この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等 及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
第一章 総則
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
障害者
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害 及び社会的障壁により継続的に日常生活 又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
社会的障壁
障害がある者にとって日常生活 又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念 その他一切のものをいう。
行政機関等
国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第三章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第七号、第十条 及び附則第四条第一項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。
国の行政機関
次に掲げる機関をいう。
法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。) 及び内閣の所轄の下に置かれる機関
内閣府、宮内庁 並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 及び第二項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(ホの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
内閣府設置法第三十九条 及び第五十五条 並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関 並びに内閣府設置法第四十条 及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
国家行政組織法第八条の二の施設等機関 及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの
会計検査院
独立行政法人等
次に掲げる法人をいう。
独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。)
法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの
地方独立行政法人
地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号) 第二条第一項に規定する地方独立行政法人(同法第二十一条第三号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。
事業者
商業 その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体 及び地方独立行政法人を除く。)をいう。
国 及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。
国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、 障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。
行政機関等 及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善 及び設備の整備、関係職員に対する研修 その他の必要な環境の整備に努めなければならない。
第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針
政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向
行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項
内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者 その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。
内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置
行政機関等は、その事務 又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
行政機関等は、その事務 又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢 及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、 当該障害者の性別、年齢 及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
国の行政機関の長 及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関 及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下 この条 及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。
国の行政機関の長 及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者 その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
国の行政機関の長 及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。
地方公共団体の機関 及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関 及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下 この条 及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。
地方公共団体の機関 及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者 その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
地方公共団体の機関 及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。
国は、地方公共団体の機関 及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。
前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。
主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
第九条第二項から 第四項までの規定は、対応指針について準用する。
主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導 若しくは勧告をすることができる。
行政機関等 及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。
第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置
国 及び地方公共団体は、障害者 及び その家族 その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止 又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。
国 及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。
国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、 国内外における障害を理由とする差別 及び その解消のための取組に関する情報の収集、整理 及び提供を行うものとする。
国 及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育 その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下 この項 及び次条第二項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談 及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。
前項の規定により協議会を組織する国 及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。
特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人 その他の団体
学識経験者
その他 当該国 及び地方公共団体の機関が必要と認める者
協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談 及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。
関係機関 及び前条第二項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。
協議会は、第一項に規定する情報の交換 及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談 及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者 及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明 その他の必要な協力を求めることができる。
協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。
協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。
協議会の事務に従事する者 又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
前三条に定めるもののほか、 協議会の組織 及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第五章 雑則
この法律における主務大臣は、対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣 又は国家公安委員会とする。
第十二条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長 その他の執行機関が行うこととすることができる。
この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その所属の職員に委任することができる。
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。