の額を、補助 又は費用負担に係る修理等を施した重要文化財 又は その部分につき文化庁長官が個別的に定める耐用年数で除して得た金額に、更に当該耐用年数から修理等を行つた時以後重要文化財の譲渡の時までの年数を控除した残余の年数(一年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。)を乗じて得た金額に相当する金額とする。

3項

補助 又は費用負担に係る修理等が行われた後、当該重要文化財が所有者等の責に帰することのできない事由により著しく その価値を減じた場合 又は当該重要文化財を国に譲り渡した場合には、文化庁長官は、納付金額の全部 又は一部の納付を免除することができる。

4項

文化庁長官の指定する期限までに納付金額を完納しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。


この場合における徴収金の先取特権の順位は、国税 及び地方税に次ぐものとする。

5項

納付金額を納付する者が相続人、受遺者 又は受贈者であるときは、第一号に定める相続税額 又は贈与税額と第二号に定める額との差額に相当する金額を第三号に定める年数で除して得た金額に第四号に定める年数を乗じて得た金額をその者が納付すべき納付金額から控除するものとする。

一 号

当該重要文化財の取得につきその者が納付した、 又は納付すべき相続税額 又は贈与税額

二 号

前号の相続税額 又は贈与税額の計算の基礎となつた課税価格に算入された当該重要文化財 又は その部分につき当該相続、遺贈 又は贈与の時までに行つた修理等に係る第一項の補助金 又は負担金の額の合計額を当該課税価格から控除して得た金額を課税価格として計算した場合に当該重要文化財 又は その部分につき納付すべきこととなる相続税額 又は贈与税額に相当する額

三 号

第二項の規定により当該重要文化財 又は その部分につき文化庁長官が定めた耐用年数から当該重要文化財 又は その部分の修理等を行つた時以後当該重要文化財の相続、遺贈 又は贈与の時までの年数を控除した残余の年数(一年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。

四 号

第二項に規定する当該重要文化財 又は その部分についての残余の耐用年数

6項

前項第二号に掲げる第一項の補助金 又は負担金の額については、第二項の規定を準用する。


この場合において、

同項
譲渡の時」とあるのは、
「相続、遺贈 又は贈与の時」と

読み替えるものとする。

7項

第一項の規定により納付金額を納付する者の同項に規定する譲渡に係る所得税法昭和四十年法律第三十三号第三十三条第一項に規定する譲渡所得の金額の計算については、第一項の規定により納付する金額は、同条第三項に規定する資産の譲渡に要した費用とする。

1項

重要文化財に関し その現状を変更し、又は その保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。


ただし現状変更については維持の措置 又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。

2項

前項但書に規定する維持の措置の範囲は、文部科学省令で定める。

3項

文化庁長官は、第一項の許可を与える場合において、 その許可の条件として同項の現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為に関し必要な指示をすることができる。

4項

第一項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかつたときは、文化庁長官は、許可に係る現状変更 若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止を命じ、 又は許可を取り消すことができる。

5項

第一項の許可を受けることができなかつたことにより、又は第三項の許可の条件を付せられたことによつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

6項

前項の場合には、第四十一条第二項から 第四項までの規定を準用する。

1項

重要文化財を修理しようとするときは、所有者 又は管理団体は、修理に着手しようとする日の三十日前までに、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。


但し前条第一項の規定により許可を受けなければならない場合 その他文部科学省令の定める場合は、この限りでない。

2項

重要文化財の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る重要文化財の修理に関し技術的な指導と助言を与えることができる。

1項

重要文化財は、輸出してはならない


但し、文化庁長官が文化の国際的交流 その他の事由により特に必要と認めて許可した場合は、この限りでない。

1項

文化庁長官は、重要文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、 又は必要な施設をすることを命ずることができる。

2項

前項の規定による処分によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

3項

前項の場合には、第四十一条第二項から 第四項までの規定を準用する。

1項

重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積つた額。以下同じ。) その他 文部科学省令で定める事項を記載した書面をもつて、まず文化庁長官に国に対する売渡しの申出をしなければならない。

2項

前項の書面においては、当該相手方に対して譲り渡したい事情を記載することができる。

3項

文化庁長官は、前項の規定により記載された事情を相当と認めるときは、当該申出のあつた後三十日以内に当該重要文化財を買い取らない旨の通知をするものとする。

4項

第一項の規定による売渡しの申出のあつた後三十日以内に文化庁長官が当該重要文化財を国において買い取るべき旨の通知をしたときは、第一項の規定による申出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、 売買が成立したものとみなす。

5項

第一項に規定する者は、前項の期間(その期間内に文化庁長官が当該重要文化財を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該重要文化財を譲り渡してはならない。

1項

国は、管理団体である地方公共団体 その他の法人が、その管理に係る重要文化財(建造物 その他の土地の定着物 及びこれと一体のものとして当該重要文化財に指定された土地に限る)で、 その保存のため特に買い取る必要があると認められるものを買い取る場合には、その買取りに要する経費の一部を補助することができる。

2項

前項の場合には、第三十五条第二項 及び第三項 並びに第四十二条の規定を準用する。

1項

重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)は、文化庁長官の定める条件により、文化庁長官に重要文化財の管理(管理団体がある場合を除く)又は修理を委託することができる。

2項

文化庁長官は、重要文化財の保存上 必要があると認めるときは、所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、条件を示して、 文化庁長官にその管理(管理団体がある場合を除く)又は修理を委託するように勧告することができる。

3項

前二項の規定により文化庁長官が管理 又は修理の委託を受けた場合には、第三十九条第一項 及び第二項の規定を準用する。

4項

重要文化財の所有者、管理責任者 又は管理団体は、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官に重要文化財の管理 又は修理に関し技術的指導を求めることができる。