この法律は、土地利用の状況等からみて良好な営農条件 及び居住環境の確保を図ることが必要であると認められる集落地域について、農業の生産条件と都市環境との調和のとれた地域の整備を計画的に推進するための措置を講じ、もつてその地域の振興と 秩序ある整備に寄与することを目的とする。
集落地域整備法
第一章 総則
この法律において「農用地」とは、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第三条第一号に規定する農用地をいう。
この法律において「公共施設」とは、道路、公園 その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
この法律による措置は、集落 及び その周辺の農用地を含む一定の地域で、次に掲げる要件に該当するもの(以下「集落地域」という。)について講じられるものとする。
当該地域の土地利用の状況等からみて、営農条件 及び居住環境の確保に支障を生じ、又は 生ずるおそれがあると認められる地域であること。
当該地域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して、調和のとれた農業の生産条件の整備と 都市環境の整備とを図り、及び適正な土地利用を図る必要があると認められる地域であること。
当該地域内に相当規模の農用地が存し、かつ、農用地 及び農業用施設等を整備することにより良好な営農条件を確保し得ると見込まれること。
当該地域内に相当数の住居等が存し、かつ、公共施設の整備の状況等からみて、一体としてその特性にふさわしい 良好な居住環境を有する地域として秩序ある整備を図ることが相当であると認められること。
当該地域が都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第五条の規定により指定された都市計画区域(同法第七条第一項の規定による市街化区域を除く。)内にあり、かつ、農業振興地域の整備に関する法律第六条第一項の規定により指定された農業振興地域内にあること。
第二章 集落地域整備基本方針
都道府県知事は、集落地域について、その整備 又は保全に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めることができる。
基本方針においては、集落地域の位置 及び区域に関する基本的事項を定めるほか、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。
集落地域における土地利用に関する基本的事項
集落地域における農用地 及び農業用施設等の整備その他 良好な営農条件の確保に関する基本的事項
集落地域における公共施設の整備及び良好な居住環境の整備に関する基本的事項
都道府県知事は、基本方針を定めようとするときは、関係市町村の意見を聴かなければならない。
都道府県知事は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、 これを公表するよう努めるとともに、農林水産大臣 及び国土交通大臣に報告しなければならない。
前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第三章 集落地区計画
集落地域の土地の区域で、営農条件と調和のとれた良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図るため、当該集落地域の特性にふさわしい整備 及び保全を行うことが必要と認められるものについては、都市計画に集落地区計画を定めることができる。
集落地区計画は、基本方針に基づいて定めなければならない。
集落地区計画については、都市計画法第十二条の四第二項に定める事項のほか、主として当該区域内の居住者等の利用に供される道路、公園 その他の政令で定める施設(第五項 及び第六項において「集落地区施設」という。)及び建築物 その他の工作物(以下この章において「建築物等」という。)の整備 並びに土地の利用に関する計画(以下この章において「集落地区整備計画」という。)を都市計画に定めるものとする。
集落地区整備計画においては、次に掲げる事項を定めることができる。
建築物等の用途の制限、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合の最高限度、建築物等の高さの最高限度、建築物等の形態 又は色彩 その他の意匠の制限 その他 建築物等に関する事項で政令で定めるもの
現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項
前三号に掲げるもののほか、 土地の利用に関する事項で政令で定めるもの
集落地区計画を都市計画に定めるに当たつては、次に掲げるところに従わなければならない。
集落地区施設の配置 及び規模は、当該集落地域の特性を考慮して、当該区域 及び その周辺において定められている他の都市計画と併せて適切な配置 及び規模の公共施設を備えた良好な居住環境を形成し、又は保持するよう、必要な位置に適切な規模で定めること。
建築物等に関する事項は、建築物等が当該集落地域の特性にふさわしい用途、 形態等を備えた適正な土地の利用形態を示すように定めること。
集落地区計画を都市計画に定める際、当該集落地区計画の区域の全部 又は一部について集落地区整備計画を定めることができない特別の事情があるときは、当該区域の全部 又は一部について集落地区整備計画を定めることを要しない。
この場合において、集落地区計画の区域の一部について集落地区整備計画を定めるときは、当該集落地区計画については、集落地区整備計画の区域をも都市計画に定めなければならない。
集落地区計画の区域(集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築 又は増築 その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計 又は施行方法、着手予定日 その他 国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。
ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
通常の管理行為、軽易な行為 その他の行為で政令で定めるもの
非常災害のため必要な応急措置として行う行為
都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
都市計画法第二十九条第一項の許可を要する行為 その他政令で定める行為
前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち設計 又は施行方法 その他の国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
市町村長は、前二項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る行為が集落地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し、設計の変更 その他の必要な措置を執ることを勧告することができる。
市町村長は、前項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地に関する権利の処分についてのあつせん その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第四章 集落農業振興地域整備計画等
市町村は、農業振興地域整備計画(農業振興地域の整備に関する法律第八条第一項の規定により定められた農業振興地域整備計画をいう。第三項において同じ。)を達成するとともに、集落地域について、居住環境と調和のとれた良好な営農条件を確保するため、その地域の特性にふさわしい農用地 及び農業用施設等の整備を一体的に推進する必要があると認める場合には、集落農業振興地域整備計画を定めることができる。
集落農業振興地域整備計画においては、その区域を定めるほか、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。
当該区域内における土地の農業上の効率的な利用に関する事項
当該区域内における農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第二号、第四号 及び第六号に掲げる事項
集落農業振興地域整備計画は、基本方針 及び農業振興地域整備計画に適合するとともに、農業振興地域の整備に関する法律第四条第三項に規定する計画との調和が保たれたものであり、かつ、前項の区域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して、当該区域において総合的に農業の振興を図るため必要な事項を一体的に定めるものでなければならない。
農業振興地域の整備に関する法律第八条第四項、第十条第二項、第十二条(第一項後段を除く。)並びに第十三条第一項前段 及び第四項の規定は、集落農業振興地域整備計画について準用する。
この場合において、
同法第八条第四項中
「ときは、政令で定めるところにより、当該農業振興地域整備計画のうち第二項第一号に掲げる事項に係るもの(以下「農用地利用計画」という。)について」とあるのは
「ときは」と、
「協議し、その同意を得なければ」とあるのは
「協議しなければ」と、
同法第十三条第一項前段中
「農業振興地域整備基本方針」とあるのは
「集落地域整備法第四条第一項の基本方針 若しくは農業振興地域整備計画」と、
「変更により、前条第一項の規定による基礎調査の結果により」とあるのは
「変更により」と、
同条第四項中
「第八条第四項 及び第十一条(第十二項を除く。)」とあるのは
「第八条第四項」と、
「第十二条」とあるのは
「第十二条(第一項後段を除く。)」と、
「同条第二項」とあるのは
「第八条第四項中「ときは、政令で定めるところにより、当該農業振興地域整備計画のうち第二項第一号に掲げる事項に係るもの(以下「農用地利用計画」という。)について」とあるのは
「ときは」と、
「協議し、その同意を得なければ」とあるのは「協議しなければ」と、第十二条第二項」と、「とあるのは、」とあるのは
「とあるのは」と
読み替えるものとする。
集落農業振興地域整備計画の区域内にある相当規模の一団の農用地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利 又は その他の使用 及び収益を目的とする権利を有する者(国 及び地方公共団体を除く。第三項において「農用地所有者等」という。)は、当該農用地の良好な営農条件を確保するため、農用地の保全 及び利用に関する協定(以下この章において「協定」という。)を締結し、当該協定が適当である旨の市町村長の認定を受けることができる。
協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
協定の対象となる農用地の区域(以下この章において「協定区域」という。)
農用地を保全し、効率的に利用するために必要な事項
協定については、協定区域内の農用地に係る農用地所有者等の全員の合意がなければならない。
協定の内容は、法令に基づき策定された国 又は地方公共団体の計画に適合するものでなければならない。
協定の有効期間は、十年を超えてはならない。
市町村長は、前条第一項の認定の申請が次の各号のすべてに該当するときは、同項の認定をするものとする。
申請の手続 又は協定の内容が法令に違反するものでないこと。
協定の内容が土地の利用を不当に制限するものでないことその他 妥当なものであること。
協定の内容が集落農業振興地域整備計画の達成に資すると認められるものであること。
市町村長は、前条第一項の認定をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、当該協定の写しを当該市町村の事務所に備えて公衆の縦覧に供するとともに、協定区域である旨を当該区域内に明示しなければならない。
前二項に定めるもののほか、協定の認定(協定の変更の認定を含む。) 及び その取消しに関し必要な事項は、政令で定める。
第八条第一項の認定を受けた協定に係る協定区域内の一団の農用地の所有者は、市町村に対し、農林水産省令で定めるところにより、当該農用地につき所有権以外の同項に規定する権利、先取特権 又は抵当権を有する者の全員の同意を得て、当該農用地の区域を農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第一号の農用地区域(次項において「農用地区域」という。)として定めるべきことを要請することができる。
前項の要請に基づき、市町村が同項の要請に係る農用地の区域の全部 又は一部を農用地区域として定める場合には、農業振興地域の整備に関する法律第十一条第三項から 第十一項までの規定は、適用しない。
市町村は、集落農業振興地域整備計画の区域内における農用地の保有 及び利用の現況 及び将来の見通し、農業経営の動向等を考慮して、当該区域内の土地の農業上の利用と 他の利用との調整に留意して当該区域内にある土地の農業上の効率的な利用の確保を図るとともに、第八条第一項の認定を受けた協定を維持し、又は その締結を促進するため、 特に必要があると認められる場合には、当該協定区域(協定区域とすることが適切であり、かつ、その大部分について協定区域となることが確実と認められる農用地の区域を含む。第三項において同じ。)内にある農用地を含む集落農業振興地域整備計画の区域内にある一定の農用地に関し交換分合を行うことができる。
市町村は、前項の規定により交換分合を行おうとするときは、農林水産省令で定めるところにより、交換分合計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
交換分合計画は、集落農業振興地域整備計画の区域内にある土地の農業上の利用と 他の利用との調整に留意して協定区域内において一団の農用地の効率的な利用を確保するとともに、農用地の集団化 その他 農業構造の改善に資するように定めるものでなければならない。
農業振興地域の整備に関する法律第十三条の三の規定 並びに土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第九十九条(第一項を除く。)、第百一条第二項、第百二条から第百七条まで、第百八条第一項 及び第二項、第百九条、第百十二条、第百十三条、第百十四条第一項、第百十五条、第百十八条(第二項を除く。)並びに第百二十一条から第百二十三条までの規定は、前条第一項の規定による交換分合について準用する。
この場合において、これらの規定の準用について必要な技術的読替えは、政令で定める。
第五章 雑則
この法律に規定する農林水産大臣 及び国土交通大臣の権限は、政令で定めるところにより、その全部 又は一部を地方支分部局の長に委任することができる。
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定 又は改廃に伴い 合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第六章 罰則
第十二条において準用する土地改良法第百九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
第六条第一項 又は第二項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の罰金に処する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務 又は財産に関して前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の罰金刑を科する。