生物多様性基本法

# 平成二十年法律第五十八号 #

第一節 国の施策

分類 法律
カテゴリ   環境保全
最終編集日 : 2023年 03月20日 14時25分


1項

国は、地域固有の生物の多様性の保全を図るため、我が国の自然環境を代表する自然的特性を有する地域、多様な生物の生息地 又は生育地として重要な地域等の生物の多様性の保全上重要と認められる地域の保全、過去に損なわれた生態系の再生 その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、農林水産業 その他の人の活動により特有の生態系が維持されてきた里地、里山等の保全を図るため、地域の自然的社会的条件に応じて当該地域を継続的に保全するための仕組みの構築 その他の必要な措置を講ずるものとする。

3項

国は、生物の多様性の保全上重要と認められる地域について、地域間の生物の移動 その他の有機的なつながりを確保しつつ、それらの地域を一体的に保全するために必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、野生生物の種の多様性の保全を図るため、野生生物の生息 又は生育の状況を把握し、及び評価するとともに、絶滅のおそれがあること その他の野生生物の種が置かれている状況に応じて、生息環境 又は生育環境の保全、捕獲等 及び譲渡し等の規制、保護 及び増殖のための事業 その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、野生生物が生態系、生活環境 又は農林水産業に係る被害を及ぼすおそれがある場合には、生息環境 又は生育環境の保全、被害の防除、個体数の管理 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある外来生物、遺伝子組換え生物等について、飼養等 又は使用等の規制、防除 その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある化学物質について、製造等の規制 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、持続可能な利用の推進が地域社会の健全な発展に不可欠であることにかんがみ、地域の自然的社会的条件に応じて、地域の生態系を損なわないよう配慮された国土の適切な利用 又は管理 及び自然資源の著しい減少をもたらさないよう配慮された自然資源の適切な利用 又は管理が総合的かつ計画的に推進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物資源の有用性にかんがみ、農林水産業、工業 その他の分野においてその適正な利用を図るため、生物の多様性に配慮しつつ、生物資源を有効に活用するための研究 及び技術開発 並びに生物資源の収集 及び体系的な保存の推進 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性に配慮した原材料の利用、エコツーリズム、有機農業 その他の事業活動における生物の多様性に及ぼす影響を低減するための取組を促進するために必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、国民が生物の多様性に配慮した物品 又は役務を選択することにより、生物の多様性に配慮した事業活動が促進されるよう、事業活動に係る生物の多様性への配慮に関する情報の公開、生物の多様性に配慮した消費生活の重要性についての理解の増進 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用が地球温暖化の防止等に資することを踏まえ、多くの二酸化炭素を吸収し 及び固定している森林、里山、草原、湿原等を保全するとともに、間伐、採草等の生物の多様性を保全するために必要な管理が促進されるようバイオマスの利用の推進 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、関係省庁相互間の連携の強化を図るとともに、地方公共団体、事業者、国民、民間の団体、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関し専門的な知識を有する者等の多様な主体と連携し、及び協働するよう努めるものとする。

2項

国は、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関する政策形成に民意を反映し、その過程の公正性 及び透明性を確保するため、事業者、民間の団体、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関し専門的な知識を有する者等の多様な主体の意見を求め、これを十分考慮した上で政策形成を行う仕組みの活用等を図るものとする。

3項

国は、事業者、国民 又は民間の団体が行う生物の多様性の保全上重要な土地の取得 並びにその維持 及び保全のための活動 その他の生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関する自発的な活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、生物の多様性の状況の把握 及び監視等の生物の多様性に関する調査の実施 並びに調査に必要な体制の整備、標本等の資料の収集 及び体系的な保存 並びに情報の提供 その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、生物の多様性の状況 及び その恵沢を総合的に評価するため、適切な指標の開発 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性に関する科学技術の振興を図るため、野生生物の種の特性の把握、生態系の機構の解明等の研究開発の推進 及び その成果の普及、試験研究の体制の整備、研究者の養成 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、学校教育 及び社会教育における生物の多様性に関する教育の推進、専門的な知識 又は経験を有する人材の育成、広報活動の充実、自然との触れ合いの場 及び機会の提供等により国民の生物の多様性についての理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることから、生物の多様性に影響を及ぼす事業の実施に先立つ早い段階での配慮が重要であることにかんがみ、生物の多様性に影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者等が、その事業に関する計画の立案の段階からその事業の実施までの段階において、その事業に係る生物の多様性に及ぼす影響の調査、予測 又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る生物の多様性の保全について適正に配慮することを推進するため、事業の特性を踏まえつつ、必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、生物の多様性の保全 及び持続可能な利用が、地球環境の保全上重要な課題であることにかんがみ、生物の多様性に関する条約等に基づく国際的な取組に主体的に参加すること その他の国際的な連携の確保 並びに生物の多様性の保全 及び持続可能な利用に関する技術協力 その他の国際協力の推進に必要な措置を講ずるものとする。