この法律で定める基準に達しない労働条件を定める雇入契約(予備船員については、雇用契約。以下この条、次条、第三十三条、第三十四条、第五十八条、第八十四条 及び第百条において同じ。)は、その部分については、無効とする。
この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、この法律で定める基準に達する労働条件を定めたものとみなす。
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める雇入契約(予備船員については、雇用契約。以下この条、次条、第三十三条、第三十四条、第五十八条、第八十四条 及び第百条において同じ。)は、その部分については、無効とする。
この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、この法律で定める基準に達する労働条件を定めたものとみなす。
船舶所有者は、雇入契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該雇入契約の相手方となろうとする者(次項において「相手方」という。)に対し、次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。
船舶所有者の名称 又は氏名 及び住所
給料、労働時間 その他の労働条件に関する事項であつて、雇入契約の内容とすることが必要なものとして国土交通省令で定めるもの
前項の場合において、当該雇入契約に係る航海が海上運送法第二十六条第一項の規定による命令によるものであるときは、船舶所有者は、あらかじめ、相手方に対し、その旨を書面を交付して説明しなければならない。
船舶所有者は、雇入契約の内容(第一項第二号に掲げる事項に限る。)を変更しようとするときは、あらかじめ、船員に対し、当該変更の内容について書面を交付して説明しなければならない。
第二項の規定は、前項の場合について準用する。
船舶所有者は、次に掲げる者を船員として雇い入れてはならない。
当該船舶所有者が、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第四十四条第一項の許可を受けないで日本国内において募集受託者(同条第二項に規定する募集受託者をいう。第三号において同じ。)に行わせた船員の募集(同法第六条第七項に規定する船員の募集をいう。同号において同じ。)に応じた者
船員職業安定法第三十四条第一項の許可を受けて、又は同法第四十条第一項の規定による届出をして船員職業紹介事業(同法第六条第三項に規定する船員職業紹介事業をいう。第四号において同じ。)を行う者以外の者(日本政府 及び船員の雇用の促進に関する特別措置法(昭和五十二年法律第九十六号)第七条第二項に規定する船員雇用促進センターを除く。)が日本国内において当該船舶所有者に紹介した求職者
当該船舶所有者が、外国において、当該外国における船員の募集を適確に実施することができるものとして国土交通省令で定める基準に適合しない募集受託者に行わせた船員の募集に応じた者
外国において、当該外国における船員職業紹介事業を適確に実施することができるものとして国土交通省令で定める基準に適合しない者が当該船舶所有者に紹介した求職者
船舶所有者は、雇入契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
船舶所有者は、雇入契約に附随して、貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
船舶所有者は、船員の委託を受けてその貯蓄金を管理しようとする場合においては、国土交通省令の定めるところにより、その使用する船員の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、船員の過半数で組織する労働組合がないときは船員の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを国土交通大臣に届け出なければならない。
船舶所有者は、船員の委託を受けてその貯蓄金の管理をする場合において、貯蓄金の管理が預金の受入れであるときは、利子をつけなければならない。
この場合において、その利率が金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して国土交通省令の定める利率を下るときは、その国土交通省令の定める利率による利子をつけることとしたものとみなす。
船員は、船舶所有者に管理を委託した貯蓄金については、いつでも、返還を請求することができる。
船舶所有者は、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺してはならない。
但し、相殺の額が給料の額の三分の一を超えないとき 及び船員の犯罪行為に因る損害賠償の請求権を以てするときは、この限りでない。
船舶所有者は、雇入契約が成立したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した書面を船員に交付しなければならない。
第三十二条第一項各号に掲げる事項
当該雇入契約を締結した船員の氏名、住所 及び生年月日
当該雇入契約を締結した場所 及び年月日
船舶所有者は、雇入契約の内容(第三十二条第一項第二号に掲げる事項に限る。)を変更したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その変更の内容 並びに当該変更について船員と合意した場所 及び年月日を記載した書面を船員に交付しなければならない。
船舶所有者は、前二項の書面の写しを船内に備え置かなければならない。
船舶所有者は、雇入契約の成立、終了、更新 又は変更(以下「雇入契約の成立等」という。)があつたときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、国土交通大臣に届け出なければならない。
国土交通大臣は、雇入契約の成立等の届出があつたときは、その雇入契約が航海の安全 又は船員の労働関係に関する法令の規定に違反するようなことがないかどうか 及び当事者の合意が充分であつたかどうかを確認するものとする。
この場合において、国土交通大臣は、必要があると認めるときは、第百一条第一項の規定による命令 その他必要な措置を講ずるものとする。
船舶が左の各号の一に該当する場合には、雇入契約は、終了する。
船舶の存否が一箇月間分らないときは、船舶は、滅失したものと推定する。
第一項の規定により雇入契約が終了したときでも、船員は、人命、船舶 又は積荷の応急救助のために必要な作業に従事しなければならない。
前項の規定により応急救助の作業に従事する場合には、第一項の規定にかかわらず、その作業が終了するまでは、雇入契約は、なお存続する。
船員がその作業の終了後引き続き遺留品の保全、船員の送還 その他必要な残務の処理に従事する場合において、その処理が終了するまでの間についても、同様とする。
前項後段の規定により雇入契約が存続する間においては、船舶所有者 又は船員は、いつでも、当該雇入契約を解除することができる。
船舶所有者は、左の各号の一に該当する場合には、雇入契約を解除することができる。
船員が著しく職務に不適任であるとき。
船員が著しく職務を怠つたとき、又は職務に関し船員に重大な過失のあつたとき。
海員が船長の指定する時までに船舶に乗り込まないとき。
海員が著しく船内の秩序をみだしたとき。
船員が負傷 又は疾病のため職務に堪えないとき。
前各号の場合を除いて、やむを得ない事由のあるとき。
船員は、左の各号の一に該当する場合には、雇入契約を解除することができる。
船舶が雇入契約の成立の時における国籍を失つたとき。
船舶が外国の港からの航海を終了した場合において、その船舶に乗り組む船員が、二十四時間以上の期間を定めて書面で雇入契約の解除の申入をしたときは、その期間が満了した時に、その者の雇入契約は、終了する。
海員は、船長の適当と認める自己の後任者を提供したときは、雇入契約を解除することができる。
期間の定のない雇入契約は、船舶所有者 又は船員が二十四時間以上の期間を定めて書面で解除の申入をしたときは、その期間が満了した時に終了する。
相続 その他の包括承継の場合を除いて、船舶所有者の変更があつたときは、雇入契約は、終了する。
前項の場合には、雇入契約の終了の時から、船員と新所有者との間に従前と同一条件の雇入契約が存するものとみなす。
この場合には、船員は、前条の規定に準じて雇入契約を解除することができる。
雇入契約が終了した時に船舶が航行中の場合には、次の港に入港してその港における荷物の陸揚 及び旅客の上陸が終る時まで、雇入契約が終了した時に船舶が停泊中の場合には、その港における荷物の陸揚 及び旅客の上陸が終る時まで、その雇入契約は、存続するものとみなす。
船舶所有者は、雇入契約が適当な船員を補充することのできない港において終了する場合には、適当な船員を補充することのできる港に到着して荷物の陸揚 及び旅客の上陸が終る時まで、雇入契約を存続させることができる。
但し、第四十一条第一項第一号乃至第三号の場合は、この限りでない。
船舶所有者は、船員が職務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため作業に従事しない期間 及びその後三十日間 並びに女子の船員が第八十七条第一項 又は第二項の規定によつて作業に従事しない期間 及びその後三十日間は、解雇してはならない。
ただし、療養のため作業に従事しない期間が三年を超えた場合 又は天災事変 その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
前項但書の天災事変 その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、その事由について国土交通大臣の認定を受けなければならない。
船舶所有者は、予備船員を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。
三十日前に予告をしない船舶所有者は、一箇月分の給料の額と同額の予告手当を支払わなければならない。
但し、天災事変 その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合 又は予備船員の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。
前項の予告の日数は、一日について、国土交通省令の定めるところにより算定する給料の額と同額の予告手当を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
第一項但書の場合においては、その事由について国土交通大臣の認定を受けなければならない。
船舶所有者は、第三十九条の規定により雇入契約が終了したときは、その翌日(行方不明となつた船員については、その生存が知れた日)から二箇月(その行方不明について行方不明手当の支払を受くべき船員については、二箇月から行方不明中の期間を控除した期間)の範囲内において、船員の失業期間中毎月一回 その失業日数に応じ給料の額と同額の失業手当を支払わなければならない。
船舶所有者(第四号の場合には旧所有者)は、左の各号の一に該当する場合には、遅滞なく、船員に一箇月分の給料の額と同額の雇止手当を支払わなければならない。
第四十条第六号の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
第四十一条第一項第一号 又は第二号の規定により船員が雇入契約を解除したとき。
第四十二条の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
第四十三条第一項の規定により雇入契約が終了したとき。
船員が第八十三条の健康証明書を受けることができないため雇入契約が解除されたとき。
船舶所有者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、遅滞なく その費用で、船員の希望により、雇入港 又は雇入港までの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地(雇入れのため雇入港に招致した船員 及び未成年者の船員にあつては、雇入港 若しくは雇入契約の成立の時における船員の居住地 又はこれらのいずれかまでの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地。次項において「雇入港等」という。)まで船員を送還しなければならない。
ただし、送還に代えてその費用を支払うことができる。
第三十九条の規定により雇入契約が終了したとき。
第四十条第一号 又は第六号の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
第四十条第五号 又は第四十一条第一項第三号の規定により船舶所有者 又は船員が雇入契約を解除したとき。
ただし、船員の職務外の負傷 又は疾病につき船員に故意 又は重大な過失のあつたときは、この限りでない。
第四十一条第一項第一号 又は第二号の規定により船員が雇入契約を解除したとき。
第四十二条の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
第四十三条第二項の規定により船員が雇入契約を解除したとき。
雇入契約が期間の満了により船員の本国以外の地で終了したとき。
船員が第八十三条の健康証明書を受けることができないため雇入契約が解除されたとき。
船舶所有者は、第四十条第二号から第四号までの規定により雇入契約を解除した場合 又は同条第五号の規定により雇入契約を解除した場合(船員の職務外の負傷 又は疾病につき船員に故意 又は重大な過失のある場合に限る。)において、船員が自己の負担においてその希望する雇入港等まで移動することができないときは、遅滞なく その費用で、船員の希望により、雇入港等まで船員を送還しなければならない。
ただし、送還に代えてその費用を支払うことができる。
前二項の規定により船員を送還する場合における輸送手段は、正当な理由がある場合を除き、船員の希望に応じたものでなければならない。
船舶所有者は、第二項の規定により、その費用で船員を送還したとき、又は送還に代えてその費用を支払つたときは、船員に対し、当該費用の償還を請求することができる。
船舶所有者の負担すべき船員の送還の費用は、送還中の運送賃、宿泊費 及び食費 並びに雇入契約の終了の時から遅滞なく出発する時までの宿泊費 及び食費とする。
船舶所有者は、第四十七条第一項の規定により船員を送還する場合には、船員の送還に要する日数に応じ給料の額と同額の送還手当を支払わなければならない。
同項ただし書の規定により送還に代えてその費用を支払うときも同様とする。
前項の送還手当は、船舶所有者が送還するときは、毎月一回、送還に代えてその費用を支払うときは、その際これを支払わなければならない。
船員は、船員手帳を受有しなければならない。
船長は、海員の乗船中 その船員手帳を保管しなければならない。
船長は、国土交通省令で定めるところにより、船内における職務、雇入期間 その他の船員の勤務に関する事項を船員手帳に記載しなければならない。
船員手帳の交付、再交付、訂正、書換え 及び返還に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。
海員は、船長に対し勤務の成績に関する証明書の交付を請求することができる。