武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律

平成十六年法律第百十四号
略称 : 特定公共施設利用法 
分類 法律
カテゴリ   外事
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2023年 01月13日 12時54分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 港湾施設の利用

  • 第三章 飛行場施設の利用

  • 第四章 道路の利用

  • 第五章 海域の利用

  • 第六章 空域の利用

  • 第七章 電波の利用

  • 第八章 雑則

第一章 総則

1項

この法律は、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関し、指針の策定 その他の必要な事項を定めることにより、その総合的な調整を図り、もって対処措置等の的確かつ迅速な実施を図ることを目的とする。

1項

この法律において「武力攻撃事態等」、「武力攻撃」、「指定行政機関」、「指定公共機関」、「対処基本方針」及び「対策本部長」の意義は、それぞれ武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。第一条第二条第一号同条第五号同条第七号第九条第一項 及び第十一条第一項に規定する当該用語の意義による。

2項

この法律において「対処措置等」とは、事態対処法第二条第八号イ(1) 及び(2)に掲げる措置 並びに対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に武力攻撃事態等を終結させるために その推移に応じてアメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力 及び安全保障条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動 及び外国軍隊(武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律(平成十六年法律第百十三号)第二条第七号に規定する外国軍隊をいう。)が実施する自衛隊と協力して武力攻撃を排除するために必要な行動 並びに国民の保護のための措置(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律平成十六年法律第百十二号第二条第三項の国民の保護のための措置をいう。第十八条第一項第一号において同じ。)をいう。

3項

この法律において「特定公共施設等」とは、港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域 及び電波をいう。

4項

この法律において「港湾施設」とは、港湾法昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第五項各号の港湾施設(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三条第三項 又は地方自治法昭和二十二年法律第六十七号第二百三十八条第四項の普通財産であるものを除く)をいう。

5項

この法律において「飛行場施設」とは、空港法昭和三十一年法律第八十号)第四条第一項各号に掲げる空港 及び同法第五条第一項に規定する地方管理空港の施設 並びに当該空港 及び地方管理空港以外の政令で定める公共の用に供する飛行場(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第五十六条の四第一項の規定に基づき公共の用に供すべきものとして指定された着陸帯 その他の施設のある自衛隊の設置する飛行場を含む。)の施設をいう。

6項

この法律において「道路」とは、道路法昭和二十七年法律第百八十号第二条第一項の道路、道路運送法昭和二十六年法律第百八十三号第二条第八項の一般自動車道 その他の一般交通の用に供する道をいう。

7項

この法律において「電波」とは、電波法昭和二十五年法律第百三十一号第二条第一号の電波をいう。

1項

対策本部長は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るためには 特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用の確保が不可欠であることにかんがみ、特定公共施設等の利用に関する総合的な調整を図るに際しては、国民の理解と協力を得つつ、 適切にこれを行うものとする。

1項

港湾管理者 及び飛行場施設の管理者は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るためには 港湾施設 及び飛行場施設の円滑かつ効果的な利用の確保が不可欠であることにかんがみ、港湾施設 及び飛行場施設を管理運営するに際しては、これらの利用に関する指針を踏まえ、 対策本部長との緊密な連携を図りつつ、 適切にこれを行うものとする。

1項

前条に規定するもののほか、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関 及び指定地方公共機関(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第二条第二項の指定地方公共機関をいう。)は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るためには特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用の確保が不可欠であることにかんがみ、対処措置等を実施するに際しては、対策本部長がそ れぞれの特定公共施設等ごとに定めるその利用に関する指針を踏まえ、適切にこれを利用し、又は利用させるものとする。

第二章 港湾施設の利用

1項

対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、対処基本方針に基づき、港湾施設の利用に関する指針(以下 この条 及び次条において「港湾施設の利用指針」という。)を定めることができる。

2項

港湾施設の利用指針は、特定の地域における港湾施設に関し、特定の者の優先的な利用を確保する必要がある対処措置等の概要 及び その期間 その他の対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るために必要と認められる基本的な事項について定めるものとする。

3項

対策本部長は、港湾施設の利用指針を定める場合には、関係する地方公共団体の長 その他の執行機関 及び指定公共機関の意見を聴かなければならない。

4項

対策本部長は、港湾施設の利用指針を定めるため必要があると認めるときは、関係する地方公共団体の長 その他の執行機関 及び指定公共機関に対し、必要な情報の提供を求めることができる。

5項

対策本部長は、港湾施設の利用指針を定めたときは、関係する指定行政機関の長、地方公共団体の長 その他の執行機関 及び指定公共機関に通知するとともに、公にすることにより国の安全が害されるおそれがある事項を除き、その内容を公示するものとする。

6項

対策本部長は、事態の推移に応じ、適時に港湾施設の利用指針の見直しを行うものとする。

7項

第三項から 第五項までの規定は、港湾施設の利用指針を変更し、又は廃止する場合について準用する。

1項

対策本部長は、特定の港湾施設に関し、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る上で特定の者の優先的な利用を確保することが特に必要であると認めるときは、港湾施設の利用指針に基づき、当該特定の港湾施設の名称、特定の者の優先的な利用を確保する必要がある対処措置等の内容 及び その期間 その他の具体的な事項を明らかにして、当該特定の港湾施設の港湾管理者に対し、当該特定の港湾施設の全部 又は一部を特定の者に優先的に利用させるよう要請することができる。

2項

前項の要請を受けた港湾管理者は、同項の要請に関し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。

1項

港湾管理者は、前条第一項の要請に基づきその管理する特定の港湾施設を利用させる場合において、必要があると認めるときは、当該特定の港湾施設の利用に係る許可 その他の処分を変更し、又は取り消すことができる。

2項

港湾管理者は、前項の規定により当該特定の港湾施設の利用に係る許可 その他の処分を変更し、又は取り消した場合において、現に停泊中の船舶の移動が必要であると認めるときは、当該船舶の船長 その他の当該船舶の運航に責任を有する者(次条第四項において「当該船舶の船長等」という。)に対し、当該船舶の移動を命ずることができる。

1項

内閣総理大臣は、特定の港湾施設について第七条第一項の要請に基づく 所要の利用が確保されない場合において、国民の生命、身体 若しくは財産の保護 又は武力攻撃の排除を図るため特に必要があると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該特定の港湾施設の港湾管理者に対し、当該所要の利用を確保すべきことを指示することができる。

2項

前条の規定は、港湾管理者が前項の指示に従いその管理する特定の港湾施設を利用させる場合について準用する。

3項

内閣総理大臣は、第一項の指示を行っても なお所要の利用が確保されないとき、又は国民の生命、身体 若しくは財産の保護 若しくは武力攻撃の排除を図るため特に必要があると認める場合であって事態に照らし緊急を要すると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該港湾管理者に通知した上で、 国土交通大臣を指揮し、当該特定の港湾施設の利用に係る許可 その他の処分 又は許可その他の処分の変更 若しくは取消しを行わせることができる。

4項

内閣総理大臣は、前項の規定により当該特定の港湾施設の利用に係る許可 その他の処分 又は許可 その他の処分の変更 若しくは取消しを行わせた場合において、現に停泊中の船舶の移動が必要であると認めるときは、国土交通大臣を指揮し、当該船舶の船長等に対し、当該船舶の移動を命じさせることができる。

第三章 飛行場施設の利用

1項

対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、対処基本方針に基づき、飛行場施設の利用に関する指針(以下 この条 及び次条において「飛行場施設の利用指針」という。)を定めることができる。

2項

第六条第二項から 第七項までの規定は、飛行場施設の利用指針について準用する。


この場合において、

同条第二項
特定の地域における港湾施設」とあるのは、
「特定の地域における飛行場施設」と

読み替えるものとする。

1項

第七条から 第九条までの規定は、特定の飛行場施設の利用の確保について準用する。


この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中 同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

第七条第一項
港湾施設の利用指針
飛行場施設の利用指針
港湾管理者
管理者
第七条第二項
前項
第十一条において準用する 第七条第一項
第七条第二項 並びに第九条第二項 及び第三項
港湾管理者
飛行場施設の管理者(国土交通大臣 及び防衛大臣を除く。
第八条第一項 及び第二項
港湾管理者
飛行場施設の管理者
第八条第一項
前条第一項
第十一条において準用する 第七条第一項
許可 その他の処分を変更し、又は取り消す
必要な指示をし、又は条件を付し、若しくは変更をする
第八条第二項
前項
第十一条において準用する 第八条第一項
許可 その他の処分を変更し、又は取り消した
必要な指示をし、又は条件を付し、若しくは変更をした
第八条第二項 及び第九条第四項
停泊中の船舶
駐機中の航空機
第八条第二項
当該船舶の船長 その他の当該船舶の運航に責任を有する者(次条第四項において「当該船舶の船長等」という。
当該航空機の機長 その他の当該航空機の運航に責任を有する者(第十一条において準用する 第九条第四項において「当該航空機の機長等」という。
第八条第二項 及び第九条第四項
当該船舶の移動
当該航空機の移動
第九条第一項
第七条第一項
第十一条において準用する 第七条第一項
港湾管理者
管理者(国土交通大臣 及び防衛大臣を除く。
第九条第二項
前条
第十一条において準用する 第八条
前項
第十一条において準用する 第九条第一項
第九条第三項
第一項
第十一条において準用する 第九条第一項
許可 その他の処分 又は許可 その他の処分の変更 若しくは取消しを行わせる
必要な指示をさせ、又は条件を付させ、若しくは変更をさせる
第九条第四項
前項
第十一条において準用する 第九条第三項
許可 その他の処分 又は許可 その他の処分の変更 若しくは取消しを行わせた
必要な指示をさせ、又は条件を付させ、若しくは変更をさせた
当該船舶の船長等
当該航空機の機長等

第四章 道路の利用

1項

対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、対処基本方針に基づき、道路の利用に関する指針(以下この条において「道路の利用指針」という。)を定めることができる。

2項

第六条第二項から 第七項までの規定は、道路の利用指針について準用する。


この場合において、

同条第二項
特定の地域における港湾施設」とあるのは、
「特定の地域における道路」と

読み替えるものとする。

第五章 海域の利用

1項

対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、対処基本方針に基づき、海域の利用に関する指針(以下 この条次条 及び第二十一条において「海域の利用指針」という。)を定めることができる。

2項

第六条第二項から 第七項までの規定は、海域の利用指針について準用する。


この場合において、

同条第二項
特定の地域における港湾施設」とあるのは、
「特定の海域」と

読み替えるものとする。

1項

海上保安庁長官は、海域の利用指針に基づき、船舶の航行の安全を確保するため、告示により、特定の海域に関し、範囲 又は期間を定めて、当該特定の海域を航行することができる船舶 又は時間を制限することができる


ただし、特定の海域を航行することができる船舶 又は時間を制限する緊急の必要がある場合において、当該海域を告示により定めるいとまがないときは、他の適当な方法によることができる。

2項

海上保安庁長官は、船舶乗組員に対し、海域の利用指針の内容 及び前項の処分に係る情報を迅速に提供しなければならない。

第六章 空域の利用

1項

対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、対処基本方針に基づき、空域の利用に関する指針(以下 この条 及び次条において「空域の利用指針」という。)を定めることができる。

2項

第六条第二項から 第七項までの規定は、空域の利用指針について準用する。


この場合において、

同条第二項
特定の地域における港湾施設」とあるのは、
「特定の空域」と

読み替えるものとする。

1項

国土交通大臣は、空域の利用指針に基づき、航空機の航行の安全を確保するため、航空法第八十条、第九十六条 及び第九十九条の規定による措置を適切に実施しなければならない。

第七章 電波の利用

1項

対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、対処基本方針に基づき、電波の利用に関する指針(以下 この条 及び次条において「電波の利用指針」という。)を定めることができる。

2項

第六条第二項から 第七項までの規定は、電波の利用指針について準用する。


この場合において、

同条第二項
特定の地域における港湾施設」とあるのは、
「特定の電波」と

読み替えるものとする。

1項

総務大臣は、無線局(電波法第二条第五号の無線局をいう。以下この条において同じ。)が行う第一号に掲げる無線通信のうち特定のものを、他の無線局が行う同号 又は第二号に掲げる無線通信に優先させるため特に必要があると認めるときは、電波の利用指針に基づき、当該特定の無線通信を行う無線局について、電波法 第百四条の二第一項の規定により付した免許の条件の変更、自衛隊法昭和二十九年法律第百六十五号第百十二条第三項の規定による総務大臣の定めの変更その他 当該無線局の運用に関し必要な措置を講ずることができる。

一 号

事態対処法第二条第八号イ(1)若しくは(2)に掲げる措置 又は国民の保護のための措置を実施するために必要な無線通信

二 号

電波法第百二条の二第一項各号に掲げる無線通信(前号に掲げる無線通信を除く

2項

前項の規定により総務大臣が特定の無線通信を行う無線局について必要な措置を講じた場合においては、当該無線局により当該特定の無線通信を行った者は、総務大臣による無線通信の秩序の維持 その他無線局の適正な運用の確保に資するため、遅滞なく、その旨を総務大臣に報告しなければならない。

3項

第一項第一号に掲げる無線通信を行う無線局は、同項の規定により総務大臣が特定の無線通信を行う無線局について必要な措置を講じた場合において当該無線局により当該特定の無線通信を行うときを除き同項各号に掲げる無線通信を行う他の無線局に対し、その運用を阻害するような混信 その他の妨害を与えないように運用しなければならない。

4項

第一項第一号に掲げる無線通信を行う無線局については、電波法第五十六条の規定は、適用しない

第八章 雑則

1項

国は、第八条第一項第九条第二項第十一条において準用する場合を含む。)及び第十一条において準用する場合を含む。)及び第九条第三項第十一条において準用する場合を含む。)の規定による処分が行われたときは、それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。

2項

前項に定めるもののほか、損失の補償に関し必要な事項は、政令で定める。

1項

第十四条第一項の規定による海上保安庁長官の処分の違反となるような行為をした者は、三月以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。

1項

政府は、緊急対処事態(事態対処法第二十二条第一項の緊急対処事態をいう。)においては、これに的確かつ迅速に対処し、特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用を確保するため、第六条第七条第十一条において準用する場合を含む。)、第十条第十二条第十三条第十四条第二項海域の利用指針の内容に係る部分に限る)及び第十五条から 第十七条までの規定に準じ、特定公共施設等の利用に関する指針の策定 その他の必要な措置を適切に講ずるものとする。

1項

この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、政令で定める。