この法律は、科学技術の進展 その他の内外の諸情勢の変化に伴い、宇宙の開発 及び利用(以下「宇宙開発利用」という。)の重要性が増大していることにかんがみ、日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ、環境との調和に配慮しつつ、我が国において宇宙開発利用の果たす役割を拡大するため、宇宙開発利用に関し、基本理念 及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国の責務等を明らかにし、並びに宇宙基本計画の作成について定めるとともに、宇宙開発戦略本部を設置すること等により、宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の向上 及び経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和 及び人類の福祉の向上に貢献することを目的とする。
宇宙基本法
第一章 総則
宇宙開発利用は、月 その他の天体を含む宇宙空間の探査 及び利用における国家活動を律する原則に関する条約等の宇宙開発利用に関する条約 その他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとする。
宇宙開発利用は、国民生活の向上、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困 その他の人間の生存 及び生活に対する様々な脅威の除去、国際社会の平和 及び安全の確保 並びに我が国の安全保障に資するよう行われなければならない。
宇宙開発利用は、宇宙開発利用の積極的かつ計画的な推進、宇宙開発利用に関する研究開発の成果の円滑な企業化等により、我が国の宇宙産業 その他の産業の技術力 及び国際競争力の強化をもたらし、もって我が国産業の振興に資するよう行われなければならない。
宇宙開発利用は、宇宙に係る知識の集積が人類にとっての知的資産であることにかんがみ、先端的な宇宙開発利用の推進 及び宇宙科学の振興等により、人類の宇宙への夢の実現 及び人類社会の発展に資するよう行われなければならない。
宇宙開発利用は、宇宙開発利用に関する国際協力、宇宙開発利用に関する外交等を積極的に推進することにより、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすとともに、国際社会における我が国の利益の増進に資するよう行われなければならない。
宇宙開発利用は、宇宙開発利用が環境に及ぼす影響に配慮して行われなければならない。
国は、第二条から前条までに定める宇宙開発利用に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、宇宙開発利用に関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、宇宙開発利用に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施するよう努めなければならない。
国は、国、地方公共団体、大学、民間事業者等が相互に連携を図りながら協力することにより、宇宙開発利用の効果的な推進が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
政府は、宇宙開発利用に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上、税制上 又は金融上の措置 その他の措置を講じなければならない。
国は、宇宙開発利用に関する施策を講ずるにつき、行政組織の整備 及び行政運営の改善に努めるものとする。
第二章 基本的施策
国は、国民生活の向上、安全で安心して暮らせる社会の形成 並びに災害、貧困 その他の人間の生存 及び生活に対する様々な脅威の除去に資するため、人工衛星を利用した安定的な情報通信ネットワーク、観測に関する情報システム、測位に関する情報システム等の整備の推進 その他の必要な施策を講ずるものとする。
国は、国際社会の平和 及び安全の確保 並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。
国は、人工衛星等の開発、打上げ、追跡 及び運用を自立的に行う能力を我が国が有することの重要性にかんがみ、これらに必要な機器(部品を含む。)、技術等の研究開発の推進 及び設備、施設等の整備、我が国が宇宙開発利用に関し使用できる周波数の確保 その他の必要な施策を講ずるものとする。
国は、宇宙開発利用において民間が果たす役割の重要性にかんがみ、民間における宇宙開発利用に関する事業活動(研究開発を含む。)を促進し、我が国の宇宙産業 その他の産業の技術力 及び国際競争力の強化を図るため、自ら宇宙開発利用に係る事業を行うに際しては、民間事業者の能力を活用し、物品 及び役務の調達を計画的に行うよう配慮するとともに、打上げ射場(ロケットの打上げを行う施設をいう。)、試験研究設備 その他の設備 及び施設等の整備、宇宙開発利用に関する研究開発の成果の民間事業者への移転の促進、民間における宇宙開発利用に関する研究開発の成果の企業化の促進、宇宙開発利用に関する事業への民間事業者による投資を容易にするための税制上 及び金融上の措置 その他の必要な施策を講ずるものとする。
国は、宇宙開発利用に関する技術の信頼性の維持 及び向上を図ることの重要性にかんがみ、宇宙開発利用に関する基礎研究 及び基盤的技術の研究開発の推進 その他の必要な施策を講ずるものとする。
国は、宇宙の探査等の先端的な宇宙開発利用 及び宇宙科学に関する学術研究等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
国は、宇宙開発利用の分野において、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすとともに、国際社会における我が国の利益を増進するため、宇宙開発利用に関し、研究開発のための国際的な連携、国際的な技術協力 その他の国際協力を推進するとともに、我が国の宇宙開発利用に対する諸外国の理解を深めるために必要な施策を講ずるものとする。
国は、環境との調和に配慮した宇宙開発利用を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
国は、宇宙の環境を保全するための国際的な連携を確保するように努めるものとする。
国は、宇宙開発利用を推進するため、大学、民間事業者等と緊密な連携協力を図りながら、宇宙開発利用に係る人材の確保、養成 及び資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。
国は、国民が広く宇宙開発利用に関する理解と関心を深めるよう、宇宙開発利用に関する教育 及び学習の振興、広報活動の充実 その他の必要な施策を講ずるものとする。
国は、宇宙開発利用の特性にかんがみ、宇宙開発利用に関する情報の適切な管理のために必要な施策を講ずるものとする。
第三章 宇宙基本計画
政府は、宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、宇宙開発利用に関する基本的な計画(以下「宇宙基本計画」という。)を作成しなければならない。
宇宙基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
宇宙開発利用の推進に関する基本的な方針
宇宙開発利用に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策
前二号に定めるもののほか、宇宙開発利用に関する施策を政府が総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
宇宙基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標 及びその達成の期間を定めるものとする。
内閣総理大臣は、宇宙開発戦略本部の作成した宇宙基本計画の案について閣議の決定を求めるものとする。
内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、宇宙基本計画をインターネットの利用 その他適切な方法により公表しなければならない。
内閣総理大臣は、適時に、第三項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用 その他適切な方法により公表しなければならない。
政府は、宇宙開発利用の進展の状況、宇宙開発利用に関して講じた施策の効果等を勘案して、適宜、宇宙基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。
この場合においては、第四項 及び第五項の規定を準用する。
政府は、宇宙基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第四章 宇宙開発戦略本部
宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、宇宙開発戦略本部(以下「本部」という。)を置く。
本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
宇宙基本計画の案の作成 及び実施の推進に関すること。
前号に掲げるもののほか、宇宙開発利用に関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、その施策の実施の推進 及び総合調整に関すること。
本部は、宇宙開発戦略本部長、宇宙開発戦略副本部長 及び宇宙開発戦略本部員をもって組織する。
本部の長は、宇宙開発戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
本部に、宇宙開発戦略副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官 及び宇宙開発担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、宇宙開発利用に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。
副本部長は、本部長の職務を助ける。
本部に、宇宙開発戦略本部員(以下「本部員」という。)を置く。
本部員は、本部長 及び副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。
本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体 及び独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)の長 並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人 又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明 その他必要な協力を求めることができる。
本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
本部に関する事務は、内閣府において処理する。
本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
第五章 宇宙活動に関する法制の整備
政府は、宇宙活動に係る規制 その他の宇宙開発利用に関する条約 その他の国際約束を実施するために必要な事項等に関する法制の整備を総合的、計画的かつ速やかに実施しなければならない。
前項の法制の整備は、国際社会における我が国の利益の増進 及び民間における宇宙開発利用の推進に資するよう行われるものとする。