何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
民法
第一節 総則
⤏ 第一款 契約の成立
契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成 その他の方式を具備することを要しない。
承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
対話者に対してした第一項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
ただし、申込者が対話の終了後も その申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。
申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。
申込者の意思表示 又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対してその報酬を与える義務を負う。
懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができない。
ただし、その広告において撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
前項の広告は、その期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。
懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、その指定した行為をする期間を定めないでした広告を撤回することができる。
ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
前の広告と同一の方法による広告の撤回は、これを知らない者に対しても、その効力を有する。
広告の撤回は、前の広告と異なる方法によっても、することができる。
ただし、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。
広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。
数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。
ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。
前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。
広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。
⤏ 第二款 契約の効力
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
⤏ 第三款 契約上の地位の移転
契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
⤏ 第四款 契約の解除
契約 又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
前項の意思表示は、撤回することができない。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約 及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
債務の全部の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の一部の履行が不能である場合 又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
契約の性質 又は当事者の意思表示により、特定の日時 又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
債務の一部の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
解除権を有する者が故意 若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工 若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。
ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。
⤏ 第五款 定型約款
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部 又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様 及びその実情 並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前 又は定型取引合意の後 相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。
ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。
ただし、一時的な通信障害が発生した場合 その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無 及びその内容 その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨 及び変更後の定型約款の内容 並びにその効力発生時期をインターネットの利用 その他の適切な方法により周知しなければならない。
第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。