主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律

平成六年法律第百十三号
略称 : 主要食糧需給価格安定法 
分類 法律
カテゴリ   農業
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 03月01日 00時06分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 米穀の需給及び価格の安定を図るための措置

    • 第一節 基本指針
    • 第二節 適正かつ円滑な流通の確保に関する措置
      • 第一款 生産調整方針
      • 第一款の二 米穀の出荷又は販売の事業を行う者の遵守事項
      • 第二款 米穀安定供給確保支援機構
      • 第三款 米穀価格形成センター
    • 第三節 政府の買入れ及び売渡し
    • 第四節 政府以外の者の行う輸入及び輸出
    • 第五節 緊急時の措置
  • 第三章 麦その他主要食糧の需給及び価格の安定を図るための措置

  • 第四章 雑則

  • 第五章 罰則

第一章 総則

1項

この法律は、主要な食糧である米穀 及び麦が主食としての役割を果たし、かつ、重要な農産物としての地位を占めていることにかんがみ、米穀の生産者から消費者までの適正かつ円滑な流通を確保するための措置 並びに政府による主要食糧の買入れ、輸入 及び売渡しの措置を総合的に講ずることにより、主要食糧の需給 及び価格の安定を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資することを目的とする。

1項

政府は、米穀の需給 及び価格の安定を図るため、米穀の需給の適確な見通しを策定し、これに基づき、整合性をもって、米穀の需給の均衡を図るための生産調整の円滑な推進、米穀の供給が不足する事態に備えた備蓄の機動的な運営 及び消費者が必要とする米穀の適正かつ円滑な流通の確保を図るとともに、米穀の適切な買入れ、輸入 及び売渡しを行うものとする。

2項

政府は、前項に規定する生産調整の円滑な推進に関する施策を講ずるに当たっては、生産者の自主的な努力を支援することを旨とするとともに、水田における稲以外の作物の生産の振興に関する施策 その他関連施策との有機的な連携を図りつつ、地域の特性に応じて、これを行うよう努めなければならない。

3項

政府は、麦の需給 及び価格の安定を図るため、麦の需給の適確な見通しを策定し、これに基づき、麦の供給が不足する事態に備えた備蓄の円滑な運営を図るとともに、麦の適切な輸入 及び売渡しを行うものとする。

1項

この法律において「主要食糧」とは、米穀、麦(小麦、大麦 及びはだか麦をいう。以下同じ。)その他政令で定める食糧(これらを加工し、又は調製したものであって政令で定めるものを含む。)をいう。

2項

この法律において「米穀の備蓄」とは、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することをいう。

3項

この法律において「麦の備蓄」とは、麦の輸入の途絶等によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の麦を在庫として保有することをいう。

第二章 米穀の需給及び価格の安定を図るための措置

第一節 基本指針

1項

農林水産大臣は、米穀の需給 及び価格の安定を図るため、政令で定めるところにより、毎年、米穀の需給 及び価格の安定に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。

2項

基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号

米穀の需給 及び価格の安定に関する基本方針

二 号
米穀の需給の見通しに関する事項
三 号

米穀の備蓄の目標数量 その他米穀の備蓄の運営に関する事項

四 号

米穀の輸入数量 及びその種類別の数量に関する事項

五 号

その他米穀の需給 及び価格の安定に関する重要事項

3項

農林水産大臣は、前項第二号に掲げる事項を定めるため必要があるときは、都道府県知事に対し、資料の提出 その他必要な協力を求めることができる。

4項

農林水産大臣は、基本指針を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

5項

農林水産大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6項

農林水産大臣は、米穀の需給事情 その他の経済事情に変動が生じた場合において、特に必要があると認めるときは、基本指針を変更することができる。

7項

第三項から第五項までの規定は、前項の規定による基本指針の変更について準用する。

第二節 適正かつ円滑な流通の確保に関する措置

第一款 生産調整方針

1項

米穀の生産者 又は出荷の事業を行う者の組織する団体 その他政令で定める者(以下「生産出荷団体等」という。)は、農林水産省令で定めるところにより、米穀の生産調整に関する方針(以下「生産調整方針」という。)を作成し、当該生産調整方針が適当である旨の農林水産大臣の認定を受けることができる。

2項

生産調整方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号

生産調整方針に従って米穀の生産を行う者に係る米穀の生産数量の目標(以下「生産数量目標」という。)の設定方針

二 号

生産数量目標を達成するためとるべき措置(天候 その他の自然的条件の変化により生産数量目標を上回って生産された数量の米穀に係る措置を含む。

3項

農林水産大臣は、第一項の認定の申請が 次の各号のすべてに該当するときは、同項の認定をするものとする。

一 号

生産調整方針の内容が基本指針に照らして適切なものであること。

二 号

前項第二号に掲げる事項が生産数量目標を確実に達成するために適切なものであること。

三 号

その他 農林水産省令で定める基準に適合するものであること。

4項

前三項に規定するもののほか、生産調整方針の認定 及びその取消しに関し必要な事項は、政令で定める。

1項

国は、生産出荷団体等に対し、生産調整方針の作成 及びその適切な運用のために必要な助言 及び指導を行うように努めるものとする。

1項

生産出荷団体等は、生産調整方針の作成 及びその適切な運用のため、地方公共団体に対し、必要な協力を求めることができる。

2項

地方公共団体は、前項の規定により協力を求められた場合において、生産調整方針の作成 及びその適切な運用がその地方公共団体の区域の特性に応じた農業の振興に資すると認めるときは、必要な助言 及び指導を行うように努めるものとする。

第一款の二 米穀の出荷又は販売の事業を行う者の遵守事項

1項

農林水産大臣は、米穀の適正かつ円滑な流通を確保するため、農林水産省令で、米穀の用途別の管理の方法 その他の米穀の出荷 又は販売の事業を行う者が その業務の方法に関し遵守すべき事項を定めることができる。

1項

農林水産大臣は、米穀の出荷 又は販売の事業を行う者が前条の農林水産省令で定める事項を遵守していないと認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その業務の方法を改善すべきことを勧告することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

第二款 米穀安定供給確保支援機構

1項

農林水産大臣は、米穀の安定供給の確保を支援することを目的とする一般社団法人、一般財団法人 その他営利を目的としない法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、米穀安定供給確保支援機構(以下「機構」という。)として指定することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による指定をしたときは、機構の名称、住所 及び事務所の所在地を官報で公示しなければならない。

3項

機構は、その名称、住所 又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

4項

農林水産大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を官報で公示しなければならない。

1項

機構は、次に掲げる業務を行うものとする。

一 号

第五条第一項の認定に係る生産調整方針に従って米穀の生産を行う者に対し、当該認定に係る生産調整方針に基づき同条第二項第二号に規定する米穀を在庫として保有する措置の実施のために必要な資金に充てるための無利子の資金の貸付けを行うこと。

二 号

米穀の安定供給の確保に資する売買取引に係る米穀の買受けに係る債務(当該債務の履行に必要な資金の借入れに係る債務を含む。)を保証すること。

三 号

前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

1項

機構は、農林水産大臣の認可を受けて、前条第一号に掲げる業務(貸付けの決定を除く)及び同条第二号に掲げる業務(債務の保証の決定を除く)の一部を金融機関に委託することができる。

2項

金融機関は、他の法律の規定にかかわらず前項の規定による委託を受け、当該業務を行うことができる。

1項

機構は、第九条第一号 及び第二号に掲げる業務(以下「貸付等業務」という。)を行うときは、貸付等業務の開始前に、貸付等業務の実施に関する規程(以下この款において「業務規程」という。)を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

農林水産大臣は、前項の認可をした業務規程が貸付等業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

3項

業務規程に記載すべき事項 及び第一項の認可の基準については、農林水産省令で定める。

1項

機構は、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画 及び収支予算を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

機構は、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書 及び財産目録を作成し、農林水産大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

1項

機構は、第九条第一号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。)に係る経理、同条第二号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。)に係る経理 及びその他の業務に係る経理をそれぞれ区分して整理しなければならない。

1項

前二条に定めるもののほか、機構が貸付等業務を行う場合における機構の財務 及び会計に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

1項

農林水産大臣は、第九条各号に掲げる業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、機構に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

農林水産大臣は、機構が次の各号いずれかに該当するときは、第八条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。

一 号

第九条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

二 号

指定に関し不正の行為があったとき。

三 号

この款の規定 又は当該規定に基づく命令 若しくは処分に違反したとき。

四 号

第十一条第一項の認可を受けた業務規程によらないで貸付等業務を行ったとき。

2項

農林水産大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。

1項

政府は、機構に対し、第九条第一号に掲げる業務に要する資金の一部を無利子で貸し付けることができる。

2項

前項の規定による貸付金の償還方法は、政令で定める。

第三款 米穀価格形成センター

1項

農林水産大臣は、米穀の取引の指標とすべき適正な価格の形成を図り、もって その円滑な取引に資することを目的とする一般社団法人、一般財団法人 その他営利を目的としない法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、米穀価格形成センター以下「センター」という。)として指定することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該センターの名称、住所 及び事務所の所在地を官報で公示しなければならない。

3項

センターは、その名称、住所 又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

4項

農林水産大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を官報で公示しなければならない。

1項

センターは、次に掲げる業務を行うものとする。

一 号

米穀の取引の指標とすべき価格の形成に必要な その売買取引を行うための施設(以下「価格形成施設」という。)を開設すること。

二 号

前号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

1項

センターは、前条第一号に掲げる業務を行うときは、当該業務の開始前に、当該業務の実施に関する規程(以下 この款において「業務規程」という。)を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

農林水産大臣は、前項の認可をした業務規程が前条第一号に掲げる業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

3項

業務規程に記載すべき事項 及び第一項の認可の基準については、農林水産省令で定める。

1項

価格形成施設における米穀の売買取引(以下「売買取引」という。)を行うことができる者は、米穀の買入れ 又は売渡しの業務を適確に遂行するに足りる資力信用を有しない者 その他の業務規程で定める者以外の者とする。

1項

売買取引は、入札の方法 その他 業務規程で定める方法によらなければならない。

2項

センターは、売買取引において、不正な行為が行われ、又は不当な価格が形成されていると認めるときは、業務規程で定めるところにより、売買取引を行う者に対し、売買取引の制限をすることができる。

3項

センターは、前項の規定により売買取引の制限をしたときは、速やかに、その旨を農林水産大臣に報告しなければならない。

1項

センターは、売買取引が行われたときは、売買取引の数量 及び価格 その他農林水産省令で定める事項を公表しなければならない。

1項

センターは、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画 及び収支予算を作成し、農林水産大臣の認可を受けなければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

センターは、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書 及び収支決算書を作成し、農林水産大臣に提出しなければならない。

1項

センターの役員の選任 及び解任は、農林水産大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

2項

センターの役員が、この款の規定(当該規定に基づく命令 及び処分を含む。)若しくは第二十条第一項の認可を受けた業務規程に違反する行為をしたとき、又は第十九条第一号に掲げる業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、農林水産大臣は、センターに対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

1項

センターの役員 若しくは職員 又はこれらの職にあった者は、第十九条第一号に掲げる業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

1項

農林水産大臣は、第十九条各号に掲げる業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、センターに対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

農林水産大臣は、センターが次の各号いずれかに該当するときは、第十八条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。

一 号

第十九条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

二 号

指定に関し不正の行為があったとき。

三 号

この款の規定 又は当該規定に基づく命令 若しくは処分に違反したとき。

四 号

第二十条第一項の認可を受けた業務規程によらないで第十九条第一号に掲げる業務を行ったとき。

2項

農林水産大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。

第三節 政府の買入れ及び売渡し

1項

政府は、米穀の備蓄の円滑な運営を図るため、農林水産省令で定める手続に従い、基本指針に即して、国内産米穀の買入れを行い、及び第四十七条第二項に規定する届出事業者 その他農林水産省令で定める者(以下「買受資格者」という。)に対し当該米穀の売渡しを行うものとする。

1項

政府は、米穀等(米穀 及び米穀を加工し、又は調製したものであって政令で定めるものをいう。以下 この章において同じ。)の輸入を目的とする買入れを行い、及び買受資格者に対し当該米穀の売渡しを行うことができる。

2項

政府は、必要があると認める場合には、前項の米穀等の買入れを他に委託することができる。

3項

第一項の輸入を目的とする買入れに係る米穀を同項の規定により売り渡す場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該米穀の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

1項

政府は、米穀等の輸入を行おうとする者 及び当該輸入に係る米穀等の買受けを行おうとする買受資格者の連名による申込みに応じて、当該輸入に係る米穀等を買い入れることができる。

2項

政府は、前項の規定により買い入れた米穀等を同項の申込みを行った買受資格者に対し、当該申込みに応じて売り渡すものとする。

3項

第一項の規定により買い入れた米穀等を前項の規定により売り渡す場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該米穀等の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

1項

政府は、特に必要があると認めるときは、米穀等の輸出を目的とする売渡しを行うことができる。

2項

第三十条第二項の規定は、前項の米穀等の売渡しについて準用する。

1項

農林水産大臣は、第二十九条から前条までの規定により米穀を売り渡す場合には、売渡しに係る米穀の譲渡 又は使用に関し、その時期、相手方等の制限 その他必要な条件を付することができる。

2項

農林水産大臣は、前項の規定により条件を付されて米穀の売渡しを受けた者が、その条件に違反したときは、当該違反に係る米穀の売渡価格に農林水産大臣が定める割合を乗じて得られる金額に相当する額の違約金を徴収することができる。

第四節 政府以外の者の行う輸入及び輸出

1項

米穀等の輸入(関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二条に定める輸入をいう。以下 この項 及び第四十五条第一項において同じ。)を行おうとする者は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額に、当該輸入に係る米穀等の数量を乗じて得た額を、政府に納付しなければならない。


ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 号

第三十条第二項の規定による政府の委託を受けて輸入する場合

二 号

第三十一条の規定による連名による申込みに応じて行う政府の買入れ 及び売渡しに係る米穀等を輸入する場合

三 号

国内の需給 及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める米穀等を輸入する場合

2項

前項の納付金の受領は、関税法第七十条第一項の許可、承認等とみなす。

3項

第一項の納付金の納付手続 その他納付金に関し必要な事項は、政令で定める。

1項

前条第一項第三号に規定する米穀等のうち政令で定める米穀の輸入を行おうとする者は、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、当該輸入に係る数量を農林水産大臣に届け出なければならない。

1項

米穀の輸出を行おうとする者は、次に掲げる場合を除き、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、当該輸出に係る数量を農林水産大臣に届け出なければならない。

一 号

第三十二条第二項において準用する第三十条第二項の規定による政府の委託を受けて輸出する場合

二 号

国内の需給 及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める米穀を輸出する場合

第五節 緊急時の措置

1項

政府は、米穀の供給が大幅に不足し、又は不足するおそれがあるため、米穀の適正かつ円滑な供給が相当の期間極めて困難となることにより、国民生活の安定 及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じ、又は生ずるおそれがある場合において、その事態に対処するため次条から第四十条までに規定する措置を講ずる必要があると認めるときは、閣議の決定を経て、その旨を告示するものとする。

2項

農林水産大臣は、前項の規定による告示のあったときは、政令で定めるところにより、基本指針を変更し、地域別 及び期間別の米穀の供給目標数量を追加して定めなければならない。


第四条第一項の規定により基本指針を定める場合においても、同様とする。

3項

政府は、第一項に規定する事態が消滅したと認めるときは、直ちに、閣議の決定を経て、その旨を告示するものとする。

1項

農林水産大臣は、前条第一項に規定する事態に対処するため、基本指針に即して、米穀の出荷 又は販売の事業を行う者に対し、その保有する米穀の譲渡、移動 又は保管に関し、地域 又は時期の指定、数量 又は価格の制限に服すべきことを命ずることができる。

1項

農林水産大臣は、前条に規定する措置を講じてもなお米穀の適正かつ円滑な供給を確保することが困難であると認められるときは、米穀の生産者に対し、売渡しをすべき期限 及び数量を定めて、その生産した米穀を、政府に売り渡すべきことを命ずることができる。

2項

前項の場合における政府の買入れの価格は、時価によるものとする。

1項

前二条に規定する措置をもってしては、第三十七条第一項に規定する事態を克服することが著しく困難であると認められる場合においては、政令で、米穀の割当て 若しくは配給 又は米穀の使用、譲渡 若しくは譲受の制限 若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。

2項

前項の政令で定める事項は、その事態を克服するため必要な限度を超えるものであってはならない。

第三章 麦その他主要食糧の需給及び価格の安定を図るための措置

1項

農林水産大臣は、麦の需給 及び価格の安定を図るため、政令で定めるところにより、毎年、麦の需給に関する見通し(以下「需給見通し」という。)を定めるものとする。

2項

需給見通しにおいては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号

麦の種類別需要数量に関する事項

二 号

前号の種類別需要数量に対応する麦の生産数量 及び輸入数量に関する事項

三 号

麦の備蓄の種類別目標数量 その他 麦の備蓄の運営に関する事項

四 号

その他麦の需給の安定に関する重要事項

3項

第四条第三項から第七項までの規定は、需給見通しについて準用する。


この場合において、

同条第三項
前項第二号」とあるのは
第四十一条第二項第一号 及び第二号」と、

同条第六項
米穀」とあるのは
「麦」と

読み替えるものとする。

1項

政府は、麦等(麦 その他政令で定めるもの 及びこれらを加工し、又は調製したものであって政令で定めるものをいう。第五項 及び次条から 第四十五条までにおいて同じ。)の輸入を目的とする買入れを行うことができる。

2項

政府は、前項の輸入を目的とする買入れに係る麦を、随意契約により売り渡すものとする。


ただし、農林水産大臣が随意契約によることを不適当と認める場合には、入札の方法による一般競争契約 又は指名競争契約のうち農林水産大臣が選択する競争契約により売り渡すものとする。

3項

第一項の輸入を目的とする買入れに係る麦を前項の規定により売り渡す場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該麦の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

4項

第一項の規定による麦の買入れ 及び第二項の規定による 当該麦の売渡しは、麦の適切な供給 及び麦の備蓄の円滑な運営を図るため、需給見通しに即して行うものとする。

5項

第三十条第二項の規定は、第一項の麦等の買入れについて準用する。

1項

政府は、麦等の輸入を行おうとする者 及び当該輸入に係る麦等の買受けを行おうとする者の連名による申込みに応じて、当該輸入に係る麦等を買い入れることができる。

2項

政府は、前項の規定により買い入れた麦等を同項の買受けの申込みを行った者に対し、当該申込みに応じて売り渡すものとする。

3項

第一項の規定により買い入れた麦等を前項の規定により売り渡す場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該麦等の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

4項

第一項の規定による麦の買入れ及び第二項の規定による当該麦の売渡しは、麦の適切な供給を図るため、需給見通しに即して行うものとする。

1項

第三十二条の規定は麦等の売渡しについて、第三十三条の規定は麦の売渡しについて準用する。


この場合において、

同条第一項
第二十九条から前条まで」とあるのは、
前条第四十二条 及び第四十三条」と

読み替えるものとする。

1項

麦等の輸入を行おうとする者は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額に、当該輸入に係る麦等の数量を乗じて得た額を、政府に納付しなければならない。


ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 号

第四十二条第五項において準用する第三十条第二項の規定による政府の委託を受けて輸入する場合

二 号

第四十三条の規定による連名による申込みに応じて行う政府の買入れ 及び売渡しに係る麦等を輸入する場合

三 号

国内の需給 及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める麦等を輸入する場合

2項

第三十四条第二項 及び第三項の規定は、前項の納付金について準用する。

1項

政府は、主要食糧の適正かつ円滑な供給を図るため特に必要があると認めるときは、第三十条第三十一条第四十二条 及び第四十三条の規定によるほか、米穀以外の主要食糧の買入れを行うことができる。

2項

政府は、第三十一条第四十二条 及び第四十三条の規定によるほか、その保有する米穀以外の主要食糧の売渡しを行うことができる。

3項

第三十条第一項 又は第四十二条第一項の規定により買い入れた米穀 及び麦以外の主要食糧について前項の売渡しを行う場合の価格は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額を、当該米穀 及び麦以外の主要食糧の買入れの価格に加えて得た額を超えてはならない。

第四章 雑則

1項

米穀の出荷 又は販売の事業(その事業の規模が農林水産省令で定める規模未満であるものを除く第五十九条において同じ。)を行おうとする者は、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、次に掲げる事項を農林水産大臣に届け出なければならない。

一 号

商号、名称 又は氏名 及び住所

二 号

法人である場合においては、その代表者の氏名

三 号

主たる事務所の所在地

四 号

その他農林水産省令で定める事項

2項

前項の規定による届出をした者(以下「届出事業者」という。)は、同項各号に掲げる事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

3項

届出事業者は、当該届出に係る事業を廃止したときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

1項

届出事業者は、農林水産省令で定めるところにより、帳簿を備え、その業務に関し農林水産省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

1項

政府は、政令で定めるところにより、主要食糧の交付 又は貸付けを行うことができる。

2項

政府は、必要があると認める場合には、主要食糧の貯蔵、交換、加工 又は製造を行うことができる。

1項

政府は、主要食糧の適正かつ円滑な流通の確保に資するため、次条の調査の結果 その他主要食糧の需給 及び価格に関し必要な情報の提供に努めなければならない。

1項

農林水産大臣は、主要食糧の需給 及び価格の安定を図るため、農林水産省令で定めるところにより、主要食糧の生産、流通 及び消費の状況に関する調査を行うことができる。

1項

農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、機構 若しくはセンター その他業として主要食糧の出荷、販売、輸入、加工 若しくは製造を行う者に対し、その業務 若しくは資産の状況に関し報告をさせ、又は その職員に、これらの者の事務所、営業所、販売所、事業所、倉庫 若しくは工場に立ち入り、業務の状況 若しくは帳簿、書類 その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2項

前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

1項

この法律に規定する農林水産大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。

2項

この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方農政局長 又は北海道農政事務所長に委任することができる。

1項

この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第五章 罰則

1項

第三十九条第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役 又は三百万円以下の罰金に処する。

1項

第七条の三第二項 又は第三十八条の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役 又は百万円以下の罰金に処する。

1項

第二十六条の規定に違反した者は、一年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。

1項

第五十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、六月以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。

1項

第四十七条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして米穀の出荷 又は販売の事業を行った者は、五十万円以下の罰金に処する。

1項

法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

一 号

第五十六条第七条の三第二項に係る部分に限る

一億円以下の罰金刑

二 号

第五十五条第五十六条第七条の三第二項に係る部分を除く)又は前三条

各本条の罰金刑

1項

第四十条第一項の規定に基づく政令には、その政令 若しくはこれに基づく命令の規定 又はこれらに基づく処分に違反した者を五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定 及び法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、当該違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる。

1項

次の各号いずれかに該当する者は、二十万円以下の過料に処する。

一 号

第三十五条第三十六条 又は第四十七条第二項 若しくは第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

二 号

第四十八条の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかった者