心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律

# 平成十五年法律第百十号 #
略称 : 心神喪失者等医療観察法 

第二節 入院又は通院

分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和五年十一月十五日 ( 2023年 11月15日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第二十八号による改正
最終編集日 : 2024年 04月27日 22時51分


1項

検察官は、被疑者が対象行為を行ったこと 及び心神喪失者 若しくは心神耗弱者であることを認めて公訴を提起しない処分をしたとき、又は第二条第二項第二号に規定する確定裁判があったときは、当該処分をされ、又は当該確定裁判を受けた対象者について、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き、地方裁判所に対し、第四十二条第一項の決定をすることを申し立てなければならない。


ただし、当該対象者について刑事事件 若しくは少年の保護事件の処理 又は外国人の退去強制に関する法令の規定による手続が行われている場合は、当該手続が終了するまで、申立てをしないことができる。

2項

前項本文の規定にかかわらず、検察官は、当該対象者が刑 若しくは保護処分の執行のため刑務所、少年刑務所、拘置所 若しくは少年院に収容されており引き続き収容されることとなるとき、又は新たに収容されるときは、同項申立てをすることができない


当該対象者が外国人であって出国したときも、同様とする。

3項

検察官は、刑法第二百四条に規定する行為を行った対象者については、傷害が軽い場合であって、当該行為の内容、当該対象者による過去の他害行為の有無 及び内容 並びに当該対象者の現在の病状、性格 及び生活環境を考慮し、その必要がないと認めるときは、第一項の申立てをしないことができる。


ただし、他の対象行為をも行った者については、この限りでない。

1項

前条第一項の申立てを受けた地方裁判所の裁判官は、対象者について対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き、鑑定 その他医療的観察のため、当該対象者を入院させ第四十条第一項 又は第四十二条の決定があるまでの間在院させる旨を命じなければならない。


この場合において、裁判官は、呼出し 及び同行に関し、裁判所と同一の権限を有する。

2項

前項の命令を発するには、裁判官は、当該対象者に対し、あらかじめ、供述を強いられることはないこと 及び弁護士である付添人を選任することができることを説明した上、当該対象者が第二条第二項に該当するとされる理由の要旨 及び前条第一項の申立てがあったことを告げ、陳述する機会を与えなければならない。


ただし、当該対象者の心身の障害により 又は正当な理由がなく裁判官の面前に出頭しないため、これらを行うことができないときは、この限りでない。

3項

第一項の命令による入院の期間は、当該命令が執行された日から起算して二月を超えることができない


ただし、裁判所は、必要があると認めるときは、通じて一月を超えない範囲で、決定をもって、この期間を延長することができる。

4項

裁判官は、検察官に第一項の命令の執行を嘱託するものとする。

5項

第二十八条第二項第三項 及び第六項 並びに第二十九条第三項の規定は、前項の命令の執行について準用する。

6項

第一項の命令は、判事補が一人で発することができる。

1項

裁判所は、第三十三条第一項の申立てがあった場合において、対象者に付添人がないときは、付添人を付さなければならない。

1項

裁判所は、処遇の要否 及びその内容につき、精神保健参与員の意見を聴くため、これを審判に関与させるものとする。


ただし、特に必要がないと認めるときは、この限りでない。

1項

裁判所は、対象者に関し、精神障害者であるか否か 及び対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要があるか否かについて、精神保健判定医 又はこれと同等以上の学識経験を有すると認める医師に鑑定を命じなければならない。


ただし、当該必要が明らかにないと認める場合は、この限りでない。

2項

前項の鑑定を行うに当たっては、精神障害の類型、過去の病歴、現在 及び対象行為を行った当時の病状、治療状況、病状 及び治療状況から予測される将来の症状、対象行為の内容、過去の他害行為の有無 及び内容 並びに当該対象者の性格を考慮するものとする。

3項

第一項の規定により鑑定を命ぜられた医師は、当該鑑定の結果に、当該対象者の病状に基づき、この法律による入院による医療の必要性に関する意見を付さなければならない。

4項

裁判所は、第一項の鑑定を命じた医師に対し、当該鑑定の実施に当たって留意すべき事項を示すことができる。

5項

裁判所は、第三十四条第一項前段の命令が発せられていない対象者について第一項の鑑定を命ずる場合において、必要があると認めるときは、決定をもって、鑑定 その他医療的観察のため、当該対象者を入院させ第四十条第一項 又は第四十二条の決定があるまでの間在院させる旨を命ずることができる。


第三十四条第二項から第五項までの規定は、この場合について準用する。

1項

裁判所は、保護観察所の長に対し、対象者の生活環境の調査を行い、その結果を報告することを求めることができる。

1項

裁判所は、第三十三条第一項の申立てがあった場合は、審判期日を開かなければならない。


ただし、検察官 及び付添人に異議がないときは、この限りでない。

2項

検察官は、審判期日に出席しなければならない。

3項

裁判所は、審判期日において、対象者に対し、供述を強いられることはないことを説明した上、当該対象者が第二条第二項に該当するとされる理由の要旨 及び第三十三条第一項の申立てがあったことを告げ、当該対象者 及び付添人から、意見を聴かなければならない。


ただし第三十一条第八項ただし書に規定する場合における対象者については、この限りでない。

1項

裁判所は、第二条第二項第一号に規定する対象者について第三十三条第一項の申立てがあった場合において、次の各号いずれかに掲げる事由に該当するときは、決定をもって、申立てを却下しなければならない。

一 号

対象行為を行ったと認められない場合

二 号

心神喪失者 及び心神耗弱者のいずれでもないと認める場合

2項

裁判所は、検察官が心神喪失者と認めて公訴を提起しない処分をした対象者について、心神耗弱者と認めた場合には、その旨の決定をしなければならない。


この場合において、検察官は、当該決定の告知を受けた日から二週間以内に、裁判所に対し、当該申立てを取り下げるか否かを通知しなければならない。

1項

裁判所は、第二条第二項第一号に規定する対象者について第三十三条第一項の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、検察官 及び付添人の意見を聴いて、前条第一項第一号の事由に該当するか否かについての審理 及び裁判を別の合議体による裁判所で行う旨の決定をすることができる

2項

前項の合議体は、裁判所法第二十六条第二項に規定する裁判官の合議体とする。


この場合において、当該合議体には、処遇事件の係属する裁判所の合議体の構成員である裁判官が加わることができる。

3項

第一項の合議体による裁判所は、対象者の呼出し 及び同行 並びに対象者に対する出頭命令に関し、処遇事件の係属する裁判所と同一の権限を有する。

4項

処遇事件の係属する裁判所は、第一項の合議体による裁判所の審理が行われている間においても、審判を行うことができる。


ただし、処遇事件を終局させる決定(次条第二項の決定を除く)を行うことができない

5項

第一項の合議体による裁判所が同項の審理を行うときは、審判期日を開かなければならない。


この場合において、審判期日における審判の指揮は、裁判長が行う。

6項

第三十九条第二項 及び第三項の規定は、前項の審判期日について準用する。

7項

処遇事件の係属する裁判所の合議体の構成員である精神保健審判員は、第五項の審判期日に出席することができる。

8項

第一項の合議体による裁判所は、前条第一項第一号に規定する事由に該当する旨の決定 又は当該事由に該当しない旨の決定をしなければならない。

9項

前項の決定は、処遇事件の係属する裁判所を拘束する。

1項

裁判所は、第三十三条第一項の申立てがあった場合は、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎とし、かつ、同条第三項に規定する意見 及び対象者の生活環境を考慮し、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める決定をしなければならない。

一 号

対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合

医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定

二 号

前号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合

入院によらない医療を受けさせる旨の決定

三 号

前二号の場合に当たらないとき

この法律による医療を行わない旨の決定

2項

裁判所は、申立てが不適法であると認める場合は、決定をもって、当該申立てを却下しなければならない。

1項

前条第一項第一号の決定を受けた者は、厚生労働大臣が定める指定入院医療機関において、入院による医療を受けなければならない。

2項

前条第一項第二号の決定を受けた者は、厚生労働大臣が定める指定通院医療機関による入院によらない医療を受けなければならない。

3項

厚生労働大臣は、前条第一項第一号 又は第二号の決定があったときは、当該決定を受けた者が入院による医療を受けるべき指定入院医療機関 又は入院によらない医療を受けるべき指定通院医療機関(病院 又は診療所に限る次項 並びに第五十四条第一項 及び第二項第五十六条第五十九条第六十一条 並びに第百十条において同じ。)を定め、その名称 及び所在地を、当該決定を受けた者 及びその保護者並びに当該決定をした地方裁判所の所在地を管轄する保護観察所の長に通知しなければならない。

4項

厚生労働大臣は、前項の規定により定めた指定入院医療機関 又は指定通院医療機関を変更した場合は、変更後の指定入院医療機関 又は指定通院医療機関の名称 及び所在地を、当該変更後の指定入院医療機関 又は指定通院医療機関において医療を受けるべき者 及びその保護者 並びに当該医療を受けるべき者の当該変更前の居住地を管轄する保護観察所の長に通知しなければならない。

1項

第四十二条第一項第二号の決定による入院によらない医療を行う期間は、当該決定があった日から起算して三年間とする。


ただし、裁判所は、通じて二年を超えない範囲で、当該期間を延長することができる

1項

裁判所は、厚生労働省の職員に第四十二条第一項第一号の決定を執行させるものとする。

2項

第二十八条第六項 及び第二十九条第三項の規定は、前項の決定の執行について準用する。

3項

裁判所は、第四十二条第一項第一号の決定を執行するため必要があると認めるときは、対象者に対し、呼出状を発することができる。

4項

裁判所は、対象者が正当な理由がなく前項の呼出しに応じないときは、当該対象者に対し、同行状を発することができる。

5項

裁判所は、対象者が正当な理由がなく第三項の呼出しに応じないおそれがあるとき、定まった住居を有しないとき、又は医療のため緊急を要する状態にあって必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、当該対象者に対し、同行状を発することができる。

6項

第二十八条の規定は、前二項の同行状の執行について準用する。


この場合において、

同条第一項
検察官にその執行を嘱託し、又は保護観察所の職員にこれを執行させることができる」とあるのは、
「検察官にその執行を嘱託することができる」と

読み替えるものとする。

1項

第四十条第一項の規定により申立てを却下する決定(同項第一号に該当する場合に限る)又は第四十二条第一項の決定が確定したときは、当該決定に係る対象行為について公訴を提起し、又は当該決定に係る対象行為に関し再び第三十三条第一項申立てをすることができない

2項

第四十条第一項の規定により申立てを却下する決定(同項第二号に該当する場合に限る)が確定したときは、当該決定に係る対象行為に関し、再び第三十三条第一項申立てをすることができない


ただし、当該対象行為について、第二条第二項第二号に規定する裁判が確定するに至った場合は、この限りでない。

1項

裁判所(第四十一条第一項の合議体による裁判所を含む。)は、この節に規定する審判について、最高裁判所規則で定めるところにより当該対象行為の被害者等(被害者 又はその法定代理人 若しくは被害者が死亡した場合 若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)から申出があるときは、その申出をした者に対し、審判期日において審判を傍聴することを許すことができる。

2項

前項の規定により審判を傍聴した者は、正当な理由がないのに当該傍聴により知り得た対象者の氏名 その他当該対象者の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、当該傍聴により知り得た事項をみだりに用いて、当該対象者に対する医療の実施 若しくはその社会復帰を妨げ、又は関係人の名誉 若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない。

1項

裁判所は、第四十条第一項 又は第四十二条の決定をした場合において、最高裁判所規則で定めるところにより当該対象行為の被害者等から申出があるときは、その申出をした者に対し、次に掲げる事項を通知するものとする。


ただし、その通知をすることが対象者に対する医療の実施 又はその社会復帰を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては、この限りでない。

一 号

対象者の氏名 及び住居

二 号

決定の年月日、主文 及び理由の要旨

2項

前項の申出は、同項に規定する決定が確定した後三年を経過したときは、することができない

3項

前条第二項の規定は、第一項の規定により通知を受けた者について準用する。