この法律(第十六条を除く。)の規定は船舶による物品運送で船積港 又は陸揚港が本邦外にあるものに、同条の規定は運送人 及び その被用者の不法行為による損害賠償の責任に適用する。
国際海上物品運送法
この法律において「船舶」とは、商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百八十四条に規定する船舶をいう。
この法律において「運送人」とは、前条の運送を引き受ける者をいう。
この法律において「荷送人」とは、前条の運送を委託する者をいう。
この法律において「一計算単位」とは、国際通貨基金協定第三条第一項に規定する特別引出権による一特別引出権に相当する金額をいう。
運送人は、自己 又は その使用する者が運送品の受取、船積、積付、運送、保管、荷揚 及び引渡につき注意を怠つたことにより生じた運送品の滅失、損傷 又は延着について、損害賠償の責を負う。
前項の規定は、船長、海員、水先人 その他 運送人の使用する者の航行 若しくは船舶の取扱に関する行為 又は船舶における火災(運送人の故意 又は過失に基くものを除く。)により生じた損害には、適用しない。
運送人は、前条の注意が尽されたことを証明しなければ、同条の責を免かれることができない。
運送人は、次の事実があつたこと 及び運送品に関する損害がその事実により通常生ずべきものであることを証明したときは、前項の規定にかかわらず、前条の責を免かれる。
ただし、同条の注意が尽されたならば その損害を避けることができたにかかわらず、その注意が尽されなかつたことの証明があつたときは、この限りでない。
裁判上の差押、検疫上の制限 その他公権力による処分
荷送人 若しくは運送品の所有者 又はその使用する者の行為
同盟罷業、怠業、作業所閉鎖 その他の争議行為
海上における人命 若しくは財産の救助行為 又はそのためにする離路 若しくは その他の正当な理由に基く離路
運送品の特殊な性質 又は隠れた欠陥
運送品の荷造 又は記号の表示の不完全
起重機 その他これに準ずる施設の隠れた欠陥
前項の規定は、商法第七百六十条の規定の適用を妨げない。
運送人は、発航の当時次に掲げる事項を欠いたことにより生じた運送品の滅失、損傷 又は延着について、損害賠償の責任を負う。
ただし、運送人が自己 及び その使用する者がその当時当該事項について注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。
船舶を航海に堪える状態に置くこと。
船員の乗組み、船舶の艤装 及び需品の補給を適切に行うこと。
船倉、冷蔵室 その他運送品を積み込む場所を運送品の受入れ、運送 及び保存に適する状態に置くこと。
引火性、爆発性 その他の危険性を有する運送品で、船積みの際運送人、船長 及び運送人の代理人がその性質を知らなかつたものは、いつでも、 陸揚げし、破壊し、又は無害にすることができる。
前項の規定は、運送人の荷送人に対する損害賠償の請求を妨げない。
引火性、爆発性 その他の危険性を有する運送品で、船積みの際運送人、船長 又は運送人の代理人がその性質を知つていたものは、船舶 又は積荷に危害を及ぼすおそれが生じたときは、陸揚げし、破壊し、又は無害にすることができる。
運送人は、第一項 又は前項の処分により当該運送品につき生じた損害については、賠償の責任を負わない。
荷受人 又は船荷証券所持人は、運送品の一部滅失 又は損傷があつたときは、受取の際運送人に対しその滅失 又は損傷の概況につき書面による通知を発しなければならない。
ただし、その滅失 又は損傷が直ちに発見することができないものであるときは、受取の日から三日以内にその通知を発すれば足りる。
前項の通知がなかつたときは、運送品は、滅失 及び損傷がなく 引き渡されたものと推定する。
前二項の規定は、運送品の状態が引渡しの際当事者の立会いによつて確認された場合には、適用しない。
運送品につき滅失 又は損傷が生じている疑いがあるときは、運送人と荷受人 又は船荷証券所持人とは、相互に、運送品の点検のため必要な便宜を与えなければならない。
運送品に関する損害賠償の額は、荷揚げされるべき地 及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によつて定める。
ただし、市場価格がないときは、その地 及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によつて定める。
商法第五百七十六条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
運送品に関する運送人の責任は、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額を限度とする。
滅失、損傷 又は延着に係る運送品の包 又は単位の数に一計算単位の六百六十六・六七倍を乗じて得た金額
前号の運送品の総重量について一キログラムにつき一計算単位の二倍を乗じて得た金額
前項各号の一計算単位は、運送人が運送品に関する損害を賠償する日において公表されている最終のものとする。
運送品がコンテナー、パレット その他これらに類する輸送用器具(以下 この項において「コンテナー等」という。)を用いて運送される場合における第一項の規定の適用については、その運送品の包 若しくは個品の数 又は容積 若しくは重量が船荷証券 又は海上運送状に記載されているときを除き、コンテナー等の数を包 又は単位の数とみなす。
運送品に関する運送人の被用者の責任が、第十六条第三項の規定により、同条第一項において準用する前三項の規定により運送人の責任が軽減される限度で軽減される場合において、運送人の被用者が損害を賠償したときは、前三項の規定による運送品に関する運送人の責任は、運送人の被用者が賠償した金額の限度において、更に軽減される。
前各項の規定は、運送品の種類 及び価額が、運送の委託の際荷送人により通告され、かつ、船荷証券が交付されるときは、船荷証券に記載されている場合には、適用しない。
前項の場合において、荷送人が実価を著しく超える価額を故意に通告したときは、運送人は、運送品に関する損害については、賠償の責任を負わない。
第五項の場合において、荷送人が実価より著しく低い価額を故意に通告したときは、その価額は、運送品に関する損害については、運送品の価額とみなす。
前二項の規定は、運送人に悪意があつた場合には、適用しない。
運送人は、運送品に関する損害が、自己の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為により生じたものであるときは、第八条 及び前条第一項から 第四項までの規定にかかわらず、一切の損害を賠償する責任を負う。
第三条から 第五条まで 若しくは第七条から 前条まで 又は商法第五百八十五条、第七百五十九条 若しくは第七百六十条の規定に反する特約で、荷送人、荷受人 又は船荷証券所持人に不利益なものは、無効とする。
運送品の保険契約によつて生ずる権利を運送人に譲渡する契約 その他 これに類似する契約も、同様とする。
前項の規定は、運送人に不利益な特約をすることを妨げない。
この場合には、荷送人は、船荷証券にその特約を記載すべきことを請求することができる。
第一項の規定は、運送品の船積み前 又は荷揚げ後の事実により生じた損害には、適用しない。
前項の損害につき第一項の特約がされた場合において、その特約が船荷証券に記載されていないときは、運送人は、その特約をもつて船荷証券所持人に対抗することができない。
前条第一項の規定は、船舶の全部 又は一部を運送契約の目的とする場合には、適用しない。
ただし、運送人と船荷証券所持人との関係については、この限りでない。
前条の規定は、運送品の特殊な性質 若しくは状態 又は運送が行われる特殊な事情により、運送品に関する運送人の責任を免除し、又は軽減することが相当と認められる運送に準用する。
第十一条第一項の規定は、生動物の運送 及び甲板積みの運送には、適用しない。
前項の運送につき第十一条第一項の特約がされた場合において、その特約が船荷証券に記載されていないときは、運送人は、その特約をもつて船荷証券所持人に対抗することができない。
甲板積みの運送につきその旨が船荷証券に記載されていないときも、同様とする。
第一条の運送には、商法第五百七十五条、第五百七十六条、第五百八十四条、第五百八十七条、第五百八十八条、第七百三十九条第一項(同法第七百五十六条第一項において準用する場合を含む。)及び第二項、第七百五十六条第二項 並びに第七百六十九条の規定を除き、同法第二編第八章第二節 及び第三編第三章の規定を適用する。
第三条第二項、第六条第四項 及び第八条から 第十条まで 並びに商法第五百七十七条 及び第五百八十五条の規定は、運送品に関する運送人の荷送人、荷受人 又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任に準用する。
この場合において、
第三条第二項中
「前項」とあるのは、
「民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十五条第一項本文 及び商法第六百九十条(同法第七百三条第一項の規定により船舶賃借人が船舶所有者と同一の権利義務を有することとされる場合を含む。)」と
読み替えるものとする。
前項の規定は、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引き受けた運送人の荷受人に対する責任には、適用しない。
第一項の規定により運送品に関する運送人の責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、又は軽減される限度において、当該運送品に関する運送人の被用者の荷送人、荷受人 又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。
第九条第四項の規定は、運送品に関する運送人の責任が同条第一項から 第三項までの規定(第一項において準用する場合を含む。)により軽減される場合において、運送人が損害を賠償したときの、運送品に関する運送人の被用者の責任に準用する。
前二項の規定は、運送品に関する損害が、運送人の被用者の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらしたその者の無謀な行為により生じたものであるときには、適用しない。
この法律は、郵便物の運送には、適用しない。