少年事件の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。
犯罪捜査規範
第12章 少年事件に関する特則
少年事件の捜査については、家庭裁判所における審判 その他の処理に資することを念頭に置き、少年(少年法第2条第1項に規定する少年をいう。以下同じ。)の健全な育成を期する精神をもつて、これに当たらなければならない。
少年事件の捜査を行うに当たつては、少年の特性にかんがみ、特に他人の耳目に触れないようにし、取調べの言動に注意する等温情と理解をもつて当たり、その心情を傷つけないように努めなければならない。
少年事件の捜査を行うに当たつては、犯罪の原因 及び動機 並びに当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等を詳細に調査しておかなければならない。
少年事件の捜査を行うに当たつて必要があるときは、家庭裁判所、児童相談所、学校 その他の関係機関との連絡を密にしなければならない。
少年の被疑者の呼出し 又は取調べを行うに当たつては、当該少年の保護者 又はこれに代わるべき者に連絡するものとする。
ただし、連絡することが当該少年の福祉上不適当であると認められるときは、この限りでない。
少年の被疑者については、なるべく身柄の拘束を避け、やむを得ず、逮捕、連行 又は護送する場合には、その時期 及び方法について特に慎重な注意をしなければならない。
少年事件について、新聞 その他の報道機関等に発表するときは、当該少年の氏名 又は住居を告げ、その他その者を推知することができるようなことはしてはならない。
ただし、特定少年(少年法第62条第1項に規定する特定少年をいう。次条 及び第215条第2号において同じ。)のとき犯した罪に係る事件であつて当該罪により公訴を提起された者に係るもの(刑訴法第461条の請求がされたもの(刑訴法第463条第1項 若しくは第2項 又は第468条第2項の規定により通常の規定に従い審判をすることとなつたものを除く。)を除く。)については、この限りでない。
少年事件について捜査した結果、その犯罪が罰金以下の刑に当たるものであるときは、これを家庭裁判所に送致し、禁錮以上の刑に当たるものであるときは、これを検察官に送致し、又は送付しなければならない。
ただし、当該少年事件が特定少年に係るものであるときは、刑の軽重にかかわらず、これを検察官に送致し、又は送付しなければならない。
送致 又は送付に当たり、その少年(特定少年を除く。)の被疑者について、罰金以下の刑に当たる犯罪と禁錮以上の刑に当たる犯罪とがあるときは、これらを共に一括して、検察官に送致し、又は送付するものとする。
他の被疑者に係る事件と関連する少年事件の送致 又は送付については、次の各号に定めるところによるものとする。
少年事件が少年事件以外の事件(以下「非少年事件」という。)と関連する場合において、これらを共に検察官に送致し、又は送付するときは、各別の記録として送致し、又は送付すること。
ただし、少年事件に関する書類が非少年事件についても必要であるときは、その謄本 又は抄本を添付すること。
数個の少年事件が関連する場合において、これらを共に検察官に送致し、又は送付するときは、各別の記録とすることを要しないこと。
少年事件が非少年事件と関連し、又は数個の少年事件が関連し、その一方を検察官に送致し、又は送付し、他方を家庭裁判所に送致する場合において、一方の事件に関する書類が他方の事件についても必要であるときは、検察官に送致し、又は送付する事件の記録に、他の事件に関する書類の謄本 又は抄本を添付すること。
少年事件が非少年事件と関連し、又は数個の少年事件が関連し、これらを各別に送致し、又は送付する場合において、共通の証拠物があるときは、次の各号に定めるところによるものとする。
少年事件と非少年事件とが関連する場合には、非少年事件に証拠物を添付すること。
この場合においては、少年事件の記録にその旨を記載すること。
ただし、少年事件のみが重要と認められるときは、少年事件に証拠物を添付すること。
数個の少年事件のみが関連する場合には、検察官へ送致し、又は送付する事件に証拠物を添付すること。
この場合においては、家庭裁判所に送致する事件の記録にその旨を記載すること。
少年事件を送致 又は送付するに当たつては、少年事件送致書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第20号。ただし、当該都道府県警察の管轄区域を管轄する地方検察庁(以下「管轄地方検察庁」という。)の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長がその管轄区域を管轄する家庭裁判所(以下「管轄家庭裁判所」という。)と協議してその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)又は少年事件送付書を作成し、これに身上調査表(別記様式第21号)その他の関係書類 及び証拠物を添付するものとする。
捜査した少年事件について、その事実が極めて軽微であり、犯罪の原因 及び動機、当該少年の性格、行状、家庭の状況 及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分 又は保護処分を必要としないと明らかに認められ、かつ、検察官 又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、被疑少年ごとに少年事件簡易送致書 及び捜査報告書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第22号。ただし、管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議し その特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)を作成し、これに身上調査表 その他の関係書類を添付し、1月ごとに一括して検察官 又は家庭裁判所に送致することができる。
前項の規定による処理をするに当たつては、第200条(微罪処分の際の処置)に規定するところに準じて行うものとする。
捜査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第3章の定めるところによる。
被疑者が少年法第3条第1項第2号に規定する少年であることが明らかとなつたとき。
被疑者が罪を犯した事実がないことが明らかとなつた場合であつて、その者が少年法第3条第1項第3号に規定する少年(特定少年を除く。)であるとき。