船員法

# 昭和二十二年法律第百号 #

第十三章 雑則

分類 法律
カテゴリ   海運
@ 施行日 : 令和六年五月三十一日 ( 2024年 5月31日 )
@ 最終更新 : 令和六年法律第四十二号
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


1項

船舶所有者は、この法律、労働基準法、この法律に基づく命令、労働協約、就業規則 並びに第三十四条第二項第六十四条の二第一項第六十五条 及び第六十五条の三第三項の協定を記載した書類を船内 及びその他の事業場内の見やすい場所に掲示し、又は備え置かなければならない。

2項

船舶所有者(漁船 その他第百条の二第一項の国土交通省令で定める特別の用途に供される船舶の船舶所有者を除く)は、二千六年の海上の労働に関する条約を記載した書類を船内 及びその他の事業場内の見やすい場所に掲示し、又は備え置かなければならない。

3項

海上労働証書 又は臨時海上労働証書の交付を受けた特定船舶の船舶所有者は、これらの証書の写しを船内 及びその他の事業場内の見やすい場所に掲示しなければならない。

1項

船舶所有者は、給料 その他の報酬、失業手当、送還手当、傷病手当 又は行方不明手当のうち、その二以上をともに支払うべき期間については、いずれか一の多額のものを支払うを以て足りる。

2項

船舶所有者は、給料 その他の報酬を支払うべき場合において雇止手当 又は予後手当を支払うべきときは、給料 その他の報酬を支払うべき限度において、雇止手当 又は予後手当の支払の義務を免れる。

1項

失業手当、雇止手当、送還の費用、送還手当 又は災害補償を受ける権利は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない


給料 その他の報酬 及び前条に規定する手当をともに支払うべき期間についての給料 その他の報酬を受ける権利(これらの手当の額に相当する部分に関するものに限る)についても同様とする。

1項

船舶所有者は、第四十四条の三から第四十六条まで第四十七条第一項第四十九条第六十三条第六十六条第八十八条の二の二第四項 及び第五項 並びに第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)又は第七十八条の規定に違反したときは、これらの規定により船舶所有者が支払うべき金額(第四十七条第一項の規定に違反したときは、送還の費用)についての次項の規定による請求の時における未払金額に相当する額の付加金を船員に支払わなければならない。

2項

船員は、裁判所に対する訴えによつてのみ前項の付加金の支払を請求することができる。


ただし、その訴えは、同項に規定する違反のあつた時から五年以内にこれをしなければならない。

1項

船員の船舶所有者に対する債権は、これを行使することができる時から二年間給料 その他の報酬の債権にあつては、五年間)行使しないときは、時効によつて消滅する。


船舶所有者に対する行方不明手当、遺族手当 及び葬祭料の債権も同様とする。

1項

船舶所有者は、国土交通省令で定める船舶に航海当直をすべき職務を有する部員(第五項において「航海当直部員」という。)として部員を乗り組ませようとする場合には、次項の規定により証印を受けている者を、国土交通省令で定めるところにより乗り組ませなければならない。

2項

国土交通大臣は、国土交通省令の定めるところにより航海当直をするために必要な知識 及び能力を有すると認定した者に対し、その者の船員手帳に当該認定をした旨の証印をする。

3項

国土交通大臣は、次項の規定により証印を抹消され、その日から一年を経過しない者に対しては、前項の証印をしないことができる。

4項

国土交通大臣は、第二項の規定により証印を受けている者が、その職務に関してこの法律 又はこの法律に基づく命令に違反したときは、その者に対し船員手帳の提出を命じ、その証印を抹消することができる。

5項

前各項に定めるもののほか、航海当直部員 及び第二項の規定による証印に関し必要な事項は、国土交通省令でこれを定める。

1項

船舶所有者は、国土交通省令で定めるタンカー(国土交通大臣が定める危険物 又は有害物であるばら積みの液体貨物を輸送するために使用される船舶をいう。)又は国土交通省令で定める液化天然ガス等燃料船(液化天然ガス その他の国土交通大臣が定める危険物 又は有害物である液体物質を燃料とする船舶をいう。)には、危険物 又は有害物の取扱いに関する業務を管理すべき職務を有する者(第三項において「危険物等取扱責任者」という。)として、次項の規定により証印を受けている者を、国土交通省令で定めるところにより乗り組ませなければならない。

2項

国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより危険物 又は有害物の取扱いに関する業務を管理するために必要な知識 及び能力を有すると認定した者に対し、その者の船員手帳に当該認定をした旨の証印をする。

3項

前条第三項から第五項までの規定は、危険物等取扱責任者 及び前項に規定する証印について準用する。

1項

船舶所有者は、特定海域(海氷の状況 その他の自然的条件により船舶の航行の安全の確保に支障を生じ、又は生じるおそれがあるため、その運航につき特別の知識 及び技能が必要であると認められる海域として国土交通省令で定めるものをいう。)を航行する船舶には、海域の特性に応じた運航に関する業務を管理すべき職務を有する者(第三項において「特定海域運航責任者」という。)として、次項の規定により証印を受けている者を、国土交通省令で定めるところにより乗り組ませなければならない。

2項

国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより海域の特性に応じた運航に関する業務を管理するために必要な知識 及び能力を有すると認定した者に対し、その者の船員手帳に当該認定をした旨の証印をする。

3項

第百十七条の二第三項から第五項までの規定は、特定海域運航責任者 及び前項に規定する証印について準用する。

1項

船舶所有者は、国土交通省令の定める船舶については、乗組員の中から国土交通省令の定める員数の救命艇手を選任しなければならない。

2項

救命艇手は、救命艇手適任証書を受有する者でなければならない。

3項

国土交通大臣は、左に掲げる者に救命艇手適任証書を交付する。

一 号
国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣の行なう試験に合格した者
二 号

国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認定した者

4項

国土交通大臣は、次項の規定により救命艇手適任証書の返納を命ぜられ、その日から一年を経過しない者に対しては、救命艇手適任証書の交付を行わないことができる。

5項

国土交通大臣は、救命艇手が、その職務に関してこの法律 又はこの法律に基づく命令に違反したときは、その救命艇手適任証書の返納を命ずることができる。

6項

前各項に定めるもののほか、救命艇手 及び救命艇手適任証書に関し必要な事項は、国土交通省令でこれを定める。

1項

船舶所有者は、国土交通省令の定める旅客船には、国土交通省令の定めるところにより旅客の避難に関する教育訓練 その他の航海の安全に関する教育訓練を修了した者以外の者を乗組員として乗り組ませてはならない。

1項

船舶所有者は、国土交通省令の定める高速船(最大速力が国土交通大臣の定める速力以上の船舶をいう。)には、国土交通省令の定めるところにより船舶の特性に応じた操船に関する教育訓練 その他の航海の安全に関する教育訓練を修了した者以外の者を乗組員として乗り組ませてはならない。

1項

船舶所有者は、国土交通省令で定める旅客の輸送の用に供する総トン数二十トン未満の船舶の乗組員(当該船舶に乗り組ませようとする者を含む。)について、国土交通省令で定めるところにより、船舶が航行する海域の特性に応じた操船に関する教育訓練 その他の航海の安全に関する教育訓練(次条第一項において「特定教育訓練」という。)を実施しなければならない。

1項

前条に規定する船舶であつて、第一条第二項第一号 又は第二号に掲げる船舶に該当するもの(以下この条において「特定小型船舶」という。)の所有者(船舶共有の場合は船舶管理人、船舶貸借の場合は船舶借入人。以下この条第百三十一条の二 及び第百三十五条第二項において「特定小型船舶所有者」という。)は、特定小型船舶の乗組員(当該特定小型船舶に乗り組ませようとする者を含む。)について、国土交通省令で定めるところにより、特定教育訓練を実施しなければならない。

2項

国土交通大臣は、前項の規定に違反する事実があると認めるときは、特定小型船舶所有者に対し、その違反を是正するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

3項

国土交通大臣は、前項の規定に基づく命令を発したにもかかわらず、特定小型船舶所有者がその命令に従わない場合において、特定小型船舶の航海の安全を確保するため特に必要があると認めるときは、その特定小型船舶の航行の停止を命じ、又はその航行を差し止めることができる。


この場合において、その特定小型船舶が航行中であるときは、国土交通大臣は、その特定小型船舶の入港すべき港を指定することができる。

4項

国土交通大臣は、前項の規定による処分に係る特定小型船舶について、第二項に規定する事実がなくなつたと認めるときは、直ちにその処分を取り消さなければならない。

5項

船員労務官は、必要があると認めるときは、特定小型船舶所有者に対し、第一項の規定の遵守に関し注意を喚起し、又は勧告をすることができる。

1項

船舶所有者は、国土交通省令で定めるところにより、船内苦情処理手続(船員が航海中に船舶所有者に申出をしたこの法律、労働基準法 及びこの法律に基づく命令に規定する事項 並びに船員の労働条件等に関し国土交通省令で定める事項に関する苦情を処理する手続をいう。以下この条において同じ。)を定めなければならない。

2項

船舶所有者は、雇入契約が成立したときは、遅滞なく、船内苦情処理手続を記載した書面を船員に交付しなければならない。

3項

船舶所有者は、船員から航海中に第一項の苦情の申出を受けた場合にあつては、船内苦情処理手続に定めるところにより、苦情を処理しなければならない。

4項

船舶所有者は、第一項の苦情の申出をしたことを理由として、船員に対して解雇 その他の不利益な取扱いをしてはならない。

1項

船員、船員になろうとする者、船舶所有者 又は船長は、船員 又は船員になろうとする者の戸籍について、戸籍事務を管掌する者 又はその代理者に対し無償で証明を請求することができる。

1項

この法律の規定に基づき、命令を制定し、又は改廃する場合においては、命令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(年金制度、健康保険制度、雇用保険制度 その他の社会保障制度 及びこれらに関する政府の特別会計、労働関係調整制度 その他の労働関係制度 並びに罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

1項

この法律、労働基準法 及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村 その他これに準ずるものについても適用があるものとする。

1項

船舶職員及び小型船舶操縦者法第三章第五節の規定は、船長については、適用しない

1項

国土交通大臣は、その職員に、日本船舶以外の船舶(第一条第一項の国土交通省令で定める船舶 及び同条第二項各号に定める船舶を除く。以下この条において「外国船舶」という。)で国土交通省令で定めるものが国内の港にある間、当該外国船舶に立ち入り、当該外国船舶の乗組員の労働条件等が二千六年の海上の労働に関する条約に定める要件に適合しているかどうか 及び当該外国船舶の乗組員が次に掲げる要件の全てに適合しているかどうかについて検査を行わせることができる。

一 号

千九百七十八年の船員の訓練 及び資格証明 並びに当直の基準に関する国際条約に定める航海当直の基準に従つた航海当直を実施していること。

二 号

操舵設備 又は消防設備の操作 その他の航海の安全の確保に関し国土交通省令で定める事項を適切に実施するために必要な知識 及び能力を有していること。

2項

国土交通大臣は、前項の検査を行う場合において必要があると認めるときは、その必要と認める限度において、当該外国船舶の帳簿書類 その他の物件を検査し、当該外国船舶の乗組員に質問し、又は当該外国船舶の乗組員が同項第二号に定める知識 及び能力を有するかどうかについて審査を行うことができる。

3項

国土交通大臣は、第一項の規定による検査の結果、当該外国船舶の乗組員の労働条件等が二千六年の海上の労働に関する条約に定める要件に適合していないと認めるとき、又は当該外国船舶の乗組員が同項各号に掲げる要件のいずれかに適合していないと認めるときは、当該外国船舶の船長に対し、これらの要件に適合するために必要な措置をとるべきことを文書により通告するものとする。

4項

国土交通大臣は、前項の規定に基づく通告をしたにもかかわらず、なお当該通告に係る措置がとられていない場合において、当該外国船舶の大きさ 及び種類 並びに航海の期間 及び態様を考慮して、航海を継続することが人の生命、身体 若しくは財産に危険を生ぜしめ、又は海洋環境の保全に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該外国船舶の航行の停止を命じ、又はその航行を差し止めることができる。

5項

国土交通大臣があらかじめ指定するその職員は、前項に規定する場合において、人の生命、身体 若しくは財産に対する危険を防止し、又は海洋環境の保全を図るため緊急の必要があると認めるときは、同項に規定する国土交通大臣の権限を即時に行うことができる。

6項

第百一条第三項の規定は第四項の場合について、第百七条第三項 及び第四項の規定は第一項の場合について、それぞれ準用する。


この場合において、

第百一条第三項
「前項」とあるのは
第百二十条の三第四項」と、

「第一項に規定する事実がなくなつた」とあるのは
二千六年の海上の労働に関する条約に定める要件 及び同条第一項各号に定める要件に適合するために必要な措置がとられた」と、

第百七条第三項
「前二項」とあるのは
第百二十条の三第一項」と、

「船員労務官」とあるのは
同条第一項の規定により立入検査をする職員」と、

同条第四項
「第一項 又は第二項」とあるのは
第百二十条の三第一項」と

読み替えるものとする。

7項

第百十二条の規定(船員 及び船舶所有者に係る部分に限る)は、外国船舶の乗組員について準用する。


この場合において、

同条第一項
「この法律、労働基準法 又はこの法律に基づいて発する命令」とあるのは
二千六年の海上の労働に関する条約」と、

「船員労務官」とあるのは
「国土交通大臣があらかじめ指定するその職員」と

読み替えるものとする。

1項

この法律に基いて発する命令は、その草案について公聴会を開いて、船員 及び船舶所有者のそれぞれを代表する者 並びに公益を代表する者の意見を聴いて、これを制定するものとする。

1項

次に掲げる者(第百四条第一項の規定により市町村長が行う事務に係る申請をする者を除く)は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納めなければならない。

一 号
船員手帳の交付、再交付、訂正 又は書換えを受けようとする者
二 号

第八十二条の二第二項の衛生管理者適任証書 又は第百十八条第二項の救命艇手適任証書の再交付を受けようとする者

三 号

第八十二条の二第三項第一号 又は第百十八条第三項第一号の試験を受けようとする者

四 号

第八十二条の二第三項第二号 又は第百十八条第三項第二号の規定による認定を受けようとする者

五 号

法定検査(国土交通大臣が行うものに限る)を受けようとする者

六 号

海上労働証書 又は臨時海上労働証書の交付を受けようとする者(登録検査機関が検査を行つた船舶に係るこれらの証書の交付を受けようとする者に限る

七 号

海上労働証書 又は臨時海上労働証書の再交付 又は書換えを受けようとする者

1項

第百四条第三項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

1項

この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令の定めるところにより、その一部を地方運輸局長に委任することができる。

2項

前項の規定により地方運輸局長に委任された権限は、国土交通省令の定めるところにより、運輸支局長 又は地方運輸局、運輸監理部 若しくは運輸支局の事務所の長に委任することができる。