主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律

# 平成六年法律第百十三号 #
略称 : 主要食糧需給価格安定法 

第二章 米穀の需給及び価格の安定を図るための措置

分類 法律
カテゴリ   農業
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 04月29日 14時20分


第一節 基本指針

1項

農林水産大臣は、米穀の需給 及び価格の安定を図るため、政令で定めるところにより、毎年、米穀の需給 及び価格の安定に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。

2項

基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号

米穀の需給 及び価格の安定に関する基本方針

二 号
米穀の需給の見通しに関する事項
三 号

米穀の備蓄の目標数量 その他米穀の備蓄の運営に関する事項

四 号

米穀の輸入数量 及びその種類別の数量に関する事項

五 号

その他米穀の需給 及び価格の安定に関する重要事項

3項

農林水産大臣は、前項第二号に掲げる事項を定めるため必要があるときは、都道府県知事に対し、資料の提出 その他必要な協力を求めることができる。

4項

農林水産大臣は、基本指針を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

5項

農林水産大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6項

農林水産大臣は、米穀の需給事情 その他の経済事情に変動が生じた場合において、特に必要があると認めるときは、基本指針を変更することができる。

7項

第三項から第五項までの規定は、前項の規定による基本指針の変更について準用する。

第二節 適正かつ円滑な流通の確保に関する措置

第一款 生産調整方針

1項

米穀の生産者 又は出荷の事業を行う者の組織する団体 その他政令で定める者(以下「生産出荷団体等」という。)は、農林水産省令で定めるところにより、米穀の生産調整に関する方針(以下「生産調整方針」という。)を作成し、当該生産調整方針が適当である旨の農林水産大臣の認定を受けることができる。

2項

生産調整方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号

生産調整方針に従って米穀の生産を行う者に係る米穀の生産数量の目標(以下「生産数量目標」という。)の設定方針

二 号

生産数量目標を達成するためとるべき措置(天候 その他の自然的条件の変化により生産数量目標を上回って生産された数量の米穀に係る措置を含む。

3項

農林水産大臣は、第一項の認定の申請が 次の各号のすべてに該当するときは、同項の認定をするものとする。

一 号

生産調整方針の内容が基本指針に照らして適切なものであること。

二 号

前項第二号に掲げる事項が生産数量目標を確実に達成するために適切なものであること。

三 号

その他 農林水産省令で定める基準に適合するものであること。

4項

前三項に規定するもののほか、生産調整方針の認定 及びその取消しに関し必要な事項は、政令で定める。

1項

国は、生産出荷団体等に対し、生産調整方針の作成 及びその適切な運用のために必要な助言 及び指導を行うように努めるものとする。

1項

生産出荷団体等は、生産調整方針の作成 及びその適切な運用のため、地方公共団体に対し、必要な協力を求めることができる。

2項

地方公共団体は、前項の規定により協力を求められた場合において、生産調整方針の作成 及びその適切な運用がその地方公共団体の区域の特性に応じた農業の振興に資すると認めるときは、必要な助言 及び指導を行うように努めるものとする。

第一款の二 米穀の出荷又は販売の事業を行う者の遵守事項

1項

農林水産大臣は、米穀の適正かつ円滑な流通を確保するため、農林水産省令で、米穀の用途別の管理の方法 その他の米穀の出荷 又は販売の事業を行う者が その業務の方法に関し遵守すべき事項を定めることができる。

1項

農林水産大臣は、米穀の出荷 又は販売の事業を行う者が前条の農林水産省令で定める事項を遵守していないと認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その業務の方法を改善すべきことを勧告することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

第二款 米穀安定供給確保支援機構

1項

農林水産大臣は、米穀の安定供給の確保を支援することを目的とする一般社団法人、一般財団法人 その他営利を目的としない法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、米穀安定供給確保支援機構(以下「機構」という。)として指定することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による指定をしたときは、機構の名称、住所 及び事務所の所在地を官報で公示しなければならない。

3項

機構は、その名称、住所 又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

4項

農林水産大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を官報で公示しなければならない。

1項

機構は、次に掲げる業務を行うものとする。

一 号

第五条第一項の認定に係る生産調整方針に従って米穀の生産を行う者に対し、当該認定に係る生産調整方針に基づき同条第二項第二号に規定する米穀を在庫として保有する措置の実施のために必要な資金に充てるための無利子の資金の貸付けを行うこと。

二 号

米穀の安定供給の確保に資する売買取引に係る米穀の買受けに係る債務(当該債務の履行に必要な資金の借入れに係る債務を含む。)を保証すること。

三 号

前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

1項

機構は、農林水産大臣の認可を受けて、前条第一号に掲げる業務(貸付けの決定を除く)及び同条第二号に掲げる業務(債務の保証の決定を除く)の一部を金融機関に委託することができる。

2項

金融機関は、他の法律の規定にかかわらず前項の規定による委託を受け、当該業務を行うことができる。

1項

機構は、第九条第一号 及び第二号に掲げる業務(以下「貸付等業務」という。)を行うときは、貸付等業務の開始前に、貸付等業務の実施に関する規程(以下この款において「業務規程」という。)を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

農林水産大臣は、前項の認可をした業務規程が貸付等業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

3項

業務規程に記載すべき事項 及び第一項の認可の基準については、農林水産省令で定める。

1項

機構は、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画 及び収支予算を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

機構は、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書 及び財産目録を作成し、農林水産大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

1項

機構は、第九条第一号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。)に係る経理、同条第二号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。)に係る経理 及びその他の業務に係る経理をそれぞれ区分して整理しなければならない。

1項

前二条に定めるもののほか、機構が貸付等業務を行う場合における機構の財務 及び会計に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

1項

農林水産大臣は、第九条各号に掲げる業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、機構に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

農林水産大臣は、機構が次の各号いずれかに該当するときは、第八条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。

一 号

第九条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

二 号

指定に関し不正の行為があったとき。

三 号

この款の規定 又は当該規定に基づく命令 若しくは処分に違反したとき。

四 号

第十一条第一項の認可を受けた業務規程によらないで貸付等業務を行ったとき。

2項

農林水産大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。

1項

政府は、機構に対し、第九条第一号に掲げる業務に要する資金の一部を無利子で貸し付けることができる。

2項

前項の規定による貸付金の償還方法は、政令で定める。

第三款 米穀価格形成センター

1項

農林水産大臣は、米穀の取引の指標とすべき適正な価格の形成を図り、もって その円滑な取引に資することを目的とする一般社団法人、一般財団法人 その他営利を目的としない法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、米穀価格形成センター以下「センター」という。)として指定することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該センターの名称、住所 及び事務所の所在地を官報で公示しなければならない。

3項

センターは、その名称、住所 又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

4項

農林水産大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を官報で公示しなければならない。

1項

センターは、次に掲げる業務を行うものとする。

一 号

米穀の取引の指標とすべき価格の形成に必要な その売買取引を行うための施設(以下「価格形成施設」という。)を開設すること。

二 号

前号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

1項

センターは、前条第一号に掲げる業務を行うときは、当該業務の開始前に、当該業務の実施に関する規程(以下 この款において「業務規程」という。)を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

農林水産大臣は、前項の認可をした業務規程が前条第一号に掲げる業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

3項

業務規程に記載すべき事項 及び第一項の認可の基準については、農林水産省令で定める。

1項

価格形成施設における米穀の売買取引(以下「売買取引」という。)を行うことができる者は、米穀の買入れ 又は売渡しの業務を適確に遂行するに足りる資力信用を有しない者 その他の業務規程で定める者以外の者とする。

1項

売買取引は、入札の方法 その他 業務規程で定める方法によらなければならない。

2項

センターは、売買取引において、不正な行為が行われ、又は不当な価格が形成されていると認めるときは、業務規程で定めるところにより、売買取引を行う者に対し、売買取引の制限をすることができる。

3項

センターは、前項の規定により売買取引の制限をしたときは、速やかに、その旨を農林水産大臣に報告しなければならない。

1項

センターは、売買取引が行われたときは、売買取引の数量 及び価格 その他農林水産省令で定める事項を公表しなければならない。

1項

センターは、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画 及び収支予算を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

センターは、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書 及び収支決算書を作成し、農林水産大臣に提出しなければならない。

1項

センターの役員の選任 及び解任は、農林水産大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

2項

センターの役員が、この款の規定(当該規定に基づく命令 及び処分を含む。)若しくは第二十条第一項の認可を受けた業務規程に違反する行為をしたとき、又は第十九条第一号に掲げる業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、農林水産大臣は、センターに対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

1項

センターの役員 若しくは職員 又はこれらの職にあった者は、第十九条第一号に掲げる業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

1項

農林水産大臣は、第十九条各号に掲げる業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、センターに対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

農林水産大臣は、センターが次の各号いずれかに該当するときは、第十八条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。

一 号

第十九条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

二 号

指定に関し不正の行為があったとき。

三 号

この款の規定 又は当該規定に基づく命令 若しくは処分に違反したとき。

四 号

第二十条第一項の認可を受けた業務規程によらないで第十九条第一号に掲げる業務を行ったとき。

2項

農林水産大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。

第三節 政府の買入れ及び売渡し

1項

政府は、米穀の備蓄の円滑な運営を図るため、農林水産省令で定める手続に従い、基本指針に即して、国内産米穀の買入れを行い、及び第四十七条第二項に規定する届出事業者 その他農林水産省令で定める者(以下「買受資格者」という。)に対し当該米穀の売渡しを行うものとする。

1項

政府は、米穀等(米穀 及び米穀を加工し、又は調製したものであって政令で定めるものをいう。以下 この章において同じ。)の輸入を目的とする買入れを行い、及び買受資格者に対し当該米穀の売渡しを行うことができる。

2項

政府は、必要があると認める場合には、前項の米穀等の買入れを他に委託することができる。

3項

第一項の輸入を目的とする買入れに係る米穀を同項の規定により売り渡す場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該米穀の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

1項

政府は、米穀等の輸入を行おうとする者 及び当該輸入に係る米穀等の買受けを行おうとする買受資格者の連名による申込みに応じて、当該輸入に係る米穀等を買い入れることができる。

2項

政府は、前項の規定により買い入れた米穀等を同項の申込みを行った買受資格者に対し、当該申込みに応じて売り渡すものとする。

3項

第一項の規定により買い入れた米穀等を前項の規定により売り渡す場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該米穀等の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

1項

政府は、特に必要があると認めるときは、米穀等の輸出を目的とする売渡しを行うことができる。

2項

第三十条第二項の規定は、前項の米穀等の売渡しについて準用する。

1項

農林水産大臣は、第二十九条から前条までの規定により米穀を売り渡す場合には、売渡しに係る米穀の譲渡 又は使用に関し、その時期、相手方等の制限 その他必要な条件を付することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定により条件を付されて米穀の売渡しを受けた者が、その条件に違反したときは、当該違反に係る米穀の売渡価格に農林水産大臣が定める割合を乗じて得られる金額に相当する額の違約金を徴収することができる。

第四節 政府以外の者の行う輸入及び輸出

1項

米穀等の輸入(関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二条に定める輸入をいう。以下 この項 及び第四十五条第一項において同じ。)を行おうとする者は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額に、当該輸入に係る米穀等の数量を乗じて得た額を、政府に納付しなければならない。


ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 号

第三十条第二項の規定による政府の委託を受けて輸入する場合

二 号

第三十一条の規定による連名による申込みに応じて行う政府の買入れ 及び売渡しに係る米穀等を輸入する場合

三 号

国内の需給 及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める米穀等を輸入する場合

2項

前項の納付金の受領は、関税法第七十条第一項の許可、承認等とみなす。

3項

第一項の納付金の納付手続 その他納付金に関し必要な事項は、政令で定める。

1項

前条第一項第三号に規定する米穀等のうち政令で定める米穀の輸入を行おうとする者は、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、当該輸入に係る数量を農林水産大臣に届け出なければならない。

1項

米穀の輸出を行おうとする者は、次に掲げる場合を除き、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、当該輸出に係る数量を農林水産大臣に届け出なければならない。

一 号

第三十二条第二項において準用する第三十条第二項の規定による政府の委託を受けて輸出する場合

二 号

国内の需給 及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める米穀を輸出する場合

第五節 緊急時の措置

1項

政府は、米穀の供給が大幅に不足し、又は不足するおそれがあるため、米穀の適正かつ円滑な供給が相当の期間極めて困難となることにより、国民生活の安定 及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じ、又は生ずるおそれがある場合において、その事態に対処するため次条から第四十条までに規定する措置を講ずる必要があると認めるときは、閣議の決定を経て、その旨を告示するものとする。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による告示のあったときは、政令で定めるところにより、基本指針を変更し、地域別 及び期間別の米穀の供給目標数量を追加して定めなければならない。


第四条第一項の規定により基本指針を定める場合においても、同様とする。

3項

政府は、第一項に規定する事態が消滅したと認めるときは、直ちに、閣議の決定を経て、その旨を告示するものとする。

1項

農林水産大臣は、前条第一項に規定する事態に対処するため、基本指針に即して、米穀の出荷 又は販売の事業を行う者に対し、その保有する米穀の譲渡、移動 又は保管に関し、地域 又は時期の指定、数量 又は価格の制限に服すべきことを命ずることができる。

1項

農林水産大臣は、前条に規定する措置を講じてもなお米穀の適正かつ円滑な供給を確保することが困難であると認められるときは、米穀の生産者に対し、売渡しをすべき期限 及び数量を定めて、その生産した米穀を、政府に売り渡すべきことを命ずることができる。

2項

前項の場合における政府の買入れの価格は、時価によるものとする。

1項

前二条に規定する措置をもってしては、第三十七条第一項に規定する事態を克服することが著しく困難であると認められる場合においては、政令で、米穀の割当て 若しくは配給 又は米穀の使用、譲渡 若しくは譲受の制限 若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。

2項

前項の政令で定める事項は、その事態を克服するため必要な限度を超えるものであってはならない。